自由な女神様!~種族人族、職業女神が首を突っ込んだり巻き込まれたりの物語。脇に聖女を添えて~

時雨

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本編

15.主従契約とは?

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 あの後、第一騎士団から戻った瑞姫はシリウスの王宮にある自室へと顔を出した。しかし、淑女が夕食後とはいえ婚約者でも何でもない男性の部屋に入るものではないので、応接間を整えてもらい、シリウスとセイラン、瑞姫はそこで話すことになった。
 出来事を簡潔に話し、第一騎士団団員のフォリア・エヴィルを護衛にするつもりが、向こうが瑞姫を主君と定め(てしまっ)たので主従契約を結ぶつもりだ、といえば、シリウスはむせ、セイランは固まった。

「いきなりすぎないかな!?」

 護衛からえらく飛んだものである。しかも、騎士団巡りをし始めた初日だ。

「私も驚いたんだよ」
「あ、そう。……主従契約か……」

 そこで、シリウスから主従契約のことを詳しく聞いた。
 レイノートが言ったように、それは、ただ主君に仕えることに変わりはない。ただ、それを結ぶとそのことを示す印が体のどこかに現れる。誰が主君で誰のものだと証明できるのだ。従者は主君の力の恩恵を受けることができる。恩恵は主君によるので、なんであるかは受け取らないとわからない。主君自身が強く、スキルも多く持っているほど、従者が受け取れる恩恵は多くなり、従者自身も強くなれる。

「スキル?」
「あぁ、ミズキは知らないのか」

 この世界はスキルが存在する。生まれながら持っていることもあるし、修練で習得したものから発現するものもある。知りたければ、教会か、知り合いに鑑定できる人物がいるならしてもらえるらしい。ただし、鑑定スキル持ちの人より魔力量が多いと、鑑定できない場合があるそうだ。

「へ~。……調べてもらった方がいいのかな」
「まあ、そうなんだが。ミズキの場合、魔力量が多いいからな……。それに、機密事項を守れる人物を探さないと」
「あぁ、そっか。じゃあ、鑑定できる機会があれば、ってかんじかな。スキルのことが載ってる書物とかあるの?」
「あったはずだ」
「へえ、じゃあシュバルツさんに聞いてみる」

――――話を戻し。
 主従契約をすれば、魔力が繋がるので、魔力譲渡が簡単にできるようになる。主従契約をしていないときは、魔力譲渡をするには魔力の相性もあり、よほど相性がよくないと魔力を譲渡する際、しびれや痛みが走るようだ。魔力が繋がるデメリットとして、感情が伝わってしまう。主君が悲しめば従者に伝わるし、逆も然りだそうだ。決して、その感情が伝染するわけではない。ただ感じ取れるだけだ。
 更に、主君と従者がたとえ幾千キロ離れようとも、どこにいるかわかるようになる。位置情報はあやふやだが、方角はわかるそう。劣化版GPS機能搭載である。

「え、なにそれ、便利だね」
「便利だがな。サボっても直ぐ見つかる」
「その前に、サボらないでいただきたい」
「ははは……」

 ただ、遠いと方角しかわからないが、近ければ近くなるほど位置がわかるそうだ。例えば、建物の何階のどこにいるというのもわかるらしい。なので、いくら部屋を抜け出そうとも、直ぐ見つかるようだ。劣化版ではなく、最新版GPS機能搭載らしい。
 こんなメリットの方が大きい主従契約でも、する人は少ない。
 それは、なぜか。

「……えー……、一生縛っちゃうの……」
「あぁ。途中で破棄もできない」

(ひぇ~……。あれかな、ゲッシュに近いのかな?……ともかく、とんでもなく重いな……)

 それは、一生縛られる契約だから、である。更に言えば、破棄ができない。しかも、主君が死ねば、従者も道連れだ。しかし、その逆はない。
 そういうリスクありきの契約なので、本当に命を預けられる主君じゃないと成立しないのだ。というか、主君に相応しいと認められなければたとえ王族であろうが拒否される。とはいえ、これは亜人族であり生涯の主君を見つけた者に見られるもので、人族ではほぼ王族くらいだ。希に高位貴族はあるようだが。この国の国王は、主従契約はしてないそうだ。なるほど、通りで瑞姫が城下町に降りたときに、第三騎士団が探しに出るはずである。

「安易にしなくてよかった。やっぱり、フォリアさ……フォリアには、両親に報告した方がいいっていったけど、正解だったか~」
「まあ、そうだね」

 人の命を背負うのは重い。どのみち契約してもしなくても、主従関係にはなっていたが、とんでもなく重い契約である。

「……まあ、枷がある方が、私は無茶しないだろ、っていわれてたし……、いいけど」
「あぁ、そんな感じする」
「ミズキ様は、簡単に死にそうにないので、大丈夫かと」
「もう、二人とも……、否定しないけど」

 シリウスと気軽に話せるようになったら、セイランまでも瑞姫に遠慮がなくなってきた。距離としては友人だろうか。この距離は心地がよく、続けばいいな、と思うのだ。

「そうだ。主従契約を結んで、印が出たら見せてくれないかな。それが、女神様のものだと周知させなければね。手紙を出すときも、それが女神様の紋章になる」
「そうなんだ」

 紋章は国に報告をあげて登録しなければならない制度になっており、それによって他人に悪用されないようにしているらしい。紋章を押すときは、魔道具なので魔力を流さないと使用できない。よって、押されたところに魔力の残留がある。それを鑑定する魔道具を紋章鑑定と呼ぶのだが、紋章の形と魔力で判別できる優れものなのだ。
 シリウスの使う紋章も、そうらしい。王族は、大体国花(ユーリシアンはトルコキキョウリシアンサスだ)にイニシャルで、多くは丸形だそうだ。シリウスは五角形である。
 シリウスは左手の甲に出て、従者であるセイランは鎖骨の左斜め上あたりにあるらしい。印は個人で位置が違うようだ。ちなみに、主従関係を結んでいない人の紋章は、自分の家の家紋となる。
 瑞姫の紋章はどんな物になるのか、今から楽しみだ。

「あ、そうだ。明日あたりから、すごい噂流れると思うけど、大半本当だから」
「何の噂?」
「流れればわかるよ。詳しいことは第一騎士団が知ってるよ。オヴェラルトさんに聞くといいかも」

 あ、と思いだしたように、瑞姫は手を打つ。恐らく、今日の出来事は噂が流れるだろう。別に箝口令を敷いたわけでもないし。まあ、尾ひれ背びれはつくだろうが。聞きたいけど聞きたくないな、と思ったシリウスだった。

 そして流れた噂。

・女神はレイノートと互角の戦いをした。
・女神が魔物を魔石ごと粉砕したらしい。
・女神は蛇が好き。特に白蛇。故に、白蛇を侮辱するとぶっ飛ばされる。
・女神の世界では、白蛇は神の使いとして尊ばれている。
・女神が白蛇族の血を飲んで、毒が効かないと証明して見せた。
・女神が白蛇を侮辱した野郎を叩き潰した。

 云々。最後は違わないけど違う!そうじゃない!

 一方、フォリアの方は時間が遅かったのもあり、翌日に、報告するため家に戻ったらしい(一応、両親に説明するときはまだお披露目前なため、聖女候補の一人、ということにしてもらった)。最初はフォリア自身の言葉を信じてくれなかったらしい。まあ、それはそうだ。いきなり聖女候補の一人に仕えたいと言ったところで、は?という感じである。シリウスと瑞姫の一筆、更に瑞姫が渡したとんでもない代物を見せて、ようやく理解してくれたらしい。理解したらしたで、気絶しそうになったそうだ。
 なんでも、フォリアの父親は鑑定スキルを持っており、とんでもない代物が超とんでもなくヤバいことに気づいてしまったのだ。何せ、宝石の塊である。それに、接着剤や魔術等を使わず、宝石をつなぎ合わせる技術はこの世界にはない。
 鑑定スキルでわかったことは、誰作、宝石の種類、宝石は本物だが靱性と硬度を足され強化されているので紛い物と同じなため売買不可能、そして、

――――女神の加護付き。

 女神の加護付きである。仮で作ったのに何でそうなった、と瑞姫は頭を抱えた。
フォリア以外は長時間持つことは不可能で、一定の範囲を超えるとフォリアの元に戻ってくるようになっていた。つまり、たとえ盗まれようと、落とそうと、フォリアの元に戻ってくるようだ。――――呪いか!
宝にします!と、フォリアは報告とともにそう言った。
 確かに、盗まれないようにしたいな、とは思ったのだが。思うだけで加護がついちゃうのかー、と遠い目になった。これから、宝石を創造する機会があるならば、加護がつかないよう宝石のことのみ考えて創造しなければならない。行き過ぎた加護は呪いと一緒である。
 主従契約については、フォリアの両親は仕方がないと思っているようだ。一部の亜人族の性である。逆らえるはずもなし、とのことで。しょうがないよね!と軽い感じだったそうだ。主君である瑞姫に会ってないのにいいのかそれで。

 契約については、瑞姫の次の休日にすることになった。
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