13 / 15
第1部:赤と黒の騎士
12.Act03:迂闊-正体バレは二度起きる-③
しおりを挟む朝の営業を終えた後、ティアラはアルフとロンドに誘われて
冒険者組合に来ていた。
二人曰く、毎日行っている日課の一つだという。
組合に着いて直ぐ、二人は討伐関係を扱う依頼掲示板へと向かった。
そして掲示板の前で何やら話をしながら、それぞれの依頼内容を
確認し、アルフが「これにするか」と一枚の依頼書を剥がし取った。
そのまま依頼受領の手続きへ向かうが、途中で採取関係の
掲示板にも寄り、そこからも依頼書を一枚取る。
受付で受領手続きをしながら職員と世間話をしている彼を
眺めていると、一緒に待っていたロンドが話し掛けてきた。
「どうしたんだい?お店を出てからずっと浮かない顔をしているけど」
「えっ・・・何で分かるんですか?」
杖を小脇に挟みつつ、両手を顔に当てる仕草をするティアラを見て
ロンドは思わず苦笑いをしてしまう。
「なんとなくだけどね。
それになんだか放っておけなくてさ」
そう言い終えるとロンドは、後輩が今の心境をうち明けるのを待った。
ティアラも一呼吸ついてから今抱えている思いを紡いでいく。
「私、アルフさんのことをずっと不思議に思うんです。
どうして自分のやってきた事を目の前で否定されても
ああいう風に平気でいられるんだろうって・・・」
ガルシアの主張を思い返しながら少女は語る。
今でもあの場面を振り返るごとに、あの時生じた
複雑な感情が蘇ってくる。
ティアラの疑問に答えるため、少し言葉を選んでから
ロンドが口を開く。
「そうだなぁー・・・ひょっとしたらあいつは
とっくに割り切ってしまってるかもしれないな」
「割り切る・・・?」
ティアラからの視線を受けながらロンドは話を続ける。
「僕とつるむ前から、あいつはたった一人で
英雄として活動していたんだ。
あの頃から既に何処か達観していた様に見えてね。多分、
その時から肯定・否定の声を散々耳にしてきたんじゃないかな」
「そんな・・・」
「これはあくまで僕の憶測だよ?
今でこそ補助役を請け負っているけど、流石に
あいつの心理状態までは把握出来るワケじゃあないからね」
ロンドは不安そうな表情になるティアラの方を向き、苦笑いを
浮かべながら一旦話を区切った。
「確かに、我らがバトルナイトを疎ましく思う奴は
少なからず居るのが事実だ。
---けれども、今のあいつは決して一人じゃあない。
君も何か思うことがあるから、今ここにいるんじゃないかい?」
そう言われ、ティアラは昨日の事を思い出す。
別れ際に哀愁漂った雰囲気を彼の背中から感じられたあの時、
彼女は何とも言い表せない気持ちに突き動かされた。
そして気付けば閉館間際の冒険者組合へ駆け込み、
雷鳥の欠伸亭の求人に申し込んだ。
衝動に駆られた末の行動だったが、彼女の中に後悔はなかった。
「------はい!」
ロンドの問いかけに対し、少し間を開けてから
ティアラは力強く返事をした。
迷いを感じさせない、その晴れやかな笑顔を見たロンドは
「そうか!」と返して嬉しさを滲ませのだった。
「おーい、手続き終わったぞ。
・・・って二人ともどうしたんだ?」
受領印が押された依頼書二枚を持ってアルフが戻ってきた。
少し離れている間に打ち解けた雰囲気になった二人を見て、
アルフは疑問を投げかける。
「はっはっは、何でもないさ。ねー?」
「ねー♪」
顔を見合わせてやり取りする二人に戸惑うアルフ。
仲が良いのは悪くないが、何だか置いてけぼりになった気分だ。
「それより途中でもう一枚、依頼書を取ったよな?
ちょっと見せてもらえるかい?」
「おう、今日やる依頼のついでに丁度良いかと思ってな・・・」
ロンドはどれどれとメガネをかけ直し、もう一枚の
依頼内容を確認して納得した表情をする。
そしてニヤリと笑ってから可愛い後輩の方を向いてきた。
「喜べティアラちゃん!
今日は特別に僕達先輩が勉強を教えてあげよう!」
「・・・・・・はい?」
突然の勉強会開催に、ティアラは困惑気味に返事をしながら
首を傾げた。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる