守護者契約~自由な大賢者達

3・T・Orion

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12. 駄々をこねる

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国王との謁見の山場は越え、胡散臭いモノ達の…嘘臭い落とし処へと到達する。

「今後お互いにとっての…末永く続く良き未来の為、改めて協力するが良かろう」

国王からの下知が下る。
其れを受けた大臣達が周囲へ視線送り、補佐する者達が慌ただしく動き始める。

「次なる交流の実現に向け…改めて用意する心積もりではありましたが…今回、此方にいらしてるのも折角の機会であります。今日明日中に実務水準での国内での話し合いを致しますので、宜しければ参加だけでもして頂けると幸いです」

無言の指示出し場を取り仕切っていた大臣が、周辺で動いていた者より耳打ちを受けプラーデラ側に提案した内容。

「更なる有意義なお申し出、謹んで承ります。国王様よりの恩寵に基づくエリミアの地にて受ける多大なるご配慮に感謝申し上げます」

即答で申し出を受諾し感謝の言葉を述べるプラーデラ側。
エリミア側も同様に謝意を述べる。

「私共…エリミア辺境王国としても、貴国との話し合いの機会を持てたこと重畳であります」

騙す者と…騙される者…お互いの状況理解しつつ、和やかに場を閉じる。
仲介者であった第6王女は居ないも同然で話は進み…謁見は無事終了した。

相変わらずの無用の長物扱いを受けてはいたが、ある意味…エリミア国王と自身との遣り取りが然程無かったことに…フレイリアルは安堵する。
往古の機構の改修に対し…物申してくる大臣達に何度か謁見申し込まれる事はあったが、国王からの問い質しには未だ遭遇していなかったので警戒していた。
此の機会に余計な茶々を入れられても、厄介…と思ったからだ。

「面倒だし、このままズット関わらずにいられると良いんだけどなぁ…」

帰り道は1人賢者の塔へ戻る身となったフレイリアル。
小さく本音を呟くのであった。


賢者の塔、中央塔22層、青の間。
天空の間とも言われるぐらい空と一体化出来るような清々しき場。

肌に突き刺さるような濃い魔力が空間全体を支配し、其処に在るべきモノのみ快適に過ごせる特別な場所を作り出す。
それでも…塔と大賢者の繋がりが切れ、以前より…若干魔力濃度は落ちている状態。

その為…安全性を保つ意味でフレイリアルとリーシェライルが、大賢者の知識と力を駆使した防御結界陣を…力任せに幾重にも築き張り巡らせている。
其処は前とは違う形ではあるが、鉄壁の…難攻不落の要塞とでも呼べるような…頑健に作り上げられた場となっていた。

その自分達で仕上げた快適空間で深呼吸をすると、国王との謁見で受けた…実際の所はピオとの遣り取りで被った…精神的な損傷が少しだけ癒される気がした。

「おかえり、フレイ。お疲れ様!」

帰ってきたフレイリアルを、美しい暮れ時の空の様な薄青紫の色合い持つ…灰簾魔石の魔力を纏ったリーシェライルが…美麗な面に満面の笑み浮かべ熱烈に出迎える。
目の前に戻ったフレイを有無を言わさずギュッと抱きしめ、リーシェライルは腕の中に収めたフレイの頭上に…甘い口付けを嵐のように落とす。

"新婚家庭かっ!" …と突っ込みたくなるぐらい熱い思い捧げるリーシェライルを、当然のように…何も気にせず受け入れるフレイリアル。
2人だけの世界を築いているのは確かなのだが、相変わらず微妙な温度差が有る様にも見える。
現在…リーシェライルの外見は器として使うグレイシャムであり、フレイリアルに纏い付く見た目の色合いは…銀から金へと変わっていた。

其処に在るのは確かにリーシェライルなのだが、近くで見守ってきたニュールとしては…とてつもない違和感を感じる。
もっとも…本人達は全く気にする様子が無い。

魔物な心持ちでシラッとした表情保ちつつ、若干心配する思い…と…辟易…と言った微妙な思い混ざる視点で…2人を食傷気味に眺める。

「フレイ…、帰ってきたばかりなのにごめんね。まず儀式執り行う前に…1つだけ君に決めてもらわなくちゃいけないんだ」

一通り決まり事のような…濃いい挨拶が済んだ後、リーシェライルがフレイリアルにさらりと告げる。

「次の守護者の希望…誰か望む者は居る?」

フレイリアルにとって問われた内容は想定外、晴天の霹靂…と言う感じの質問だ。

「えっ? 次の守護者って…必要なの?」

驚きの表情で問い返す。
ニュールとの守護者契約の解除…には納得したが、新規の守護者を得る…と言う話をフレイリアルは考えたこともなかった。

「一応…なんだけどね、決めておいた方が良いとは思うんだ…」

「今後も、エリミア国王内で行動するのなら必要だと思うぞ。この国の決め事なんだろ? 下手に放置したら、国王に…決まりを根拠に揚げ足取られ…外へ出る事を禁止され拘束を受けるか…意に添わぬ者を守護者として押し付けられる可能性があるぞ」

リーシェライルの軽い返事に付け加えるように、生じる可能性のある不都合についてニュールが忠告する。

今まで2人の甘い空気感にさらされ…胸焼けしそうな気分味わいつつも、何とか耐えていたニュール。
隠蔽魔力行使するが如く必死に周囲に同化し…居ない振りする努力をしていた…が、居たたまれないような甘さから脱した…と判断したので復活し会話に加わった。

「契約しなくても守ってくれる人を側に置けば良いんじゃない? 必要なら騙しちゃえば良いんじゃない?」

誰の影響なのか…それとも成長したのか、さらりとフレイリアルらしからぬ悪いことを言う。

「承認を受けた守護者契約を持つか持たないかは、大地と契約した者には分かる」

「えっ?」

「大地と契約した正統なる王は、契約を判じる目を持つんだ。だから…偽ることは…出来ないぞ」

ニュールが大地との契約について説明する。

大地との契約で得られる、数少ない…4つ程しかないショボイ権能の1つである…承認の判別。
だが…分かるだけでコレと言った効果は無い、本当に単純に判別できるだけの効果。
今更ながら、散々振り回された割には利益の少ない契約だった。

「それなら、ニュールがそのまま続けてくれてた方が良いんじゃないの?」

フレイリアルが一度片付き…納得した内容を蒸し返す。
 
「オレが手にしてしまった責務を果たすには、お前さんの隣に始終ついてるのは難しいからな」

「私との守護者契約の方が先だったもん!」

小さい子供と同じように駄々をこねるフレイリアル。

「それに関しては…スマナイと思ってる。だからオレが出来る…最大限の助力や協力を、今後も惜しまないよ」

「この1の年だって離れたままだったけど大丈夫だったじゃない。いざと言うときに助けに来てくれれば問題ないよ!! それに守護者が居なくてもリーシェだって居るし、私だって強くなったよ」

必死に…ニュールを説得するように語りかけるフレイリアル。
以前、話し合った内容と同じ…堂々巡りに戻ってしまいそうだった。

「あぁ、そうだな。だが、今後も大丈夫かは分からない。本気で…この場所から抜け出そうとするのなら、近くで守る…本来の役目果たせる守護者を持つべきなんじゃないのか?」

ニュールは少し困った表情浮かべ、フレイリアルに言い聞かせる。

「だって…ニュールが良いよ…そのままだっていいじゃない…」

そのままでは先に進めないことを理解しつつ…子が親に擦り寄る様に…ただただ本能のように…甘えたかったのだ…。

ニュールが何だかんだと捨て置けず背負ってしまった立場。

頂点で導くべき者が壊れてしまった国の国王…とか、世界の恣意的不均衡を改めるために結んだ…上位者との理不尽な契約による管理者…とか、フレイリアルの守護者…とか、ピオにとって主君…とか。
事の大小に構わず…心動かされた事に手を差し伸べてしまう…と言うか、巻き込まれ背負わされてしまう…と言うか、癖とも…習性とも言えるような無意識の行動。

最早、本能…と言っても過言でない様なニュールの人の好さ。
魔物の冷酷な思考を受け入れても…大きく残る人としての心意気、ニュールの本質。

極限で差し伸べられた手ほど、救われた者として…離し難いものはない。
叶わぬ希望…と理解しつつも、フレイリアルは甘えた言葉を…ニュールの人の好さに向けて放ってみたのだった。

フレイリアルのエリミアでの活動…往古のモノから独立した機構の組み直しは、この1の年で7割方片付ていた。
この1の年近く…作業を続けていく中、フレイリアルは樹海の民に偏見を持ちにくい境界門周辺の人々と…少しずつではあるが交流を持つ。

時は要したが…徐々に先入観なく接してくれる者は増え、今ではエリミア国内にも…少しだけ拠り所となるような場所も…人も…持てるようになった。
それでも此の国は、フレイリアルにとって…箱に押し込められるような気分になる…可能性絶ち切られるような不愉快な場所。

『あと少しだけ機構の整備に携わって…皆が容易に扱えるようになれば、此の狭く…凝り固まった…息苦しさ感じる国から脱出できる』

エリミアからの脱出はフレイリアルにとって切実な願いであり、自由手にするための希望であった。
フレイリアルは不完全ながらも、自身の手で努力し…念願達成出来そうな所まで漕ぎつけたのだ。

だが新たな繋がりや希望を得ようとも、実績のある深い繋がりは…心の支えとなる。
ニュールとの守護者契約を解除したとしても、完全に繋がりが切れる訳ではない…。
十分に分かっていても不安になるのだ。

「フレイ…お前のこの1年の頑張りは知っている。周りには…しっかりとお前自身を見て、その上で協力してくれる者達ができたんじゃないか?」

魔物の心持ちであっても、守り育てる親の概念は存在する。
ニュールは…不安から来るフレイの甘えたい気持ちを見抜き、巣立つ直前の子供の安寧を願い…優しく語り掛ける存在となる。

「お前は、独立してやっていける力を十分に付けたと思うぞ」

フレイリアルも褒め称え安心させる…温かいニュールの言葉を受け取り、少しずつ心慰められていく。

「守護者候補としては、モーイかブルグドレフ辺りが身近な所では適任だと思うよ」

横にいたリーシェライルが、その称賛と慰めの交ざる… "親子の交歓" の様な…時の分かち合いを、さり気無く遮るようにして口を挟む。
明らかにリーシェライルの嫉妬混ざり込む行いであるが、ある意味微笑ましい。
苦笑い浮かべつつ、ニュールがリーシェライルの提案に便乗して助言を加える。

「…若しくは解任と同時の任命を先送りにして、新たに募集するか…だな。ただし其の場合、国王側から何らかの横槍を入れられる場合が有るだろうし、その動きがどうやら活発な様だ…。だから、出来たら直ぐに決めた方が良い」

そしてニュールはリーシェライルが入るグレイシャムの器に…チラリと視線を送り、フレイリアルに伝える。

「…あと、アルバシェル…も選択出来る者の1人だと思うぞ」

瞬間…本気の殺意含む視線が、リーシェライルからニュールに送られる。
其の視線の元となる…リーシェライルが入るグレイシャムの美しき金の輝き持つ表情は、一瞬で湧き上がった怨嗟により…見る間に歪んでいくのだった。
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