もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

426.貢いでWin-Win!

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 オーシャンさんだー、と喜んでいる僕を放置して、ルトがさっさと動き始めた。

「声の主が誰かなんてどうでもいい──ほれ、捧げるぞ」

 そう言ってルトが水霊魂アクアルーフを掲げると、それが一瞬で消えた。同時に、海の根源オーシアルーツがキラッと光る。

 ……変化はそれだけ。
 でも、ルトはちょっと驚いた顔をした後、満足そうに口元に笑みを浮かべた。

 どうしたんだろう?
 僕が首を傾げてルトを見ていると、リリが「捧げます!」と言う声が聞こえてきた。
 あっ、出遅れちゃった! 僕が一番最後かー。

 リリもルト同様に少し驚き、すぐに嬉しそうに微笑む。
 やっぱり捧げた後に何かあるんだろうな。
 よぉし、僕も捧げるよ。こういうのを推しに貢ぐ、っていうんだよね!

「オーシャンさん、僕が入手した水霊魂アクアルーフを捧げるからねー」

 アイテムボックスから取り出した水霊魂アクアルーフは五つ。
 ボス戦でゲットしたもの全部だよ。
 ルトとリリがそれを見て「はっ!? 数多くね!?」「え、いつの間にそんなにたくさん?」と驚いてた。

 ボス戦で水霊魂アクアルーフをたくさんゲットできたのは僕だけだったみたいだね。活躍度に応じて変わるのかな。

 まぁ、それはともかく。
 これ全部、推しのために捧げるよ。もふもふ教のみんなが僕にたくさん貢ぎたがる気持ちがよくわかるね! 推しに貢げるって、すっごく嬉しいもん。

 厳密にはリュウグウに捧げるだけで、微妙に推しに貢いでるのとは違うのかもしれないけど……推しからリアクションをもらえるなら同じようなものだよね!

「──どーぞ!」

 僕の腕の中から水霊魂アクアルーフが泡のように消える。
 同時に、海の根源オーシアルーツがキラキラッと輝いた。

『素晴らしき成果だ。よくやった。褒美を与えよう』

 またオーシャンさんの声だー! 褒められちゃったー! と、はしゃいだ直後に、アナウンスが聞こえてきた。

〈【海の根源オーシアルーツ】に【水霊魂アクアルーフ】を五つ捧げました。海の王オーシャンより、アイテム【海宝オーシャントレ(中)】が贈られます〉

—————— 
海宝オーシャントレ(中)】レア度☆☆☆☆☆  使用すると水中で地上同様に動けるようになる  水属性耐性が20%上がる  効果は一時間継続する
 ——————

 おお、いいアイテムだね!
 オーシャンさんありがとー。

「リリとルトも海宝オーシャントレ(中)をもらったの?」

 二人に尋ねると、頷きかけたルトがハッとした感じで止まり、僕に詰め寄ってきた。

「もらっ……てねぇよ! なんだよ、『中』って」
「え、ルトは違うの?」

 キョトンとする僕を、ルトが何か言いたげな顔で見下ろす。
 リリはのほほんと「私たちはたぶんどっちも『小』だよー。捧げた水霊魂アクアルーフの数の違いじゃないかな」と説明してくれた。
 なるほどー。そういう違いがあったのか。

 続けてルトとリリが説明してくれてわかったのは、中小では水属性耐性上昇率と継続時間が違うということ。
 海宝オーシャントレ(小)は『水属性耐性5%アップ、継続時間二十分』なんだって。随分と違いが大きいね。

「……水霊魂アクアルーフは数を溜めてから捧げた方がいいってことだな」
「そうだね。今度からそうしよう」

 二人が頷き合ってる。
 僕もたくさん集めて、またオーシャンさんに褒めてもらおうっと!
 ちょっと二人とは目的が違ってる気がするけど、モチベーションの高め方は人それぞれだからいいよね。

 僕たちがワイワイとはしゃいでいると、突然、キラキラと輝いていた海の根源オーシアルーツから空へと一筋の光が伸びた。

「えっ、何事!?」

 驚いてピョンッと跳ねちゃった僕とは違い、ルトとリリは落ち着いた感じで、光が伸びた先を眺めてる。

「お? なんかイベントか?」
「綺麗だねー」

〈リュウグウの結界が1%増強されました〉

 アナウンスが聞こえてきたけど……1%ってめっちゃ少なくない?
 結界が強まると、リュウグウが狭まるのが抑えられて、むしろ広がっていくのかと思ってたんだけど、こうやって見ていてもこれまでとの差がわからない。

 その後、あっさりと光が消えたのを見て、肩透かしを食らった気分になった。
 もうちょっと演出があってもよくない? さては、運営さん、手抜きしたな?

 思わずルトたちと顔を見合わせちゃう。
 ……オーシャンさんにご褒美もらえたんだから、それ以上を望むのは強欲だよね! そういうことにしておこう。

 グイッと伸びをして気分を切り替える。
 これから何しようかなー。今日はもうダンジョン攻略を再開するつもりはないし、はじまりの街に行って、第三陣のプレイヤーさんたちとお友だちになろうかな?

 ──なんてことを考えていると、煌めく何かが飛んでくるのに気づいた。

「なぁに、あれ?」
「あ? ……魚、か?」

 僕が指した先を見たルトが、パチパチと瞬きをしながら訝しげに呟く。
 確かに、シルエットは魚かも? でも、微妙に違うような?

「エイじゃない?」
「似てる!」

 リリの言葉に、僕は「それだ!」と応じる。
 大きな翼のようにヒレを動かして近づいてくる姿は悠然としていて貫禄がある。めっちゃデカい。

「……あれ、俺たちを目指してきてるよな?」
「そうっぽいね」

 ルトに応じながら全鑑定スキルを使った。

——————
聖海鷂魚セントレイルー
 水属性モンスター。『???』にテイムされている
 極めて希少な種族
 海エルフの王族の伝令役を担っている
 個体名:レイル
——————

 あ、海エルフのテイマーさんがテイムしてるモンスターだ!
 十体のテイムモンスターと出会おう、っていうミッションがあったんだよね。クリアしたらテイマーさんの正体を知ることができて、テイムの極意を教えてもらえるはず。

 出会ったのはこれで三体目だ。
 あと七体、どこで出会えるかなー?

 のほほんとそんなことを考えていたら、聖海鷂魚セントレイルーが僕たちの真上まで来ていた。
 首を傾げて見上げていると、ひらひらと白いものが三つ落ちてくる。
 それをキャッチする前に、聖海鷂魚セントレイルーはまた悠然と泳いで去ってしまった。

「……全然触れ合えなかった!」
「わざわざ触れ合う必要あるか?」

 嘆く僕にルトがそう応じながら、落ちてきたものを掴む。
 僕もしょんぼりしつつ拾うと、それは薄い紙のような貝殻だった。なんか文字みたいなものが書かれてる気がするけど、読めない!
 こういう時は鑑定だー。

——————
【海園遊会への招待状】レア度☆☆☆☆☆
 海エルフ王家が主催するパーティーへの招待状
 リュウグウに貢献した者に贈られる
 譲渡不可アイテム
——————

「あ、リオさんが言ってたやつだ!」

 海園遊会に行けたら、王族と知り合えて、水精術を学べるんだよね。
 水精術って、どういうスキルなんだろうなー。

「開催日は毎週末の午後、いつ参加してもいいみたいだな」

 詳細をチェックしたルトが、早速リリとスケジュールを話し合い始める。
 僕がチラチラッと二人を見ていたら、それに気づいたリリが「モモも一緒に行くでしょ?」と言ってくれた。

 答えはもちろん──

「行く!」
「んじゃ、今度の日曜でいいか?」
「いいよー。楽しみだね! 美味しいものがあるかなー?」

 またルトたちとお出かけする予定ができてウキウキです。
 予定の日まではマイペースに遊ぶぞ~。

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