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ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

435.推しがいる幸せ

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 ボス戦をクリアして現れた転移魔法陣を使って最初のセーフティエリアに戻り、そこから転移スキルを使ってリュウグウに帰還。

 街を歩いてると、なぜか僕を見て「もふもふ神さまご帰還~!」「ウォッチングできるー!」と歓喜の声を上げている人がたくさんいた。
 まるで僕が行方不明になってたみたいな扱いだね?

「んー?」

 首を傾げる僕の傍では、ルトが引き攣った顔で「相変わらずヤベェ連中だな……」と呟いてる。リリは「みんな楽しそうだねー」とニコニコだ。
 この二人の温度差が大きすぎる気がするのは僕だけかな。

「モモ、宮殿の方、転移ピン設定してるか?」
「してるよー。門衛さんがいるところ」

 ルトに尋ねられて答える。
 続けて「それがどうしたの?」と聞くと「そこに転移するぞ」と返された。

 そこまで大して遠くないし、道中で買い物とか楽しんでもいいと思うんだけど、ルトはさっさとリュウグウの外れにある『海の社』に行きたいらしい。

「じゃあ、転移しよっか」

 ルトってば、わがままだなー。もー、しょうがないなー。僕優しいから、ちゃんと聞いてあげるよ。
 そんな気持ちでルトを見ながら僕は頷いた。

「……俺が望んだことなのに、なんか、すげぇ納得できないものを感じる」

 ルトは嫌そうに顔を顰めた。リリがふふっと楽しそうに笑う。

 その反応はさておき。また転移するよー。
 マップから宮殿前の門を選んで──

「【転移】!」

 パッと景色が切り替わった。
 その直前に「えー!?」「どこ!? どこに転移するって話してた!?」という悲鳴のような声が聞こえた気がする。
 転移先、みんなにお知らせした方がよかった?

「おわっ!? ……あ、もふもふ神さま!」

 突然現れた僕を見て、魚人族の門衛さんがギョッとした後、嬉しそうに手を振った。
 僕も手をフリフリ。門衛さん、もふもふ教の人たちと同じ反応だなぁ。

「こんちゃー」
「こんちゃー、です。本日は宮殿にどのようなご用件ですか?」

 お決まりの挨拶をして「今日は宮殿に用があって来たわけじゃないんだー」と話し始める僕を、一拍遅れて転移してきたルトが半眼で見下ろした。
 リリは「相変わらず『こんちゃー』の普及率凄すぎ!」とケラケラと笑ってる。楽しそうでなにより。

「……モモ、世間話は後にして、さっさと行くぞ」
「あ、待ってよー」

 ルトが僕を置いて歩き始めた。
 慌てて門衛さんに「またねー」と挨拶して、ルトの後を追う。ルトってせっかちさんかな?

「絶対、あの門衛さんを通してもふもふ教にモモの居場所の情報が伝わるよね」

 リリが楽しそうにルトに話しかけると、ルトはゲッソリとした顔で肩を落とした。

「せっかく街で置き去りにしてきたのに、また追われるのは勘弁してくれ……」
「ふふ、ルトはそろそろ慣れたら?」
「無理。慣れちまったら、俺の中から何かが失われる気がする」
「なにそれー、あははっ」

 深刻そうな口調で言うルトに、リリは爆笑している。

 僕は何が何やらわからないよ。
 ルトは何に追われてたの? 慣れるって何に? 慣れたら何かが失われるってどういうこと?

 二人の足元をトテトテと少し早足で歩きながら、僕は「んん?」と首を傾げた。

「……まさか、ルトは、逃亡犯!?」

 思い当たった驚きの事実(?)に、僕はハッとして足を止める。
 でも、ルトは少しも止まらず歩き続けながら「バーカ。んなわけねぇだろ」と吐き捨てた。
 そっか、違うのか、よかったー。

「じゃあ、何に追われてるの?」
「追われてんのはお前だろ」
「???」
「その心底わからねぇって顔できるお前を、ちょっと尊敬するぜ……」

 僕がキョトンとしながら首を傾げたら、ルトは疲れたような顔でため息をついた。
 よくわかんないけど、お疲れさま?

 リリは僕たちの会話を楽しそうに微笑みながら見守ってた。口を挟む気はないらしい。リリが答えを教えてくれてもいいのに。

 そんな感じでにぎやかに話しながらポテポテと歩き続けていたら、貝殻や海藻などでできた林の奥にポッカリと開いた広場へと辿り着いた。

 その広場の中央には、白い珊瑚でできた小さな建物のようなものがある。扉が観音開きになってて、神社やお寺のような見た目だ。

「ここが海の社だな」

 ルトがもふもふ教の誰かから収集した情報を思い出しながら呟く。

「じゃあ、この中に海の根源オーシアルーツがあるの?」

 リュウグウのジオラマみたいだという海の根源オーシアルーツ、早く見てみたいな~。

 ウズウズと湧き上がる好奇心を抑えながらルトを見上げると、「わかってる」と肩をすくめられる。そして、ルトはすぐさま扉に手をかけ、開けてくれた。

 中にあるのは──

「ほんとにジオラマだ! ちょっとボトルシップとかスノードームに似てるね」

 透明な丸い容器の中に、リュウグウの街を模したものが入ってる。
 それはビックリするぐらい精緻な作りで、飛翔フライスキルで飛びながら、魅入られたようにじっと見つめちゃった。

 ルトとリリも、しばらく黙って海の根源オーシアルーツを眺めているから、きっと僕と同じ気持ちだと思う。
 これ、芸術品と言ってもいい出来だよね。

「……すげぇな。どうやって作ったんだろ」
「ね。昔の王様──海の王が作ったんでしょ? 映像で見た時は豪快なエルフさんだと思ったけど、繊細な感性を持っていたのかな」

 二人が口々にこぼす感想を聞きながら、僕はもっと近くで見たくなって、海の社の中に向かって飛んだ。
 するとすぐさまアナウンスが聞こえてくる。

〈【海の社】は立入禁止です〉

「えっ、ダメなの?」

 ちょっとしょんぼりしながらも停止しようとしていたら、頭がゴツンと壁のようなものにぶつかった。
 反射的に「いてて」と声が漏れる。

 何もないように見えたけど、海の社内外を遮るように透明な壁があるみたいだ。
 むぅ、絶対に入らせないぞって感じだね。

「モモ、不法侵入はダメだろ。捕まるぞ」
「僕、犯罪者にはならないもん!」

 ルトにからかわれて、プンプンと怒って見せる。「はいはい」と受け流されちゃったけど。

「これに水霊魂アクアルーフを捧げるんだよね?」

 リリは僕とルトのやり取りをスルーして、アイテムボックスから水霊魂アクアルーフを取り出した。
 そしてすぐに、ハッとした表情で固まる。

「どうしたの、リリ?」
「なんかマズイことあったか?」

 僕とルトは、リリの顔を覗き込んで尋ねる。
 リリは「えっと……二人も水霊魂アクアルーフを取り出してみて!」と言いながら僕たちをパタパタと叩いた。

 何事?
 ルトと顔を見合わせても答えは出ず、とりあえず言われた通りに水霊魂アクアルーフを取り出す。
 途端に、不思議な声が聞こえてきた。

『海で生きる者よ。愛する者たちのために水の魂を捧げよ』

 厳かな雰囲気の声。
 これはもしかして──

「……海の王オーシャンさんの声!?」

 推しに話しかけられちゃったー♡

 一気にテンションを上げた僕を、ルトがなんとも言えない表情で見下ろした。
 ちょっと引かれてる気がするけど、推しに話しかけられて嬉しいから、そんなの気にならないもんね!

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