もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
475 / 661
11章 夏の海ではしゃいじゃお

437.はじまりの街にて

 またダンジョンに挑むというルトたちと別れて、はじまりの街に転移!
 着いたのは西の港なんだけど……

「およ? すごく殺伐としてるね?」

 西の港(船着き場)と街の境目にバリケードが築かれてる。
 そこにはたくさんの冒険者がいて、海の方に厳しい視線を向けていた。たまに魔術や矢を放ってる人もいる。

「……あ、そっか。これ、シーズンイベントか」

 ちょっと考えてから、近くの異世界の住人NPCの冒険者たちが話していることを聞いて納得した。
 夏の時期はモンスターが海から押し寄せてくるのが恒例なんだって。
 だから、殺伐とした雰囲気だけど、わりと落ち着いて対処してるんだね。慣れてる感じ。

 その光景を眺めていたら、見慣れた姿がいることに気づいた。
 レナードさんとランドさんだ! 僕の錬金術の師匠と、馴染みの薬屋さんの店主。
 海の方を眺めて、何か話し合ってる。

 僕が向けた視線に気づいたのか、二人が振り返った。僕を見て目を丸くしてる。
 とりあえず「やっほー」と手を振って近づいてみた。

「ここで何してるのー?」
「……アイテムの不足がないか確認しに来たついでに、戦況の把握をしてるんだよ」
「俺は薬の納品に来たらコイツがいたから情報交換してたのさ」

 レナードさんが「お前こそ何してるんだ?」って言いたげな目をしてるのをスルーする。
 僕はただ転移してきたらばったりこの場面に遭遇しただけです。

 ランドさんは「アリスは子猫と散歩中だぞー。たまには会ってやってくれ」と笑っていた。
 もちろん、今度会いに行くね! また一緒にシークレットエリア散策とかしたいなぁ。

「錬金術はちゃんと使ってるのか?」
「ぎくっ……商品作りとか、がんばってるよー」

 レナードさんに言われて、ちょっと目を逸らしながら答える。
 えへへ、修行はサボってるかも。新レシピのアイテムとか、ちゃんと作って錬金術もがんばらないとなーとは思ってるんだけどね? したいことが多すぎて時間が足りないんだよぉ。

「はぁ……困ったことがあったら、聞きに来い」

 頭をポンッと叩かれた。
 叱られなくてよかったー。ちょっぴり呆れられた気がするけど、レナードさんは優しいから僕を見放さないはず!

 ランドさんはそんなレナードさんを見てククッと押し殺した笑い声をこぼす。
 なんか面白いことあった?

「ちゃんと師匠してるんだな、レナード」
「うるさい。お節介焼きのお前に言われたくない」
「俺、お節介焼きと言われるほどか?」

 レナードさんが鬱陶しそうにランドさんを見て、肩をバシッと叩く。
 ランドさんは不思議そうに首を傾げていた。
 この二人が揃ってるところ、初めて見たかも。想像以上に仲いいんだねー。

「ランドさんに色々教えてもらえて、僕はすごく助かってるよ! お節介ばんざい!」

 両手を上げて僕はニコニコと笑う。
 薬に関する情報をもらえるから、本当にランドさんにはお世話になってるもんね。レナードさんを紹介してくれたのもランドさんだし。

「そりゃ、どうも。それより、モモはここにいていいのか? 長くここに留まると、冒険者ギルドの職員に見つかって、海岸線防衛に駆り出されるぞ」
「そうなの!?」

 ランドさんが笑いながら教えてくれた情報にギョッとする。
 海岸線防衛って、強制力あるんだ? 参加するのが嫌なわけじゃないけど、今は別のことしたいなぁ。

「──じゃあ、僕、用があるから行くね!」

 ビシッと敬礼して告げる。
 用という用があるわけじゃないけど、嘘も方便ってことで。

 ランドさんとレナードさんは僕の考えなんてあっさり見抜いた様子だったけど、軽く頷いて「じゃーなー」「暇な時は工房に来るといい」と僕を見送ってくれた。

 ばいばーい、と二人に手を振って、僕は東の草原の方へ歩き始める。
 第三陣のプレイヤーさんはきっとそこに集まってると思うんだよねぇ。希少種の人たちと会えたらいいな♪

 でも、ルンルンと弾んだ足取りは、すぐにピタリと止まることになった。
 突然アナウンスが聞こえてきたんだ。

〈アイテムボックス内の【海獣の卵】が孵りそうです。確認しましょう〉

 え、ほんとに!? ついに孵るんだ。どんな子かなー。
 ワクワクしながら道の端に寄り、アイテムボックスから海獣の卵を取り出す。

「あ、殻にヒビが入ってる!」
「モモ、どうしたんだ?」

 歩き出したかと思えば、すぐに立ち止まって変な行動をしている僕を不審に思ったのか、ランドさんとレナードさんが近づいてきた。
 冒険者の集まりからはちょっと離れてるから、ここなら話していても大丈夫かな?

「モンスターの卵が孵りそうなんだー」

 上から覗き込んできたランドさんに答え、卵を見せた。
 二人とも驚いた表情になる。

「珍しいもん持ってるな?」
「これは……水属性の卵だな。ここで孵るのは不都合があるだろう。海……は、今はよくないか」

 レナードさんが卵を観察した後、海の方に視線を向けて眉を顰めた。
 その言葉を聞いて、僕はハッとする。

 そっか、水中でしか生きられないモンスターが生まれたら、ここじゃダメだよね。でも、海はシーズンイベント中で襲われてるし……どうしよう?

 むむぅ、と悩む僕を見下ろし、レナードさんが肩をすくめる。

「念の為、水槽が必要だろうな。それなら──」
「水槽? あ、それなら、僕【海の水槽】を持ってるよ!」

 リュウグウの店で購入したアイテムを思い出した。
 海水で満たされたモンスター空間で、テイムモンスターを入れられるんだ。これなら水棲のモンスターでも大丈夫なはず──と僕がホッとしたのも束の間。
 レナードさんが首を横に振ったのを見て、固まっちゃった。

「海の水槽はテイムしたモンスターを入れるものだ。生まれてから中に入れられるまでに時間がかかる。多少陸地に適応できるモンスターが生まれるなら問題ないが、完全水棲のモンスターだった場合、生まれてすぐにダメージを与えることになるぞ」
「えっ……それはダメ!」

 反射的にブンブンと首を振って答える。
 生まれたばかりの子を傷つけちゃうなんて、絶対やだ!

「へぇ、水属性の卵って大変なんだな」
「卵を保有すること自体が珍しいから、こういう悩みを持つことも滅多にないんだがな」

 物珍しげに卵を眺めているランドさんにレナードさんが答え、僕に視線を戻す。そして「工房に行こう」と提案してくれた。

「工房に?」

 きょとんと首を傾げる僕を見て、レナードさんが小さく笑う。

「【簡易水槽】がある。それを使えば、ダメージを負わせることなく、モンスターを誕生させることができるぞ」
「ほんとに!? 行く行くー! レナードさん、急いでー!」

 一気に悩み解決! そうとなったら早く行かなくちゃ。
 卵を一旦アイテムボックスにしまって、飛びながらレナードさんの背中を押して進む。

 生まれる環境を整えるまで、もうちょっと待っててね、卵ちゃん!

感想 3,053

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜

グリゴリ
ファンタジー
 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

死にたくないので、今世は「悪女」の看板を下ろして「聖女」の利権を奪い尽くします

あめとおと
恋愛
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」 公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。 どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。 すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。 十度目の十六歳。 累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。 「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」 ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、 ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、 王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。 「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」 冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。 そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。 彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。 「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」 これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。 【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】