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ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

440.お手伝い前の用意だよ

 まずはラッタンを喚ばなくちゃ。

「【召喚】ラッタン!」
「らぴゅ」

 パッと現れたラッタンは、周りを見回してから僕に視線を戻して、ちょこんと頭を傾ける。『なぁに~?』って感じだ。
 まだ言葉が伝わってこないのは、友好度が高くないから? 早くおしゃべりできるようになりたいなぁ。

「ラッタン、一緒に錬金術でアイテム作りしようね~」
「らぴゅぴゅ?」

 ラッタンはさらに頭を傾けながら鳴く。
 全然理解してくれてない気がする。これ、ほんとに一緒に作業できるのかな?

「ラッタン用の錬金術の道具はあるのか?」

 レナードさんに聞かれて固まる。
 そういえば、錬金術って錬金布と錬金玉が必須なんだった!

 僕は今四角形が描かれた錬金布を使ってる。それよりワンランク下の、僕が前に使ってた錬金布は余ってるから、これをラッタンに使わせるとして──

「んー、まずは錬金玉作りをしないと」
「材料は持ってるのか?」
「えっとー……ある!」

 アイテムボックスを探って【石炭】と【水魔石】を取り出す。
 石炭は第三の街・東の鉱山ダンジョンで採れるし、みんながお店の買取に出してくれるから、結構豊富にある。水魔石は海中窟ダンジョンの敵を倒して、たくさんドロップしたんだよー。

「じゃあ、サクッと作ってくれ」

 レナードさんはそう指示を出すだけで、傍観の構えだ。
 錬金玉を作るのはこれで二度目だもんね。
 一番最初に錬金術を使った時に、錬金玉を作ったのが懐かしいなぁ。あの時もレナードさんの前で作ったんだよね。

「もちろんだよ。僕の成長を見てね!」

 初心者の頃の僕を知ってるから、レナードさんは微笑ましげな目をして頷いた。
 師匠にいいところを見せるぞー!

 錬金布の上に石炭と水魔石を載せて、錬金玉をタッチ。
 僕の作業を、ラッタンは興味津々な眼差しで見守ってる──と思ったら、水魔石に手を伸ばして取ろうとしてる!

「ラッタン、だめー! それは今から使うんだよ!」
「……らぴゅ?」

 ウルウルと潤んだ目で、ラッタンが『ダメなのぉ?』と訴えてくる。
 僕は思わず「ウッ」と声が漏れた。

 その可愛さ、卑怯だよ……あげたくなっちゃうじゃん。
 アイテムボックスを開いて、水魔石の在庫数を確認。一個くらいならいいかぁ。

「しょうがないなぁ。これだけだよ?」

 取り出した水魔石を渡すと、ラッタンがキラキラと目を輝かせて両手で受け取った。

「らぴゅ(ありがとぉ)」

 ニコッと目を細めて笑うラッタン、可愛い!
 言葉も聞こえてきたよ。水魔石をあげて友好度が上がったのかな。……思ったよりチョロい。

 水魔石をどうするのかなー、と見守っていたら、ラッタンはパクッと口に放り込んだ。
 デ・ジャ・ヴ! ポカーンとしちゃう。

 ラッタンは見かけによらず食いしん坊?
 ……僕のテイムモンスターらしいね! 今度、手作りのご飯をあげよーっと。水魔石より絶対美味しいよ。

「らぴゅ(【頬張る】よぉ)」

 あ、スキル使ってる。
 確か、食べたものによってなんらかの効果が生じるんだよね。わりと謎が多いスキルだ。

 ラッタンは水魔石を飴玉のように口の中で転がす。
 交互に膨らむ頬を両手で押さえている仕草がかわいい。自分でほっぺたをムニムニ揉んでるみたいに見える。

「らぴゅ(なんかできたぁ)」
「なんかできた???」

 謎のコメントと共に、ラッタンが脇にズボッと手を突っ込む。
 え、どういうこと?
 僕がキョトンとしてると、ラッタンは異次元ポケットから取り出したものを『はい』と渡してきた。

「らぴゅ(お返し、あげるぅ)」
「ありがと、う?」

 戸惑いのあまり声を途切らせちゃったけど、ちゃんとお礼を言って受け取る。
 ラッタンがくれたのは、雲みたいな白いモヤが閉じ込められた青色の丸玉だった。見たことないアイテムだ。鑑定しよっと。

——————
【嵐魔石】レア度☆☆☆☆☆
 嵐属性の魔石
——————

 嵐魔石!? そんなのがあるんだ!?
 ギョッと固まる僕を見て、ラッタンがコテッと首を傾げた。

「らぴゅ(それ使ぅ?)」
「つ、使う、かな……ちょっともったいない気もするけど……」

 悩むー!
 でも、水魔石をあげて、超レアな嵐魔石で返ってきたのって、錬金玉作りに使えっていう啓示だよね、きっと。
 他のアイテムにも使えそうだからちょっと惜しくなるけど、ラッタンのために使うのがいいはず。

「よしっ、これで!」

 水魔石の代わりに嵐魔石を載せて、錬金玉作りの素材にする。
 錬金玉にタッチしてレシピ検索をすると──

——————
青嵐セイランの錬金玉】レア度☆☆☆☆☆
 澄んだ風の魔力が秘められた錬金玉
 使用すると、作製したアイテムの品質が上がりやすくなる
〈レシピ〉
 【木炭、あるいは石炭】+【嵐魔石】
——————

 特殊な錬金玉レシピがあるー!
 え、すごいね。アイテムの品質が上がるのは嬉しい効果だよ。僕が持ってる錬金玉にも特殊効果が付いてるし、お揃いだ。
 これを作らないなんてありえない。

「じゃあ、【錬金スタート】!」

 ルンルンと唱えると、光る煙が錬金布の周囲を渦巻く。
 見慣れてる錬金術の演出だけど、一瞬煙に紛れて龍のような影が見えた気がして、僕は目を瞬いた。

「あれ? 見間違いかな?」
「……また、レア度が高い錬金玉を作ったな」

 キョトンとしてる僕をスルーして、レナードさんが完成した錬金玉を見下ろし、疲れた声で呟く。

 青嵐セイランの錬金玉は、透明感のある薄青色で、時々その周りを白い雲のようなものがふわっと流れる、不思議な玉だった。綺麗だねぇ。

「ひゅー、さすがモモ」
「うるさいぞ、ランド」

 楽しそうにケラケラと笑うランドをジトッと睨みながら咎めたレナードさんは、改めて錬金玉とラッタンを見比べて肩をすくめた。

「──まあ、そいつには合ってるな」
「でしょー。嵐属性持ちのラッタンに相応しい錬金玉! もっと褒めてくれていいんだよ、師匠?」

 ニコニコと笑いながらレナードさんを見上げる。
 龍はたぶん見間違いでしょ、ということで忘れることにした。
 だって、もし本当に龍の影があったんだとしても理由がわからないし、だからなんだって感じだもん。

「いい出来だな」

 レナードさんが小さく笑いながら僕の頭を撫でる。
 ちょっぴり慣れてない感じの撫で方がレナードさんらしいなー。むふふ、レナードさんに撫でてもらうの好き!

「ありがとー。いいものができて僕も嬉しい」

 ルンルンとしながら、できたばかりの錬金玉を持ち、ラッタンに差し出す。
 すると──

「らぴゅ(食べるぅ?)」
「食べちゃダメ!」

 あー、と口を開けたラッタンから、慌てて錬金玉を遠ざけた。
 この子、食欲旺盛すぎないかな!?

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