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11章 夏の海ではしゃいじゃお
455.みんなでわちゃわちゃ
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あまり喜ばれていないと察したのか、ぷる君がしょぼんとした感じでヤナから離れた。
「一発芸、不発しちゃいましたね」
「こういうことはよくあるから、一々落ち込んじゃダメ。失敗を繰り返しながら挑戦を続けることで、一流のエンターテイナーになれるんだから!」
「なるほど! さすがヤナさん!」
サムズアップして、仕事ができる職人のようにキリッとした表情で教えるヤナに、ぷる君が目を輝かせて追従する。
ヤナの言葉は、何を目指したアドバイスなんだろう? 会わせちゃいけない二人が揃っちゃった気がするなぁ。
「……ぷる君が完全に毒されちゃう前に、引き離すべき?」
ボソッと呟いたところで、頭に軽い衝撃があった。
ルトが僕の頭に手を置きながら呆れた顔でヤナとぷる君を見てる。
「時すでに遅しじゃね?」
「やっぱり? ──というか、ルトも来てたんだ?」
こういう集まりには不参加かと思ってた。
意外な気がして尋ねたら、「タダ飯」という言葉が返ってくる。
なるほど、それなら納得できる。今のルトはそれなりにお金を持ってそうだけど、ゲームを始めた当初の節制生活の感覚は抜けきらないよね。
「私もいるよー」
「知ってるー。むしろ、ルトがいて、リリがいない方がビックリだもん」
「そう? ……そうかも」
ふふ、と笑うリリと「やほー」と手を振り合う。
この二人とは一緒にダンジョン攻略したばかりだから、挨拶も軽い感じだ。
「ここで希少種会を開催すんのか?」
ルトがバター醤油で香ばしく焼かれたイカを食べながら、ムギたちがいる方を指す。
ムギたち三人は、僕と挨拶した後に近くのバーベキューコンロを使って浜焼きを楽しんでいるようだ。
「そういう予定ではなかったけど、いいかもね」
ついでに、ツッキーに進化について聞こうっと。
あ、希少種会をするなら、リコも呼ぼう。
そう思い立って、リコの方を見たら、ヒスイに口の中を覗き込まれて困惑した表情で固まっていた。なんでそんな状態になったの?
「ああ、あーあああ、あーあ?(これ、どーしたら、いいの?)」
「にゃ(ヒスイのイカ、どこ行ったにゃ……)」
「リコが横取りしちゃってごめんね、ヒスイちゃん。この子は私がしっかり叱っておくから! ほら、イカボールならまだあるよ」
しょんぼりとした様子のヒスイを、ナディアが必死に宥めてる。
どうやら、リコがヒスイの分のイカ料理を食べちゃったみたいだ。……いや、ほんとにヒスイの分だったかはわからないな。勝手に自分のもの扱いしてた可能性は十分ある。
「ヒスイー、そのままそこにいたら、ワンちゃんに食べられちゃうよー」
苦笑しながら注意したら、ヒスイがハッとした表情でリコの牙を見つめた。
リコは大きなワンコだから、口が大きくてヒスイをパクッと一呑みにできちゃいそうなんだよね。そうならないとわかっていても、見ていてちょっとハラハラする。
「にゃ(ヒスイは美味しくないにゃー!)」
勢いよくバッと飛び退いたヒスイを、リコがなんとも言えない顔で見つめながら口を閉じた。
「食べるわけないじゃん……そりゃ、食べちゃいたいくらい可愛いけどさ」
おっと? リコはヤバい子?
ドン引きしてるヒスイを僕が庇う前に、ナディアがリコの胸元の毛を掴みガンをつけた。
「あぁん? 誰が食べちゃいたい、だなんて世迷言を言ってんだ?」
「ちょ、ナディア、キャラ捨てちゃってるから! 被ってた大きなニャンコが脱走してる!」
こわっ!? ナディアってそういうキャラだったの?
リコは慣れた感じで宥めてるし、これがナディアの素の可能性が高いね……。
僕がポカンと口を開けて驚いていると、ナディアが周囲の視線に気づき、リコからパッと手を離してニコッと微笑んだ。
一瞬でお淑やかそうな雰囲気に切り替わったけど、むしろその変貌具合がナディアの素とのギャップを際立たせてるよ。
「ごめんなさいね。ニャンコの話題になるとつい……ふふふ」
「お猫様を守るためならしかたないよ」
「そうそう。食べちゃいたいなんて、思ってても言っちゃダメよ」
ナディアの言葉に、もふもふ教の一部が賛同する。
そっかぁ……こういうニャンコ好きがもふもふ教の信徒に一定数含まれてるのかぁ。
「ヒスイーこっちおいでー」
ちょっとおっかないからねー、とヒスイを呼び寄せたら、脱兎の勢いで駆けてきた。
ヒスイもちょっと危機感を抱いてたんだろうな。ヒスイの害になることはしないはずだから大丈夫だよ、きっと──とヒスイを撫でて宥めた。
ニャンコのもふもふ毛は柔らかくて、振る舞いは愛嬌たっぷりだし、虜になっちゃうナディアたちの気持ちもわからなくないんだよなぁ。もちろん、僕はナディアほどの熱量を持たないけどね!
「ナディアがごめんなさーい」
「気にしないでー。僕の方こそ、ヒスイが迷惑かけちゃったみたいでごめんねー」
リコが近づいてきて謝罪したから、口を覗き込んでいたヒスイの振る舞いを飼い主として謝罪しておいた。リコは「ちょっと困っただけで、謝られることじゃないです!」と笑ってる。
時々、尊い病を発症することはともかく、リコはサッパリした性格で付き合いやすいかも? 意外とナディアの方がクセがある?
──なんて一瞬考えたけど、突然『ぴえん五段活用!』なんて言い出すリコも、だいぶクセが強いな、と思い直した。
つまり、ナディアとリコはどっちもどっち。クセ強仲間ってことだ。
まあ、そんなことはさておき。
リコが来てくれたし、そろそろ新・希少種会を始めちゃおう。
いろんな情報交換をできるといいな♪
「一発芸、不発しちゃいましたね」
「こういうことはよくあるから、一々落ち込んじゃダメ。失敗を繰り返しながら挑戦を続けることで、一流のエンターテイナーになれるんだから!」
「なるほど! さすがヤナさん!」
サムズアップして、仕事ができる職人のようにキリッとした表情で教えるヤナに、ぷる君が目を輝かせて追従する。
ヤナの言葉は、何を目指したアドバイスなんだろう? 会わせちゃいけない二人が揃っちゃった気がするなぁ。
「……ぷる君が完全に毒されちゃう前に、引き離すべき?」
ボソッと呟いたところで、頭に軽い衝撃があった。
ルトが僕の頭に手を置きながら呆れた顔でヤナとぷる君を見てる。
「時すでに遅しじゃね?」
「やっぱり? ──というか、ルトも来てたんだ?」
こういう集まりには不参加かと思ってた。
意外な気がして尋ねたら、「タダ飯」という言葉が返ってくる。
なるほど、それなら納得できる。今のルトはそれなりにお金を持ってそうだけど、ゲームを始めた当初の節制生活の感覚は抜けきらないよね。
「私もいるよー」
「知ってるー。むしろ、ルトがいて、リリがいない方がビックリだもん」
「そう? ……そうかも」
ふふ、と笑うリリと「やほー」と手を振り合う。
この二人とは一緒にダンジョン攻略したばかりだから、挨拶も軽い感じだ。
「ここで希少種会を開催すんのか?」
ルトがバター醤油で香ばしく焼かれたイカを食べながら、ムギたちがいる方を指す。
ムギたち三人は、僕と挨拶した後に近くのバーベキューコンロを使って浜焼きを楽しんでいるようだ。
「そういう予定ではなかったけど、いいかもね」
ついでに、ツッキーに進化について聞こうっと。
あ、希少種会をするなら、リコも呼ぼう。
そう思い立って、リコの方を見たら、ヒスイに口の中を覗き込まれて困惑した表情で固まっていた。なんでそんな状態になったの?
「ああ、あーあああ、あーあ?(これ、どーしたら、いいの?)」
「にゃ(ヒスイのイカ、どこ行ったにゃ……)」
「リコが横取りしちゃってごめんね、ヒスイちゃん。この子は私がしっかり叱っておくから! ほら、イカボールならまだあるよ」
しょんぼりとした様子のヒスイを、ナディアが必死に宥めてる。
どうやら、リコがヒスイの分のイカ料理を食べちゃったみたいだ。……いや、ほんとにヒスイの分だったかはわからないな。勝手に自分のもの扱いしてた可能性は十分ある。
「ヒスイー、そのままそこにいたら、ワンちゃんに食べられちゃうよー」
苦笑しながら注意したら、ヒスイがハッとした表情でリコの牙を見つめた。
リコは大きなワンコだから、口が大きくてヒスイをパクッと一呑みにできちゃいそうなんだよね。そうならないとわかっていても、見ていてちょっとハラハラする。
「にゃ(ヒスイは美味しくないにゃー!)」
勢いよくバッと飛び退いたヒスイを、リコがなんとも言えない顔で見つめながら口を閉じた。
「食べるわけないじゃん……そりゃ、食べちゃいたいくらい可愛いけどさ」
おっと? リコはヤバい子?
ドン引きしてるヒスイを僕が庇う前に、ナディアがリコの胸元の毛を掴みガンをつけた。
「あぁん? 誰が食べちゃいたい、だなんて世迷言を言ってんだ?」
「ちょ、ナディア、キャラ捨てちゃってるから! 被ってた大きなニャンコが脱走してる!」
こわっ!? ナディアってそういうキャラだったの?
リコは慣れた感じで宥めてるし、これがナディアの素の可能性が高いね……。
僕がポカンと口を開けて驚いていると、ナディアが周囲の視線に気づき、リコからパッと手を離してニコッと微笑んだ。
一瞬でお淑やかそうな雰囲気に切り替わったけど、むしろその変貌具合がナディアの素とのギャップを際立たせてるよ。
「ごめんなさいね。ニャンコの話題になるとつい……ふふふ」
「お猫様を守るためならしかたないよ」
「そうそう。食べちゃいたいなんて、思ってても言っちゃダメよ」
ナディアの言葉に、もふもふ教の一部が賛同する。
そっかぁ……こういうニャンコ好きがもふもふ教の信徒に一定数含まれてるのかぁ。
「ヒスイーこっちおいでー」
ちょっとおっかないからねー、とヒスイを呼び寄せたら、脱兎の勢いで駆けてきた。
ヒスイもちょっと危機感を抱いてたんだろうな。ヒスイの害になることはしないはずだから大丈夫だよ、きっと──とヒスイを撫でて宥めた。
ニャンコのもふもふ毛は柔らかくて、振る舞いは愛嬌たっぷりだし、虜になっちゃうナディアたちの気持ちもわからなくないんだよなぁ。もちろん、僕はナディアほどの熱量を持たないけどね!
「ナディアがごめんなさーい」
「気にしないでー。僕の方こそ、ヒスイが迷惑かけちゃったみたいでごめんねー」
リコが近づいてきて謝罪したから、口を覗き込んでいたヒスイの振る舞いを飼い主として謝罪しておいた。リコは「ちょっと困っただけで、謝られることじゃないです!」と笑ってる。
時々、尊い病を発症することはともかく、リコはサッパリした性格で付き合いやすいかも? 意外とナディアの方がクセがある?
──なんて一瞬考えたけど、突然『ぴえん五段活用!』なんて言い出すリコも、だいぶクセが強いな、と思い直した。
つまり、ナディアとリコはどっちもどっち。クセ強仲間ってことだ。
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