もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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11章 夏の海ではしゃいじゃお

454.揃い踏み!

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 ナディアに海鮮パーティーの準備を手伝ってもらっていたら、続々と参加者が増えてきた。
 ……うん、砂浜が人で埋め尽くされる勢いだね。

 ちょっぴり人の多さに戸惑ったけど、料理を手伝ってくれる人も増えたから、あっという間にパーティーを開始できる状況になったよ。

 ぷる君やスラリンたちの漁の成果に加えて、参加する人たちもたくさん食材を持ち込んでくれたし、足りなくなることはなさそう。

 なんといっても、ヒスイがイカ好きって情報が広まってるのか、イカ料理が大量にできてて、ヒスイやラッタンにとって天国みたいな状態になってる。
 もちろんヒスイを召喚したよ。

 でも、海賊烏賊パイレイカがたくさんあると、『これ、海賊狩りが起きてる……?』って戦々恐々としちゃうよね。

 海賊さん、逃げてー!
 ──まあ、これは冗談だけど。

「浜焼き始めるよー。好きなものを取って焼いてね!」

 パーティー会場になった浜の中央にできた、櫓のようなお立ち台から宣言する。
 ぷる君の案内を終えて戻ってきたタマモに、「パーティー開始の宣言は、ぜひモモさんにお願いしたいです!」って頼まれたんだ。

「きゃあっ、もふもふ神さま、かわゆいー!」
「もふもふは正義!」
「モモさんは神!」

 みんなが色とりどりのうちわを振って叫ぶ。そこには『I♡もふもふ神さま』とか『ウィンクして♡』とか『もふもふは正義☆』とか『目指せ、もふもふ教世界征服!』とか、いろんな言葉が書かれてた。
 文字が書かれてる面の裏側は、僕のイラストなんだってー。

 ……誰が広めた文化か、なんとなく心当たりがあるぞ。
 その心当たりであるタマモも、当然うちわを持ってた。そこには『もふもふ命(*`・ω・´)』と書かれてる。
 何パターンのうちわを持ってるの?

 そんな疑問はともかく。
 僕はきゃあきゃあと歓声を浴びながらお立ち台からおりて、ラッタンたちが囲んでいるバーベキューコンロに向かう。

「ラッタンちゃん、タコ焼きのイカバージョン食べる?」
「らぴゅ(食べるぅ♪)」
「ヒスイにゃん、スルメはどう?」
「にゃ(うまうまにゃあ♪)」
「ペタっち、タコとキュウリの酢の物あるよ!」
「くるる(美味しそうだねー)」
「スラリン、スライムの形に似せた煮凝り食べない?」
「きゅぃ(どうして似せようと思ったの? 美味しそうだけど)」

 みんながモテモテだった。周りにいるもふもふ教の人が、蕩けるような顔で次々にご飯を渡してる。

 まあそうなるよねー。
 僕も「これどうぞ!」「私のオススメ食べてください!」ってたくさん渡されてるし。

 どれも外れなく美味しいから幸せだし、渡してくれるみんなもニコニコ笑って嬉しそうだし、Win-Winだね。

「くぅ! 浜焼きしながら飲むビール、最高!」
「オヤジみたいなこと言ってるよ、リコ」

 声が聞こえた方を見ると、リコが両手で抱えたジョッキでビールを飲んでた。尻尾をビタンビタンと振って幸せいっぱいな感じ。
 それにツッコミを入れたナディアは、水のような飲み物──お猪口に入ってるし、たぶん日本酒──を飲みながら呆れた顔をしてる。

 二人とも成人してるのかー。
 お酒飲めるの羨ましいな。

 ナディアはイカの燻製を齧りながら日本酒を飲んでて、そっちの方がオヤジっぽくない気がする、ってちょっと思ったけど。

「にゃ(あっちからいい匂いするにゃ~)」

 僕の傍をヒスイが駆けていく。向かう先にいたのはナディアだ。

「え……え!? 急に推しが目の前に……! はわわ……!」
「ナディアが限界オタクみたいになってるー。チョーうける」

 固まるナディアをリコが尻尾でツンツンとつつく。器用な使い方をするね。僕は自分の尻尾をそんな風に動かせないよ。

 自分の尻尾を見ようとした結果、僕はくるっと回っちゃった。
 ……見えない。僕の尻尾は小さいんだよぉ。

「モモさんがかわゆいことしてる……!」

 はわわ、と至福の笑みを浮かべて言葉を失う人が続出。その筆頭はもちろんタマモだ。
 みんな可愛いって思う基準が低すぎない? 僕的には、ちょっと馬鹿っぽい仕草だったと思うんだけど。

「にゃ(うまうまにゃあ♡)」
「はわわ……!」
「ナディア、さっきからそれしか言ってないよ。それと、ツマミを全部取られてるけどいいの?」

 ヒスイはナディアたちと交流を楽しんでるみたいだねー。
 別名:イカ料理奪取、とも言えなくもないけど……ナディアが幸せそうだから、注意する必要はないでしょ。

 ──そんな感じで、僕も浜焼きや他の人が作った料理を食べて楽しんでたら、不意に声をかけられた。

「モモ、久しぶりにゃー」
「あ、ムギ! それと、ソウタとツッキーも。久しぶりー」
「お久しぶりです!」
「おひさー。モモは相変わらず小さくて可愛いな!」

 希少種会のメンバーが集まった。
 リリに見せてもらった写真そのままに、ツッキーは体格が大きくなって、輝きが増してる気がする。

 久しぶりに集まれて嬉しいなぁ。でも、ヤナがいない。今日は来てないのかな?
 僕がちょっと首を傾げたところで、違う方から人混みを掻き分けて近づいてくる気配がした。

「ホネホネは焼いても食べられませんホネ~」
「そもそもアタイはアンタを食べるつもりないよ」
「僕はホネがないから、ちょっとヤナさんが羨ましいです」

 猫系の希少種さんの上にぷる君が乗っていて、ヤナと三人で話してる。
 不思議な組み合わせだ。

「大丈夫! コンビを組んだら、俺が君の骨になるよ!」
「おお! なんか楽しそうですね!」
「どういうことなの……?」

 なぜかヤナとぷる君が変な風に意気投合してる。
 戸惑ってる猫系希少種さんに、僕は全力で『その気持ちわかるよ!』と同意したい。君の骨になる、ってどういうことなんだろうね?

 じぃ、と見つめていたら、ヤナが僕の視線に気づいた。
 そして、ハッとした感じで、猫系希少種さんに乗ってたぷる君を持ち上げる。

「今こそ俺たちのコンビ技を披露する時!」
「えっ、どうすればいいんです?」
「ぷる君に無茶ぶりするのはやめてあげなさいよ……」

 猫系希少種さんの制止はヤナたちに届かなかったのか、ヤナに何かを耳打ちされたぷる君が「おっ、それ面白いですね!」と目を輝かせた。
 そして、二人は僕たちの前に立ち、ヤナが「こんちゃー」と手を上げる。

「モモさん、お久しぶりんちょ!」
「ぶりんちょ?」

 不思議な挨拶に戸惑っている僕をスルーして、ヤナはぷる君を頭の上に乗せる。

「再会を祝して一発芸を披露します!」
「さっきコンビ技って言ってたよね? 一発芸扱いしていいの?」

 ツッコミを入れてみたけど、再びスルーされた。
 ヤナの上に乗ったぷる君がフルフルと震えたかと思うと、デローッと伸びてヤナを覆っていく。

「えっ、ぷる君ー!?」

 驚愕の声が辺りに溢れた。
 あっという間にぷる君で覆われたヤナに呆気にとられて、僕はポカンと口を開けちゃう。

「%÷≠△$♪×¥ ●&%#」

 ヤナが口を動かしてるけど、ほとんど何も聞こえない。スライムって遮音率高いみたいだからね……。

「えっと、これがまさしく『スケルトン・マン』! だそうです」

 見かねたのか、ぷる君が通訳した。宣言する時ちょっぴり恥ずかしそう。
 でも、ちゃんとヤナの口辺りを動かして声を発するところを見ると、結構ノリノリでやってるよね?

 スケルトン・マンかぁ。
 確かに肉体が透けちゃってる人っぽいかな。正直、スライムに捕食されて肉を溶かされちゃったようにも見えるけど。

「……普通のスケルトンよりグロく感じる」

 ボソッと呟いたら、呆然としてた周りの人たちが一斉に頷いた。
 今ほどみんなの心が一つになったことはないね。

 ……え? 聖句斉唱の時の方が心が一つになってるって?
 もちろんそれは例外だよ。もふもふ教なら当然のことだからね。

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