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12章 美味しいもの大好き!
518.幻ザックザクー?
王城を出たら、王都周辺のバトルフィールドに出発。
早めに幻の食材を全部ゲットしたいなぁ、って思ってるんだ。
週末にはテスト期間を終えたルトたちと一緒にナーグに会いに行く予定だからね。
ミッション完了報告もついでに終わらせたいんだよー。
「幻の食材~。まずは栗マーク!」
マップ上の動かない印を目指して移動してます。
他のマークは動いてるから探しにくそうだし後回し。
栗マークがついてる王都西エリアは、サボテンのような木が乾いた地面に点在してるフィールドだった。
砂漠に近いけど、暑くはない。
ところどころに小さめな森もあるみたいだし、オアシスがあるのかな。
このフィールドは砂で足を取られやすいのが難点だねぇ。
まあ、飛んでればそんなの関係ないんだけど。
「にゃ(戦うの楽しいにゃ~♪)」
今回のパーティメンバーの一人は、弾むような足取りで会敵必殺しているヒスイ。
サラサラの砂から突然敵が飛び出してきてもなんのその。モグラ叩きのような勢いで攻撃してる。
ヒスイは相変わらず強くなるための努力に余念がない。ほのぼのタイプが多い僕の仲間の中ではちょっと異質だ。
でも、みんな『がんばれ~』って応援してるから、仲は良いんだよ。若干、ヒスイがいるとバトルで楽できて嬉しいって子もいる気がするけど。
「らぴゅ(オギン、もっと走ってぇ)」
「キュオ(あなた、自分で飛んだ方が速いんじゃないの?)」
ラッタンはオギンの背に乗って、楽しそうにはしゃいでる。オギンのもふもふの背中がお気に入りらしい。
ちょっと羨ましい。僕も乗りたいなー?
オギンは呆れた顔をしながらも、『仕方ないわねぇ』とあまり揺らさないようにしながら走ってる。
お姉ちゃん(ママ?)っぽい感じ。白の同系色仲間で、相性がいいのかな。
「きゅーきゅい(なんでまた私も一緒なの?)」
「ナッティなら幻の食材を見つけやすいかなって思って」
ちょっぴり不満そうなナッティに、近くの採集ポイントで素材をゲットしながら説明する。
ここにあるサボテン(?)、トゲが痛そうだけど、採集ポイントになってることが多いんだよねぇ。トゲが刺さらないよう注意しながら採集しまくってます。
採れるのは【鋭いトゲ】とか【サボサボの花】とか【サラ砂】とか。
料理には向いてないけど、錬金素材に使えそう。
採れる素材はともかく。
ナッティはちょっぴり臆病なタイプだから、高レベル帯のバトルフィールドにはあまり出たがってないのはわかってる。
でも、アイテム発見率が高いから、今回は協力してほしいな。
「きゅーきゅい(……仕方ないわねぇ)」
僕のお願いに、ナッティがプイッとそっぽを向きながら答える。尻尾が落ち着かない感じで揺れてた。
照れてる? ナッティは頼られて嬉しくなっても、それを素直に表さないところも可愛いよね。
「もふもっふー」
「ピア、ご機嫌だね」
バトルに一切関わらずに、マイペースに探索してるピアの姿に微笑む。
お出掛け好きだもんねー。ご機嫌に幸運パワーを発揮して、幻の食材を見つけてくれたらいいなー。
「にゃ(【ニャンパンチ】!)」
ヒスイが砂から飛び出してきたサソリみたいな敵を倒したところで、マップ上に栗マークがついている地点近くに着いたことに気づいた。
「……木はないね?」
ここで採れる幻の食材は【和狩実】のはず。僕の勘では、何かの果実かナッツ類だと思ってたんだけど。栗マークだったから、そのまま栗の可能性もあるなー、と予想してた。
でも、今ここに、そのような植物がある気配はない。
幻の食材と言われるだけあって、簡単に入手できるものではなさそうだ。
「もふ(あ)」
「あ?」
ふと漏れたようなピアの声が耳に届き、地面を探っていた視線を上げる。
ピアは地面に近づいたり、高く飛んだり、不思議な遊びをしていた。まるで釣りをしてる時のウキの動きのようだ。
「きゅーきゅい(あら、罠ね)」
「罠!? えっ、どこ」
ナッティが罠探知スキルの結果を軽く報告してきたから、慌てて視線の先を追う。
──ピアがいる場所の真下だった。
これ、ヤバくない!? いや、でも、ピアなら大丈夫な気もする……?
どうしようかなー、と考えていたら、僕たちの様子に気づいたヒスイとオギン(ラッタンが上に乗ってる)が近づいてきた。
「にゃ(ヒスイが罠を発動させてみるにゃ?)」
「いや、そんな危ないことしないでよ」
「キュオ(でも、その罠の先に幻の食材がある可能性もあるんじゃない?)」
「……うぅん……それは否定できないけど……」
仲間を囮みたいに使うのはヤダなぁ、と躊躇っていたら、ピアが「もふ!」と気合いに満ちた声を上げた。
「へ?」
ピアが地面スレスレまで下降したのを見て、間抜けな声が漏れる。
そのすぐ後に、慌てて声を張り上げた。
「──いやいや! ピア、危ないことはしないで!」
僕の言葉尻をかき消すように、ピアの真下から勢いよく砂が盛り上がった。
「っ、ピアー!」
噴き出した砂はピアを飲み込もうとするように高いところまで追いかける。
ピアを逃がそうと、僕は慌てて魔術を放とうとしたけど、それより先にピアは楽々と上空に逃げていた。
「もふ(カパッてしてるのがあるよー)」
「カパッ?」
どういうこと?
ピアの報告にきょとんとしてたら、僕の横に座っていたオギンが【吹雪】スキルを使った。
砂が高く上がった状態で雪に囲まれて凍結される。
「にゃ(【旋風】)」
「らぴゅ(【翼撃】)」
「きゅーきゅい(【鉄尾】)」
ヒスイたちが次々に攻撃を加えると、凍って岩のようになった砂が砕けていった。
その中から現れたのは、巨大な栗のイガのようなものが、カパッと口を開けている姿だ。凍ってる。
——————
【毬栗花】
土・木属性のモンスター
砂の中に潜み、上を通る敵を砂中に引きずり込む罠を仕掛けている
時に地上まで顔を出して敵を飲み込もうとする
——————
おお? これがモンスターなのかー。
栗のトゲトゲの殻にしか見えないけど、花なのかな。僕どころかオギンさえも一呑みにできそうな大きさだ。
「んー、幻の食材はドロップアイテムかな? とりあえず倒すぞー。【火炎嵐】!」
相手の強さがわからないから、とりあえず僕が使える中で一番攻撃力がある火魔術を使ってみた。
モンスターを火の渦が包み、あっという間に黒焦げに変える。
……あれ? やりすぎた?
もしかして、オギンたちの攻撃で、すでに瀕死状態だったかな?
〈毬栗花を倒しました。アイテム【鋭棘】【和狩実】✕3を入手しました〉
——————
【鋭棘】レア度☆☆☆
剣ほどの長さのある鋭い棘
レイピアや杖の素材になる
【和狩実】レア度☆☆☆☆☆
幻の食材
硬い殻に覆われた実は、加熱すると栗や芋のような食感・甘みがあり、非常に美味
砂を掘ると発見できることがある
砂中に隠れ潜むモンスターが集めて保有してることもあるらしい
——————
「あ、和狩実ゲット~。やったね」
見た目は僕の頭くらいの大きさの栗だ。殻がつやつや~。
味も栗に近いみたいだねぇ。
入手するのは毬栗花を倒すことが必須じゃなくて、砂を掘って探すこともできるようだ。潮干狩りの砂漠版かな?
できたら、もっとたくさん欲しいなー。
マップを見て、栗マークを探す。
これ全部巡って、和狩実ゲットしちゃおうっと!
早めに幻の食材を全部ゲットしたいなぁ、って思ってるんだ。
週末にはテスト期間を終えたルトたちと一緒にナーグに会いに行く予定だからね。
ミッション完了報告もついでに終わらせたいんだよー。
「幻の食材~。まずは栗マーク!」
マップ上の動かない印を目指して移動してます。
他のマークは動いてるから探しにくそうだし後回し。
栗マークがついてる王都西エリアは、サボテンのような木が乾いた地面に点在してるフィールドだった。
砂漠に近いけど、暑くはない。
ところどころに小さめな森もあるみたいだし、オアシスがあるのかな。
このフィールドは砂で足を取られやすいのが難点だねぇ。
まあ、飛んでればそんなの関係ないんだけど。
「にゃ(戦うの楽しいにゃ~♪)」
今回のパーティメンバーの一人は、弾むような足取りで会敵必殺しているヒスイ。
サラサラの砂から突然敵が飛び出してきてもなんのその。モグラ叩きのような勢いで攻撃してる。
ヒスイは相変わらず強くなるための努力に余念がない。ほのぼのタイプが多い僕の仲間の中ではちょっと異質だ。
でも、みんな『がんばれ~』って応援してるから、仲は良いんだよ。若干、ヒスイがいるとバトルで楽できて嬉しいって子もいる気がするけど。
「らぴゅ(オギン、もっと走ってぇ)」
「キュオ(あなた、自分で飛んだ方が速いんじゃないの?)」
ラッタンはオギンの背に乗って、楽しそうにはしゃいでる。オギンのもふもふの背中がお気に入りらしい。
ちょっと羨ましい。僕も乗りたいなー?
オギンは呆れた顔をしながらも、『仕方ないわねぇ』とあまり揺らさないようにしながら走ってる。
お姉ちゃん(ママ?)っぽい感じ。白の同系色仲間で、相性がいいのかな。
「きゅーきゅい(なんでまた私も一緒なの?)」
「ナッティなら幻の食材を見つけやすいかなって思って」
ちょっぴり不満そうなナッティに、近くの採集ポイントで素材をゲットしながら説明する。
ここにあるサボテン(?)、トゲが痛そうだけど、採集ポイントになってることが多いんだよねぇ。トゲが刺さらないよう注意しながら採集しまくってます。
採れるのは【鋭いトゲ】とか【サボサボの花】とか【サラ砂】とか。
料理には向いてないけど、錬金素材に使えそう。
採れる素材はともかく。
ナッティはちょっぴり臆病なタイプだから、高レベル帯のバトルフィールドにはあまり出たがってないのはわかってる。
でも、アイテム発見率が高いから、今回は協力してほしいな。
「きゅーきゅい(……仕方ないわねぇ)」
僕のお願いに、ナッティがプイッとそっぽを向きながら答える。尻尾が落ち着かない感じで揺れてた。
照れてる? ナッティは頼られて嬉しくなっても、それを素直に表さないところも可愛いよね。
「もふもっふー」
「ピア、ご機嫌だね」
バトルに一切関わらずに、マイペースに探索してるピアの姿に微笑む。
お出掛け好きだもんねー。ご機嫌に幸運パワーを発揮して、幻の食材を見つけてくれたらいいなー。
「にゃ(【ニャンパンチ】!)」
ヒスイが砂から飛び出してきたサソリみたいな敵を倒したところで、マップ上に栗マークがついている地点近くに着いたことに気づいた。
「……木はないね?」
ここで採れる幻の食材は【和狩実】のはず。僕の勘では、何かの果実かナッツ類だと思ってたんだけど。栗マークだったから、そのまま栗の可能性もあるなー、と予想してた。
でも、今ここに、そのような植物がある気配はない。
幻の食材と言われるだけあって、簡単に入手できるものではなさそうだ。
「もふ(あ)」
「あ?」
ふと漏れたようなピアの声が耳に届き、地面を探っていた視線を上げる。
ピアは地面に近づいたり、高く飛んだり、不思議な遊びをしていた。まるで釣りをしてる時のウキの動きのようだ。
「きゅーきゅい(あら、罠ね)」
「罠!? えっ、どこ」
ナッティが罠探知スキルの結果を軽く報告してきたから、慌てて視線の先を追う。
──ピアがいる場所の真下だった。
これ、ヤバくない!? いや、でも、ピアなら大丈夫な気もする……?
どうしようかなー、と考えていたら、僕たちの様子に気づいたヒスイとオギン(ラッタンが上に乗ってる)が近づいてきた。
「にゃ(ヒスイが罠を発動させてみるにゃ?)」
「いや、そんな危ないことしないでよ」
「キュオ(でも、その罠の先に幻の食材がある可能性もあるんじゃない?)」
「……うぅん……それは否定できないけど……」
仲間を囮みたいに使うのはヤダなぁ、と躊躇っていたら、ピアが「もふ!」と気合いに満ちた声を上げた。
「へ?」
ピアが地面スレスレまで下降したのを見て、間抜けな声が漏れる。
そのすぐ後に、慌てて声を張り上げた。
「──いやいや! ピア、危ないことはしないで!」
僕の言葉尻をかき消すように、ピアの真下から勢いよく砂が盛り上がった。
「っ、ピアー!」
噴き出した砂はピアを飲み込もうとするように高いところまで追いかける。
ピアを逃がそうと、僕は慌てて魔術を放とうとしたけど、それより先にピアは楽々と上空に逃げていた。
「もふ(カパッてしてるのがあるよー)」
「カパッ?」
どういうこと?
ピアの報告にきょとんとしてたら、僕の横に座っていたオギンが【吹雪】スキルを使った。
砂が高く上がった状態で雪に囲まれて凍結される。
「にゃ(【旋風】)」
「らぴゅ(【翼撃】)」
「きゅーきゅい(【鉄尾】)」
ヒスイたちが次々に攻撃を加えると、凍って岩のようになった砂が砕けていった。
その中から現れたのは、巨大な栗のイガのようなものが、カパッと口を開けている姿だ。凍ってる。
——————
【毬栗花】
土・木属性のモンスター
砂の中に潜み、上を通る敵を砂中に引きずり込む罠を仕掛けている
時に地上まで顔を出して敵を飲み込もうとする
——————
おお? これがモンスターなのかー。
栗のトゲトゲの殻にしか見えないけど、花なのかな。僕どころかオギンさえも一呑みにできそうな大きさだ。
「んー、幻の食材はドロップアイテムかな? とりあえず倒すぞー。【火炎嵐】!」
相手の強さがわからないから、とりあえず僕が使える中で一番攻撃力がある火魔術を使ってみた。
モンスターを火の渦が包み、あっという間に黒焦げに変える。
……あれ? やりすぎた?
もしかして、オギンたちの攻撃で、すでに瀕死状態だったかな?
〈毬栗花を倒しました。アイテム【鋭棘】【和狩実】✕3を入手しました〉
——————
【鋭棘】レア度☆☆☆
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硬い殻に覆われた実は、加熱すると栗や芋のような食感・甘みがあり、非常に美味
砂を掘ると発見できることがある
砂中に隠れ潜むモンスターが集めて保有してることもあるらしい
——————
「あ、和狩実ゲット~。やったね」
見た目は僕の頭くらいの大きさの栗だ。殻がつやつや~。
味も栗に近いみたいだねぇ。
入手するのは毬栗花を倒すことが必須じゃなくて、砂を掘って探すこともできるようだ。潮干狩りの砂漠版かな?
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