もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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3章 商人への道?

91.敏腕仲人と名乗りたい

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 祝・料理スキル、レベルアップ~!

「レベル4になったよ~」
「モモ、おめでとう!」

 イザベラちゃんに祝福されて、いぇーいとハイタッチを求める。戸惑いがちだけど、ちょっと嬉しそうに合わせてくれた。

 思った以上にあっという間だったなぁ。経験値五倍効果すごい。

 レベル4で使えるようになったのは【発酵】【淹れる】【伸ばす】だよ。これで、パン作りしたり、コーヒー淹れたりもできるようになる。
 作るの楽しみだなぁ。

「あ、今日はもう終了みたいだね」

 扉がガチャと開く音がした。たくさんあった食材も消えて、調理台もなくなっていく。なんか寂しい……。

 イザベラちゃんと手を繋いで部屋の外に出る。一階で受付さんに「ありがとうございました~」と挨拶したところで、すっと近づいてくる男の人に気づいた。

「イザベラ様。そろそろお戻りを」
「モモ……」

 男の人とイザベラちゃんを交互に眺める。ぎゅっと手を握られて、別れたくないのだと伝わってきた。

「えっと、あなたは?」
「イザベラ様の護衛を任せられております、リシェードと申します」

 堅苦しい感じで頭を下げるリシェードさんに、ちょっと気圧されちゃう。こういう人の相手は苦手だよぉ。でも、イザベラちゃんのためにがんばらなきゃ。

「どーも、僕は冒険者のモモです。イザベラちゃんとはお友だち? だよ」

 ちょっと首を傾げちゃったら、すかさずフレンドカードを渡された。イザベラちゃんとフレンド登録できた~。やったね!

〈シークレットミッション『伯爵令嬢と友だちになる』をクリアしました。報酬として一万リョウが贈られます〉

 報酬はお金かー。別に報酬のために友だちになったわけじゃないんだけど。もらえるものはありがたく受け取ります。

「わたくしのだいじなお友だちよ」

 ツン、とした感じで言うイザベラちゃんに、思わず「えへへ」と微笑んでしまう。
 大事な友だちだって~。まだ会って一・二時間くらいなのに、そういう風に言ってもらえて嬉しい。

「そうですか。モモ様、イザベラ様と仲良くしていただき、ありがとうございます」

 神妙な面持ちで頷いたリシェードさんは、一瞬腕時計に目を落としてから、再びイザベラちゃんに向かい合った。

「――そろそろ礼儀作法の講師が来られる予定です。さすがに一ヶ月以上講師を無視するのはいけませんよ」
「でも……」

 イザベラちゃんはちょっと怖がってる感じ。
 一ヶ月以上も授業サボってたら、怒られるかもって思うし、増々行きたくないってなっちゃうだろうなぁ。気持ちはわかる。
 でも、いつかは乗り越えないといけないんだ。それに逃げ癖がついちゃうのは良くないと思う。

「イザベラちゃん。シシリーに帰ってきてほしいんでしょ?」
「っ……うん」
「それなら、一つずつがんばってみようよ。嫌なことは嫌って言っていいと思うけど、どうしてなのか、とか、どうしたら良くなるのか、とか自分で考えて言葉にして伝えるのって大切だと思う。言わなきゃ伝わらないこと、いっぱいあるよ」

 まだ子どもだから、ちょっとずつでいい。
 僕が微笑んで伝えたら、イザベラちゃんは少し迷ったように視線を彷徨わせた末に、小さく頷いた。

「……がんばるわ。だから、モモも、お願いね」
「もちろん! シシリーにちゃんと伝えておくよ」

 リシェードさんが不思議そうにしているのを横目で見ながら、イザベラちゃんと手を握り合って約束。

 大人しくリシェードさんと共に帰る姿を見送り、ちょっと寂しくなりながら僕も塔を出る。シシリーにちゃんとお話しなくちゃ。


◇◆◇ 


 うさ耳のついた屋台。
 商品のほとんどが売り切れていることにおののきながら、シシリーと閉店準備をする。そこでの話題は当然、イザベラちゃんのこと。

「――そう、だったんですか……」

 呆然とした感じで手を止めるシシリーを眺め、「うん」と頷く。

「シシリーはまたイザベラちゃんの傍に戻るつもりある?」

 優秀だから、バイトとして手伝ってもらえるのは嬉しいけど。シシリーがもっと輝ける場所があると思うんだよねぇ。領主の娘の家庭教師という職業は、シシリーに合ってると思う。

「……ですが、私はお嬢様のお心が分からず、言葉を表面的に受け取って、傷つけてしまったような人間です……。また傷つけてしまうかもしれません」

 ズーン、と落ち込んだ様子のシシリーを見て、小さくため息をつく。
 反省するのって大切だと思うけど、必要以上に責めるのは良くないよ。なんというか……発展性がない?

「でも、イザベラちゃんは帰ってきてほしいって思ってるんだよ? それを断るのって、シシリーの言葉を借りるなら『また傷つける』ってことなんじゃないの?」
「っ、それは……」

 目を丸くして固まるシシリーを眺めながら、椅子とテーブルと鍋を取り出す。鍋に水とコーヒーの粉を入れて、料理スキルを使ったらあっという間にコーヒーの完成。良い香り~。……コーヒーかすはどこに行った?

「シシリーもどうぞ」
「ありがとうございます……」

 ストンと椅子に腰をおろして、コーヒーを飲んだシシリーの表情が少し和らいだ。コーヒーって心が安らぐよねぇ。

「僕が聞きたいのはシシリーの気持ちだよ。イザベラちゃんの傍にいたいかどうか。嫌なら嫌って言って」
「嫌なわけがありませんっ」

 シシリーがパッと顔を上げて勢いよく言った。その後すぐに申し訳なさそうに身をすくめてる。

「そっか。シシリーの気持ちはわかったよ。じゃあ、僕はイザベラちゃんの望みを叶えるために動いてもいいよね?」

 いくらミッションとして設定されているとしても、相手の気持ちを無視して動きたくなかった。異世界の住人NPCだって、僕と同じようにそれぞれが思考力を持って生きているように感じるから。
 シシリーもイザベラちゃんの傍にいたいなら、僕は遠慮なく動ける。

「……はい」

 困った感じに微笑みながらも、しっかりと頷くシシリーを眺め、「よーし!」と気合いを入れた。

 これ、まずはどうするべき? 領主さんとお話しないといけないのかな? え、普通の冒険者がすぐにそんなことできる?

「――あの、モモさん」
「なぁに?」
「閣下には私からお話します。ですが、復帰するまでには時間がかかるでしょうし、それまでここで働かせていただいてよろしいでしょうか? 一ヶ月の契約期間は満了させてください」
「え、シシリーがしてくれるの!? 屋台で働いてくれるのも大歓迎だけど」

 僕には良いことしかないのでは……? ほぼ何もしなくてミッションクリアできて、次のバイトも急いで探さなくていいし。

「はい。その代わり、なんですが……。復帰するまでにお嬢様とお話する機会をいただこうと思っているので、モモさんにお付き合いいただいてもいいでしょうか? お嬢様もその方が気楽だと思いますので」
「そんなのお安い御用だよ!」

 笑顔で請け負ったら、シシリーがホッと頬を緩めた。
 あっさりとイザベラちゃんのお悩みを解決できそうな感じで良かった! まだいくつかミッションがあるから、気儘にがんばろうっと。


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