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3章 商人への道?
92.お悩み相談所を開こうかな?
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シシリーと別れて、今日ものんびり街探索。といっても、もうすぐ暗くなっちゃうから少しだけ。
そろそろバトルフィールドに出て、ドロップアイテム集めないとなぁ。作れる商品が限られちゃうし。商品を作るのって大変。
でも、着々とお金は貯まってる。屋台契約期間を更新しなくても、目標の五十万リョウに手が届きそうだもん。
ファンのみんなに感謝だよ~。
代わりに、抽選券をもらう人が多すぎて、早々に第三回開催も決めることになったけど。……みんな、そんなに癒やしが足りないの? 僕をもふもふさせてあげようかな?
「んん?」
ぼんやりと考え事をしながら歩いてたら、人通りの少ないところまで来ちゃった。近くにあるのは公園かな? 住宅に囲まれてる小さなやつ。ブランコとシーソーがある。久々に遊びたいかも!
シーソーは一人じゃできないなぁ、と思って周囲を見たら、公園を囲むフェンス沿いにあるベンチに座っている男の人がいた。子どもが遊んでて、男の人がぼーっとしてたら、不審者だって思われかねないよ?
「こんにちはー?」
項垂れてる男の人に近づいて、ご挨拶。もう、こんばんはって言う時間かもしれないけど。
「へっ、あ、えっ?」
戸惑われちゃった。ぽかんとしてる顔に、なんだか見覚えがあるような気がする。誰だっけ?
「隣、座っていい?」
「どうぞ……?」
なんでわざわざここに、と言いたげな顔を無視して、隣にジャンプ。横を見上げたら、男の人と目が合った。
「僕、モモっていうんだ。冒険者してるよ。まぁ、ほぼ農家と釣り人と商人だけど」
「冒険者とは? って、いや、別に、好きにしたらいいと思うんだけど……」
思わずって感じでツッコミを入れた後、慌ててフォローするこの人はきっと良い人だ。
「――俺はライアン。えっと、パティシエをしてる」
「パティシエ! どこでお店してるの?」
行きたい、と身を乗り出して尋ねたら、ライアンさんは照れくさそうにこめかみを指で掻いた。
「ナンバーワン・スイーツフルってところなんだけど」
「あっ、グルメ大会で落ち込んでた人だ!」
思い出した。第三位になって、「うっそだろ……」て肩を落としてたよね。
「うわっ、それ見られてたのか……。恥ずかしいな」
片手で顔を覆うライアンさんの脚をぽんぽんと叩く。
「真剣にがんばったから、優勝できなくて落ち込んでたんでしょ? 恥ずかしがることじゃないよー」
正直、ナンバーワン・スイーツフルにあんまり良い印象はなかったんだけど、ライアンさんは悪い人じゃなさそうなんだよなぁ。
「……ああ、うん。すっげぇ真剣にがんばったんだ。でも、結果は第三位だろ? 本部からめっちゃ怒られたよ」
はは、と乾いた笑みをこぼすライアンさんに、素で「うわ~、大変そう……」と返しちゃう。お仕事って色々あるんだね。
「チェーン店で第三位は十分すごいと思うよ?」
「けど、俺は、社運を背負ってこの街の店を任されたから。成果が出なくて怒られるのは当然なんだ」
「しゃうん……」
それ、なに?
首を傾げてたら、ライアンさんが優しく説明してくれた。
全国にお店を増やしていくために、ライアンさんはグルメ大会での優勝を命じられてここに赴任したんだって。
果物栽培が盛んなこの街は、スイーツでも有名だ。ここで一番を取れば、国一番を名乗っても過言じゃないくらい。それは効果的な宣伝文句になって、たくさんの街でお客さんを呼び込めるはず、っていう計画だったみたい。
「三位じゃダメなの?」
「ダメだなぁ。少なくとも目標には足りない」
ぽつりと呟くライアンさんは、なんだか悲しげだった。
桃カフェを応援していた身としては、なんと言ってあげたらいいかわからない。
「……ライアンさんはどうしてチェーン店で働いてるの?」
ふと気になったことを尋ねる。
モンスターによって街ごとが分断されがちなこの世界で、国中に店を置くチェーン店の利点がなんなのかわからない。実力があるなら、自分の店を構えた方が良くない?
「それは、あれだ。俺はスイーツが好きだから」
「どういうこと?」
「うちの店では、美味しいメニューを新しく開発したら、食材の流通ルートを確立させて、全国で売り出すんだ。一つの街の人だけじゃなくて、全国でたくさんの人を笑顔にできるんだぞ? すごいだろ?」
キラキラした目で語られて、目から鱗が落ちる気分。チェーン店ってそういうやりがいがあるんだね。
「ライアンさんも美味しいメニューを開発してるの?」
「ああ。これでも社内一の実力って言われてたんだぞ。それで、一番攻略が難しいこの街の店舗を任されたんだ。……グルメ大会で三位だったから、評価も落ちてるかもしれないけどな」
またズーンと落ち込んでしまった。あわわ……どうしよう……。
「あ、僕、お店でパフェを食べたことあるよ。美味しかった!」
「そうなのか? ありがとう。……でも、ちょっと物足りなかった?」
ライアンさん、うさぎの顔から考えてること読めるの? すごいね?
確かに、ファミレスとかのパフェっぽくて、美味しいんだけど特別感ないなぁって思ったんだよね。
「えっとぉ……」
「正直に言ってくれていいよ。それがチェーン店のデメリットだしな。売るためには値段設定が高すぎたら駄目だ。でも、利益は必ず出さないと。いかに安く美味しく作るかが重要で……材料をケチらざるを得なくなることがある」
なんか僕が最近悩んだ話に似てる。
商品を売るためには、いろいろと考えないといけないことがあるよね。僕は個人のお店だから自由にできるし、失敗した時はそれはそれでいいやって思えるけど。ライアンさんはそうじゃないもんねぇ。
「……お店の宣伝方法とかも、ライアンさんが考えるの?」
「いや、それはエリアマネージャー……えっと、本部から経営面を任された立場のやつがやってる。まぁ、そいつ、この街で問題を起こしまくってたらしくて、本部から左遷異動させられたけど。まだ新しいやつ来ないなぁ……どうしよう……」
ライアンさんが頭を抱えてる。
問題を起こしまくってた人に、なんか心当たりがあるような?
「そのエリアマネージャーって、グルメ大会の時に一緒にいた人? この街の店の悪評流してるの聞いたことあるんだけど」
「あ、知ってるのか。うん、そう。優勝した桃カフェとかの、結構ひどい評判流してたらしくて、グルメ大会後に商業ギルドや農業ギルドからすごく責められたんだ……」
げっそりした顔のライアンさんを見て納得。つまり、桃カフェが閉店危機に陥るほど悪評を流されたのは、エリアマネージャーの独断でしたことだったんだね。
それを本部の人が問題視してくれたのは良かったー。商業ギルドとかに咎められて、流通を止められることを回避するためだけだったかもしれないけど。
「もう悪評は流さない?」
「流さない。……俺だってパティシエだ。そんなやり方で客が呼べても嬉しくない」
はっきりと断言されてホッとする。やっぱりライアンさんは良い人だ。
「それなら良かった。僕、桃カフェの店主さんと友だちなんだよね~」
「えっ、それは、なんというか、申し訳ないことをして――」
「僕に謝る必要はないよー。ライアンさん、絶対パティエンヌちゃんに謝ったでしょ?」
「それはもう、誠心誠意」
桃カフェの店主のパティエンヌちゃんは、謝られて許さないような人じゃない。閉店することになってたら、さすがに恨むだろうけど。
だから、きっとライアンさんを許したはずだ。ライアンさん自身が悪いことはしたわけじゃないし、お店としてもきちんと責任をとって、原因の人を左遷させてるわけだし。
「そっかー」
難しい話って疲れるなぁ。
ぼんやりと公園を眺めたら、遊具が視界に入った。僕、これで遊ぼうと思って来たんだった!
「――ね、一緒にシーソーしない?」
「え?」
突然の誘いにすっごく戸惑った顔をされたけど、気にせず手を引いてレッツゴー。遊んでたらきっと気が晴れるよ!
そろそろバトルフィールドに出て、ドロップアイテム集めないとなぁ。作れる商品が限られちゃうし。商品を作るのって大変。
でも、着々とお金は貯まってる。屋台契約期間を更新しなくても、目標の五十万リョウに手が届きそうだもん。
ファンのみんなに感謝だよ~。
代わりに、抽選券をもらう人が多すぎて、早々に第三回開催も決めることになったけど。……みんな、そんなに癒やしが足りないの? 僕をもふもふさせてあげようかな?
「んん?」
ぼんやりと考え事をしながら歩いてたら、人通りの少ないところまで来ちゃった。近くにあるのは公園かな? 住宅に囲まれてる小さなやつ。ブランコとシーソーがある。久々に遊びたいかも!
シーソーは一人じゃできないなぁ、と思って周囲を見たら、公園を囲むフェンス沿いにあるベンチに座っている男の人がいた。子どもが遊んでて、男の人がぼーっとしてたら、不審者だって思われかねないよ?
「こんにちはー?」
項垂れてる男の人に近づいて、ご挨拶。もう、こんばんはって言う時間かもしれないけど。
「へっ、あ、えっ?」
戸惑われちゃった。ぽかんとしてる顔に、なんだか見覚えがあるような気がする。誰だっけ?
「隣、座っていい?」
「どうぞ……?」
なんでわざわざここに、と言いたげな顔を無視して、隣にジャンプ。横を見上げたら、男の人と目が合った。
「僕、モモっていうんだ。冒険者してるよ。まぁ、ほぼ農家と釣り人と商人だけど」
「冒険者とは? って、いや、別に、好きにしたらいいと思うんだけど……」
思わずって感じでツッコミを入れた後、慌ててフォローするこの人はきっと良い人だ。
「――俺はライアン。えっと、パティシエをしてる」
「パティシエ! どこでお店してるの?」
行きたい、と身を乗り出して尋ねたら、ライアンさんは照れくさそうにこめかみを指で掻いた。
「ナンバーワン・スイーツフルってところなんだけど」
「あっ、グルメ大会で落ち込んでた人だ!」
思い出した。第三位になって、「うっそだろ……」て肩を落としてたよね。
「うわっ、それ見られてたのか……。恥ずかしいな」
片手で顔を覆うライアンさんの脚をぽんぽんと叩く。
「真剣にがんばったから、優勝できなくて落ち込んでたんでしょ? 恥ずかしがることじゃないよー」
正直、ナンバーワン・スイーツフルにあんまり良い印象はなかったんだけど、ライアンさんは悪い人じゃなさそうなんだよなぁ。
「……ああ、うん。すっげぇ真剣にがんばったんだ。でも、結果は第三位だろ? 本部からめっちゃ怒られたよ」
はは、と乾いた笑みをこぼすライアンさんに、素で「うわ~、大変そう……」と返しちゃう。お仕事って色々あるんだね。
「チェーン店で第三位は十分すごいと思うよ?」
「けど、俺は、社運を背負ってこの街の店を任されたから。成果が出なくて怒られるのは当然なんだ」
「しゃうん……」
それ、なに?
首を傾げてたら、ライアンさんが優しく説明してくれた。
全国にお店を増やしていくために、ライアンさんはグルメ大会での優勝を命じられてここに赴任したんだって。
果物栽培が盛んなこの街は、スイーツでも有名だ。ここで一番を取れば、国一番を名乗っても過言じゃないくらい。それは効果的な宣伝文句になって、たくさんの街でお客さんを呼び込めるはず、っていう計画だったみたい。
「三位じゃダメなの?」
「ダメだなぁ。少なくとも目標には足りない」
ぽつりと呟くライアンさんは、なんだか悲しげだった。
桃カフェを応援していた身としては、なんと言ってあげたらいいかわからない。
「……ライアンさんはどうしてチェーン店で働いてるの?」
ふと気になったことを尋ねる。
モンスターによって街ごとが分断されがちなこの世界で、国中に店を置くチェーン店の利点がなんなのかわからない。実力があるなら、自分の店を構えた方が良くない?
「それは、あれだ。俺はスイーツが好きだから」
「どういうこと?」
「うちの店では、美味しいメニューを新しく開発したら、食材の流通ルートを確立させて、全国で売り出すんだ。一つの街の人だけじゃなくて、全国でたくさんの人を笑顔にできるんだぞ? すごいだろ?」
キラキラした目で語られて、目から鱗が落ちる気分。チェーン店ってそういうやりがいがあるんだね。
「ライアンさんも美味しいメニューを開発してるの?」
「ああ。これでも社内一の実力って言われてたんだぞ。それで、一番攻略が難しいこの街の店舗を任されたんだ。……グルメ大会で三位だったから、評価も落ちてるかもしれないけどな」
またズーンと落ち込んでしまった。あわわ……どうしよう……。
「あ、僕、お店でパフェを食べたことあるよ。美味しかった!」
「そうなのか? ありがとう。……でも、ちょっと物足りなかった?」
ライアンさん、うさぎの顔から考えてること読めるの? すごいね?
確かに、ファミレスとかのパフェっぽくて、美味しいんだけど特別感ないなぁって思ったんだよね。
「えっとぉ……」
「正直に言ってくれていいよ。それがチェーン店のデメリットだしな。売るためには値段設定が高すぎたら駄目だ。でも、利益は必ず出さないと。いかに安く美味しく作るかが重要で……材料をケチらざるを得なくなることがある」
なんか僕が最近悩んだ話に似てる。
商品を売るためには、いろいろと考えないといけないことがあるよね。僕は個人のお店だから自由にできるし、失敗した時はそれはそれでいいやって思えるけど。ライアンさんはそうじゃないもんねぇ。
「……お店の宣伝方法とかも、ライアンさんが考えるの?」
「いや、それはエリアマネージャー……えっと、本部から経営面を任された立場のやつがやってる。まぁ、そいつ、この街で問題を起こしまくってたらしくて、本部から左遷異動させられたけど。まだ新しいやつ来ないなぁ……どうしよう……」
ライアンさんが頭を抱えてる。
問題を起こしまくってた人に、なんか心当たりがあるような?
「そのエリアマネージャーって、グルメ大会の時に一緒にいた人? この街の店の悪評流してるの聞いたことあるんだけど」
「あ、知ってるのか。うん、そう。優勝した桃カフェとかの、結構ひどい評判流してたらしくて、グルメ大会後に商業ギルドや農業ギルドからすごく責められたんだ……」
げっそりした顔のライアンさんを見て納得。つまり、桃カフェが閉店危機に陥るほど悪評を流されたのは、エリアマネージャーの独断でしたことだったんだね。
それを本部の人が問題視してくれたのは良かったー。商業ギルドとかに咎められて、流通を止められることを回避するためだけだったかもしれないけど。
「もう悪評は流さない?」
「流さない。……俺だってパティシエだ。そんなやり方で客が呼べても嬉しくない」
はっきりと断言されてホッとする。やっぱりライアンさんは良い人だ。
「それなら良かった。僕、桃カフェの店主さんと友だちなんだよね~」
「えっ、それは、なんというか、申し訳ないことをして――」
「僕に謝る必要はないよー。ライアンさん、絶対パティエンヌちゃんに謝ったでしょ?」
「それはもう、誠心誠意」
桃カフェの店主のパティエンヌちゃんは、謝られて許さないような人じゃない。閉店することになってたら、さすがに恨むだろうけど。
だから、きっとライアンさんを許したはずだ。ライアンさん自身が悪いことはしたわけじゃないし、お店としてもきちんと責任をとって、原因の人を左遷させてるわけだし。
「そっかー」
難しい話って疲れるなぁ。
ぼんやりと公園を眺めたら、遊具が視界に入った。僕、これで遊ぼうと思って来たんだった!
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