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4章 錬金術士だよ?
122.お土産かな?
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「もふ」
「あ、やっぱりピアだ! って……なにを持ってるの?」
声が聞こえて、近づいてくる影の正体がわかった。さらに距離が近くなったところで、ピアがなぜだか濡れそぼってるのが見える。飛び方もゆらゆらしてて不安定で、いつもより体が重そう。
――というか、すごく大きなものを頭上に掲げてるみたいだし、重くて当然だ。それ、ビチビチしてない? まだ生きてるよね?
「バトル発生! 危険です、スラリン隊員!」
「きゅい!」
ふざけて隊長ごっこをしながら、巨大魚と相対する。巨大魚は、ピアから落下して浜辺に着地した途端、僕の方へ跳ね飛んできた。
「敵は花鰹だよ。得意な攻撃は――」
僕が鑑定結果を教える前に、スラリンが花鰹に飛びかかった。ちょっと無謀じゃないかな。スラリンの十倍以上の大きさがあるよ?
「きゅーぅ!」
突如スラリンの体が大きくなった。飛んできた花鰹を包むようにまとわりつくと、そのまま体内に収納してしまう。
「……え、そんなことできるの?」
スラリンが戦うところは何度も見てきたけど、こんなに大きなモンスターにまで通用する能力だとは思ってなかった。
「――って、ダメージ受けてるじゃん!」
体力バーが青色から黄色へとじわじわ移り行くのを見て、慌てて回復薬を使う。無理しないでほしいな。
でも、僕がスラリンを傷つけずに、中にいるモンスターを攻撃する手段がわからないから、それ以上の援助ができない。
「もふ」
戦ってるスラリンを見ながらハラハラしてたら、ピアが近づいてきた。毛が乾いてる! もふもふが復活しててちょっと安心したよー。
ピアはじっとスラリンを観察していたかと思うと、ゆっくりとその場で回り始める。なにをしてるのかわからない。
「……あ、もしかして、これ……ステータスアップ効果のあるスキルかな?」
ふつふつと力が湧いてきたような感覚があった。
ステータスを確認してみたら【物理攻撃力+10、魔力攻撃力+10】という表記があった。……すごくない?
「きゅう!」
スラリンが元気いっぱいの声を上げる。拮抗していた状況が、スラリン優位に傾いた。
ずっと抵抗していた花鰹の動きが次第に小さくなり、ついに討伐アナウンスが聞こえてくる。
〈花鰹を倒しました。報酬として【花鰹の切り身】と【水魔石】を入手しました〉
え、水魔石!?
というか、これって本当にバトル扱いだったんだ? 水中じゃなくても、バトルになるんだね。
「水魔石ゲットー! よくやったよ、スラリン、ピア!」
ラッキーと思って二人を褒めたけど、なぜだかしょんぼりしてる。
いつも通りの大きさに戻ったスラリンは体内を調べるような仕草を見せて、嘆くように「きゅう」と鳴いてるし、ピアはふるふると震えていた。
もしかして、巨大な魚をそのまま手に入れられなかったから悲しんでるの? バトル扱いだったから、ドロップアイテムに変わるのは仕方ないと思うよ。
でも、考えたら、釣りやスラリンの漁だとモンスターがそのまま手に入って、バトルになるとドロップアイテムに変わるの不思議だね。そういうシステムなんだって言われたら、納得するしかないけど。
「落ち込まないでー。ほら、切り身はあるから!」
ドロップアイテムを見せる。
切り身と言っても、僕が両手で抱えられるギリギリの大きさだ。元の巨大さを考えたら小さいんだろうけど、食べるなら十分だよ。
「きゅう?」
「もふ」
二人ともが『これだけでいいの?』って感じで見てくるから、「十分な量があるよー、ありがとう」と答えておく。
実際、僕はほとんどなにもせずに、切り身だけじゃなくて水魔石まで手に入れてるわけだし。お得でしかない。
「きゅう!」
僕が本当に喜んでるとわかったのか、スラリンが元気を取り戻してぽよんと跳ねた。ピアはまだちょっとショックを受けてる感じだけど。
「ピアとスラリンに、今度食べさせてあげるからねー」
元気を出してもらうためにそう言って見たら、ピアが目に見えてテンションを上げた。もしかしてピアは花鰹を食べたかったから獲ってきたのかな。
「――あ」
ちょっと質問しようと思ったところで、召喚可能時間が切れちゃった。二人がふっと消えちゃって、寂しくなる。
夜の海だから、なおさら孤独感が増してる気がするよ……。
「僕も帰ろう」
あったかいお家に帰るんだ。ルトとリリ、いるかな? まだログインはしてるみたいだけど。
ホームにいるようなら、たっぷりの魚介類をご馳走してあげようっと。リリはお寿司好きだからそれを用意して、ルトはガッツリ食べられるメニューがいいかな。
いろいろと考えながら転移スキルを発動。
一瞬で到着したホーム内に人の気配を感じる。
「――ルト、リリ、ただいま!」
「おかえり、モモ。元気いっぱいだな」
「おかえりー、手は洗ったー?」
「リリはママだった……?」
にこやかに僕を出迎えて両腕を広げたリリに抱きつきながら首を傾げちゃう。ゲーム内で手洗いは必要ないです。
「母ちゃん、晩ご飯はまだか?」
「僕がママだった?」
ルトが笑いながらからかってくるから、僕もその冗談に乗って「ご飯は今から作るから待ってなさーい」と答える。
美味しいものたくさん食べさせるからね。
……やっぱり友だちと過ごすのって楽しいな~!
「あ、やっぱりピアだ! って……なにを持ってるの?」
声が聞こえて、近づいてくる影の正体がわかった。さらに距離が近くなったところで、ピアがなぜだか濡れそぼってるのが見える。飛び方もゆらゆらしてて不安定で、いつもより体が重そう。
――というか、すごく大きなものを頭上に掲げてるみたいだし、重くて当然だ。それ、ビチビチしてない? まだ生きてるよね?
「バトル発生! 危険です、スラリン隊員!」
「きゅい!」
ふざけて隊長ごっこをしながら、巨大魚と相対する。巨大魚は、ピアから落下して浜辺に着地した途端、僕の方へ跳ね飛んできた。
「敵は花鰹だよ。得意な攻撃は――」
僕が鑑定結果を教える前に、スラリンが花鰹に飛びかかった。ちょっと無謀じゃないかな。スラリンの十倍以上の大きさがあるよ?
「きゅーぅ!」
突如スラリンの体が大きくなった。飛んできた花鰹を包むようにまとわりつくと、そのまま体内に収納してしまう。
「……え、そんなことできるの?」
スラリンが戦うところは何度も見てきたけど、こんなに大きなモンスターにまで通用する能力だとは思ってなかった。
「――って、ダメージ受けてるじゃん!」
体力バーが青色から黄色へとじわじわ移り行くのを見て、慌てて回復薬を使う。無理しないでほしいな。
でも、僕がスラリンを傷つけずに、中にいるモンスターを攻撃する手段がわからないから、それ以上の援助ができない。
「もふ」
戦ってるスラリンを見ながらハラハラしてたら、ピアが近づいてきた。毛が乾いてる! もふもふが復活しててちょっと安心したよー。
ピアはじっとスラリンを観察していたかと思うと、ゆっくりとその場で回り始める。なにをしてるのかわからない。
「……あ、もしかして、これ……ステータスアップ効果のあるスキルかな?」
ふつふつと力が湧いてきたような感覚があった。
ステータスを確認してみたら【物理攻撃力+10、魔力攻撃力+10】という表記があった。……すごくない?
「きゅう!」
スラリンが元気いっぱいの声を上げる。拮抗していた状況が、スラリン優位に傾いた。
ずっと抵抗していた花鰹の動きが次第に小さくなり、ついに討伐アナウンスが聞こえてくる。
〈花鰹を倒しました。報酬として【花鰹の切り身】と【水魔石】を入手しました〉
え、水魔石!?
というか、これって本当にバトル扱いだったんだ? 水中じゃなくても、バトルになるんだね。
「水魔石ゲットー! よくやったよ、スラリン、ピア!」
ラッキーと思って二人を褒めたけど、なぜだかしょんぼりしてる。
いつも通りの大きさに戻ったスラリンは体内を調べるような仕草を見せて、嘆くように「きゅう」と鳴いてるし、ピアはふるふると震えていた。
もしかして、巨大な魚をそのまま手に入れられなかったから悲しんでるの? バトル扱いだったから、ドロップアイテムに変わるのは仕方ないと思うよ。
でも、考えたら、釣りやスラリンの漁だとモンスターがそのまま手に入って、バトルになるとドロップアイテムに変わるの不思議だね。そういうシステムなんだって言われたら、納得するしかないけど。
「落ち込まないでー。ほら、切り身はあるから!」
ドロップアイテムを見せる。
切り身と言っても、僕が両手で抱えられるギリギリの大きさだ。元の巨大さを考えたら小さいんだろうけど、食べるなら十分だよ。
「きゅう?」
「もふ」
二人ともが『これだけでいいの?』って感じで見てくるから、「十分な量があるよー、ありがとう」と答えておく。
実際、僕はほとんどなにもせずに、切り身だけじゃなくて水魔石まで手に入れてるわけだし。お得でしかない。
「きゅう!」
僕が本当に喜んでるとわかったのか、スラリンが元気を取り戻してぽよんと跳ねた。ピアはまだちょっとショックを受けてる感じだけど。
「ピアとスラリンに、今度食べさせてあげるからねー」
元気を出してもらうためにそう言って見たら、ピアが目に見えてテンションを上げた。もしかしてピアは花鰹を食べたかったから獲ってきたのかな。
「――あ」
ちょっと質問しようと思ったところで、召喚可能時間が切れちゃった。二人がふっと消えちゃって、寂しくなる。
夜の海だから、なおさら孤独感が増してる気がするよ……。
「僕も帰ろう」
あったかいお家に帰るんだ。ルトとリリ、いるかな? まだログインはしてるみたいだけど。
ホームにいるようなら、たっぷりの魚介類をご馳走してあげようっと。リリはお寿司好きだからそれを用意して、ルトはガッツリ食べられるメニューがいいかな。
いろいろと考えながら転移スキルを発動。
一瞬で到着したホーム内に人の気配を感じる。
「――ルト、リリ、ただいま!」
「おかえり、モモ。元気いっぱいだな」
「おかえりー、手は洗ったー?」
「リリはママだった……?」
にこやかに僕を出迎えて両腕を広げたリリに抱きつきながら首を傾げちゃう。ゲーム内で手洗いは必要ないです。
「母ちゃん、晩ご飯はまだか?」
「僕がママだった?」
ルトが笑いながらからかってくるから、僕もその冗談に乗って「ご飯は今から作るから待ってなさーい」と答える。
美味しいものたくさん食べさせるからね。
……やっぱり友だちと過ごすのって楽しいな~!
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