もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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4章 錬金術士だよ?

129.駆けて飛んで回避!

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 種族レベルが25、魔術士レベルが13になったところで今日のレベリングは終了。
 経験値二倍キャンペーンの恩恵は大きかった。こんなに早くここまでレベルを上げられるとは思ってなかったもん。

「もっと強くなっちゃうぞー!」

 ログアウトするという二人と別れて、仮想施設に向かう。
 今は夜。まだ今日分のスキルレベル上げができるはずだ。

 エリアボス迷彩小竜カモフラミニドラゴンとの戦いに向けて、ルトたちの足を引っ張らないようにがんばろう。

「あれ? 僕以外にもプレイヤーがいる!」

 仮想施設に向かう人の後ろ姿。プレイヤー表示がされてるけど、見たことはない人だ。やっと、利用者が増えたんだね。
 その人から少し遅れて中に入ると、見慣れた受付さんがいた。

「こんばんはー」
「あら、こんばんは。この時間にいらっしゃるのは珍しいですね」
「うん。今レベリング中だから、スキルのレベル上げもがんばろと思って。さっきまでバトルフィールドでバトルしてたんだよ」
「それはお疲れ様です。今日はなんのスキルを鍛えるんですか?」

 二階に案内されながら話す。
 なんのスキルにしようかなー。バトルで役に立つものなら、魔術系か蹴り技――いや、まずは回避か気配察知かな。エリアボス戦で重要そうだし、ソロでレベリングする時も必要なはず。

「回避スキルにする!」
「それはまた珍しいですね。モモさんがバトルに使うスキルを鍛えようとするなんて」

 受付さんが目を丸くした。そんなに珍しいかな。……珍しいかも。これまでここで鍛えたのって、料理と全鑑定のスキルだもんね。

迷彩小竜カモフラミニドラゴンを倒すっていう目標のためにがんばってるんだ」

 僕が答えると、受付さんが「あぁ、あの隠し森の……」と納得した感じで頷いた。

「隠し森?」

 それは初めて聞いた言葉だった。ルトたちはそんなこと言ってなかったと思うけど、迷彩小竜カモフラミニドラゴンに関係してるのかな。

 受付さんは扉の前でスキル設定をしながら、僕をちらりと見下ろした。

「ご存じないんですか? 以前、第三の街に続く街道があったところに、強いモンスターが居座り、その影響で街道が森で覆われてしまったんです。街道を隠した森だから隠し森と呼ばれてるんですよ」

 エリアボス迷彩小竜カモフラミニドラゴンがいるところは、昔は街道だったらしい。
 今日探索した時に、そんな感じは全然なかったけど。街道なんてなくて、完全に森だったもん。

「森の中に街道要素、まったくなかったよ」
「森になっちゃいましたからね」

 軽く言われたけど、影響が大きすぎない? 一体のモンスターで、街道のほとんどが森で覆われちゃったって怖くない?

「……第三の街との交易はどうなってるの?」

 ふと思い出す。第二の街内では、第三の街以降でとれる商品も取り扱われてるんだ。街道が塞がれた状態で、それらはどうやって運ばれてきてるんだろう?

「主要街道は塞がれましたが、小道はあるんですよ。馬車は通せませんし、強いモンスターも現れますから、使うのは冒険者か護衛を連れた商人くらいですね」
「へぇ、そうなんだ」

 それって、僕も使えるのかな。第三の街にエリアボスを倒さなくても行けちゃう?

「モモさんは使えませんよ。今のところは」

 僕の疑問を読み取ったような言葉が告げられた。
 受付さんが苦笑してる。

「どうして?」
「小道の利用者は制限されてるんです。第二の街と第三の街の領主双方から許可証が出ている人だけが利用できます。利用者が増えると小道にモンスターが現れやすくなって、商人が困っちゃいますからね」

 この街の領主さんからは許可証をもらえるだろうけど、第三の街の領主さんと話したことはないし、確かに無理だろうな。
 僕の名誉貴族の証明書も、相手に提示できないと効果はないし。

「そっかー、残念」

 そう言いながらも、さほどガッカリはしてない。だって、僕はリリとルトと一緒にエリアボスをクリアして、第三の街に行くって決めてるんだもん。エリアボス討伐ミッションをスルーするなんて、楽しみが半減しちゃう。

「地道に鍛えてがんばってくださいね。――準備できました。中にお入りください」
「はーい、行ってきます!」

 受付さんにふりふりと手を振って、室内に突入。回避スキルを鍛えるって、どんな訓練なのかな?

 背後で扉が閉じる気配を感じながら、目の前にある立て看板に目を向ける。

「えっと……『ひたすら避け続けるべし』?」

 いつものように訓練内容の説明があるものだと思って読んだけど、簡潔すぎてよくわからない。
 なにかが襲ってくるのかな? 僕はそれを避ければいい? 回避スキルを鍛えるって考えたら、そういう訓練になるのは理解できる。

「今は回避レベル3だけど、4になるまでどれくらい経験値がいるのかなー」

 北の森林でのバトルで回避スキルはレベルが上ったばかりだ。結構たくさんの経験値が必要な気がする。

 まだなにかが襲ってくる気配はないから、周囲を見渡してみた。すると立て看板の裏に数字が書かれていることに気づく。

「お! 21/3100……え、絶望的なくらいに、目標まで遠いんだけど……?」

 三千以上の経験値を稼がないといけないとか、しんどそう。始める前から気が遠くなってるんだけど。

 うわーん、と頭を抱えて呻いてたら、ふとなにかの気配を感じた。
 パッと振り向くと、ツギハギだらけのクマのぬいぐるみが剣を上へと構えてた。今にも振り下ろしそう――。

「わあっ!?」

 ブンッ、と振られた剣の軌道から、身を捩って逃げる。上手くスキルが発動して、紙一重で回避できた。

「怖いよ!」

 逃げた先に、もう一体のぬいぐるみが現れる。これはネコがモデルになってるみたい。持っているのは剣じゃなくて杖。つまり――。

「魔術も来るのかー!」

 放たれた水の玉ウォーターボールを回避。ちょっと濡れた気がするけど、問題ない。それより大変なのは、次々にぬいぐるみが増えていくことだ。

 剣での攻撃、魔術での攻撃、体をぶつけてくるような体術での攻撃。いろいろなバリエーションで、息をつく暇もなく襲われる。
 これは回避スキルを鍛える訓練なんだから、攻撃し返したらダメってことだよね? しんどいー!

「こんにゃろ、もっと上手く逃げてやるぞー!」

 しばらく泣き言を喚きながら逃げてたけど、なんだか開き直ってきた。
 どうせなら回避術をもっと工夫しようと思って、逃げるついでにぬいぐるみの股の下を駆け抜けたり、撹乱するようにステップを踏んだりしてみる。

「お、みんな混乱してるね!」

 ぬいぐるみの同士討ちが始まりかけたり、僕の姿を追いかねてキョロキョロと周囲を見渡してたり、結構良い成果が出てる。

 背後からの気配を読んで、避けるのも上手くなってきた。スキル以上にバトル感覚が磨かれてる感じかな。なんだか楽しくなってきたぞ。

「僕はここだよ~」

 きょろきょろとしてたぬいぐるみの前を、飛翔フライで飛んで横切る。気配を読んで、剣の攻撃を回避。危なげなく逃げられると、なんだか気持ちいい!

 ドッタンバッタンと動き回るぬいぐるみを翻弄しながら、飛んで駆けて回避をし続けてたら、三十分もしない内にポーンと音が鳴った。ぬいぐるみが煙になって消えていく。

〈回避スキルがレベル4になりました〉

「え、予想してたより早い!」

 びっくりしちゃう。もしかして経験値二倍キャンペーンって、仮想施設でのスキル訓練にも適応されてる……?

〈気配察知スキルがレベル6になりました〉

 思いがけないアナウンスまであった。

「あれ? ここって、回避スキルだけがレベル上がるわけじゃないの?」

 よくわかんないけど、レベルが上がったのはラッキー!

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