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6章 どたばた大騒動?
207.休憩のちビューン
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バトル続きでちょっと疲れたので、地下二階に進む前に休憩だ。
「スラリンとユキマルはなにを食べたい?」
聞きながらアイテムボックスを探る。周囲を警戒していた二体は、僕のリラックス気分から危険がないと察したのか、ぽよんぽよんと跳ねて近づいてきた。
「きゅぃ(モモが作ったものならなんでもいいよ)」
「ぴぅ(モモが好きなものを食べたい)」
僕が好きなものかー。それならこれだね!
「幻桃のパフェ! 仙桃ミルクも使ってるよー」
高さのあるグラスに、幻桃のゼリー・ジャム・コンポート、仙桃ミルクアイスクリーム、ラスク、ラズベリーソースなどを重ねたパフェだ。僕の自信作。
スラリンたちに出したら、二体とも目をキラキラさせてる気がする。一緒に食べよー。
「きゅぃ(おいしー!)」
「ぴぅ(甘いねー)」
「うまうま。これ、いくらでも食べられちゃうから危険なんだよ」
食べた途端、嬉しそうに震えるスラリンたちに、僕もうんうんと頷きながらパフェを口に運ぶ。幸せで満たされるような味だ。
ゲームの中ではいくら食べても問題ないとはいえ、食べ過ぎるとちょっぴり罪悪感が湧くことがあるから、同じ料理は一日一個までと決めてる。その決意が揺らいじゃうくらい、このパフェが美味しいから、もはや罪の味。
「――あ、もうない……」
持っていたスプーンがグラスの底を掻いた。しばらくするとグラスとスプーンが消える。この終わり方がちょっと虚しくて、余計に追加を食べたくなっちゃうんだよなぁ。
「きゅぃ(満腹!)」
「ぴぅ(ごちそうさまでした!)」
「スラリンたちは理性が強すぎじゃない……?」
え、パフェの魅力に負けそうになってるのは僕だけ?
満足そうに体を揺らすスラリンたちを、信じられないと思いながら見つめた。不思議そうに見つめ返されちゃったけど。
「きゅぃ(先へ進まないの?)」
「あ、行かないとねー」
「ぴぅ(ボク、攻撃スキルを覚えたいな)」
「どうやったら覚えられるかな?」
これまで体当たりの指示ばかりしてきて、それで新たな攻撃スキルを覚えることはなかった。魔術系のスキルをスライムが覚えられるかはわからないし、どう教えたらいいかも見当がつかない。
期待に満ちた目を向けてくる二体を見ながら、「うーん」と首を傾げる。
テイムモンスターにスキルを習得させるって難しいなぁ。これはモンちゃんに相談するべきかもしれない。
「――あ、テイマー講習、明日あるんだった」
ちょうどログインできるタイミングで、モンちゃんによるテイマー講習が開催されるのを確認した。まだ一回も参加したことないし、行ってみよう。
「きゅぃ(なーに?)」
「ううん、明日の予定を考えてただけだよ。今日はとりあえず体当たり攻撃で行けるところまで行ってみよう」
地下二階は推奨レベル15以上と聞いたから、スラリンがギリギリ倒せるかどうかっていう攻略難度だと思う。ユキマルも一緒なら多少は楽かな。
あまり無理はせず、のんびりレベル上げしていこう。
◇◆◇
廊下の迷路のようだった地下一階とは違い、地下二階は水で満たされた空間だった。大きな湖がある感じ。水面には大きな機械の破片のようなものが浮いてて、それを足場にして進むらしい。
「この水、もしかしてサクの川に続いてるのかな?」
遠くの方で巨大な機械がポンポンと長靴を吐き出しては水に落としている。長靴は浮き沈みを繰り返しながら、空間の外へと流れて行っているようだ。
サクの川で長靴を拾える理由が判明した気がする。
「きゅぃ(漁!)」
「いや、違う……んん? 違わない?」
咄嗟にスラリンの言葉を否定しちゃったけど、水から飛んでくる魚型ロボットのようなモンスターを見て首を傾げた。
魚型ロボットを食べられるとは思わない。でも、普段の漁のように進める気はする。
「ぴぅ(ボクもイメージトレーニングを発揮するね!)」
「待って。ユキマル、そんなことしてるの?」
「ぴぅ(うん。スラリンに教えてもらってるんだー)」
ユキマルがスラリンに教えられて、漁師として覚醒しようとしてる。これ、喜んで良いのかな? ……まぁ、できることが増えるのは良いことだよね! そういうことにしよう。
「じゃあ、スラリンたちに任せてみるよ」
スラリンはぽよんと水に飛び込んで、ぐんぐんと吸収していった。体内で魚型ロボットが暴れているのが見える。でも、次第に分解されて見えなくなった。
「きゅ(水吐き出して泳ぐよー)」
「ぴぅ(ボクも真似して進むね)」
ユキマルもスラリン同様に水を吸収して大きくなっていた。分解している敵モンスターの数は少ないので、そこは漁スキルの有無の差があるんだろうな。
スラリンが水を水中で吐き出すと、その勢いで前進した。まるでジェットボートみたいな感じ。ユキマルが真似して進んでいく。
僕は飛翔スキルを使う。敵モンスターはスラリンたちが水を吸収するついでに分解して倒してくれてるからほぼ問題ない。敵のほとんどがスラリンたちより小さいから、スライム無双状態になってる。
「スライムは水場最強……?」
ちょっぴり変な育て方をしている気がしないでもない。でも、スラリンたちが楽しそうだからいっか、と目を逸らした。
予想以上に楽々と進んでる。こんな攻略法でいいのかな。
最奥まで辿り着いて、ボス部屋の扉の前で振り返る。
「――あ、足場を一切使ってない」
大きな破片が水の上で虚しくプカプカと浮いていた。
親切に用意してくれただろうに、と思うとちょっと申し訳ない。
あと、ユキマルも無事【漁】スキルを覚えたようなので、またこの階層を進むことがあれば、今回以上に楽に進めると思う。
ここを作った人が見ていたなら、きっとしょんぼりと肩を落とすだろう攻略法。——うん、見てないことを祈るね!
「スラリンとユキマルはなにを食べたい?」
聞きながらアイテムボックスを探る。周囲を警戒していた二体は、僕のリラックス気分から危険がないと察したのか、ぽよんぽよんと跳ねて近づいてきた。
「きゅぃ(モモが作ったものならなんでもいいよ)」
「ぴぅ(モモが好きなものを食べたい)」
僕が好きなものかー。それならこれだね!
「幻桃のパフェ! 仙桃ミルクも使ってるよー」
高さのあるグラスに、幻桃のゼリー・ジャム・コンポート、仙桃ミルクアイスクリーム、ラスク、ラズベリーソースなどを重ねたパフェだ。僕の自信作。
スラリンたちに出したら、二体とも目をキラキラさせてる気がする。一緒に食べよー。
「きゅぃ(おいしー!)」
「ぴぅ(甘いねー)」
「うまうま。これ、いくらでも食べられちゃうから危険なんだよ」
食べた途端、嬉しそうに震えるスラリンたちに、僕もうんうんと頷きながらパフェを口に運ぶ。幸せで満たされるような味だ。
ゲームの中ではいくら食べても問題ないとはいえ、食べ過ぎるとちょっぴり罪悪感が湧くことがあるから、同じ料理は一日一個までと決めてる。その決意が揺らいじゃうくらい、このパフェが美味しいから、もはや罪の味。
「――あ、もうない……」
持っていたスプーンがグラスの底を掻いた。しばらくするとグラスとスプーンが消える。この終わり方がちょっと虚しくて、余計に追加を食べたくなっちゃうんだよなぁ。
「きゅぃ(満腹!)」
「ぴぅ(ごちそうさまでした!)」
「スラリンたちは理性が強すぎじゃない……?」
え、パフェの魅力に負けそうになってるのは僕だけ?
満足そうに体を揺らすスラリンたちを、信じられないと思いながら見つめた。不思議そうに見つめ返されちゃったけど。
「きゅぃ(先へ進まないの?)」
「あ、行かないとねー」
「ぴぅ(ボク、攻撃スキルを覚えたいな)」
「どうやったら覚えられるかな?」
これまで体当たりの指示ばかりしてきて、それで新たな攻撃スキルを覚えることはなかった。魔術系のスキルをスライムが覚えられるかはわからないし、どう教えたらいいかも見当がつかない。
期待に満ちた目を向けてくる二体を見ながら、「うーん」と首を傾げる。
テイムモンスターにスキルを習得させるって難しいなぁ。これはモンちゃんに相談するべきかもしれない。
「――あ、テイマー講習、明日あるんだった」
ちょうどログインできるタイミングで、モンちゃんによるテイマー講習が開催されるのを確認した。まだ一回も参加したことないし、行ってみよう。
「きゅぃ(なーに?)」
「ううん、明日の予定を考えてただけだよ。今日はとりあえず体当たり攻撃で行けるところまで行ってみよう」
地下二階は推奨レベル15以上と聞いたから、スラリンがギリギリ倒せるかどうかっていう攻略難度だと思う。ユキマルも一緒なら多少は楽かな。
あまり無理はせず、のんびりレベル上げしていこう。
◇◆◇
廊下の迷路のようだった地下一階とは違い、地下二階は水で満たされた空間だった。大きな湖がある感じ。水面には大きな機械の破片のようなものが浮いてて、それを足場にして進むらしい。
「この水、もしかしてサクの川に続いてるのかな?」
遠くの方で巨大な機械がポンポンと長靴を吐き出しては水に落としている。長靴は浮き沈みを繰り返しながら、空間の外へと流れて行っているようだ。
サクの川で長靴を拾える理由が判明した気がする。
「きゅぃ(漁!)」
「いや、違う……んん? 違わない?」
咄嗟にスラリンの言葉を否定しちゃったけど、水から飛んでくる魚型ロボットのようなモンスターを見て首を傾げた。
魚型ロボットを食べられるとは思わない。でも、普段の漁のように進める気はする。
「ぴぅ(ボクもイメージトレーニングを発揮するね!)」
「待って。ユキマル、そんなことしてるの?」
「ぴぅ(うん。スラリンに教えてもらってるんだー)」
ユキマルがスラリンに教えられて、漁師として覚醒しようとしてる。これ、喜んで良いのかな? ……まぁ、できることが増えるのは良いことだよね! そういうことにしよう。
「じゃあ、スラリンたちに任せてみるよ」
スラリンはぽよんと水に飛び込んで、ぐんぐんと吸収していった。体内で魚型ロボットが暴れているのが見える。でも、次第に分解されて見えなくなった。
「きゅ(水吐き出して泳ぐよー)」
「ぴぅ(ボクも真似して進むね)」
ユキマルもスラリン同様に水を吸収して大きくなっていた。分解している敵モンスターの数は少ないので、そこは漁スキルの有無の差があるんだろうな。
スラリンが水を水中で吐き出すと、その勢いで前進した。まるでジェットボートみたいな感じ。ユキマルが真似して進んでいく。
僕は飛翔スキルを使う。敵モンスターはスラリンたちが水を吸収するついでに分解して倒してくれてるからほぼ問題ない。敵のほとんどがスラリンたちより小さいから、スライム無双状態になってる。
「スライムは水場最強……?」
ちょっぴり変な育て方をしている気がしないでもない。でも、スラリンたちが楽しそうだからいっか、と目を逸らした。
予想以上に楽々と進んでる。こんな攻略法でいいのかな。
最奥まで辿り着いて、ボス部屋の扉の前で振り返る。
「――あ、足場を一切使ってない」
大きな破片が水の上で虚しくプカプカと浮いていた。
親切に用意してくれただろうに、と思うとちょっと申し訳ない。
あと、ユキマルも無事【漁】スキルを覚えたようなので、またこの階層を進むことがあれば、今回以上に楽に進めると思う。
ここを作った人が見ていたなら、きっとしょんぼりと肩を落とすだろう攻略法。——うん、見てないことを祈るね!
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