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7章 世界が広がっていくよ
240.王都へ行きたいな~
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第三の街でのストーリーをクリアした結果、王都を開放できた。王都まで行くのに、エリアボスと戦う必要がないこともわかってる。
それなのになぜほとんどの人が王都に辿り着けていないかというと、向かおうとすると必ず道に迷ってしまうという事態が発生していたからだ。
つまり、まっすぐ進めば着くはずなのに、なんなら王都を囲む壁さえ見えているのに、道に迷って王都に辿り着けない。不思議でしょ?
ミッションとして『迷い道を突破する』というのがあったから、クリアする方法はあるんだと思うけど、僕はまだ探せてない。
王都に教会を作りたいって言うくらいだから、タマモは行けそうなのかな?
「気が早いなんてことはないですよー。はじまりの街と第三の街は、もう敷地の下見を終えて、どんな教会にするかも考えてるので、建築ギルドに相談に行くだけですから。その次の段階も計画を立てておかないと」
タマモがにこやかに言う。でも、問題なのはそこじゃないんだよなぁ。テキパキと計画を立てて進めてるのはすごいと思うけどね。
「いやいや、僕が言いたいのは、どうやって王都に行けばいいのかさえわからない段階で、王都に教会を作ろうと計画するのは無謀じゃない? ってことなんだけど。そもそも、王都に教会を作れるような敷地があるかどうかも調べられてないよね?」
「調べてあります」
「調べてるんかい」
思わず真顔になっちゃった。え、どうやって調べたの?
「ユリさんが王都に到着されたそうなので。早速王都の情報を調べてもらってますよ。それに、親しい異世界の住人に王都での宗教組織の扱いなども聞いて、予習済みです」
「さすがタマモ。というか、ユリって、一緒に幻桃探索をした人だよね?」
「はい。タヌキ族の獣人で、以前は剣士でしたが、今はスカウトになってます。探索がお上手なんですよ」
まさか身近に王都到達済みの人がいたなんて思わなかった。実力があると言われてるユウシャたちのパーティやタケミさんのパーティも、まだ迷い道に苦労してるって話を聞いてたから。
「ユリかぁ。そういえば、斥候役を目指してるって言ってたね。スカウトに職業変えたんだ?」
「ええ。第三の街で師匠を見つけられたそうです」
関西弁っぽいしゃべり方のユリのことは、すごく記憶に残ってる。一緒に幻桃探しをした時、即席パーティを組んで遊んでる実力者として有名だって話を聞いた。
でも、これまであんまり会わなかったんだよなぁ。
「ユリは一人で王都に行ったの?」
「そうですね。ユリさんは現時点でのレベル上限に達してますし、道に迷うことさえどうにかできたら、王都に辿り着くのは難しくなかったみたいです」
「それが今一番問題になってるんだけどね。……あれ? レベル上限?」
初めて聞いた気がする言葉を復唱して、首を傾げる。他のゲームでそういう要素があることは知ってたけど、このゲームでもあるんだ?
「モモさんは聞いたことなかったんですか? 現時点ではレベル30までしか上がらないんですよ。レベル上限を解放するためのミッションがあるらしいんですけど、それがなにかもよくわかってなくて」
タマモが困った様子で呟いた。掲示板や異世界の住人から情報収集をしてるけど、良い情報は集まっていないらしい。
「そっかぁ。僕も知り合いに聞いてみるね」
「よろしくお願いします!」
僕ももうすぐレベル30になるはずだし、早めに情報を集めたいな。あとでモンちゃんとか冒険者ギルドの人に聞きに行ってみよう。
今はまず王都までの迷い道をどうクリアするかだよね。
「それで、ユリはどうやって王都に着いたの?」
「スカウトとしての能力が発揮された結果だと思います。どうやら、迷い道にはところどころに『異点』というものがあって、それを見つけ出して壊すと、短時間だけ正しい道を通れるようになるそうなんです」
「うん?」
首を傾げてたら、タマモが詳しく説明をしてくれた。
王都までの道中は、結界が幾重にも張り巡らされているような状態らしい。普通に進んでたら、その結界によっていつの間にかスタート地点近くに転移させられるから、いつまでたっても目的地に着けないという状態になるそうだ。
実はその結界と似たようなものが第三の街周辺にも張られてる。バトルフィールド間にね。北の霊峰エリアから直接西のキーリ湖エリアには進めないようになってるんだ。
僕がイグニスさんに乗って各エリアを巡った時に感じたシャボン玉が弾ける感じは、この結界を一時的に壊したことで生じてたようだ。
ユリがやったっていう『異点』壊しを、イグニスさんは的確にスムーズにやってのけてたってことね。イグニスさんの圧倒的な力で強引に突破してた可能性もあるけど。
壊れた結界が短時間で復活する仕様で良かったね! そうじゃなかったら、イグニスさんのせいで僕が街の人に怒られちゃうところだったよ。
——そんなことは今はおいといて。
とにかく、迷い道を突破するには、途中にある結界の『異点』を探し出して壊しながら進むしかないようだ。
「異点ってどうやって探すの?」
「罠探知スキルのレベルが高いと、違和感を覚えて発見できるそうですよ」
「僕、そのスキル持ってないよ」
「私もです」
タマモと顔を見合わせる。するとサムズアップされた。
「――大丈夫です! ユリさんにご協力いただけるので、モモさんも一緒に行きましょう!」
「やったー! 持つべきものは、やっぱり友だちだね!」
実力者の知り合いがいるというだけで、とっても良いことがあるのです。もちろん利用するだけの関係にはならないよう、僕もがんばるけどね。
僕が両手を上げて喜んでたら、タマモがにこにこと微笑む。
「今日中に一回目の案内をしてもらえるそうなんですが、モモさんのご予定はどうですか?」
「僕は大丈夫だよー。……って、一回目?」
「はい。もふもふ教のみなさんを王都へ案内するツアーを定期開催する予定です」
「おー……ユリ、大変だねぇ」
「異点探しはもらえるスキル経験値が高いそうなので、ユリさんの訓練も兼ねてますから大丈夫だそうですよ。もふもふ教から報酬もお渡ししますし」
「なるほど。Win-Winならいっか」
うんうん、と頷く。
ユリも僕のファンなんだから、お礼に天兎ぬいぐるみをあげたら喜ばれそうだな。そうしよう。
それなのになぜほとんどの人が王都に辿り着けていないかというと、向かおうとすると必ず道に迷ってしまうという事態が発生していたからだ。
つまり、まっすぐ進めば着くはずなのに、なんなら王都を囲む壁さえ見えているのに、道に迷って王都に辿り着けない。不思議でしょ?
ミッションとして『迷い道を突破する』というのがあったから、クリアする方法はあるんだと思うけど、僕はまだ探せてない。
王都に教会を作りたいって言うくらいだから、タマモは行けそうなのかな?
「気が早いなんてことはないですよー。はじまりの街と第三の街は、もう敷地の下見を終えて、どんな教会にするかも考えてるので、建築ギルドに相談に行くだけですから。その次の段階も計画を立てておかないと」
タマモがにこやかに言う。でも、問題なのはそこじゃないんだよなぁ。テキパキと計画を立てて進めてるのはすごいと思うけどね。
「いやいや、僕が言いたいのは、どうやって王都に行けばいいのかさえわからない段階で、王都に教会を作ろうと計画するのは無謀じゃない? ってことなんだけど。そもそも、王都に教会を作れるような敷地があるかどうかも調べられてないよね?」
「調べてあります」
「調べてるんかい」
思わず真顔になっちゃった。え、どうやって調べたの?
「ユリさんが王都に到着されたそうなので。早速王都の情報を調べてもらってますよ。それに、親しい異世界の住人に王都での宗教組織の扱いなども聞いて、予習済みです」
「さすがタマモ。というか、ユリって、一緒に幻桃探索をした人だよね?」
「はい。タヌキ族の獣人で、以前は剣士でしたが、今はスカウトになってます。探索がお上手なんですよ」
まさか身近に王都到達済みの人がいたなんて思わなかった。実力があると言われてるユウシャたちのパーティやタケミさんのパーティも、まだ迷い道に苦労してるって話を聞いてたから。
「ユリかぁ。そういえば、斥候役を目指してるって言ってたね。スカウトに職業変えたんだ?」
「ええ。第三の街で師匠を見つけられたそうです」
関西弁っぽいしゃべり方のユリのことは、すごく記憶に残ってる。一緒に幻桃探しをした時、即席パーティを組んで遊んでる実力者として有名だって話を聞いた。
でも、これまであんまり会わなかったんだよなぁ。
「ユリは一人で王都に行ったの?」
「そうですね。ユリさんは現時点でのレベル上限に達してますし、道に迷うことさえどうにかできたら、王都に辿り着くのは難しくなかったみたいです」
「それが今一番問題になってるんだけどね。……あれ? レベル上限?」
初めて聞いた気がする言葉を復唱して、首を傾げる。他のゲームでそういう要素があることは知ってたけど、このゲームでもあるんだ?
「モモさんは聞いたことなかったんですか? 現時点ではレベル30までしか上がらないんですよ。レベル上限を解放するためのミッションがあるらしいんですけど、それがなにかもよくわかってなくて」
タマモが困った様子で呟いた。掲示板や異世界の住人から情報収集をしてるけど、良い情報は集まっていないらしい。
「そっかぁ。僕も知り合いに聞いてみるね」
「よろしくお願いします!」
僕ももうすぐレベル30になるはずだし、早めに情報を集めたいな。あとでモンちゃんとか冒険者ギルドの人に聞きに行ってみよう。
今はまず王都までの迷い道をどうクリアするかだよね。
「それで、ユリはどうやって王都に着いたの?」
「スカウトとしての能力が発揮された結果だと思います。どうやら、迷い道にはところどころに『異点』というものがあって、それを見つけ出して壊すと、短時間だけ正しい道を通れるようになるそうなんです」
「うん?」
首を傾げてたら、タマモが詳しく説明をしてくれた。
王都までの道中は、結界が幾重にも張り巡らされているような状態らしい。普通に進んでたら、その結界によっていつの間にかスタート地点近くに転移させられるから、いつまでたっても目的地に着けないという状態になるそうだ。
実はその結界と似たようなものが第三の街周辺にも張られてる。バトルフィールド間にね。北の霊峰エリアから直接西のキーリ湖エリアには進めないようになってるんだ。
僕がイグニスさんに乗って各エリアを巡った時に感じたシャボン玉が弾ける感じは、この結界を一時的に壊したことで生じてたようだ。
ユリがやったっていう『異点』壊しを、イグニスさんは的確にスムーズにやってのけてたってことね。イグニスさんの圧倒的な力で強引に突破してた可能性もあるけど。
壊れた結界が短時間で復活する仕様で良かったね! そうじゃなかったら、イグニスさんのせいで僕が街の人に怒られちゃうところだったよ。
——そんなことは今はおいといて。
とにかく、迷い道を突破するには、途中にある結界の『異点』を探し出して壊しながら進むしかないようだ。
「異点ってどうやって探すの?」
「罠探知スキルのレベルが高いと、違和感を覚えて発見できるそうですよ」
「僕、そのスキル持ってないよ」
「私もです」
タマモと顔を見合わせる。するとサムズアップされた。
「――大丈夫です! ユリさんにご協力いただけるので、モモさんも一緒に行きましょう!」
「やったー! 持つべきものは、やっぱり友だちだね!」
実力者の知り合いがいるというだけで、とっても良いことがあるのです。もちろん利用するだけの関係にはならないよう、僕もがんばるけどね。
僕が両手を上げて喜んでたら、タマモがにこにこと微笑む。
「今日中に一回目の案内をしてもらえるそうなんですが、モモさんのご予定はどうですか?」
「僕は大丈夫だよー。……って、一回目?」
「はい。もふもふ教のみなさんを王都へ案内するツアーを定期開催する予定です」
「おー……ユリ、大変だねぇ」
「異点探しはもらえるスキル経験値が高いそうなので、ユリさんの訓練も兼ねてますから大丈夫だそうですよ。もふもふ教から報酬もお渡ししますし」
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