もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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7章 世界が広がっていくよ

244.王都初歩きです

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 僕のファンとして覚醒しそうな門衛さんに、タマモが改めてもふもふ教を布教しようとしているのを横目に見ながら、王都の門を通った。

〈王都に到達しました。到達特典【魔術の書(生活)】が贈られます〉

 突然のアナウンス。
 僕がきょとんとしたら、隣を歩いていたユリがにこりと笑った。

「到達特典届いたやろ?」
「うん。これなに?」

 希少種会の三人も不思議そうな顔でアイテムを確認してる。

「見た目は古めかしい本やけど、使用したら生活魔術を覚えられんねん」
「生活魔術?」
「洗浄とか着火とか、バトルでは大した効果はないけど地味に便利な魔術や」
「ほーう」

 ユリの解説に頷き、アイテムボックスから取り出した魔術の書を眺める。表紙をめくったら、ちゃんと文章が書かれてる! 読めない文字だけど演出が細かい。

 魔術の書を手に持った状態で『使用する』と念じれば、設定されている魔術を習得できるようだ。早速やってみよう。

「――生活魔術覚えた~い」

 言葉にする必要はないけど、なんとなく言ってみた。
 途端に、体にふわっと熱が灯った気がする。ステータスを見てみたら、しっかりと【生活魔術】を覚えていた。レベル1で使えるのは、【洗浄】らしい。

「洗浄を自分に使うと、体が綺麗になった感じがして気分がリフレッシュするで」
「毛繕いとは効果が違うのかな? ――【洗浄】!」

 全身をシャボンで包まれるような感覚がした。柔らかいソープの香りが心地よい。確かにリラックスできて気分爽快だ。

「お、モモ、毛艶が良くなったみたいだぞ」
「ほんと?」

 ツッキーに言われて、自分の体を見下ろす。確かになんとなくいつもより毛が輝いてる気がする。

「――ついでに毛繕い~」

 くしくし。もふもふミラーで見ながら顔や体の毛を手で整えたら、びっくりするくらい綺麗でふわっふわになった。魅力度爆上がり!

「ほわっ!? モモさんの神々しさが増してる……!」

 門衛さんを無事にもふもふ教に引き入れられたのか、満足そうな顔で近づいてきたタマモが、目を丸くして固まった。すぐに手を合わせて拝み始めたので、さすがにやめてもらう。

 王都の人に変な目で見られたらどうするの!

「これで王都でも友だちたくさんできるかな~♪」
「信者がほしくて綺麗にしたわけじゃなかったんやね」
「僕はいつだって信者じゃなくて友だちを作ろうとしてるよ?」
「そうなん?」
「そうなの! 見た目を清潔にして、初対面の印象を良くするのは、友だちを作る上で大切でしょ」

 首を傾げるユリに力強く頷いて見せる。

 ランドさんとかレナードさんとかモンちゃんとか、もふもふ教に入ってなくても、僕のことを好きだと思ってくれてる友だちはいるもん!
 僕の友だちになってくれたと思ったら、いつの間にかもふもふ教に入ってる人が多いだけで!

「なーなー、それより早く街を探索しようぜ」

 ツッキーがキョロキョロと周囲を見渡しながら明るい声で提案する。
 確かにここで立ち止まってる時間がもったいないね。といっても、王都って随分と特殊な街みたいで、どこをどう見て回ったらいいか――

「……屋台はなさそうだね?」

 王都にある建物はどれも高い塔だった。都会のビル群って感じかな。見た目は西洋風の古めかしい建物だけど。
 地上に通りはあるけど、塔同士を空中で繋ぐ回廊が主な通路らしく、人の姿は上の方に見える。

「レストランは『商業の塔』にあるで。緑色の塔や」
「色で区別されてるの?」
「そうや。赤色は『魔術の塔』で魔術学院の関連施設が入ってる。青色は『生産の塔』で生産職の人が働いてるとこやな。黄色は『行政施設の塔』でギルドもここにあるんよ。貴族の住居は水色で、庶民の住居は茶色になっとる。王城は王都の中央にあって、真っ白な塔が連結してるような見た目をしてるで」
「へぇ、よくわかんないけどすごいねぇ」

 色で区別されてるけど、バラバラに点在してるからなかなかカラフルな見た目の街になってる。王城はいつか見に行こう。

「――とりあえず、王都飯を食べたい!」
「それならオススメに案内するわ」

 ユリに連れられ、近くの緑色の塔に入る。
 一階には各階の案内図があって、その近くにエレベーターにそっくりなものがあった。ユリはそこで十一階のボタンを押す。

 ぐーんと上がっていく感覚に、『僕がいるのはリアルの商業施設だった?』という思いが湧いてくる。近代的な内装でファンタジー感が薄れてるよぉ。

「あ、到着?」
「昇降機以外は古めかしい感じでゲーム感あるやろ」

 ユリも僕と同じ感想を抱いていたのか、目的の階に着いて歩き始めた途端そう言った。
 確かに廊下は石造りで、ところどころ不思議な紋様が刻まれててファンタジーな見た目。やっぱこういうのがいい。

「そうだねー。明かりも魔法陣が刻まれてるし、魔法の世界って感じ!」
「それより、ここではなにを食えるんだ? 俺腹減ったー」
「確かに結構お腹空きましたね」

 王都までの道をショートカットして進んだとはいえ、それなりに時間は経過してる。おかげでいい具合に空腹度が減ってた。

「この階にあるのは、肉料理が主や。そんでウチのオススメは――ここや」

 いくつかの店の前を通り過ぎた後、ユリが入ったのは肉が焼ける香りが漂う店だった。
 たくさんのお客さんがいる。道中もだったけど、チラチラと視線を向けられるのを感じた。

 王都もテイマーがいるから、街をモンスターが歩いてるのは珍しくないようだけど、天兎アンジュラパを見たことがある人は少なそうだ。

 とりあえず、じっと見つめてくる人に「こんにちはー」と手を振ってみると、驚いた顔をした後嬉しそうに手を振り返してくれた。「あの子かわいー」という声が聞こえてきて満足です。

「モモはいついかなる時もファンを増やそうとしてるにゃ」
「違うよ! こういう出会いから友だちが増えたら嬉しいでしょ」
「まぁ、そういう出会いもあるかもにゃ?」

 首を傾げながらもムギが頷く。そんなムギにもキラキラとした目が向けられてるんだから、愛嬌を振りまいてあげたらいいのに。友だちたくさんできるよ?

「それじゃあ、まずは腹ごしらえといこか」

 六人掛けの席につき、ユリがにこりと笑う。
 どんな料理を食べられるか楽しみ!

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