248 / 555
7章 世界が広がっていくよ
252.ピコンと立ちました?
しおりを挟む
僕がしょんぼりしてるのを気の毒に思ったのか、受付さんが地図をくれた。
「王都の仮想施設は、他の街よりスキルの取得経験値が多いのでおすすめですよ」
「え、ほんとに!?」
喜んで受け取る。すると、すぐさまマップが更新された。
〈王都のシークレットエリアの一部が開放されました〉
マップを見ると、『王城』や『仮想施設』『鍛錬場』などの表示が増えてる。
これ、王城にも入れるってこと? 門前払いされる気しかしないけど。
「テイマーさんでしたら、【連携訓練所】にも行ってみるといいですよ」
受付さんがペタたちを眺めて微笑みながら言った。もふもふ好きなのかな?
「連携訓練所ってなに?」
「テイムモンスターとの連携を強められる仮想バトルフィールド空間です。テイムモンスターの効率的なレベリングの他、スキル取得がしやすくなったり、テイマーとの繋がりを強くしてバトルが上手くなったりする効果が見込めますよ」
「おお! テイムモンスター用の仮想施設みたいなものかぁ。いいね!」
便利な場所聞いちゃったぞ。
僕のスキルを鍛えるなら『仮想施設』、テイムモンスターの能力を鍛えるなら『連携訓練所』に行けばいいってことだね。
「がんばってくださいね」
「うん! 入学条件を満たしたらまた来るからよろしくね」
「はい、お待ちしております」
微笑む受付さんにバイバイと手を振って立ち去ろうとしてから、ふと振り返る。聞き忘れてたことがあったの思い出したんだ。
「そうだ! あなたのおすすめレストランはどこ?」
「……ふはっ、ここでその情報を求められたのは初めてです」
受付さんがクスクスと笑った。そんなに面白いこと言ったかな? 美味しい食べ物の情報って重要でしょ? みんな知りたがるものだと思うけど。
「僕は食べることが好きなので!」
「モンスターはみんなそうですよねー。もふもふカフェでテイマーさんと一緒にご飯を楽しんでる姿をよく見ますもん」
ふわりと微笑んだ受付さんは、もふもふカフェというところでの光景を思い出しているらしい。幸せそうな顔だ。
やっぱりもふもふ好きなのが確定だね!
「もふもふカフェなんてところがあるんだ?」
「ええ。店主さんがテイマーで、テイムモンスターが寛いでいるカフェですよ。テイマーさんも集まって、いつも店内がもふもふしてます」
「いいねー。癒やしの空間だー」
僕も気になる!
第三の街にある僕のお店とはちょっと違うタイプな気がするから、今後の参考になりそう。
というわけで、詳しい店の場所を聞いた。絶対に行くぞ!
「美味しいレストランなら、『ねこねこ亭』がおすすめですよ」
「ねこねこ亭? 猫がいるの?」
「店主さんがネコ族の獣人です。美味しくて可愛い料理を食べられますよ」
「へぇ、そこも気になる! 行ってみるね」
「ぜひ。楽しんでくださいね」
情報を聞き取って、早速向かおうと出入り口に行ったところで、女の人とぶつかりかけた。
「おっと!」
「きゃ……ごめんあそばせ、ウサギさん」
「ううん、僕の方こそごめんなさい!」
目の前に深紅の布地がある。
お互いに一歩下がったところで上を見ると、淡いピンクの髪で縁取られた上品そうな顔立ちの女性が、ふわりと微笑んでいた。
なんか高貴な雰囲気だなぁ。
僕がぽかんと見つめると、女性はズレた眼鏡を指先で直し、首を傾げる。
「ウサギさんはここの学生さん?」
「違うよー。入学したかったんだけど、魔術のレベルが足りなかった!」
「あら、それは残念だったわね」
ふふ、と微笑んだ女性に、受付さんが「ラファイエット様、わざわざいらしてくださったのですか?」と声を掛けて、慌てて近づいてきた。
やっぱり偉い人なのかも。
研究者っぽい雰囲気でもあるけどなぁ。
「サマナ様の研究室を訪ねたついでに、資料を受け取りに来ただけよ」
「あ、資料ですね。こちらです」
受付さんが冊子を渡すと、確認したラファイエットさんが「ありがとう」と微笑んだ。
「モンスターの大規模襲撃があったのに、第三の街は想定よりも随分と被害が少なかったようね」
「旅人の皆さんの活躍がすごかったようですよ」
受付さんからチラリと視線を向けられた。
そうです! 僕がその活躍したプレイヤーです!
まぁ、受付さんはそんなこと知らないんだろうけど。
いや、知ってるのかな? 渡した資料が第三の街襲撃の報告書のたぐいなら、僕の情報が載っててもおかしくない。
「あと、古竜でしょう?」
キラッと輝いた目をしながら、ラファイエットさんが微笑む。
受付さんの頬が引き攣った。
「そ、そうらしいですね。ちょっと怖いですけど、制御はされていたみたいです」
「ふふ、そうじゃなければ、お父様が許可を出さないわ。信頼してるテイマーのモンハさんからの保証があったから、その情報を信じて許可を出したのよ」
モンちゃんの知り合いなのかな?
探究心に満ちた眼差しで資料に目を通すラファイエットさんの言葉が、ちょっと引っかかる。特にお父様が許可を出さないわってところに。
ラファイエットさんのお父様って、もしかして——
「陛下も、凄い決断をされましたよね……」
「そうね。古竜を味方として使うなんて、古代王国の王のようだと、心躍っていらっしゃったようだけれど」
いたずらっ子のように微笑むラファイエットさんと、それに対して「少年のような方ですよねー、陛下は」と苦笑する受付さんの言葉で、答えが出たようなものだ。
——ほらー! やっぱりラファイエットさんのお父様って王様じゃん! つまり、ラファイエットさんは王女様!?
マジマジと見つめる。お供もつけてないから、王女様っぽくない。自立した働く女性って感じだ。
そんなラファイエットさんの頭上に、ピコンと旗が立った。お子様ランチについてそうな可愛い旗だ。ウサギのイラストが載ってる。
「……なにこれ?」
〈フラグ関連の称号を保有した状態で、シークレットミッション『国の重要NPCと出会う』をクリアしました。スキル【フラグ可視化】が贈られます〉
なんか変なスキルを入手しちゃったぞ?
「王都の仮想施設は、他の街よりスキルの取得経験値が多いのでおすすめですよ」
「え、ほんとに!?」
喜んで受け取る。すると、すぐさまマップが更新された。
〈王都のシークレットエリアの一部が開放されました〉
マップを見ると、『王城』や『仮想施設』『鍛錬場』などの表示が増えてる。
これ、王城にも入れるってこと? 門前払いされる気しかしないけど。
「テイマーさんでしたら、【連携訓練所】にも行ってみるといいですよ」
受付さんがペタたちを眺めて微笑みながら言った。もふもふ好きなのかな?
「連携訓練所ってなに?」
「テイムモンスターとの連携を強められる仮想バトルフィールド空間です。テイムモンスターの効率的なレベリングの他、スキル取得がしやすくなったり、テイマーとの繋がりを強くしてバトルが上手くなったりする効果が見込めますよ」
「おお! テイムモンスター用の仮想施設みたいなものかぁ。いいね!」
便利な場所聞いちゃったぞ。
僕のスキルを鍛えるなら『仮想施設』、テイムモンスターの能力を鍛えるなら『連携訓練所』に行けばいいってことだね。
「がんばってくださいね」
「うん! 入学条件を満たしたらまた来るからよろしくね」
「はい、お待ちしております」
微笑む受付さんにバイバイと手を振って立ち去ろうとしてから、ふと振り返る。聞き忘れてたことがあったの思い出したんだ。
「そうだ! あなたのおすすめレストランはどこ?」
「……ふはっ、ここでその情報を求められたのは初めてです」
受付さんがクスクスと笑った。そんなに面白いこと言ったかな? 美味しい食べ物の情報って重要でしょ? みんな知りたがるものだと思うけど。
「僕は食べることが好きなので!」
「モンスターはみんなそうですよねー。もふもふカフェでテイマーさんと一緒にご飯を楽しんでる姿をよく見ますもん」
ふわりと微笑んだ受付さんは、もふもふカフェというところでの光景を思い出しているらしい。幸せそうな顔だ。
やっぱりもふもふ好きなのが確定だね!
「もふもふカフェなんてところがあるんだ?」
「ええ。店主さんがテイマーで、テイムモンスターが寛いでいるカフェですよ。テイマーさんも集まって、いつも店内がもふもふしてます」
「いいねー。癒やしの空間だー」
僕も気になる!
第三の街にある僕のお店とはちょっと違うタイプな気がするから、今後の参考になりそう。
というわけで、詳しい店の場所を聞いた。絶対に行くぞ!
「美味しいレストランなら、『ねこねこ亭』がおすすめですよ」
「ねこねこ亭? 猫がいるの?」
「店主さんがネコ族の獣人です。美味しくて可愛い料理を食べられますよ」
「へぇ、そこも気になる! 行ってみるね」
「ぜひ。楽しんでくださいね」
情報を聞き取って、早速向かおうと出入り口に行ったところで、女の人とぶつかりかけた。
「おっと!」
「きゃ……ごめんあそばせ、ウサギさん」
「ううん、僕の方こそごめんなさい!」
目の前に深紅の布地がある。
お互いに一歩下がったところで上を見ると、淡いピンクの髪で縁取られた上品そうな顔立ちの女性が、ふわりと微笑んでいた。
なんか高貴な雰囲気だなぁ。
僕がぽかんと見つめると、女性はズレた眼鏡を指先で直し、首を傾げる。
「ウサギさんはここの学生さん?」
「違うよー。入学したかったんだけど、魔術のレベルが足りなかった!」
「あら、それは残念だったわね」
ふふ、と微笑んだ女性に、受付さんが「ラファイエット様、わざわざいらしてくださったのですか?」と声を掛けて、慌てて近づいてきた。
やっぱり偉い人なのかも。
研究者っぽい雰囲気でもあるけどなぁ。
「サマナ様の研究室を訪ねたついでに、資料を受け取りに来ただけよ」
「あ、資料ですね。こちらです」
受付さんが冊子を渡すと、確認したラファイエットさんが「ありがとう」と微笑んだ。
「モンスターの大規模襲撃があったのに、第三の街は想定よりも随分と被害が少なかったようね」
「旅人の皆さんの活躍がすごかったようですよ」
受付さんからチラリと視線を向けられた。
そうです! 僕がその活躍したプレイヤーです!
まぁ、受付さんはそんなこと知らないんだろうけど。
いや、知ってるのかな? 渡した資料が第三の街襲撃の報告書のたぐいなら、僕の情報が載っててもおかしくない。
「あと、古竜でしょう?」
キラッと輝いた目をしながら、ラファイエットさんが微笑む。
受付さんの頬が引き攣った。
「そ、そうらしいですね。ちょっと怖いですけど、制御はされていたみたいです」
「ふふ、そうじゃなければ、お父様が許可を出さないわ。信頼してるテイマーのモンハさんからの保証があったから、その情報を信じて許可を出したのよ」
モンちゃんの知り合いなのかな?
探究心に満ちた眼差しで資料に目を通すラファイエットさんの言葉が、ちょっと引っかかる。特にお父様が許可を出さないわってところに。
ラファイエットさんのお父様って、もしかして——
「陛下も、凄い決断をされましたよね……」
「そうね。古竜を味方として使うなんて、古代王国の王のようだと、心躍っていらっしゃったようだけれど」
いたずらっ子のように微笑むラファイエットさんと、それに対して「少年のような方ですよねー、陛下は」と苦笑する受付さんの言葉で、答えが出たようなものだ。
——ほらー! やっぱりラファイエットさんのお父様って王様じゃん! つまり、ラファイエットさんは王女様!?
マジマジと見つめる。お供もつけてないから、王女様っぽくない。自立した働く女性って感じだ。
そんなラファイエットさんの頭上に、ピコンと旗が立った。お子様ランチについてそうな可愛い旗だ。ウサギのイラストが載ってる。
「……なにこれ?」
〈フラグ関連の称号を保有した状態で、シークレットミッション『国の重要NPCと出会う』をクリアしました。スキル【フラグ可視化】が贈られます〉
なんか変なスキルを入手しちゃったぞ?
1,411
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。