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8章 新たな地へ
284.もふもふ教の影響力
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カジノで遊んだ後は、船内の探索です。
ラファイエットさんに聞いたら、船員以外侵入禁止の場所と鍵がかかった部屋を除けば、どこでも入っていいんだって。ついでに、僕の客室にも行くぞ。
探索メンバーはスラリン、ユキマル、ナッティのちっちゃい組。さすがに廊下とか狭いもんね。
「探索隊隊員、面白そうなところがあったら報告してください!」
「きゅぴっ(らじゃー!)」
僕のノリにあわせて気合いを入れてくれたスラリンとほのぼのと頷くユキマル・ナッティを連れて、どんどんと廊下を進む。
まずは僕の客室だー。
ラファイエットさんは特別客室を使ってて、他にお客さんがいないから、僕は一等客室を使わせてもらえるらしいんだ。
船の上階だよー。
時折通りがかる船員さんたちに、微笑ましげに見送られながら、一等客室があるエリアに到着。
「僕たちの部屋、ここみたいだよー」
もらっていた鍵を使って解錠する。
両開きの扉を押し、中に入った瞬間、大きな窓から青い空が見えた。
「——おお! きれいー!」
パタパタと走って窓際に寄る。ベランダがあるみたいだから、開けちゃえ。
ふわっと香る潮のにおい。穏やかな波の音が、心を癒やしてくれる。
「ぴぅ(いいところだね)」
「きゅぃ(海だー。漁する?)」
「きゅーきゅい(さすがに海面が遠すぎない? 帰ってこれなくなるわよ)」
スラリンたちが話してる声を聞きながら、ベランダにあるデッキチェアに寝そべる。南国バカンス気分~。
「……ハッ、寝ちゃうところだった!」
ログアウトしかけて、身を起こす。
船全体がセーブ地点になってるから、どこでログアウトしても問題ないんだけど、時間がもったいないもんね。
だって、船旅は四日間(リアルで一日)しかないし。
「部屋も豪華ー」
一等客室には、大きなベッドとウェルカムフルーツが用意されたテーブルセットなどがあった。
雰囲気が高級ホテルなんだよ。リアルじゃ体験できない感じ。
「マットレスもいいねー」
ベッドに飛び乗って、テシテシと叩いて確かめる。
僕の体重は軽いから、どうだろうって心配してたけど、大丈夫だった。寝心地よさそう。
「きゅぃ(他のところも探索したい!)」
「そうだね。行こっか」
少しごろごろした後に、探索再開。
ルールルンと鼻歌を歌うと、スラリンたちもそれぞれに鳴き声で合わせてくれた。
客室エリアを離れて、レストランがあるエリアへ。夜は無料ディナーがあるんだって。楽しみ。
「♪——もふもーふ、プリッティ!」
歌ったところで、レストランに到着。
そこに入ろうとすると、それより先に誰かが飛び出してきた。
「い、今の歌はなんですか!?」
「えっ、急になに?」
女性が僕を見て、すぐさま膝を折り、視線を合わせてくる。キラキラとした眼差しを感じた。
こういう表情、どこかで見たことあるぞ……あ、シェルさんだ! 音楽に情熱を燃やしてる時のシェルさんって、こんな表情をしてたや。
「すみません、小さいお方。私、神殿楽士団のフルリーと申します」
「僕はモモだよー。神殿楽士団ってなに?」
フルリーがガクッと肩を落とした。
もしかして有名な団体だったのかな? 知らなくてごめんね。
「神殿楽士団は、王都の神殿に所属する楽士団です。儀式の際に音楽を奏でたり、皆様と合唱する際の演奏をしております」
「へぇ、そうなんだ」
もふもふ教で歌披露をする時の、シェルさんみたいなものか。
僕が納得して頷くと、フルリーさんは再び身を乗り出した。
「実は私は作曲担当であり、聖歌の研究もしているのですが、先ほどの歌には聖なるパワーが秘められているように感じられまして……! いずこかの聖なる神を讃える曲ではありませんか!?」
先ほどの歌? あ、もふもふプリティか。
……うぅん、聖なる神かどうかはわからないけど、もふもふ神扱いされてる僕を歌ったものであるのは間違いないね。
聖歌の研究者さんに、聖なるパワーって言われちゃうと、正直『マジで……?』って感じなんだけど。
「さっきの歌は、友だちが僕をイメージして作ってくれたんだよ」
「モモさんを……」
「出航した時に歌ったの聞いてなかった?」
「出航の時は、楽器の調整で忙しくしていたので……」
フルリーさんが、呆然とした感じで応える。そんなに驚くことだった?
スラリンたちが『いい歌だよね』『ノリノリになれるね』『神じゃないって歌ってるけど、モモはもう神なのよね?』と囁き合ってる。
うん、ナッティ正解。僕、正式にもふもふ教の神認定されてるから、ちょっと歌変えた方がいいかなーって思ってる。
でも、自分で『僕は神だよ!』って歌うの恥ずかしくない? 厨二病うさぎ爆誕って感じにならない?
一回くらい『僕の封じられた右手が疼く……!』的なこと言ってみたい気もするけど。
そんなことを考えていたら、ふとルトの顔が思い浮かんだ。残念なものを見る目で、首を横に振ってる。
……想像の中だけど、ルトに止められたから、一旦なしにしておくね。
「……もしや、あなたは、最近王都で話題のもふもふ教の……?」
「フルリーさんも知ってるんだ? ラファイエットさんも知ってたもんなぁ」
思った以上に、もふもふ教の知名度がすごい件。
タマモたち、布教がんばってるんだなぁ……
「確かに、魅力的なもふもふ……!」
「ありがとー」
褒めてもらえたので、ふりふりと手を振ってファンサービス。
あ、握手がいいの? 差し出された手にポンッとタッチしたら、柔く握られた。
フルリーさんの顔が笑み崩れてる。
これがちっちゃいもふもふパワー!
とくとご堪能あれ。
ラファイエットさんに聞いたら、船員以外侵入禁止の場所と鍵がかかった部屋を除けば、どこでも入っていいんだって。ついでに、僕の客室にも行くぞ。
探索メンバーはスラリン、ユキマル、ナッティのちっちゃい組。さすがに廊下とか狭いもんね。
「探索隊隊員、面白そうなところがあったら報告してください!」
「きゅぴっ(らじゃー!)」
僕のノリにあわせて気合いを入れてくれたスラリンとほのぼのと頷くユキマル・ナッティを連れて、どんどんと廊下を進む。
まずは僕の客室だー。
ラファイエットさんは特別客室を使ってて、他にお客さんがいないから、僕は一等客室を使わせてもらえるらしいんだ。
船の上階だよー。
時折通りがかる船員さんたちに、微笑ましげに見送られながら、一等客室があるエリアに到着。
「僕たちの部屋、ここみたいだよー」
もらっていた鍵を使って解錠する。
両開きの扉を押し、中に入った瞬間、大きな窓から青い空が見えた。
「——おお! きれいー!」
パタパタと走って窓際に寄る。ベランダがあるみたいだから、開けちゃえ。
ふわっと香る潮のにおい。穏やかな波の音が、心を癒やしてくれる。
「ぴぅ(いいところだね)」
「きゅぃ(海だー。漁する?)」
「きゅーきゅい(さすがに海面が遠すぎない? 帰ってこれなくなるわよ)」
スラリンたちが話してる声を聞きながら、ベランダにあるデッキチェアに寝そべる。南国バカンス気分~。
「……ハッ、寝ちゃうところだった!」
ログアウトしかけて、身を起こす。
船全体がセーブ地点になってるから、どこでログアウトしても問題ないんだけど、時間がもったいないもんね。
だって、船旅は四日間(リアルで一日)しかないし。
「部屋も豪華ー」
一等客室には、大きなベッドとウェルカムフルーツが用意されたテーブルセットなどがあった。
雰囲気が高級ホテルなんだよ。リアルじゃ体験できない感じ。
「マットレスもいいねー」
ベッドに飛び乗って、テシテシと叩いて確かめる。
僕の体重は軽いから、どうだろうって心配してたけど、大丈夫だった。寝心地よさそう。
「きゅぃ(他のところも探索したい!)」
「そうだね。行こっか」
少しごろごろした後に、探索再開。
ルールルンと鼻歌を歌うと、スラリンたちもそれぞれに鳴き声で合わせてくれた。
客室エリアを離れて、レストランがあるエリアへ。夜は無料ディナーがあるんだって。楽しみ。
「♪——もふもーふ、プリッティ!」
歌ったところで、レストランに到着。
そこに入ろうとすると、それより先に誰かが飛び出してきた。
「い、今の歌はなんですか!?」
「えっ、急になに?」
女性が僕を見て、すぐさま膝を折り、視線を合わせてくる。キラキラとした眼差しを感じた。
こういう表情、どこかで見たことあるぞ……あ、シェルさんだ! 音楽に情熱を燃やしてる時のシェルさんって、こんな表情をしてたや。
「すみません、小さいお方。私、神殿楽士団のフルリーと申します」
「僕はモモだよー。神殿楽士団ってなに?」
フルリーがガクッと肩を落とした。
もしかして有名な団体だったのかな? 知らなくてごめんね。
「神殿楽士団は、王都の神殿に所属する楽士団です。儀式の際に音楽を奏でたり、皆様と合唱する際の演奏をしております」
「へぇ、そうなんだ」
もふもふ教で歌披露をする時の、シェルさんみたいなものか。
僕が納得して頷くと、フルリーさんは再び身を乗り出した。
「実は私は作曲担当であり、聖歌の研究もしているのですが、先ほどの歌には聖なるパワーが秘められているように感じられまして……! いずこかの聖なる神を讃える曲ではありませんか!?」
先ほどの歌? あ、もふもふプリティか。
……うぅん、聖なる神かどうかはわからないけど、もふもふ神扱いされてる僕を歌ったものであるのは間違いないね。
聖歌の研究者さんに、聖なるパワーって言われちゃうと、正直『マジで……?』って感じなんだけど。
「さっきの歌は、友だちが僕をイメージして作ってくれたんだよ」
「モモさんを……」
「出航した時に歌ったの聞いてなかった?」
「出航の時は、楽器の調整で忙しくしていたので……」
フルリーさんが、呆然とした感じで応える。そんなに驚くことだった?
スラリンたちが『いい歌だよね』『ノリノリになれるね』『神じゃないって歌ってるけど、モモはもう神なのよね?』と囁き合ってる。
うん、ナッティ正解。僕、正式にもふもふ教の神認定されてるから、ちょっと歌変えた方がいいかなーって思ってる。
でも、自分で『僕は神だよ!』って歌うの恥ずかしくない? 厨二病うさぎ爆誕って感じにならない?
一回くらい『僕の封じられた右手が疼く……!』的なこと言ってみたい気もするけど。
そんなことを考えていたら、ふとルトの顔が思い浮かんだ。残念なものを見る目で、首を横に振ってる。
……想像の中だけど、ルトに止められたから、一旦なしにしておくね。
「……もしや、あなたは、最近王都で話題のもふもふ教の……?」
「フルリーさんも知ってるんだ? ラファイエットさんも知ってたもんなぁ」
思った以上に、もふもふ教の知名度がすごい件。
タマモたち、布教がんばってるんだなぁ……
「確かに、魅力的なもふもふ……!」
「ありがとー」
褒めてもらえたので、ふりふりと手を振ってファンサービス。
あ、握手がいいの? 差し出された手にポンッとタッチしたら、柔く握られた。
フルリーさんの顔が笑み崩れてる。
これがちっちゃいもふもふパワー!
とくとご堪能あれ。
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