もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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8章 新たな地へ

296.お祭り準備中

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 お祭り会場はたくさんの屋台に囲まれた広場だった。
 今夜は近隣の島からも人が来るんだって。スタ島は周囲の島々の中心的存在で、交流の場になっているらしい。

 ……近隣にも島があるんだね? それは、僕の船で行ける?
 気になるから、時間ができたら探検しに行ってみよう。

「――じゃあ、あんたさんはここでいいかね? ちょっと狭いが……」
「十分だよ、ありがとう!」

 トルドさんに紹介されたお祭り実行役員の人に、お祭り会場の端の方での出店を指示された。突然の参加だったから、場所をもらえるだけありがたい。

 そろそろ夕方が近い時間。
 屋台の準備を急がなきゃ。どんな料理を出そうかなぁ。食べ物だけじゃなくて、便利アイテムを売ってもいいよね!

 久しぶりに屋台を取り出して設置する。
 うさ耳屋台、改めて見ても可愛いなぁ。近くの屋台の人にぎょっとされてるけど、たぶんすぐに慣れてくれるはず。

「お魚料理は周りでたくさん売ってるだろうから、僕は少なめにして、甘いものを多めに売ろうかな」

 食後のデザートは別腹で買いたくなるでしょ?
 僕は一端いっぱしの商人なので、商売戦略もお手の物なのです! ふふん。

 たくさんイカ料理を作って、屋台に並べる。
 今回はバターしょう油焼き、お好み焼き、たこ焼きのイカ版、イカフライなど、香りがよくて食欲をそそりそうなメニューにした。
 他にも、はじまりの街周辺で獲れた魚介類の料理を用意。スタ島では珍しいかもしれないし。

 それ以外には、僕の農地で採れた果物を使ったデザートを作った。
 フルーツゼリー、フルーツポンチ、フルーツ大福、イチゴ飴、ケーキ、などなど。ケーキとかには青乳牛サファカウのミルクを使ってるから、しっとり優しい甘さだよ。
 どれも美味しそう。僕が自分で食べたくなっちゃう。

「お店番は交代でしようかな~」

 屋台は売買システムでほぼ対応できるけど、店番はいた方がいいもんね。
 というわけで、スラリンとユキマル、ペタを追加で召喚した。

「きゅぃ(屋台するの?)」
「うん、お店番よろしくね。交代で一緒にお祭りを見て回ろう!」
「ぴぅ(楽しそうだね)」
「くるる(モモはどこでも楽しそう)」

 ワイワイと話している三体にヒスイを紹介してから、イカ料理を配る。スラリンたちにも食べてもらいたかったし。

「きゅぃ(美味しい! 僕、このお好み焼き、好きだよ)」
「ぴぅ(ボクはイカフライがいいな)」
「きゅーきゅい(ナッツほどじゃないけど、美味しいわよ)」

 スラリンとユキマルが嬉しそうに食べてる。喜んでもらえてよかったー。
 ナッティはナッツの方が好みかな? フロランタンをあげたら、尻尾を振ってわかりやすくテンションが上がってた。

「くるる(キュウリ……)」
「あー……イカとキュウリの酢の物作るね!」

 寂しそうなペタを見て、慌てて料理を追加する。
 ペタ、キュウリ好きすぎだよね。
 酢の物も美味しくできたし、これも商品として売っちゃおう。口をさっぱりさせたい時にオススメ!

 嬉しそうにパクパクと食べてるペタを見て、満足感を覚えながら、屋台の準備を終わらせる。
 屋台が初めてなヒスイとナッティに、店番の方法を教えようと思ったら――

「ヒスイ、食べすぎじゃない?」

 スラリンたちのために出しておいたイカ料理を食い尽くさんばかりの勢いで、ヒスイがガブガブと食べていた。
 スラリンたちは『イカが好きなんだねー』と微笑ましげに見守ってる。優しいね。

「……これ、イカをまた狩らないとダメかも?」

 ヒスイの偏食っぷりを考えると、早急に海賊探しをしないといけない気がする。
 小型帆船で船旅したら出会えるかなぁ。

 そんなことを考えながら、屋台の店番方法を教えたところで、空に光の花が咲いた。ドンッと大きな音が鳴る。花火だ。

「『豊漁祈願祭』始まりだー。食って飲んで食いまくれー!」

 開始宣言がされると、いろんなところから「今年も豊漁に!」「神さまよろしく!」などの声が上がる。
 結構簡易的なお祭りなんだね? 厳かな感じはまったくしないけど、こういうのも楽しくていいねー。

「ここ、もう買える?」

 不意に声をかけられた。屋台のお客さんだ。
 慌てて販売側に立ち、にこりと微笑みかける。

「買えるよー。好きなものをどうぞ!」
「うん、この屋台目立つから、来た時から気になってたんだよね――って、海賊烏賊パイレイカ!?」

 お客さんの声が大きくなった。
 にぎわいを増していた周囲の人々が、パッと振り向いて僕たちを凝視する。え、勢いが凄すぎて、ちょっと怖いんだけど……?

 スラリンたちが僕の近くに集まった。守ってくれようとしてるらしい。さすがに危害を加えられることはないだろうから、安心してー。

「う、うん。そうだけど……もしかして、ここだと特別な食材?」
「そりゃそうだよ! 海賊烏賊パイレイカっていうのは海の悪魔! 漁師の天敵! それをこんな美味そうな料理として見ることになるなんて……!」

 なるほど? 海賊烏賊パイレイカって、一般的な食材ではないんだね?
 考えてみると、この漁村で使われてる小舟で海賊烏賊パイレイカと戦うのは絶対に無理だ。となると、海賊烏賊パイレイカを狩って食材にするのは難しいはず。

「実際に美味しいよ。ねー」
「にゃ(世界一美味しい食べ物にゃ!)」

 ヒスイに視線を向けたら、キラッと輝いた瞳で力強い頷きが返ってきた。
 お、おう……海賊烏賊パイレイカを好きな気持ちがすごく伝わってきたよ。

「では、このたこ焼き(イカ)というのを一つ」
「はーい、どうぞ!」

 たこ焼きなのにイカという矛盾を指摘してこなかったなぁ。もしかして、タコも一般的じゃない? そういえば、僕もタコは持ってないかも。

 お客さんは受け取ったたこ焼き(イカ)をおそるおそる口に運ぶ。
 周囲の人たちは、その様子を固唾を飲んで見守っていた。そんな恐ろしげに見なくてもいいのに。

「……う、うまいっ!」

 お客さんの目が輝く。口に合ったみたいでよかった。
 にこにこと微笑んでいると、いつの間にか屋台の前に行列が――

「おれもたこ焼き(イカ)を一つ!」
「お好み焼きってのも、海賊烏賊パイレイカを使ってるのか? じゃあ、それを一つ!」
「バターしょう油焼き、こっちにちょうだい!」

 ふぎゃー、次々に注文が来る!
 みんなすぐにお金を支払って、イカ料理を買っていくから、在庫がみるみる内に減っていった。

 これは……早急に作り足さなくちゃ!
 商人としては大儲けできるのは嬉しいけど、お祭りを楽しみたいよ~。

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