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10章 海は広くて冒険いっぱい
375.街散策開始です
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海精霊につれられて展望台からおりると、そこは木のような海草が揺らめき、貝殻やサンゴなどで色鮮やかに飾られた林のような場所だった。
キラッと輝く小石が転がってたり、ふよーっとクラゲのようなものが浮いてたり、見てるだけで楽しくなってくる。
「面白いところだねー。陸上とは違った感じ。海の中だけど、水の代わりに空気がある感じ?」
どう表現すればいいかわからないけど、ワクワクするような不思議な光景なのは間違いない。
きょろきょろと落ち着きなく周囲を観察しながら歩いていると、海精霊の方からクスクスと微笑む声が聞こえてくる。
『そんなに楽しんでもらえて嬉しいわ。きっと、海の王もお喜びになるでしょうね』
「海の王?」
なんか凄そうな名前が聞こえたぞ。
海精霊に視線を向けると、すぐに察してもらえた。
『海の王は遥か昔にこの海底都市を築いた方よ。海のハイエルフのお一人ね』
「ハイエルフ……それって、エルフの上位種的な感じ?」
『そうね。現在のこの国の王侯貴族のほとんどはハイエルフよ』
「待って。海底都市って、イノカン国王とは別に王様がいるの?」
予想外な事実に、思わず目を見張る。
海精霊はそう問われたことに驚いているようだ。
『ええ、そうよ。リュウグウは独立した都市国家だもの』
「……知らなかったなぁ」
そんなこと、ラファイエットさん言ってなかったよね? 聞き逃してただけの可能性もあるけど。
まぁ、海底都市リュウグウが独立国家であろうと、僕には関係ないかも? 国が違うからって、パスポートとかが必要なわけじゃなさそうだし。
「そっか。どうせ王様に会うことなんてないだろうから、気にしなくていっか」
なぜかピコンと旗が立った気がするけど、これはきっと幻覚だよ! フラグ可視化スキルはオフにしてるもん。
「きゅぃ(エルフってどんな人? モモの友だちと一緒?)」
不意にスラリンに問われて、僕は首を傾げた。
友だちのエルフといえば、もふもふ教のミレイだ。でも、彼女はプレイヤーだから、この世界のエルフと同一視したらダメなんじゃないかな。
『あら、あなたの友だちにエルフがいるの? 海のエルフということはなさそうだから、森のエルフかしら。それとも、まさか空のエルフ? 彼らは苦手なのよねぇ』
「いや、そのどれでもないと思うよ。しいて言うなら異世界のエルフかなぁ? それより、空のエルフを知ってるんだ?」
他のエルフについても情報をもらえそう、と聞いてみたけど、海精霊は『私自身は会ったことないわ』と答えるだけだった。
会ったことがないのに苦手と言われる空のエルフに、ちょっぴり興味が湧く。生理的に受け付けないってやつ? そうだったらなんとなく可哀想。
『空のエルフはともかく、海のエルフなら、この街でいくらでも会えるわよ。ほら、噂をしていれば——』
海精霊がスッと前方を指す。
いつの間にか海の林を抜けて、街中に入っていたようだ。石畳の通り沿いに、木造の色鮮やかな建物が並んでいる。そのほとんどがお店のようで、間口は大きく開放され、飾り棚にたくさんのアイテムが置かれていた。一部、レストランのような場所もある。
街中はポツポツと人影があり、たいてい耳が長く尖っている姿だ。容姿は端麗で、青系の髪や瞳の人が多い。
「海のエルフ?」
『そうよ。少し気難しい者もいるけれど、よそ者を嫌うほどではないから、気軽に声をかけたらいいわ』
「……そうだねぇ」
海精霊にはそう答えたけど、ちょっと難しい気がする。だって、海のエルフはみんな忙しそうに動き回ってるから。お仕事の邪魔はできないなぁ。
あ、でも、お店で何か買うついでに話しかけるのはいいかも?
「——ちょっとお買い物したい!」
『お好きにどうぞ。でも、あなたここでの通貨を持っているの?』
「……え」
予想外なことを言われた。
ポカンと固まる僕に、海精霊は『やっぱり……』と呟きながら肩をすくめる。
『定期船で来る人はみんな船の中で両替するそうだけれど、あなた、違う方法で来たんじゃない? それならまずは両替ね』
「お願いします……」
そうです、ちょっぴりズルしました……としょんぼりしながら海精霊の後を追う。まさかこんな罠があったなんて知らなかったんだよ。
しばらく歩くと、一軒の店に辿り着いた。いや、店というか——
「商業ギルド?」
『——の、支店ね。イノカン国との交易を邪魔していたモンスターが倒されて、ようやくまともな業務を再開できたところよ。まだ忙しないけれど、気にしないで』
見慣れた商業ギルドのマークがついた扉を開け中に入ると、パタパタと動き回るたくさんの人がいた。ここにいるのは半分が人間で、半分がエルフって感じ。
カウンターに人がいたけど、海精霊はスルーして、壁際にある機械に僕を案内した。
「これは何?」
『両替機よ。ここをタッチして金額を設定すれば、自動的にこの国のお金に両替されるわ。船の中での両替と違って、手数料をとられるから気をつけてね』
「……なるほどー。一リョウが一キィンで、千リョウごとに手数料十リョウかぁ」
結構手数料かかるなぁ、と思いながら五万リョウを両替する。これだけあれば当面は足りるでしょ。
お金は用意できたし、早速お買い物に行くぞ。何か掘り出し物を見つけたいな~。
キラッと輝く小石が転がってたり、ふよーっとクラゲのようなものが浮いてたり、見てるだけで楽しくなってくる。
「面白いところだねー。陸上とは違った感じ。海の中だけど、水の代わりに空気がある感じ?」
どう表現すればいいかわからないけど、ワクワクするような不思議な光景なのは間違いない。
きょろきょろと落ち着きなく周囲を観察しながら歩いていると、海精霊の方からクスクスと微笑む声が聞こえてくる。
『そんなに楽しんでもらえて嬉しいわ。きっと、海の王もお喜びになるでしょうね』
「海の王?」
なんか凄そうな名前が聞こえたぞ。
海精霊に視線を向けると、すぐに察してもらえた。
『海の王は遥か昔にこの海底都市を築いた方よ。海のハイエルフのお一人ね』
「ハイエルフ……それって、エルフの上位種的な感じ?」
『そうね。現在のこの国の王侯貴族のほとんどはハイエルフよ』
「待って。海底都市って、イノカン国王とは別に王様がいるの?」
予想外な事実に、思わず目を見張る。
海精霊はそう問われたことに驚いているようだ。
『ええ、そうよ。リュウグウは独立した都市国家だもの』
「……知らなかったなぁ」
そんなこと、ラファイエットさん言ってなかったよね? 聞き逃してただけの可能性もあるけど。
まぁ、海底都市リュウグウが独立国家であろうと、僕には関係ないかも? 国が違うからって、パスポートとかが必要なわけじゃなさそうだし。
「そっか。どうせ王様に会うことなんてないだろうから、気にしなくていっか」
なぜかピコンと旗が立った気がするけど、これはきっと幻覚だよ! フラグ可視化スキルはオフにしてるもん。
「きゅぃ(エルフってどんな人? モモの友だちと一緒?)」
不意にスラリンに問われて、僕は首を傾げた。
友だちのエルフといえば、もふもふ教のミレイだ。でも、彼女はプレイヤーだから、この世界のエルフと同一視したらダメなんじゃないかな。
『あら、あなたの友だちにエルフがいるの? 海のエルフということはなさそうだから、森のエルフかしら。それとも、まさか空のエルフ? 彼らは苦手なのよねぇ』
「いや、そのどれでもないと思うよ。しいて言うなら異世界のエルフかなぁ? それより、空のエルフを知ってるんだ?」
他のエルフについても情報をもらえそう、と聞いてみたけど、海精霊は『私自身は会ったことないわ』と答えるだけだった。
会ったことがないのに苦手と言われる空のエルフに、ちょっぴり興味が湧く。生理的に受け付けないってやつ? そうだったらなんとなく可哀想。
『空のエルフはともかく、海のエルフなら、この街でいくらでも会えるわよ。ほら、噂をしていれば——』
海精霊がスッと前方を指す。
いつの間にか海の林を抜けて、街中に入っていたようだ。石畳の通り沿いに、木造の色鮮やかな建物が並んでいる。そのほとんどがお店のようで、間口は大きく開放され、飾り棚にたくさんのアイテムが置かれていた。一部、レストランのような場所もある。
街中はポツポツと人影があり、たいてい耳が長く尖っている姿だ。容姿は端麗で、青系の髪や瞳の人が多い。
「海のエルフ?」
『そうよ。少し気難しい者もいるけれど、よそ者を嫌うほどではないから、気軽に声をかけたらいいわ』
「……そうだねぇ」
海精霊にはそう答えたけど、ちょっと難しい気がする。だって、海のエルフはみんな忙しそうに動き回ってるから。お仕事の邪魔はできないなぁ。
あ、でも、お店で何か買うついでに話しかけるのはいいかも?
「——ちょっとお買い物したい!」
『お好きにどうぞ。でも、あなたここでの通貨を持っているの?』
「……え」
予想外なことを言われた。
ポカンと固まる僕に、海精霊は『やっぱり……』と呟きながら肩をすくめる。
『定期船で来る人はみんな船の中で両替するそうだけれど、あなた、違う方法で来たんじゃない? それならまずは両替ね』
「お願いします……」
そうです、ちょっぴりズルしました……としょんぼりしながら海精霊の後を追う。まさかこんな罠があったなんて知らなかったんだよ。
しばらく歩くと、一軒の店に辿り着いた。いや、店というか——
「商業ギルド?」
『——の、支店ね。イノカン国との交易を邪魔していたモンスターが倒されて、ようやくまともな業務を再開できたところよ。まだ忙しないけれど、気にしないで』
見慣れた商業ギルドのマークがついた扉を開け中に入ると、パタパタと動き回るたくさんの人がいた。ここにいるのは半分が人間で、半分がエルフって感じ。
カウンターに人がいたけど、海精霊はスルーして、壁際にある機械に僕を案内した。
「これは何?」
『両替機よ。ここをタッチして金額を設定すれば、自動的にこの国のお金に両替されるわ。船の中での両替と違って、手数料をとられるから気をつけてね』
「……なるほどー。一リョウが一キィンで、千リョウごとに手数料十リョウかぁ」
結構手数料かかるなぁ、と思いながら五万リョウを両替する。これだけあれば当面は足りるでしょ。
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