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10章 海は広くて冒険いっぱい
374.到着です!
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僕の思いが伝わったのか、海底都市リュウグウに到着したのはそのすぐ後だった。
街を包むドーム状の透明な膜に、僕たちを包む膜が触れた途端、ふわっと体が浮き上がり、膜から投げ出されてそのまま街の外れの展望スペースのようなところに落下したのだ。
〈〈あるプレイヤーが初めて海底都市リュウグウに到達しました。海底都市リュウグウのマップが公開されます〉〉
ワールドアナウンスはただのお知らせだったからさておき、今は僕の状態が問題です!
空中で体勢を整え、慌てて飛翔スキルを使う……までもなく、スタッとおり立てた。思ったより高さも速度もなかったみたいだ。スラリンたちも危なげなく着地してる。
「でも、急にこれはビックリするじゃん!」
誰に対してでもなく文句を叫んだところで、目の前に妖精のようなものがパッと現れたから、驚いて咄嗟に口を噤む。
霊峰の別時空イベントで出会った花精霊に似てるけど、髪やドレスの色合いは青色で、ちょっと大人っぽい雰囲気。透明感のある羽をパタパタと動かして、おっとりと微笑んでる。
『あらまぁ、天兎がこのような海の底に来るだなんて、天変地異の前触れかしら』
「そんな不吉なこと言わないで!? 僕、どっちかというと、幸運の使者だと思うよ!」
とっても心外なことを言われて、反射的に抗議する。僕のリアルラックをナメないでよね。
ちょっとトラブルを起こしやすい気がしなくもないような、と否定しきれない感じはあるけど、僕は周りに幸運を振りまいてると思う! タマモは会う度に幸せそうにしてくれるし!
ちょっぴり目を逸らしちゃってるのは、うん、まぁ、自覚がないわけではないからだよ?
『ふふ、天兎が幸運を司ることは知ってるわよ』
「え、そうなの?」
意外なことを言われた。幸運体質なのって、天兎の種族特性な部分もあったんだ? ……んん、前に聞いたことがあるような、ないような?
首を傾げる僕に、妖精さんはにこりと微笑みかける。
『あら、自分のことを知らないのね。でも、私は海精霊だから、花精霊ほど天兎のことは知らないの。あまり教えることがなくてごめんなさいね』
「ううん、別にそれはいいけど」
おお、この妖精さん——もとい海精霊さんは花精霊のことも知ってるのか。ちょっと鑑定させてもらおうかな。
——————
【海精霊】
水属性のモンスターで、精霊の一種
基本的に戦いを挑むことはなく、海の中を泳ぎ漂っている
普段は不可視の存在であり、姿を見られるのは限られた場所だけ
——————
説明文も花精霊と似てる。
姿を見られるのは、ここがその限られた場所だからかな。海底都市リュウグウだし、海のエルフがいるって情報もあるから、それは不思議じゃない。
「きゅぃ(いつまでここにいるの?)」
不意にスラリンが鳴いた。視線は上に向けられている。
つられて僕も上を見て、「ほわっ!?」と声がこぼれた。青と黒の海に、無数の白い玉が浮かびおりてきてる。心霊映像で出てくるオーブみたいでビビる。
いや、普通に考えて、僕たちが入ってたシャボン玉みたいな膜と同じものだってわかってるんだよ。ただ、外からはこう見えるのかぁ、って微妙な気分にはなったけど。
『シャボーンは全部ここにおりてくるわ。このままここにいたら邪魔になりそうだから、こっちにいらっしゃいな』
僕たちが使った膜はシャボーンという名前らしい。そういえば鑑定してなかったな、と思い出して、海精霊につれられて移動しながら、全鑑定スキルを使ってみた。
——————
【シャボーン】
泡を意味する古代語で名付けられた海中移動用の乗り物
内部は陸上同様に空気が存在している
下降用と上昇用がある
内部から強い衝撃を与えると壊れる可能性があるため注意
——————
今さら怖い事実を知ってしまった。中から外に攻撃したら、壊れて海の中に投げ出されてたかもしれないんだ!?
予想してたからしなかったとはいえ、そういう注意事項は最初に知りたかったよ。
「あ、もしかして、定期船に乗ってたら、ちゃんと注意されてたかも?」
僕がズルみたいな方法で来ちゃったから、何も知らなかっただけの可能性を察して、不満も何もかもポーイと放り投げた。
いち早く問題なく来られてよかったね! ……そういうことにしましょう。
『あなたたち、どこか行きたいところがある? 久しぶりのお客様だから、おもてなしするわよ』
円柱状の展望台の側面に沿うようにあった階段を下っていると、海精霊が僕たちを振り返り首を傾げた。
これはもしかして、観光案内してくれる感じ?
「行きたいところ……うぅん? ここに何があるかわからないから、とりあえず楽しそうなところに行きたいな」
公開されたってアナウンスがあったマップを見ても、街の道と奥の方に宮殿があることはわかったけど、散策に便利な情報は一切載ってない。それなら地元民(地元精霊?)にオススメの場所を聞いた方が面白そう!
期待の眼差しで海精霊を見つめる。
海精霊は『あら……』と首を傾げた後、にこりと笑った。
『わかったわ。私の好きな場所を教えてあげる』
「わーい、楽しみ!」
どんなところかな。
着くまで教えてくれないみたいだから、さらにワクワクしちゃうよ!
街を包むドーム状の透明な膜に、僕たちを包む膜が触れた途端、ふわっと体が浮き上がり、膜から投げ出されてそのまま街の外れの展望スペースのようなところに落下したのだ。
〈〈あるプレイヤーが初めて海底都市リュウグウに到達しました。海底都市リュウグウのマップが公開されます〉〉
ワールドアナウンスはただのお知らせだったからさておき、今は僕の状態が問題です!
空中で体勢を整え、慌てて飛翔スキルを使う……までもなく、スタッとおり立てた。思ったより高さも速度もなかったみたいだ。スラリンたちも危なげなく着地してる。
「でも、急にこれはビックリするじゃん!」
誰に対してでもなく文句を叫んだところで、目の前に妖精のようなものがパッと現れたから、驚いて咄嗟に口を噤む。
霊峰の別時空イベントで出会った花精霊に似てるけど、髪やドレスの色合いは青色で、ちょっと大人っぽい雰囲気。透明感のある羽をパタパタと動かして、おっとりと微笑んでる。
『あらまぁ、天兎がこのような海の底に来るだなんて、天変地異の前触れかしら』
「そんな不吉なこと言わないで!? 僕、どっちかというと、幸運の使者だと思うよ!」
とっても心外なことを言われて、反射的に抗議する。僕のリアルラックをナメないでよね。
ちょっとトラブルを起こしやすい気がしなくもないような、と否定しきれない感じはあるけど、僕は周りに幸運を振りまいてると思う! タマモは会う度に幸せそうにしてくれるし!
ちょっぴり目を逸らしちゃってるのは、うん、まぁ、自覚がないわけではないからだよ?
『ふふ、天兎が幸運を司ることは知ってるわよ』
「え、そうなの?」
意外なことを言われた。幸運体質なのって、天兎の種族特性な部分もあったんだ? ……んん、前に聞いたことがあるような、ないような?
首を傾げる僕に、妖精さんはにこりと微笑みかける。
『あら、自分のことを知らないのね。でも、私は海精霊だから、花精霊ほど天兎のことは知らないの。あまり教えることがなくてごめんなさいね』
「ううん、別にそれはいいけど」
おお、この妖精さん——もとい海精霊さんは花精霊のことも知ってるのか。ちょっと鑑定させてもらおうかな。
——————
【海精霊】
水属性のモンスターで、精霊の一種
基本的に戦いを挑むことはなく、海の中を泳ぎ漂っている
普段は不可視の存在であり、姿を見られるのは限られた場所だけ
——————
説明文も花精霊と似てる。
姿を見られるのは、ここがその限られた場所だからかな。海底都市リュウグウだし、海のエルフがいるって情報もあるから、それは不思議じゃない。
「きゅぃ(いつまでここにいるの?)」
不意にスラリンが鳴いた。視線は上に向けられている。
つられて僕も上を見て、「ほわっ!?」と声がこぼれた。青と黒の海に、無数の白い玉が浮かびおりてきてる。心霊映像で出てくるオーブみたいでビビる。
いや、普通に考えて、僕たちが入ってたシャボン玉みたいな膜と同じものだってわかってるんだよ。ただ、外からはこう見えるのかぁ、って微妙な気分にはなったけど。
『シャボーンは全部ここにおりてくるわ。このままここにいたら邪魔になりそうだから、こっちにいらっしゃいな』
僕たちが使った膜はシャボーンという名前らしい。そういえば鑑定してなかったな、と思い出して、海精霊につれられて移動しながら、全鑑定スキルを使ってみた。
——————
【シャボーン】
泡を意味する古代語で名付けられた海中移動用の乗り物
内部は陸上同様に空気が存在している
下降用と上昇用がある
内部から強い衝撃を与えると壊れる可能性があるため注意
——————
今さら怖い事実を知ってしまった。中から外に攻撃したら、壊れて海の中に投げ出されてたかもしれないんだ!?
予想してたからしなかったとはいえ、そういう注意事項は最初に知りたかったよ。
「あ、もしかして、定期船に乗ってたら、ちゃんと注意されてたかも?」
僕がズルみたいな方法で来ちゃったから、何も知らなかっただけの可能性を察して、不満も何もかもポーイと放り投げた。
いち早く問題なく来られてよかったね! ……そういうことにしましょう。
『あなたたち、どこか行きたいところがある? 久しぶりのお客様だから、おもてなしするわよ』
円柱状の展望台の側面に沿うようにあった階段を下っていると、海精霊が僕たちを振り返り首を傾げた。
これはもしかして、観光案内してくれる感じ?
「行きたいところ……うぅん? ここに何があるかわからないから、とりあえず楽しそうなところに行きたいな」
公開されたってアナウンスがあったマップを見ても、街の道と奥の方に宮殿があることはわかったけど、散策に便利な情報は一切載ってない。それなら地元民(地元精霊?)にオススメの場所を聞いた方が面白そう!
期待の眼差しで海精霊を見つめる。
海精霊は『あら……』と首を傾げた後、にこりと笑った。
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