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10章 海は広くて冒険いっぱい
406.もふもふ教会探検
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ダーロンさんやラファイエットさんにお礼を言ってから、もふもふ教教会にやって来ましたー。
中は随分と賑わってるみたい。
僕が入った途端、「きゃーっ」と歓声が上がった。
「こんちゃー」
「っ、生こんちゃー、来た!」
「もふもふ神さま、こんちゃー!」
「こんちゃっちゃー!」
生こんちゃー、って何。
言わんとすることはわかるけど、そんな興奮することかな?
ちょっぴり呆れながら、楽しそうに笑ってるみんなを見て肩をすくめる。ほんとに『こんちゃー』が浸透してるんだなぁ。
新たに生まれている『こんちゃっちゃー』っていう挨拶は、ちょっとどうなんだろうって思うけど……まぁいいや。
「もふもふ神さま、これから島に行くんですよね!?」
「うん、そうだけど……どうして知ってるの?」
ウサギのブローチやウサギ耳のついたフード付きパーカーを着た子が、身を乗り出すようにして聞いてきた。
その勢いも、全身ウサギまみれのファッションも、なんかすごいねぇ。
「もふらーさんがモモさんに無人島入手のお知らせをしたと聞いていましたし、モモさんの目情がここで上がったので、絶対にそうだ、と」
「なるほどー、相変わらず情報伝達速度が鬼速い」
神殿に行く前に会った人たちが掲示板に情報を載せてたんだろうね。
無人島入手のお知らせはもふもふ教なら誰でも知ってただろうし、情報をつなぎ合わせて僕の行動を予測するのは難しくないか。
「──みんな、一緒に行く?」
「「「ぜひ!」」」
一糸乱れぬ返事だった。
キラキラと輝くような目で言われて、断れるわけないし、その必要もないよね。
よーし、みんなで無人島へ遊びに行こう!
「あ、でも、僕、この教会をちょっと見て回りたいな」
「もちろんですよ。私がご案内しましょうか? あ、私、ルナです」
全身ウサギファッションの女の子──ルナが名刺のようなものを差し出してきた。
そこには『魔術士・裁縫士 ルナ』『装備作製ご依頼はフレンドチャットまで。料金は応相談』という言葉が書かれてる。
〈プレイヤー【ルナ】からフレンド登録の申請が来ました。登録しますか?〉
「こんなアイテムがあるんだ?」
「そうなんですよー。商人専用のアイテム【名刺】です。フレンド登録が簡単にできるんですよ。アイテムボックスの容量も食わないですし」
ニコニコと笑いながら解説してくれたルナに頷くついでに、フレンド登録をしておく。
裁縫士として商売してるみたいだし、ルナが着てる服や小物は可愛いし、いつか僕の衣装を依頼してみたいな。リリが拗ねるかもしれないけど。
「そうなんだー。とりあえず、教会を見ながら話そ」
「もちろん! どうぞこちらへー」
ルナにつれられて、たくさんのもふもふ教の人に囲まれながら教会内を案内された。
入ってすぐの礼拝所は、正面に天兎の像があった。銀色に輝いていて、天窓やステンドグラスの光を受けて、神々しさを感じる。
……これ、僕なんだよね?
改めて、僕が神さま扱いされていることを実感して、思わず笑っちゃう。
もふもふ教って、本当に宗教なんだなぁ。
壁にはいくつもステンドグラスがあって、そこにも天兎の姿が描かれていた。
大きな豪華客船の上を飛ぶ姿。
白いドラゴンの頭の上に座っている姿。
スライムたちと踊っているらしき姿。
垂れ耳ウサギたちに囲まれてお茶会をしている姿。
巨大な魚のようなモンスター(もしかして暴走鯱?)と戦う姿。
羽と両腕を広げ、後光が差している姿。
etc.
……全部、心当たりがあるよー。
暴走鯱と戦ったのはまだ最近の出来事なのに、もうステンドグラスになってるんだ? 仕事が早いね!
「どれも素敵ですよね!」
「そうだねー、天兎は可愛いからねー」
これはナルシスト発言じゃないんだよ。天兎全体のことを言ってるからね!
「もふもふ教で集まる時は、教会の外の庭を集会場にする予定だそうで、教会自体はあまり広くないんですよ。あ、でも、データセーブ地点に使える宿泊塔はあります」
礼拝所の壁にある扉を開ける。そこは高い塔に繋がっているようだ。
塔内は壁に沿うように螺旋階段があり、数え切れないほどベッドが並んでいる。
「……上までベッドがあるの?」
「そうですよー。これだけあっても、もふもふ教信徒全員が一度に使用することはできないんですけど……まぁ、王都滞在時の宿代わりなので、これだけあれば十分ですね」
「だろうね」
心から頷いた。これで足りない方がビックリだよ。
僕はホームがあるし、ログアウトする際は毎回帰宅するから、宿泊塔を使うことはなさそうだ。
ここは完全に宿泊用の場所で、すでにたくさんのアバターが寝ているようだから、騒がすのもよくないだろうと、すぐに礼拝所に戻る。
「無人島行きの転移魔法陣はこちらですよー」
ルナが連れて行ってくれたのは、宿泊塔がある扉とは礼拝所を挟んで反対側にある壁の扉だ。
開けるとすぐに、床一面に魔法陣が描かれた小部屋があった。
「一度に転移できるのは最大六人です」
「そっかぁ。じゃあ、早速行っちゃう?」
「行っちゃいましょう!」
微笑むルナと共に転移魔法陣の中に入ると、すぐさま追加で四人やって来た。あらかじめじゃんけんで順番を決めていたらしい。
それぞれ喜びに満ちた表情で「ご一緒しますー」「うふふ、今日の運を使い果たした!」などと言っている。
一緒に転移することの何がそんなに楽しいのかわからないけど、幸せそうだしよかったよ。
〈無人島【もふもふ愛ランド】に転移します。五、四、三、二、一……〉
……うん?
転移前に聞こえてきたアナウンスに首を傾げちゃう。
もふもふアイランドに違う文字が使われてるように聞こえたのは気のせいかな?
中は随分と賑わってるみたい。
僕が入った途端、「きゃーっ」と歓声が上がった。
「こんちゃー」
「っ、生こんちゃー、来た!」
「もふもふ神さま、こんちゃー!」
「こんちゃっちゃー!」
生こんちゃー、って何。
言わんとすることはわかるけど、そんな興奮することかな?
ちょっぴり呆れながら、楽しそうに笑ってるみんなを見て肩をすくめる。ほんとに『こんちゃー』が浸透してるんだなぁ。
新たに生まれている『こんちゃっちゃー』っていう挨拶は、ちょっとどうなんだろうって思うけど……まぁいいや。
「もふもふ神さま、これから島に行くんですよね!?」
「うん、そうだけど……どうして知ってるの?」
ウサギのブローチやウサギ耳のついたフード付きパーカーを着た子が、身を乗り出すようにして聞いてきた。
その勢いも、全身ウサギまみれのファッションも、なんかすごいねぇ。
「もふらーさんがモモさんに無人島入手のお知らせをしたと聞いていましたし、モモさんの目情がここで上がったので、絶対にそうだ、と」
「なるほどー、相変わらず情報伝達速度が鬼速い」
神殿に行く前に会った人たちが掲示板に情報を載せてたんだろうね。
無人島入手のお知らせはもふもふ教なら誰でも知ってただろうし、情報をつなぎ合わせて僕の行動を予測するのは難しくないか。
「──みんな、一緒に行く?」
「「「ぜひ!」」」
一糸乱れぬ返事だった。
キラキラと輝くような目で言われて、断れるわけないし、その必要もないよね。
よーし、みんなで無人島へ遊びに行こう!
「あ、でも、僕、この教会をちょっと見て回りたいな」
「もちろんですよ。私がご案内しましょうか? あ、私、ルナです」
全身ウサギファッションの女の子──ルナが名刺のようなものを差し出してきた。
そこには『魔術士・裁縫士 ルナ』『装備作製ご依頼はフレンドチャットまで。料金は応相談』という言葉が書かれてる。
〈プレイヤー【ルナ】からフレンド登録の申請が来ました。登録しますか?〉
「こんなアイテムがあるんだ?」
「そうなんですよー。商人専用のアイテム【名刺】です。フレンド登録が簡単にできるんですよ。アイテムボックスの容量も食わないですし」
ニコニコと笑いながら解説してくれたルナに頷くついでに、フレンド登録をしておく。
裁縫士として商売してるみたいだし、ルナが着てる服や小物は可愛いし、いつか僕の衣装を依頼してみたいな。リリが拗ねるかもしれないけど。
「そうなんだー。とりあえず、教会を見ながら話そ」
「もちろん! どうぞこちらへー」
ルナにつれられて、たくさんのもふもふ教の人に囲まれながら教会内を案内された。
入ってすぐの礼拝所は、正面に天兎の像があった。銀色に輝いていて、天窓やステンドグラスの光を受けて、神々しさを感じる。
……これ、僕なんだよね?
改めて、僕が神さま扱いされていることを実感して、思わず笑っちゃう。
もふもふ教って、本当に宗教なんだなぁ。
壁にはいくつもステンドグラスがあって、そこにも天兎の姿が描かれていた。
大きな豪華客船の上を飛ぶ姿。
白いドラゴンの頭の上に座っている姿。
スライムたちと踊っているらしき姿。
垂れ耳ウサギたちに囲まれてお茶会をしている姿。
巨大な魚のようなモンスター(もしかして暴走鯱?)と戦う姿。
羽と両腕を広げ、後光が差している姿。
etc.
……全部、心当たりがあるよー。
暴走鯱と戦ったのはまだ最近の出来事なのに、もうステンドグラスになってるんだ? 仕事が早いね!
「どれも素敵ですよね!」
「そうだねー、天兎は可愛いからねー」
これはナルシスト発言じゃないんだよ。天兎全体のことを言ってるからね!
「もふもふ教で集まる時は、教会の外の庭を集会場にする予定だそうで、教会自体はあまり広くないんですよ。あ、でも、データセーブ地点に使える宿泊塔はあります」
礼拝所の壁にある扉を開ける。そこは高い塔に繋がっているようだ。
塔内は壁に沿うように螺旋階段があり、数え切れないほどベッドが並んでいる。
「……上までベッドがあるの?」
「そうですよー。これだけあっても、もふもふ教信徒全員が一度に使用することはできないんですけど……まぁ、王都滞在時の宿代わりなので、これだけあれば十分ですね」
「だろうね」
心から頷いた。これで足りない方がビックリだよ。
僕はホームがあるし、ログアウトする際は毎回帰宅するから、宿泊塔を使うことはなさそうだ。
ここは完全に宿泊用の場所で、すでにたくさんのアバターが寝ているようだから、騒がすのもよくないだろうと、すぐに礼拝所に戻る。
「無人島行きの転移魔法陣はこちらですよー」
ルナが連れて行ってくれたのは、宿泊塔がある扉とは礼拝所を挟んで反対側にある壁の扉だ。
開けるとすぐに、床一面に魔法陣が描かれた小部屋があった。
「一度に転移できるのは最大六人です」
「そっかぁ。じゃあ、早速行っちゃう?」
「行っちゃいましょう!」
微笑むルナと共に転移魔法陣の中に入ると、すぐさま追加で四人やって来た。あらかじめじゃんけんで順番を決めていたらしい。
それぞれ喜びに満ちた表情で「ご一緒しますー」「うふふ、今日の運を使い果たした!」などと言っている。
一緒に転移することの何がそんなに楽しいのかわからないけど、幸せそうだしよかったよ。
〈無人島【もふもふ愛ランド】に転移します。五、四、三、二、一……〉
……うん?
転移前に聞こえてきたアナウンスに首を傾げちゃう。
もふもふアイランドに違う文字が使われてるように聞こえたのは気のせいかな?
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