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3-3.外との関わり
112.マリオネの帰還
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インクとサクにダンジョン内での冒険者対応を任せた結果、ダンジョンの賑わいが増した気がする。
嬉々とした様子でサクの元へ向かう冒険者をモニター越しに半眼で眺め、俺はため息をついた。
死ぬ危険がない状態での女夢魔や男夢魔との対峙は、一部の冒険者にとってご褒美的なものだったらしい。
男の冒険者がそう思うのはわからなくもないけど、常連になってる女性冒険者を見つけてしまうと乾いた笑いが浮かぶ。
「肉食系女子っていうのかな、これ……」
呟きながらモニター映像を切り替えた。
最近はイサムの攻略がマンネリな感じで面白みが薄れてきたし、ラッカルたちは毎回制限区域で変な制限を受けてすぐ撤退するから観察しても利点がないし、ちょっと退屈だ。
「——家庭菜園でもするかな」
元々考えていたスローライフを極めてみるか、と真剣に考える。
そもそも、現在狼族獣人たちが農作業をしている空間は、俺がスローライフの一環として野菜や果物を育てようと考えていた場所なんだ。あそこの一部を借りて、暇つぶしに植物を育ててみるのもいい気がする。
『マスター! 操人形君が帰還しましたよぉ!』
突然操人形の声が響いて、俺は顔を上げた。
俺の背もたれになるように寝そべっていたミーシャも億劫そうに頭を上げたが、すぐに体勢を戻して昼寝を再開する。帰還を祝うつもりはないらしい。
そんなミーシャの態度に苦笑しながら、俺は操人形にひらりと手を振った。
「おかえり、操人形。面倒なことを頼んで悪かったな。旅では問題なかったか」
とりあえず一杯、と俺がビールを差し出すと、操人形は嬉しそうに綻んだ顔で受け取った。
やっぱり操人形のご褒美にはビールだよな。俺も飲もう。
『ぷはーっ! 仕事終わりのビールは最高!』
「同感。けど、報告がまだだぞ?」
『あ、でしたね。えっと、旅での問題はありませんでしたよ。旅慣れたノルンと一緒でしたし。俺もそれなりに慣れてますからね』
風呂上がりの牛乳のようにビールを流し込んだ操人形は、『よっこいしょ』と親父臭い感じで地面に腰をおろしてあぐらをかいた。
追加のビールとスルメを用意する。あ、狼族獣人から枝豆ももらってたんだった。これ塩茹でしよう。
久しぶりの飲み仲間との酒飲みなので、おつまみもいろいろと用意する。こういう時のために、外でも簡易的に調理できる魔導具を買い揃えておいたのだ。
買ったと言っても、冒険者ギルドに対してお金の代わりにちょうだい、とお願いしただけなんだけど。結構いい品質のものをもらえたから満足だ。
カセットコンロみたいな魔導具に、水の入った鍋を置き、塩と枝豆を投入。
スルメは炙るか。これは七輪で調理。炭の香りがつくのがいいんだよ。
『——なんか、すっごく歓迎されてる気がして嬉しいです……!』
操人形の顔が輝いていた。
うん、それは間違ってないぞ。歓迎してる。飲み仲間がいないと、なかなか酒を飲む機会がないしな。
「操人形がいないと、酒を飲むのも楽しくなかったからなー。無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」
『ふあー! マスター、愛してます!』
「え」
両手を広げて抱きついてこようとした操人形に、俺は〈さすがにそれは……〉と思って顔を引き攣らせた。俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はない。
まぁ、リルがすぐに割って入ってくれたから、実際に抱きつかれることはなかったんだけど。
『僕の方がマスターを愛してるもん!』
『ぐえっ、ま、待って、俺を食わないでくださいー!』
リルが操人形をくわえてる。この光景、操人形が旅立つ前にも見た気がするぞ。
それより気になるのは、リルがいつどこから現れたか、だけど。え、さっきまでいなかったよな?
「リル、どこから来たんだ?」
『そこだよー』
ペッと操人形を吐き出したリルが、近くの木陰を指す。
俺が視線を向けると、影兎がひょこっと顔を出して両手を振った。よくリルと一緒に狩りに行ってる子だ。
「……なるほど。影兎の能力か」
『うん。移動しやすくて便利!』
リルはのほほんと嬉しそうにしてるけど、よく考えると神狼と影兎のコンビって最凶だよな……。瞬間移動のごとく神狼が突然現れるって、人間にとっては災難でしかない。
恐ろしい状況が出来上がっていることに遠い目をする俺を見て、リルが不思議そうに首を傾げた。
俺の考えを察している操人形は、顔についたリルのよだれを拭い取りながら『マスター、これヤバくないですか……?』とドン引きした顔だ。
ヤバくないかどうか、と聞かれたら確実にヤバいけど、人間に知られなければ大丈夫……のはず。
「……ま、リルが来てくれてちょうどよかった。操人形から山の状況について報告を聞こうと思ってたんだ。見てきたんだろ?」
『はい、もちろんですよー』
出来上がったつまみを出して、飲み会——もとい報告会を再開する。
リルは『僕、お肉食べたい』と言って、作り置きのジャーキーを頬張っていた。
さて、どんな報告を聞けるかな。
できればあまり手間取らない状況になってたらいいなぁ。
嬉々とした様子でサクの元へ向かう冒険者をモニター越しに半眼で眺め、俺はため息をついた。
死ぬ危険がない状態での女夢魔や男夢魔との対峙は、一部の冒険者にとってご褒美的なものだったらしい。
男の冒険者がそう思うのはわからなくもないけど、常連になってる女性冒険者を見つけてしまうと乾いた笑いが浮かぶ。
「肉食系女子っていうのかな、これ……」
呟きながらモニター映像を切り替えた。
最近はイサムの攻略がマンネリな感じで面白みが薄れてきたし、ラッカルたちは毎回制限区域で変な制限を受けてすぐ撤退するから観察しても利点がないし、ちょっと退屈だ。
「——家庭菜園でもするかな」
元々考えていたスローライフを極めてみるか、と真剣に考える。
そもそも、現在狼族獣人たちが農作業をしている空間は、俺がスローライフの一環として野菜や果物を育てようと考えていた場所なんだ。あそこの一部を借りて、暇つぶしに植物を育ててみるのもいい気がする。
『マスター! 操人形君が帰還しましたよぉ!』
突然操人形の声が響いて、俺は顔を上げた。
俺の背もたれになるように寝そべっていたミーシャも億劫そうに頭を上げたが、すぐに体勢を戻して昼寝を再開する。帰還を祝うつもりはないらしい。
そんなミーシャの態度に苦笑しながら、俺は操人形にひらりと手を振った。
「おかえり、操人形。面倒なことを頼んで悪かったな。旅では問題なかったか」
とりあえず一杯、と俺がビールを差し出すと、操人形は嬉しそうに綻んだ顔で受け取った。
やっぱり操人形のご褒美にはビールだよな。俺も飲もう。
『ぷはーっ! 仕事終わりのビールは最高!』
「同感。けど、報告がまだだぞ?」
『あ、でしたね。えっと、旅での問題はありませんでしたよ。旅慣れたノルンと一緒でしたし。俺もそれなりに慣れてますからね』
風呂上がりの牛乳のようにビールを流し込んだ操人形は、『よっこいしょ』と親父臭い感じで地面に腰をおろしてあぐらをかいた。
追加のビールとスルメを用意する。あ、狼族獣人から枝豆ももらってたんだった。これ塩茹でしよう。
久しぶりの飲み仲間との酒飲みなので、おつまみもいろいろと用意する。こういう時のために、外でも簡易的に調理できる魔導具を買い揃えておいたのだ。
買ったと言っても、冒険者ギルドに対してお金の代わりにちょうだい、とお願いしただけなんだけど。結構いい品質のものをもらえたから満足だ。
カセットコンロみたいな魔導具に、水の入った鍋を置き、塩と枝豆を投入。
スルメは炙るか。これは七輪で調理。炭の香りがつくのがいいんだよ。
『——なんか、すっごく歓迎されてる気がして嬉しいです……!』
操人形の顔が輝いていた。
うん、それは間違ってないぞ。歓迎してる。飲み仲間がいないと、なかなか酒を飲む機会がないしな。
「操人形がいないと、酒を飲むのも楽しくなかったからなー。無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」
『ふあー! マスター、愛してます!』
「え」
両手を広げて抱きついてこようとした操人形に、俺は〈さすがにそれは……〉と思って顔を引き攣らせた。俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はない。
まぁ、リルがすぐに割って入ってくれたから、実際に抱きつかれることはなかったんだけど。
『僕の方がマスターを愛してるもん!』
『ぐえっ、ま、待って、俺を食わないでくださいー!』
リルが操人形をくわえてる。この光景、操人形が旅立つ前にも見た気がするぞ。
それより気になるのは、リルがいつどこから現れたか、だけど。え、さっきまでいなかったよな?
「リル、どこから来たんだ?」
『そこだよー』
ペッと操人形を吐き出したリルが、近くの木陰を指す。
俺が視線を向けると、影兎がひょこっと顔を出して両手を振った。よくリルと一緒に狩りに行ってる子だ。
「……なるほど。影兎の能力か」
『うん。移動しやすくて便利!』
リルはのほほんと嬉しそうにしてるけど、よく考えると神狼と影兎のコンビって最凶だよな……。瞬間移動のごとく神狼が突然現れるって、人間にとっては災難でしかない。
恐ろしい状況が出来上がっていることに遠い目をする俺を見て、リルが不思議そうに首を傾げた。
俺の考えを察している操人形は、顔についたリルのよだれを拭い取りながら『マスター、これヤバくないですか……?』とドン引きした顔だ。
ヤバくないかどうか、と聞かれたら確実にヤバいけど、人間に知られなければ大丈夫……のはず。
「……ま、リルが来てくれてちょうどよかった。操人形から山の状況について報告を聞こうと思ってたんだ。見てきたんだろ?」
『はい、もちろんですよー』
出来上がったつまみを出して、飲み会——もとい報告会を再開する。
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できればあまり手間取らない状況になってたらいいなぁ。
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