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3-3.外との関わり
113.山の監視方法
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ぐびっとビールを飲んだ操人形が、真剣な顔で口を開く。つられて俺も姿勢を正して耳を傾けた。
『山はちょっと荒れてる感じはありましたけど、問題発覚当初の想定よりは、魔物の序列ができていましたよー』
「ほー、それはよかったな」
『ええ、本当に』
操人形と顔を見合わせ、同時にホッと息を吐く。最悪の事態は避けられそうでよかった。
ここで言う最悪の事態とは、魔物たちで山が荒れて、生態系の調整をどこから手を付けていいかわからない状態になっていることである。
『僕、ちゃんと狩りをしたからね!』
リルが褒めてほしそうに言うけど、問題が起きた原因もリルの狩りである。ちゃんと、という言葉がいまいち信用できない。
まぁ、操人形が確認してくれたんだから、本当にきちんと考えて狩りをするようになってくれたんだろう。
「うん、よくやったな、リル。偉いぞ」
『えへへー』
わしゃわしゃと撫でてやると、リルが嬉しそうに尻尾を振った。
操人形は『相変わらずマスターはリルに甘いんですからねー』と呆れた表情だ。自覚はあるから、なんと言われても痛くないぞ。
「魔物の序列ができてるなら、あまり手を出さなくても大丈夫そうか?」
操人形を派遣しなくても、自然に問題を解決できていたかも、と思いながら問いかける。だが、操人形ははっきりと首を横に振った。
『いえ。管理はする必要があるでしょう。元々、あの山は古竜の卵の気配で無駄な争いが抑制されていたんだと思います。リルが狩りをしなくても、古竜の卵がなくなった時点で荒れるのが自然の流れで……管理しないと麓に影響が出るのは間違いありません』
「なるほど?」
てっきりリルの魔物乱獲だけが山が荒れた原因だと思っていたけど、別の理由もあったらしい。それが古竜の卵がなくなったからというなら、俺のダンジョンが原因であることは変わりないけど。
山の管理かー。とりあえず状況把握のために操人形を派遣したけど、どうすべきかな。
やっぱり随時操人形に指示してもらって、リルやエンドを派遣するのが妥当か?
そうなると、操人形が山にかかりきりになってしまうから、ちょっともったいない気がする。
そんなことを考えて悩んでいると、操人形が『そこで提案なんですが!』と身を乗り出してきた。
「おお? なんか気合いが入ってるな……」
『ふふん、操人形君は優秀なので、ちゃんといい管理方法を考えてきたんですよ。ずっと山にこもってるなんて嫌ですからね』
わりと個人的な理由で気合いを入れていたらしい。やっぱりずっと山の管理者をするのは操人形も嫌なのか。
「どんな?」
『ほら、あの山には卵を監視する小屋があったでしょう?』
「あー、あったな」
随分と昔に見た気がする光景を思い出す。あの小屋、まだ使われてるのかな。
『ああいう感じで、よその山から来る魔物や、上からおりてくる魔物を監視するシステムを作れないかと思いまして』
期待に満ちた目で操人形が言う。
監視ねぇ……できなくはないな。ただ、それをするには山をダンジョン化するのが手っ取り早いんだけど。さすがにそんなことをすれば、契約を結んでいるピエモの住人以外にも、俺の関与が悟られてしまうからできない。
「ダンジョン構造物を各地に建てて、そこから監視するのはできる。けど、広範囲をカバーするのは面倒くさいな……」
『俺だって、一人じゃ山全部を把握するなんて無理ですよー。どう考えても、監視する目はたくさん必要です。強い魔物への対処はリルやエンドで事足りますけど』
渋る俺を操人形が説得してくる。
言われてみればその通りで、いくら優秀な操人形でもできることが限られているのはわかりきっていた。
「……そっか。じゃあ、監視小屋……いや、小屋である必要はないな。うーん……魔物にするか」
『え? 魔導具じゃなく?』
あるアイディアが浮かんで、ポンと手を打つ俺を、操人形がきょとんと見つめ返した。
「魔導具は地味にDPの消費量が多いんだよ。監視カメラ程度ならいいけど、ずっと見なきゃいけないなら結局人手、というか魔物手が必要になるし。それなら監視用の魔物を召喚する方が簡単だ」
『監視用の魔物って、俺みたいな?』
なるほど、と頷いた操人形が自身を指さして首を傾げる。
でも、俺ははっきりと首を横に振った。
「操人形は人の社会に溶け込むのが得意だろ。山の監視役にそんな能力を持たせても宝の持ち腐れだ。普通に魔物の危険度判定ができて、監視可能範囲が広い魔物にする」
『どんな魔物なのー?』
リルがワクワクとした感じで口を挟んできた。新しい仲間ができるようなものだから、楽しみにするのも当然だろう。
「山の中にあって不自然じゃない監視向きの魔物と言えば——闇妖樹だろ」
タブレットに表示した魔物を見せる。
——————
【闇妖樹】
闇・木属性の魔物。森の木々に擬態し、魔物としての気配を消すことができる。
根を張り巡らせることで、広範囲の情報を把握することが可能。
——————
『おー、そんな魔物がいるんだね』
『確かに、この状況ではピッタリかもしれませんね』
うんうん、と頷くリルと操人形を見て、俺もにこりと笑う。
賛同を得られたようだから、早速作業をしよう。
『山はちょっと荒れてる感じはありましたけど、問題発覚当初の想定よりは、魔物の序列ができていましたよー』
「ほー、それはよかったな」
『ええ、本当に』
操人形と顔を見合わせ、同時にホッと息を吐く。最悪の事態は避けられそうでよかった。
ここで言う最悪の事態とは、魔物たちで山が荒れて、生態系の調整をどこから手を付けていいかわからない状態になっていることである。
『僕、ちゃんと狩りをしたからね!』
リルが褒めてほしそうに言うけど、問題が起きた原因もリルの狩りである。ちゃんと、という言葉がいまいち信用できない。
まぁ、操人形が確認してくれたんだから、本当にきちんと考えて狩りをするようになってくれたんだろう。
「うん、よくやったな、リル。偉いぞ」
『えへへー』
わしゃわしゃと撫でてやると、リルが嬉しそうに尻尾を振った。
操人形は『相変わらずマスターはリルに甘いんですからねー』と呆れた表情だ。自覚はあるから、なんと言われても痛くないぞ。
「魔物の序列ができてるなら、あまり手を出さなくても大丈夫そうか?」
操人形を派遣しなくても、自然に問題を解決できていたかも、と思いながら問いかける。だが、操人形ははっきりと首を横に振った。
『いえ。管理はする必要があるでしょう。元々、あの山は古竜の卵の気配で無駄な争いが抑制されていたんだと思います。リルが狩りをしなくても、古竜の卵がなくなった時点で荒れるのが自然の流れで……管理しないと麓に影響が出るのは間違いありません』
「なるほど?」
てっきりリルの魔物乱獲だけが山が荒れた原因だと思っていたけど、別の理由もあったらしい。それが古竜の卵がなくなったからというなら、俺のダンジョンが原因であることは変わりないけど。
山の管理かー。とりあえず状況把握のために操人形を派遣したけど、どうすべきかな。
やっぱり随時操人形に指示してもらって、リルやエンドを派遣するのが妥当か?
そうなると、操人形が山にかかりきりになってしまうから、ちょっともったいない気がする。
そんなことを考えて悩んでいると、操人形が『そこで提案なんですが!』と身を乗り出してきた。
「おお? なんか気合いが入ってるな……」
『ふふん、操人形君は優秀なので、ちゃんといい管理方法を考えてきたんですよ。ずっと山にこもってるなんて嫌ですからね』
わりと個人的な理由で気合いを入れていたらしい。やっぱりずっと山の管理者をするのは操人形も嫌なのか。
「どんな?」
『ほら、あの山には卵を監視する小屋があったでしょう?』
「あー、あったな」
随分と昔に見た気がする光景を思い出す。あの小屋、まだ使われてるのかな。
『ああいう感じで、よその山から来る魔物や、上からおりてくる魔物を監視するシステムを作れないかと思いまして』
期待に満ちた目で操人形が言う。
監視ねぇ……できなくはないな。ただ、それをするには山をダンジョン化するのが手っ取り早いんだけど。さすがにそんなことをすれば、契約を結んでいるピエモの住人以外にも、俺の関与が悟られてしまうからできない。
「ダンジョン構造物を各地に建てて、そこから監視するのはできる。けど、広範囲をカバーするのは面倒くさいな……」
『俺だって、一人じゃ山全部を把握するなんて無理ですよー。どう考えても、監視する目はたくさん必要です。強い魔物への対処はリルやエンドで事足りますけど』
渋る俺を操人形が説得してくる。
言われてみればその通りで、いくら優秀な操人形でもできることが限られているのはわかりきっていた。
「……そっか。じゃあ、監視小屋……いや、小屋である必要はないな。うーん……魔物にするか」
『え? 魔導具じゃなく?』
あるアイディアが浮かんで、ポンと手を打つ俺を、操人形がきょとんと見つめ返した。
「魔導具は地味にDPの消費量が多いんだよ。監視カメラ程度ならいいけど、ずっと見なきゃいけないなら結局人手、というか魔物手が必要になるし。それなら監視用の魔物を召喚する方が簡単だ」
『監視用の魔物って、俺みたいな?』
なるほど、と頷いた操人形が自身を指さして首を傾げる。
でも、俺ははっきりと首を横に振った。
「操人形は人の社会に溶け込むのが得意だろ。山の監視役にそんな能力を持たせても宝の持ち腐れだ。普通に魔物の危険度判定ができて、監視可能範囲が広い魔物にする」
『どんな魔物なのー?』
リルがワクワクとした感じで口を挟んできた。新しい仲間ができるようなものだから、楽しみにするのも当然だろう。
「山の中にあって不自然じゃない監視向きの魔物と言えば——闇妖樹だろ」
タブレットに表示した魔物を見せる。
——————
【闇妖樹】
闇・木属性の魔物。森の木々に擬態し、魔物としての気配を消すことができる。
根を張り巡らせることで、広範囲の情報を把握することが可能。
——————
『おー、そんな魔物がいるんだね』
『確かに、この状況ではピッタリかもしれませんね』
うんうん、と頷くリルと操人形を見て、俺もにこりと笑う。
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