聖女として召喚された性悪双子は一刻も早く帰還したい

キリアイスズ

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閃光弾?

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「おい、待て!」

後ろから声がする。この小物っぽい声はさっきのリーゼント男。
意外と早かったな。私たちは同時に振り返った。

「宣言通り、連れてきたからな。俺たちのリーダーを」

「リーダーって………………ぷっ」

私は思わず、吹き出してしまった。
リーゼント男が連れてきた男は長髪の金髪に今時あそこまで入れるかってほどのド派手な刺繍を入れた白ランというコスプレみたいな恰好をしていた。
何あれ、なんかのアニメキャラの真似?

しかも、リーダーと言われている男に引き連れられているっぽい数十人の子分は同じような白ランを着ているにのに、頭はなぜか黒髪のリーゼント。

なんで、格好は同じなのに頭だけは統一しないんだよ。
何その刺繍、なんかポエムっぽいのもある。教えてよ、誰が入れてんのそれ。

ねぇねぇ、リーゼント君、なんであんたはゴテゴテの刺繍の入った白ランを着ないんだよ。
もしかして着ないのはリーダーとか言ってるわりに心の中では格好がダセェって思ってたりして。

ツッコミどころ多すぎだって。
ウケる、笑うなって言うほうが無理だって。

リーダーと呼ばれた男はこれでもかというほど私にメンチを切ってきた。

「何を笑ってやがる。よくもやってくれたな」

「おやおや、格好だけじゃなくて声までアニメキャラっぽい声だね。サインくれる?写真も撮っていい?」

なんて、この男の返答なんて関係ない。
こんな面白いもの私が撮らないなんてありえない。

私はカメラを向けた。
あはっ、マジでウケる。全員が揃って青筋ピクピク動かしてるよ。

「このクソアマども!調子に乗りやがって!」

はは、怒った怒った。

私は良い瞬間を逃すまいとカメラを向け続ける。

「夏芽、ちょっと人数多いけど大丈夫?」

私はカメラを向けたまま、頭を動かした。
夏芽は何のリアクションもせず無言のまま、スタスタスタスタと前に進んでいった。

あ~あ、あの様子は相当キレちゃったんな。マヨネーズを吸ってちょっとは機嫌がよくなって、これからひと眠りしようって時に邪魔されたんだから。

白ラン達可哀そう。せめてもの慰めだ。最高に笑える写真を撮ってあげよう。

「夏芽、私バッグ持ってあげるよ?」

前へ進んでいた夏芽が小走りになった。

ああ、こりゃ聞いてないか。
ま、いっか。

「お前ら、手出すな。タイマンだタイマン」

金髪男はポキポキ指を鳴らすとずんずんと前に足を進ませ、夏芽と同じように小走りになった。

さてさて、今回の喧嘩は何分ぐらいかかるかな?
写真じゃなくて動画にしたほうがいいかな?

小走りの夏芽が本格的な走りに移った瞬間だった。


夏芽と金髪男の中心から突然、小さな白い球のようなものが現れたかと思うと瞬く間に白く、爆発的な眩い光に変わり、辺り全体に大きく広がった。

あまりの眩さに私は目を覆った。

「何?スタングレネード?閃光弾?」

油断した。タイマンって言ってるわりにせこい手使うじゃんか。
こりゃ、私も途中参加したほうがいいかも。

「夏芽、気をつけて。どこから鉄パイプが飛んでくるかわからないよ」

落ち着け私。こういう目くらましの攻撃、今まで何回かあったじゃないか。
こんな光、すぐ小さくなる。一時的に防御に徹していれば、なんとかなるはず。

もうそろそろ、光は小さくなる。
そう、小さく……………小さく……………小さく………………って小さくならない?

むしろ、大きくなっているような気がするんですけど。

何もかもが真っ白になっていく。
青も地面も夏芽も私も。

白い光に体中が包まれると、世界から遮断されたかのように音が消えた。色んな修羅場を夏芽とともにくぐり抜けたつもりだけどこれは初めての経験だった。


◇◇◇


白い光が消えた。

「ふぅ、やっと戻った」

目も見えるし、耳も聞こえる。私は夏芽の様子を窺った。
よかった、どうやら無事みたい。夏芽も光が消えて少なからず安堵した様子でほっと小さく息を吐いていた。

というか、なんだったんだ?さっきの光は。新商品の閃光弾?

まぁ、いいや。白い光がなくなってよかったよかった。

「聖女さま、ようこそおいでくださいました。どうか我らに力をお貸し、ぐはっ!!」

私と同様五感が戻った夏芽は金髪男に容赦のない一発をみぞおちに入れた。
おお、見事なまでのクリーンヒット。

痛い痛い。あれはかなり痛い。不機嫌度マックス状態の夏芽の一発はものすごい威力だからね。
でも、あんたらの自業自得だよ。元々不機嫌だった夏芽を、より怒らせるような真似するんだもの。ていうか、一体さっきの光に何の意味があったの?怯んだ私らに何もしないなんて、閃光弾の意味ないじゃない。

「って、ああ、しまった。見事な一発だったのに。撮り損ねた」

私は急いでスマホを向けた。

「あ~あ、もったいない………………ん?あれ?」

私はふと、気づいた。今殴った金髪男はよく見るとさっきの金髪男じゃない。長髪の金髪男だけど顔がぜんぜん違う。あんな50代のおっさん顔じゃなかった。

しかも、来ている服も変わってる。なんで、白ランが白いローブに変わってるの?
さっきの発行弾に幻覚作用でもあったの?

「だ、だ、だ、大司教さま!!」

やばいな。視覚だけじゃなくて聴覚まで変になっちゃったのかな。
女の叫び声が聞こえる。

あれれ?ちょっと待って。
私は周囲を改めて見回してみた。

何?この中世の城っぽい場所は。
何?あの呆気に囚われた顔で私たちを見ている妙な格好をしたコスプレ集団。
何?この足元に広がっているゲームでよく見かける魔法陣みたいなものは。

いくらなんでもおかしい。さっきと光景が違い過ぎる。
私は周囲をきょろきょろ見回しながら夏芽に近寄ろうと足を前に出す。

「ねぇねぇ、夏芽ちょっと変だよ。一旦ストップ………………ってもしもし?」


夏芽は悶え苦しんでいる金髪男の胸倉を掴み、顔面に向けて拳を振りかざそうとしていた。
夏芽はいまだにこの状況の異様さに気づいていないようだった。
ああ、やばいなこりゃ。頭に血が上った状態の夏芽は私の声さえも届かないんだよね。

一旦、止めたほうがいいか。

「夏芽、ちょっと落ち着いて。その人はさっきの人とは―」

バコン!!
遅かった。夏芽は振りかざした拳を振りかざし、思いっきり金髪男を吹っ飛ばしてしまった。

「大司教様~~~~~~!!」

今度はさっきよりも女の叫び声が強く鳴り響いた。

私はぐいっと夏芽の首根っこを掴んだ。

「待ちなさいって」

「はぁ?何?」

夏芽は不快そうに振り向いた。
悪いね、夏芽。いつもは止めないけど、今回ばかりは止めざるを得ないから。

「周囲を見てみ」

私に言われた通り、夏芽は辺りを見回す。

「………………は?」

ずっと眉間に皺を寄せていた不機嫌顔が困惑顔に変わった。

「何これ?」

「こっちが聞きたいよ」

私も改めて周りを見渡す。
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