[完結]自称前世の妻と、悪役令嬢の私

夏伐

文字の大きさ
7 / 14

7 広がっているようです

しおりを挟む
 翌日、私とエリックは一緒に学園に向かう。行きはアングラード公爵家の馬車で、帰りはバダンテール伯爵家の馬車で帰る。
 いつもの事だ。

 だが、その日は馬車から降りるとたくさんの生徒たちに囲まれてしまった。

 その誰もが平民と下級貴族の令嬢、令息たちだ。なんだか様子がおかしい。
 エリックが私をかばうように、彼らの前に立つ。

「エリックさま、どうしてそんな女を守ろうとするんですかァ?」

 甘ったるい声音を合図に、さっと波が引くように生徒たちの間からマリアベルが現れた。

 小さくて可愛らしい少女。明るい茶髪は光に透かすと金色に輝く。
 そんな少女の言葉に、周囲にいる生徒たちが私を睨みつける。さすがに人数がいるから気圧されてしまう。

 すぐ後ろを見ると、明らかにおかしな雰囲気に御者がどうしてよいか分からず、立ち去れなかったらしい。助かった。

「エミリア、大丈夫?」

「ええ。馬車に戻りましょう」

 エリックが庇ってくれ、私たちは馬車に向かった。
 物語の悪女なら、エリックはマリアベルの味方をして、私が糾弾される状態なんでしょうけれど。
 そもそも今日のこの集まりは一体何からはじまったの?

「『たけき炎よ、悪しき者を浄化せよ』!」
「『荒ぶる水よ、魔女を射抜け!』」

 背中に投げられたその言葉に、反射的に振り向くと、水の槍と炎の塊が襲い掛かってきていた。

「エリック、下がっていて」

 私の言葉にエリックは、すっと私の後ろに下がった。
 魔力を込めて腕を振り上げると、そこに魔力障壁が現れる。今回の場合は詠唱をせず、多重に展開した。

 炎も水も障壁と共にくだけて消える。

「詠唱しないで、あれほどの魔力障壁だなんて……」
「魔女だ」
「悪魔が乗り移ってるんだわ!」

 雑魚でも学園に入学できた生徒たち、実力差を思い知ったのだろう。魔法で攻撃すれば私が防ぎ、剣で斬りかかればエリックが黙っていない。
 それに、私は攻撃魔法が使えないわけじゃない。

「エリックさま! どうして、どうして私の事を見てくれないんですか!」

 マリアベルが不思議そうな顔をして近づいてくる。その度に取り巻きになっている生徒たちの波も近づいてきた。
 取り巻きたちはエリックとマリアベルの反応をうかがっている。

「急ぎましょう。気にする必要ないわ」

 もう魔法は撃ってこないだろう。私とエリックは彼らに背を向けて馬車に乗り込む――エリックが馬車に乗り込む寸前に「もう許さない」と冷たくつぶやいたのが聞こえた。

 御者台のところにある小さな窓を開けて御者に急いで、指示を出した。

「バダンテール伯爵家に向かって!」

 この馬車には耐魔法性能がついているから、私たちは安全だが御者はそうではない。御者も分かっているのか、馬車の運転は少し荒かった。

 走り出した馬車にほっとして椅子に座り込むと、エリックがノックをして馬車を止めさせた。

行先いきさきはアングラード公爵家だ。急ぎの用事がある」

「はい」

 御者が指示を受け取り、また馬車が動き出す。
 そうして動き出した馬車はゆっくりと、気づくと眠ってしまいそうな気持ちになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

押しつけあう女たち~王子なんて熨斗を付けて差し上げます~

ロゼーナ
恋愛
今日も仲良く、悪役令嬢とヒロインは王子の婚約者の座を押し付け合う。 「ミーナさんったら、平民なだけあって考え方まで可愛らしいこと!殿下にお似合いじゃございませんこと?」 「とんでもない!フィオレンティーナ様のような崇高なお考えをお持ちの方こそ、未来の国母に相応しいです!」 四話完結でサクッと読める、「友情・努力・勝利」がテーマの婚約破棄モノです。ラブコメを目指しましたが、恋愛要素とざまあ要素はほぼ皆無です。 (本作は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています)

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

【完結】完全無欠の悪女様~悪役ムーブでわがまま人生謳歌します~

藍上イオタ
恋愛
「完全無欠の悪女、デステージョに転生してる!?」  家族に搾取され過労で死んだ私が目を覚ますと、WEB漫画世界に転生していた。 「悪女上等よ! 悪の力で、バッドエンドを全力回避!」  前世と違い、地位もお金もあり美しい公爵令嬢となった私は、その力で大好きなヒロインをハッピーエンドに導きつつ、自分のバッドエンドを回避することを誓う。  婚約破棄を回避するためヒーローとの婚約を回避しつつ、断罪にそなえ富を蓄えようと企むデステージョだが……。  不仲だったはずの兄の様子がおかしくない?  ヒロインの様子もおかしくない?  敵の魔導師が従者になった!?  自称『完全無欠の悪女』がバッドエンドを回避して、ヒロインを幸せに導くことはできるのか――。 「小説化になろう」「カクヨム」でも連載しています。 完結まで毎日更新予定です。

政略結婚で蔑ろにされていた私の前に開けた新たな人生

拓海のり
恋愛
政略結婚の夫には愛人がいて、私は離れに追い払われ蔑ろにされていた。ある日母親の死亡通知の手紙が来て――。5000字足らずのショートショートです。他サイトにも投稿しています。

婚約破棄された私は【呪われた傷跡の王子】と結婚するように言われました。

チュンぽよ
恋愛
伯爵令嬢メアリー・キャンディスは婚約破棄を言い渡された。 目の前にいたのは、この国の第二王子、アルバー・ザットラテ。 彼の隣には、メアリーの妹リイナ・キャンディスが、満足そうに微笑んでいた。 「君との婚約は取り消す。僕は、リイナと結婚する」 それだけではなく 「おまえには、兄のジョロモ・ザットラテ王子との婚姻を命ずる」 顔に醜い火傷の跡がある、“呪われた傷跡の王子”と呼ばれる男と婚約するように命じたのだ。

公爵令嬢は運命の相手を間違える

あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。 だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。 アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。 だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。 今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。 そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。 そんな感じのお話です。

【完結】悪役令嬢とは何をすればいいのでしょうか?

白キツネ
恋愛
公爵令嬢であるソフィア・ローズは不服ながら第一王子との婚約が決められており、王妃となるために努力していた。けれども、ある少女があらわれたことで日常は崩れてしまう。 悪役令嬢?そうおっしゃるのであれば、悪役令嬢らしくしてあげましょう! けれど、悪役令嬢って何をすればいいんでしょうか? 「お、お父様、私、そこまで言ってませんから!」 「お母様!笑っておられないで、お父様を止めてください!」  カクヨムにも掲載しております。

【短編】我儘王女は影の薄い婿を手放したくありません

しろねこ。
恋愛
剣の国の王子キリトは隣国の王女に恋をしていた。一世一代の恋である。 「俺と結婚して欲しい」 彼女と自分の国は友好国である。 キリトの国カミディオンは小国であったが、今や大国と称される程大きくなった。 エルマは魔法大国レグリスの第二王女。昨年社交界デビューを果たしたのだが、とても綺麗だとあっという間に注目の的になった。 国と国の結びつきをより強くするためにも、そして自分と結婚すれば王太子妃になれるとキリトは熱心に口説いた。 「あなたに苦労はさせない、愛しているんだ」 そんな言葉を受けてエルマは躊躇いつつも、口を開く。 「あなたって本当に馬鹿ね」 可愛らしい顔から飛び出たのは似つかわしくない毒舌だった。 ハピエン、両想い、溺愛系が大好きです。 ご都合主義な物語が多いですが、ご了承くださいm(__)m カクヨムさんやアルファポリスさんにも投稿しています。

処理中です...