発明の天敵はムチムチ幼馴染

深海10メートル

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プロローグ 目覚め

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 性の目覚めというのは、たいてい十歳から十二歳の間で起こるものらしい。
 俺はといえば、これが早めの十歳のころだった。近所の古本屋で安い漫画を探していると、乱雑に積まれたレディースコミックを見つけた。店員がこちらを見ていないことを確認し、俺はそれを手に取った。
 一般的に女子は男子と比べ早熟であり、彼女たちが読むものもそれ相応のものがそろっている。ドロドロとした人間模様、過激な恋愛描写、そして直接的な性的表現。それらは健全な男子たる自分には恐ろしいまでの刺激であった。
 それまで見た性的表現など、せいぜいパンチラや着替えシーン程度である。俺はレディースコミックの生々しい描写に大きなショックを受けた。股間がかっと熱くなり、ズボンを窮屈にする。なにやら大変悪いことをしている気がして、古本屋を飛び出て家に帰った。
 その日俺は頭に靄がかかったようなあやふやな意識となり、両親に心配されながらも床につくことができた。しかし眠ることができない。ふと気を抜くと、レディースコミックの一ページを思い出してしまう。そのたびにパジャマを脱ぎ散らかしたくなった。
 苦肉の策で硬くなった秘部に触れる。下着とパジャマ、そして包皮に守られたそれはわずかな快感をもたらした。しかしそれまでだった。幼い俺には、そこから先へ進むことができなかった。
 微量の快楽に後押しされ、脳裏にはいつまでも生々しい性がこびりつく。もう忘れてしまいたい。いつものようにぐっすりと寝てしまいたい。応えることのできない欲求の渦に、俺はとうとうしびれを切らした。
 布団を跳ねのけ勉強机に向かうと、引き出しから鉛筆と自由帳を取り出し、猛烈な勢いでなにかを書きだした。そのなにかは、自分でも正体がわからなかった。それでも鉛筆が線を引くたび、頭の靄が晴れていくように感じた。
 意識が戻ったのは翌日の六時だった。結局、勉強机に向かったまま眠ってしまったのである。
 自由帳には一晩の成果として、走り書きの設計図が広がっていた。完成図とそれに至る組み立て、必要な部品まで詳細に記されている。
 設計図をぼんやりと見つめていると、俺は一つの事実に気づいた。
 俺の脳裏に焼き付いていた、レディースコミックがすっかりと消え失せている。古本屋で受けた罪悪感はすでになかった。非常に晴々とした気分だった。
 これが俺の性の目覚めだ。
 それから何度も同じ経験を繰り返し、授業やネットで知識を仕入れることで、俺は性欲を学んでいった。
 俺の衝動的な行為は保健体育でいう昇華と呼ばれるものだと知った。その過程で自分のそれは、常人よりもずっと強力なものであることもわかった。
 成長し高校生となった今では昇華することで、設計図だけではなく実物を作ることも可能となっている。俺の発明は現代では解明できないオーバーテクノロジーの類らしく、多くの分野から将来を期待されている。
 自然と俺は夢をもった。この才能を活かし、人類の技術を大きく躍進させてみせると。
 そのためにも俺は、性欲発散するわけにはいかないのである。
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