発明の天敵はムチムチ幼馴染

深海10メートル

文字の大きさ
6 / 9

下校 3

しおりを挟む
 ゲームセンターを出て商店街に戻り、俺と夕鶴トマリは住宅街のほうへ歩いていた。
 トマリは「んふふ」と笑いながら、スマホを手にもって眺めている。そのスマホは画面を地面に向けられており、はたから見ると彼女の姿はスマホの裏側を見てにやける不審者にも思えた。
「いつまでプリクラ見てんだよ」
「穴があくまでかなぁ」
「あくわけねえだろ」
 ゲームセンターで撮ったプリクラを、トマリはさっそく自分のスマホに貼りつけていた。
「ススムちゃんも貼りなよぉ。お揃いにしよ?」
「あほ。恥ずかしくて貼れねえよ」
「みんなやってるよ? 少しくらい大丈夫だよぉ」
「怪しい勧誘かっ!」
 道路を挟み、反対側の歩道の先に公園が見えてきた。その前に横断歩道が敷かれており、トマリとは帰り道がそこで別れるはずだった。
「それじゃ、また明日な」
「なに言ってるの、ススムちゃん。まだまだ家は先じゃんかぁ」
「お前がなにを言ってるんだ……一緒に帰るときは、この辺りで別れてただろ」
 禁欲のためにトマリと帰る頻度は、昔と比べて少なくなっている。それでも記憶が薄れるほど少ないわけではない。彼女の家は公園のあたりで間違っていないはずだ。
「私たち幼馴染だよ? 家は隣に決まってるよぉ」
「うちはマンションだぞ。両隣の部屋は長いこと空き部屋だ」
「両隣とも私が借りてるからね」
「怖いわ! 意味不明過ぎて怖いっ!」
 言ってる間、トマリの歩みは止まっている。実のところ、彼女の意図は察しがついていた。冗談を言って足止めしているのも、それが理由だろう。――冗談のはずだ。おそらくは。
 トマリと一緒に帰るのは久々のことだった。だから俺も少しばかりはしゃいでしまって、プリクラだって撮ってしまった。平常時であれば、恥ずかしいからと却下していたはずである。
 そして今もまだ、俺ともう少し一緒にいたいというトマリの想いを、くみ取ってもいいかと考えていた。
「トマリ。久しぶりに、公園にでも寄っていくか」
 あるいは、俺がトマリと一緒にいたいと思っていたことを、彼女に投影しただけかもしれない。


 公園内にはブランコが二台と背の低いベンチが一つ、それから隅に砂場が一つ設置してある。
 俺とトマリは並んでいるブランコに腰を下ろした。
「懐かしいねぇ。小学生のときは、ここでよく遊んでたのに」
「そうだな。その時のお前はまともだった」
「ひっどいなぁ。私はずっと変わらないよぉ」
「鏡を見てこい」
 トマリは胸を強調するように体を抱いて、「体の話だったのぉ?」と俺をからかいにかかる。
 返事を間違えたと思い嘆息して、俺はトマリから目をそらした。
「中学からだよな。お前が色々しだしたの」
 トマリとの付き合いは小学生のときから始まった。そのころの彼女はひかえめで内気な、有り体に言えば地味な女の子だった。同じクラスで席が近かったから、特に切っ掛けもなく仲良くなった。
 五年生になってクラスが別になり、トマリとは一度疎遠になった。しかし中学生になると彼女から声をかけられ、再び幼馴染として話すようになった。
 それだけでなく、トマリは消極的から積極的な女の子に変貌していた。隙あらば俺に話しかけ、ボディータッチの多いコミュニケーションを好み、あげく性的な誘いをにおわせる。
 そのギャップに、当時の俺は戸惑っていたはずだ。
「ススムちゃんが中学校のこと話すの珍しいねぇ」
「ぐっ……」
 俺の口から呻き声が漏れる。中学生のころには思い出したくない記憶が多くあるため、俺はそのころの話を避ける傾向にあった。
「あのころのススムちゃんは、私にいっぱぁいかまってくれたのになぁ」
 トマリの言葉でいやがおうにも思い起こす。中学時代の俺は禁欲初心者であり、おぼえたての性的発散を我慢せずにはいられなかった。
 そんな俺の身近な異性がトマリだったのである。中学生になって胸と尻に肉がつき、女らしくなった体の幼馴染が積極的に接してくる。彼女のことを頭の中で犯した回数は数えきれない。
 そしてある日。トマリに誘われるがまま、俺は彼女の手で絶頂に達した。その日を皮切りにおこなわれる誘惑の数々に、思春期の俺はためらいながらも飛びついた。それからの日々はまさしく淫蕩の生活である。
「可愛かったなぁ。ちゅってしただけでぇ、びゅっびゅってしちゃったこともあったねぇ」
「い、言うなっ!」
 中学生二年目が終わるころ、とある切っ掛けがあり俺はようやく思い直した。このままではいけないと。
 改めて自分の使命を心に刻み、トマリの誘いを断るようになった。そうして今のような関係に至る。
「というか、その、なんであんなに積極的になったんだ?」
「そうだねぇ……ススムちゃんの夢を知ったからかなぁ」
「俺の夢?」
「人類の役に――ってやつだよ。ススムちゃんがいつか遠くに行っちゃうのかもって思った」
 その夢が形になったのは、自分の才能を理解してからだ。小学五年か六年のころ、トマリとは疎遠になっていた時期のはずである。俺がおぼえていないだけで、話す機会があったのだろうか。
 それにしても、トマリの変貌にそんな理由があったとは知らなかった。
 仲のよかった幼馴染が手の届かない存在になるかもしれない。そこで気を惹くためにアピールするなんて、いじらしい話である。そのような意図があったと知れば、男として悪い気はしない。
「だから邪魔しなきゃって」
 俺が優越感にひたりかけたところで、トマリがそう言葉を続けた。
「なに?」
「そんなたいへんな人生だと疲れちゃうじゃん。だから骨抜きにして、私に一生養われて過ごすようにしなくちゃって」
「お、お前! なに、恐ろしいことを口走ってるんだ!?」
「私はススムちゃんといれて幸せ。ススムちゃんは大変な夢から解放されて幸せ。なにも怖いことないよぉ」
 トマリの瞳によどみは一切なく、その声音から迷いは感じられない。彼女は俺が夢を捨て、堕落の道に走ることを最善だと信じている。
「つまりあれか、トマリが俺を誘惑し始めたのは、俺の才能を使わせないためか?」
「そうだよぉ」
「そして一生養われる?」
「ススムちゃんは私と一緒にいてくれるだけでいいからねぇ」
「よくねえよ!」
 立ち上がってトマリから距離をとる。ブランコを支えるチェーンががちゃがちゃと音をたてた。
 トマリが好意をもっているのは察していた。しかしここまで深いものだとは思ってもみなかった。
「いいかトマリ、改めて言うぞ。俺はこの才能をもって生まれたからには、人類に貢献すべきだと思う。これは夢というか使命だ! 諦めるつもりはない!」
「私はススムちゃんと一緒にいたいなぁ。すごい人になんかならないでほしい」
 トマリがブランコを離れ、俺に近づいてくる。
「だからいっぱいえっちして、ススムちゃんを普通の男の子にしてあげる」
 俺の正面で立ち止まると、トマリはカッターシャツのボタンを外しだした。その動きは下駄箱で見せた誘惑の再現だ。
「言ったよねぇ? 続き、してあげるって」
 乱れたシャツの合間に見える、二本の淫靡な曲線。それらが重っているだけで、男の視線を吸い寄せる。
 ゲームセンターでのキスと先ほど思い返した淫らな記憶も相まって、実のところ俺の股間は熱くたぎっていた。
「お胸でしよっかぁ」
 啖呵を切ったばかりにも関わらず、俺はトマリの誘いを断れなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...