目立ちたくない英雄はコッソリ世界を救いたい

四畳半

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第11話 "ライブ"

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ドーム入り口では既に入場が始まっていた

こんなに人が入るものなのか?と思わず疑問に思ってしまう程の人が次々と入って行く

後から並んだ俺達はかなり後方から並んでいたが、ものの15分程で入場する事が出来た

スタッフさん達の手慣れた感じに若干引いてしまった事を心の中で謝ろう

入場してチケットに書かれた場所を探す

俺達のチケットは前列から3番目のステージが良く見える場所を取ってくれたみたいだ

このライブは他にも何組かのアーティストが参加している様で、カノンの出番は後半の方だった

予想通りライブは大盛り上がりで順調に進んでいった

俺は周りを警戒しながら皆に合わせて盛り上がっている様にしていた

…このまま俺の取り越し苦労で終わるなら良いのだけど

と不安を抱えていると、カノンの出番が来た様だ

流石は今売り出し中のアイドルと言った所か…会場は今日一番の異様とも思える程熱気に包まれている

俺はずっと密かに魔力感知をしながら聞いているので、凄く騒いでいる訳でも無いのに疲れていた

結構な時間集中して感知を行っていたが、特に何も起きなかった

…後から思うとこの時どこかで『何も起きそうもないな…』と心の奥底で油断していたんだろう…

時間にしてほんの数秒~十数秒だったと思う…

俺は何時間も集中し過ぎたせいで一時的に意識が飛んでしまっていた

『……っ!!』

俺はハッと気が付き慌てて周りを見た

何も起きていない事を祈って目を向けた光景は、ことごとく俺の期待を裏切っていた…

っ!俺を除く全員が倒れている!!

どうしたんだ!一体何があった!?

『そうだっ!カノンは!?』

と慌ててステージに目をやると、倒れているカノンの横に黒装束を来た男が立っていた

俺は咄嗟に声を荒げてその男に向かって叫んだ

「お前は誰だっ!何をした!」
「これはお前がやったのか!カノンの傍から離れろっ!」

黒装束の男がこちらに気付き、驚いた表情を見せる

「っ!…なんだこいつは、俺の術に掛からない者がいるのか!?」

その男はこちらを見ると続けてこう言った

「おい貴様!貴様こそ何者だ?」
「この術に掛からない者はいないはずた!」
「…もしや貴様…」
「いや、この場に”因子”持ちが他にもいるとは思えんが…」
「!そうか…何かの気配に邪魔されていたが、貴様が原因か?」

どうやら俺の魔力感知が奴の術を発動させるのに邪魔だったみたいだな

だから俺が気を失った一瞬を狙ってこんな術を発動させたのか…

…ん、待てよ?今奴がぼそっと言っていたが…”因子”?一体何の事を言っているんだ?

俺の持っている力や呪いと何か関係があるのか?

それに”他にも”って言っていたが…どういう事だ?

俺の他にも呪いに関係する人物がいるとでも言うのか…?

「おいっ!答えろ!貴様は何者なんだっ!”因子”とは何だっ!それに”他にも”とはどういう事だ!」

俺は矢継ぎ早に問いかけたが黒装束の男は、

「…なんだこいつは…気安く俺に話し掛けやがって…」
「どうでもいい…俺の姿を見られてしまったのなら、このまま放っておく訳にいかないからな…」
「今日はこの娘の”因子”と、ついでにここにいる人間共の“バイスル”を頂くつもりだったが…少し予定が狂ってしまったな」
「それに事前の情報には他にも”因子”を持っている奴はいない筈なんだがなぁ」
「”因子”持ちかは分からんが…とりあえず消すか?」

黒装束の男が言ったその言葉に俺は少なからず動揺してしまう

…この娘の”因子”?カノンの事を言っているのか?

あいつが言っている事を鵜呑みにすれば、俺もカノンも”因子”とやらを持っているって事か?

くそっ、考えたくてもこの状況じゃ冷静に考える時間は無さそうだ

っ!黒装束の男がこちらに手の平を向けて何か呪文の様なものを呟いている!?

とりあえずこの黒装束の男を捕らえて色々と聞き出さなければ!

そうしていると黒装束の男が手に集まったエネルギーを放とうとしていた

「我が黒炎で灰となれっ!」

そう言うと男はこちらに向かって高エネルギーの黒い火球を放った

俺は咄嗟に土4R・水4R・聖1Rを合成、空間に付与して反射壁を作った

バシュゥッ!

難なく火球を跳ね返す

「何っ!!跳ね返しただとっ!」
「…くそっ、フンッ!」

黒装束の男は自身に返って来た火球を消し飛ばした

「キサマァ…一体何者だっ!」
「たかが人間如きが俺の攻撃を跳ね返せるハズが無いっ!」

黒装束の男が激昂しながらそう言うと、

…凄い自信家の様だな、と思いつつ、

「大した魔力だったが…まだまだ俺の敵じゃあ無いな…ここでキサマを捕まえて、知っている事を全て話してもらうぞ!」

と黒装束の男に言い放った

すると黒装束の男が更に激昂して、

「俺が…?キサマの…?相手にならないだとっ!」
「ふざけるなぁ!!俺は魔王軍が筆頭【業火のヴィズ】様だぞっ!」
「そのこの俺を”敵では無い”だと?貴様ぁっ!今すぐ殺してやるっ!!」

ヴィズは怒り狂った様にこちらへ殺意を向け攻撃しようとしていた

俺も臨戦態勢になり、ヴィズを迎え打とうと構えると突然何処からか、

『待ちなさいっ!』

俺とヴィズの頭に直接声が聞こえてくる

『…落ち着きなさいヴィズ!』
『今回の目的は果たした筈です』
『…まずは一度引いてこちらに戻って来なさい』

その声に反応したヴィズは、

「なんだとっ!この俺を侮辱した奴をこのままにして戻れるか!」
「消し屑にしても腹の虫が収まらないっ!」

怒りが収まれないヴィズに対し、再び頭に直性声が聞こえてくる

『…あなたの気持ちは分かるけど、今最優先にする事は何か考えて』
『それ以上邪魔が入ったらこちらの”計画”に支障がでてしまう』
『目的が果たせるまでは面倒は増やすべきでは無い、分かるでしょう?』

それを聞いたヴィズは冷静さを取り戻し、

「……ちっ、仕方がない」
「確かにお前の言う通りだ…ここは退こう」
「だがお前ぇ!何者か知らないが、お前の顔と魔力は覚えたからな?必ず殺しに行く!」
「その時まで怯えて暮らすがいい!ハ~ハッハッハッ!…」

と最も悪役らしいセリフを吐いて闇の波動と共に消えていった

「おい待てっ!お前には聞きたい事が山ほどあるんだ!」

と言ったが間に合わず去ってしまった

「…逃げられてしまったか」
「それにしてもあのヴィズという男と聞こえて来たあの声は何者なんだ?」
「…それに最後に捨て台詞を言っていた様だが?」
「大体お前程度じゃ俺にとって恐怖の対象にもならないよ…」

…とりあえずあいつらの事は今後考えるとしよう

今はこの惨状に対応する方法を考えないといけないな…

隣で倒れているサエキを診てみると、呼吸や心拍音は聞こえる

他の人達も死んでいる…という訳では無くただ気を失っているだけの様だ

しかし、こちらがいくら問いかけても反応は無い

倒れている人に、聖3R・水3R・風2Rを合成し、生体反応を確認してみる

…これは…どうやら身体から生命力の源、要するに気力が抜かれている状態の様だった

この状態を分かり易く言えば、植物人間に近い状態と言える

俺はステージ上のカノンに駆け寄り、皆と同様に確認してみる

…他の人達と同様に気力が抜かれている様だが…これは?微かだがカノンの身体に魔力反応が残っている!?

どうしてカノンに魔力反応が…今まで全く感知出来ていなかったのに…

そう言えばヴィズがカノンの事を”因子”持ちと言ってたが、もしやこの事が関係しているのか?

それに俺にも”因子”持ちだとか何だとか言ってたな…

”因子”が何かは分からないが、カノンが狙われた理由は恐らくこれだろう

とにかくこのままではマズイな…今はまだ大丈夫そうだが、放っておいたら命の危険がある

今俺が出来る事は……駄目だっ!思いつかない!

生命力に関する事は魔力や精霊力だけではどうする事も出来ない

生命の源に対する力は聖霊力の最上位である”奇跡”を扱えなければ作用する事が出来ない

俺やミケが扱える聖霊力ではその最上位に値する力を引き出す事は困難だ

頭を抱えどうしたら良いか焦っているとミケが慌てて会場にやって来た

「!!どうなっているの?あっ、デミス!どういう事?説明して!」

取り乱すミケに俺は一連の騒動を話した

「…じゃあ今、カノンを含めた全員は昏睡状態で動けないって事?」
「それにヴィズという奴とその頭に直接話し掛けてきた奴は仲間で、何か”計画”を立てているって事?」
「…でも今はそいつらを詮索している場合じゃないわね…」
「この状況をどうにかしないと…」
「このままじゃここにいる人達が大変な事になるわ!」

俺はミケに聞いてみた

「何か方法は無いのか?救急車や病院だとこの人数を対処するのは無理そうだ」
「そもそも病院で対応できるかも分からないが…このままにしておくよりかは良いはずだ!」
「俺達がどうにかしないといけないと分かっているが、2人の聖霊力だけじゃ力が足りないんだ」

と言うとミケが神妙な面持ちで俯き、

「…やった事は無いけど試したい事がある」
「それにはデミス…あなたの力を貸して欲しい!」
「あなたの力と私の聖霊術を合わせて、疑似的に皆へ気力を注入出来れば目が覚めるかもしれない」

!そんな方法があるのか?ミケには”奇跡”を扱える程の力があるとは思えないが…

続けてミケが言う

「私のおじいちゃんまだ若い頃、意識を失い今と同じ様な昏睡状態になった仲間に気力を注入して目が覚めた事があるの…」
「気力を注入した後おじいちゃんは酷く疲労してその場で倒れちゃったみたいだけど…」
「…しかもその仲間の人は目が覚めた後、数日間の記憶が無くなってしまって…最後は私たちの元から去っていったわ」
「その時はおじいちゃん1人でやってたみたいだけど…この人数じゃ私だけじゃ絶対に無理」
「デミスのあのとんでもない魔力があれば何とかなるかもしれない…」
「賭けになるけど、今はそれを試すしか…」

それを聞いた俺は、

「分かった、やってみよう」
「何もしないよりはマシだろう」
「もし駄目だったら直ぐに皆を病院に連れて行かなきゃいけないからな」
「…それでミケ、どうするんだ?」

ミケは意を決した様な表情で俺に言う、

「その話しを聞いた後、おじいちゃんにやり方を聞いてみた事があるの…」
「これは自身の生命力を糧に聖霊力を飛躍的に上げる事が出来るの…」
「でもおじいちゃんはとても危険だから使ってはいけない力だと言ってたわ」

その事を聞いた俺は、

「!君にそんな危険な事をさせる訳には…」

と言うとミケは俺の言葉を遮る様に、

「でも今やらなきゃここに居る人達が危険な状態に…ううん、最悪命を失う事になるかもしれないっ!」
「迷っている時間は無いわ!今私達が出来る最善を尽くしましょう!」

…その強い決意は『人を救いたい』と言う1つの思いに溢れていた

ここまでの決意を見せられたら俺にはミケの思いを覆す事は出来ない

「…分かった!俺も最大限の協力をする!」
「ミケ、君に託す!」

強く頷いたミケは俺に向かい指示を出す

「まずは私が結解を張るわ」
「その後デミスは私に出来るだけの魔力を注いで」
「その魔力と私の生命力を使って聖霊術を昇華させる!」
「そして疑似的に作り出した気力を皆に注入してみるわ!」
「うまくいけば、皆の生命活動に影響を与えて目が覚めるかもしれない」
「……大丈夫、絶対に成功させてみせる!」

ミケの決意に満ちた瞳はとても力強いものだった

後はミケが言った通り、結解を張った後俺はミケにありったけの魔力を注いだ

「……!こ、こんな魔力を持っていたの?」
「…こんな力があれば、た、確かにあんな魔物程度一瞬で片が…つ、付くわね?」

俺はミケに、

「今はそんな事言っている場合じゃないだろ!集中しろ!」

と言うとミケは気合を入れ直し、

「!はっ、はい!」

と言って更に集中をし続けた

俺の魔力がミケの聖霊術を介して結解の上に1つの大きな光玉を創り出した

更に光玉からは、倒れていた皆に対して優しくそして力強い光が降り注ぐ

そして一瞬会場全体が目も開けられない位の光りに包まれ何も見えなくなった…

暫くすると光がおさまり、そこには息も荒く倒れているミケの姿があった

俺はミケに駆け寄り抱きかかえる

「おいっ!ミケ!大丈夫か!?」

俺はそう声を掛けると、ミケは弱々しい声で、

「…だい…じょうぶ…よ、さ…流石に、疲れた…けど…」

ぐったりはしているがどうやら大丈夫そうだ

「み…んなは?…どお?」

俺は辺りを見回すと、遠くの方で何人か目を覚まし、起き上がり始めていた

「…どうやら成功したらしい」
「良くやったな!」

ミケは安心した様子で、

「そぉ…良かっ…た」
「上手く…いったみたい…ね?」

俺は辛そうなミケを見て、

「とりあえずもうしゃべるな!」
「今から医務室に運ぶから待ってろ」

そう言うとミケは俺を見て微笑み、

「ふふっ…そうね?後…は…宜し…く…」

と言うと、気を失う様に眠った

会場の方を見ると倒れていた人達が次々と目を覚ましていた

「こっちの方は大丈夫そうだな…」
「ミケを早くどこかで休ませないと…」

俺はミケを医務室まで運び、ベットに寝かせた後直ぐに会場へ戻って行った

第12話に続く
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