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第12話 複雑な真実
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ミケを医務室に休ませて会場に戻った俺が見た光景は、客席でそこにいた全員がキョトンとした表情で辺りを見回している様子だった
俺は自分の隣の席にいたサエキに声を掛けた
「サエキ君、大丈夫?」
と声を掛けてみたが、サエキが少し間黙った後、
「…?ああ、城島か…俺って今ここで何してたんだ?」
…どうやらミケの言った通り記憶障害を起こしている様だな
見た所それ以外の変化や怪我とかも無かったので一安心した…
そしてボーっとその場に立っていたゴトウとミカワも同じく今の現状を理解していない様だった
俺は3人と会場にいる人達を会場外の広い休憩所があるスペースに誘導して、再び会場に戻った
するとステージ上にはカノンが1人立っていた
「…カノンさん?大丈夫ですか?どこか怪我とかしていませんか?」
と声を掛けるとカノンは、
「…君は…確か、城島君だったっけ?」
「…確かライブ中で…」
「急に黒い服を来た人が来たと思ったら、その瞬間に気を失ったみたい…」
「あれ?あの黒い服を来た人は?」
カノンは他の人達とは違い、直前の事まで覚えていたみたいだ
それに他の人達とは違い、目が覚めた後でも意識がハッキリとしている様だった
”因子”とやらが関係しているからなのか?それとも他の何かか…
更にカノンが俺に聞いてくる
「そうだ…ヒイロさんは?もう打ち合わせ終わって戻って来てる筈だけど…」
すると俺は口が滑ってしまい、
「ヒ、ヒイロさんなら何か体調が優れないとか言って帰ったみたいですよ?」
「私の代わりにカノンさんを宜しく、みたいな事を言って…」
「ステージ中だから伝えておいてくれって頼まれたんです」
…もっと上手い誤魔化し方は無かったのだろうか、後で反省した
するとカノンが疑った表情で、
「…ふぅ~ん、そうなんだ…」
「ヒイロさんが体調崩すなんて珍しいけど…まぁいいわ、教えてくれてありがとう!」
「う~ん…今どんな状況か分からないしなぁ…」
「とりあえず一度楽屋に戻った方が良さそうね?城島君も付いて来て」
俺はキョトンとなり、
「えっ、何で僕が…」
と言うとカノンが、
「ヒイロさんに代わってって言われたんでしょ?じゃあ私が帰るまでは城島君がマネージャー代理って事で!」
ウィンクしつつ意地悪な笑顔でそう言った
「…うっ、…(自分で言った事とはいえ)仕方ないですね…代理って言われても何していいか分かりませんが…」
カノンは俺の前を歩きながらこちらを見ずに言った
「大体の事は私が1人でやるから、帰る時に持ちきれない荷物を持ってくれればいいわ?」
「後は呼んだタクシーに荷物乗っけたらおしまいっ」
俺は半分自分で蒔いた種だと納得させ、
「…分かりました」
と力無く言った
パタン、…ガチャ
楽屋に戻るとカノンはおもむろにドアの鍵を閉めた
「…!カノンさん?何で鍵閉めたんですか?」
と俺が聞くと、カノンは神妙な顔付になり、
「…ねぇ、城島君…」
「…それとも、デミス君って呼んだ方が良いかな?」
!!死ぬほど驚いた。なんでその名を知っているんだ?
「え…っと、誰の事ですか?」
ととぼけるが、カノンには全く通用しない
「…さっき、ヒイロさんの事ミケって呼んで、ヒイロさんも君の事デミスって呼んでたわよね?」
俺はさっきの奴等との会話と皆を助ける時の行動を知っているかの様な言葉に息を呑んだ
「…全部聞いてたんですか?」
するとカノンは首を傾げ、
「…うん、聞いてたと言うより”視えて”いたって言った方が良いかもしれない」
「意識は無かったみたいだけど、貴方が黒い服を来た男の人達と話していた事や、他にも倒れていた観客の人達を2人で助けていた所を視ていたの」
「私の身体から意識が離れていく感覚の中、温かい光に包まれて身体に戻っていった感覚があった…」
「…貴方達が私や皆を助けてくれたんでしょう?」
…ここまで視えていたのなら誤魔化すのは難しいか…
俺はカノンに最小限にその時起こった経緯とミケとの関係を説明した
「…ヒイロさんの事…何処まで知っているんですか?」
と俺は質問をしてみた
するとカノンは俯きながら、
「…ヒイロさんは私のマネージャーだけど、たまに仕事とは別にいなくなってしまう事が何回もあった…」
「それで私、ヒイロさんの事気になっちゃってオフの日にこっそりヒイロさんの事を見にいった事があるの…」
「そうしたらヒイロさんはいつもとは違う雰囲気で、何かこう…張り詰めた雰囲気というか…周囲に対して警戒している様な感じだったの」
「…それに……説明は難しいんだけど、何か…オーラって言うのかな?他の人とは違う感じがしたの」
「あはは…ゴメンね?急にそんな事言われても何の事だかサッパリだよね?」
俺はその言葉に対して確信を持った
《この人も他人とは違う”何か”を持っているのだろう…そしてその何かというのは間違いなく”因子”というのが関係している》と…
あの【業火のヴィズ】という男が言っていた《”因子”持ちが他にもいる》という言葉の通り、俺とカノンには”因子”と呼ばれているものがあるという事だ
この”因子”というのが何の事だが分かってはいないが、俺やカノンは確実にそこ影響を受けている様だな…
俺はカノンに聞いてみた
「…それでカノンさん、あの男が言っていた”因子”という言葉をどこかで聞いた覚えは無いですか?」
「ヒイロさんから聞いたのですが、最近カノンさんの周りで色々起きてるって…」
「もしかしたら、あの男が言っていたその”因子”と言うのが関係しているかもしれないんです」
と言ったがカノンには心当たりが無い様で、
「…ごめんなさい、あなたの言っている”因子”?って言うのが何かは私にも分からないの…」
「確かに最近は特に身の回りで色んな事が不自然に起きているわ」
「でも、私の身の回りに不思議な事が起き始めたのは4年前位からなの…」
「最近…大体6ヶ月位前からは私に対して色々と起き始めてきたわ…」
…4年前?4年前と言えば、俺が小学5年生の時で、不可解な現象が起き始めた年と同じだ!
確かその時期から俺の周りにも不可解な現象が起きていたが、カノンにも同じ時期に始まっていたのか?
…これも”因子”が関係しているのか?
これは俺の呪いで起きている事だと思っていたが、カノンにも不可解な現象が起きていたなら前提が変わってくる
俺とカノンに共通する”因子”
この”因子”が俺の呪いに関係しているのか?
今は少しでも情報が欲しかった俺は、悩んだが自分の事も話す事にした
「…実は僕も4年前から周りに異変が起きていて、最初は噂とか作り話だと思ってんですが…僕自身も体験してしまって…」
「それから次第に異変の兆候が増えて来て…僕には大きな被害は無かったんですが、周りに被害が出始めてて…」
「それで親のツテを使ってミケさ…ヒイロさんと知り合ったんです」
「個人情報の為とかであだ名みたいに呼ぶ事になってので、僕はデミスと呼ばれる様になりました」
巧みに真実と虚偽を混ぜながら話していく
「この前旅館にヒイロさんが来て話しを聞くと、カノンさんも同じように身の回りに異変が起きていると聞いて…」
「同じ境遇なら、お互いに降りかかる災難を解決出来る方法があるんじゃないかという事でヒイロさんに紹介してもらったんです」
と言うとカノンが、
「そうなんだ…城島君には他の人とは違う感じがしたから…」
「私と同じ様な体験をしてきたからなんだね?」
「…ヒイロさんの事は知らなかったからちょっとビックリしてる」
「なんで言ってくれなかったのかな…」
ミケに対して寂しそうな表情をしているカノンに俺は、
「…きっとヒイロさんは、カノンさんに余計な心配を掛けない為に黙っていたんだと思います」
「2人が出会った時には歌手活動をしていた筈ですから、陰ながら支えようとしていたと思います」
「まぁ本人に聞いた訳では無いので予想ですけど…」
と言うとカノンの表情が少し明るくなった様な気がした
「…ありがとう、ヒイロさんの事だからきっとそうなんだと私も思う」
「でも、言ってもらいたかったな…今まで沢山助けてくれたんだもの」
「私もヒイロさんの力になってあげたかったな…」
コンコンコン
そう2人で話していると、ドアをノックする音がした
『カノンさ~ん、いますか~?チーフプロデューサーのマイトです~』
と声が聞こえた
カノンが少し驚き、
「あっ、は~い、今開けますね~」
と言って楽屋のドアを開けた
一応俺はドアからは見えづらい場所に移動する
マイトという人が困った表情でカノンに言う
「あ~カノンさん、良かったぁ、ここにいたんですね?」
「会場に行ったら誰も居なくて…それにお客さんも皆帰っちゃたみたいだし…」
「一体どうなってんのかサッパリ分かんなくて…」
「とりあえず今日のキャストに声を掛けて回ってるんだけど、皆よく覚えてないみたいなんだよね~」
「…で、カノンちゃんは大丈夫?何か変な事とか起きて無かった?」
マイトがカノンに問いかけた
カノンは誤魔化そうとしどろもどろになりながらも、
「…私…も…良くは…覚えて無いんです…」
「気付いたら楽屋にいました、エヘヘッ」
と誤魔化す
マイトがそれを聞いて溜息交じりに、
「…そっかぁ、カノンちゃんもか…」
「サッパリ状況は分からないけど、とりあえず今日のコンサートは中止だね…」
「こんな状況じゃちゃんとした判断なんて出来ないけど…」
「悪いんだけど、今日の所は一度帰ってもらっていい?後で改めて事務所に連絡するよ」
「…それじゃ、悪いね?」
と言って去って行った
「…ふぅ、とりあえず誤魔化せたかな?」
とカノンが安堵した様に言った
俺は丁度この話しが折れたタイミングで、
「とりあえず今日は一度帰った方が良さそうですね…」
「今回の事や今後については後日、ヒイロさんを含めてお話しした方が良いですね」
とりあえずこの場を去る為にカノンに言った
「…分かった、まだ聞きたい事はあるけど、今日は帰る…ヒイロさんの事も気になるし…」
「城島君にはヒイロさんから連絡あると思うから、その時にいつ会うか決めてね?」
そうして俺はカノンの楽屋から出てタクシーまで荷物を一緒に運び見送った
見送った後俺はミケが寝ている医務室へ向かった
医務室のベットではミケが眠っている
俺がミケの肩に手を置き声を掛けると目を覚ました
「…デミ…ス?」
ミケに対して俺が小さい声で語りかける
「大丈夫か?まだ無理はしない方が良いとは思ったけど、今話なければいけない事があったから起こさせてもらったんだ…」
「今は辛いと思うが、聞いてくれるか?」
と言うとヒイロはか細い声で、
「…うん、さっきよりは大分楽になって来たから大丈夫…」
「もう少し休んだらカノンの所に戻るわ」
と言ったので俺は改まって、
「…さっきカノンさんと話した」
「驚くとは思うが、カノンさんはあの会場で起きていた事を知っていたみたいなんだ…」
と言うとミケは驚き、
「えっ!どういう事?カノンは気を失っていた筈…」
「何で”知って”るの?」
とかなり焦った様子だったので、
なるべく要点を絞って経緯を話した
「…そう…だったの」
「あの子に初めて会った時の違和感はそれだったのね…」
「…分かったわ」
「私も一度帰る…事務所にも連絡しないと…」
「色々とありがとうデミス…お礼はまた今度するね?」
「少し落ち着いたら私から連絡するから…」
「今日はあなたも家に帰って休んで…」
「もう暫くしたらここを出るわ」
俺は頷くと、ヒイロの事が心配だったが一度家に帰る事にした
会場の外で休んでいた人は次々と帰っていったのか、少なくなっていた
そんな中サエキ達3人を見つけた俺は、今起きている状況を理解出来ていない3人と一緒に帰っていった
第13話に続く
俺は自分の隣の席にいたサエキに声を掛けた
「サエキ君、大丈夫?」
と声を掛けてみたが、サエキが少し間黙った後、
「…?ああ、城島か…俺って今ここで何してたんだ?」
…どうやらミケの言った通り記憶障害を起こしている様だな
見た所それ以外の変化や怪我とかも無かったので一安心した…
そしてボーっとその場に立っていたゴトウとミカワも同じく今の現状を理解していない様だった
俺は3人と会場にいる人達を会場外の広い休憩所があるスペースに誘導して、再び会場に戻った
するとステージ上にはカノンが1人立っていた
「…カノンさん?大丈夫ですか?どこか怪我とかしていませんか?」
と声を掛けるとカノンは、
「…君は…確か、城島君だったっけ?」
「…確かライブ中で…」
「急に黒い服を来た人が来たと思ったら、その瞬間に気を失ったみたい…」
「あれ?あの黒い服を来た人は?」
カノンは他の人達とは違い、直前の事まで覚えていたみたいだ
それに他の人達とは違い、目が覚めた後でも意識がハッキリとしている様だった
”因子”とやらが関係しているからなのか?それとも他の何かか…
更にカノンが俺に聞いてくる
「そうだ…ヒイロさんは?もう打ち合わせ終わって戻って来てる筈だけど…」
すると俺は口が滑ってしまい、
「ヒ、ヒイロさんなら何か体調が優れないとか言って帰ったみたいですよ?」
「私の代わりにカノンさんを宜しく、みたいな事を言って…」
「ステージ中だから伝えておいてくれって頼まれたんです」
…もっと上手い誤魔化し方は無かったのだろうか、後で反省した
するとカノンが疑った表情で、
「…ふぅ~ん、そうなんだ…」
「ヒイロさんが体調崩すなんて珍しいけど…まぁいいわ、教えてくれてありがとう!」
「う~ん…今どんな状況か分からないしなぁ…」
「とりあえず一度楽屋に戻った方が良さそうね?城島君も付いて来て」
俺はキョトンとなり、
「えっ、何で僕が…」
と言うとカノンが、
「ヒイロさんに代わってって言われたんでしょ?じゃあ私が帰るまでは城島君がマネージャー代理って事で!」
ウィンクしつつ意地悪な笑顔でそう言った
「…うっ、…(自分で言った事とはいえ)仕方ないですね…代理って言われても何していいか分かりませんが…」
カノンは俺の前を歩きながらこちらを見ずに言った
「大体の事は私が1人でやるから、帰る時に持ちきれない荷物を持ってくれればいいわ?」
「後は呼んだタクシーに荷物乗っけたらおしまいっ」
俺は半分自分で蒔いた種だと納得させ、
「…分かりました」
と力無く言った
パタン、…ガチャ
楽屋に戻るとカノンはおもむろにドアの鍵を閉めた
「…!カノンさん?何で鍵閉めたんですか?」
と俺が聞くと、カノンは神妙な顔付になり、
「…ねぇ、城島君…」
「…それとも、デミス君って呼んだ方が良いかな?」
!!死ぬほど驚いた。なんでその名を知っているんだ?
「え…っと、誰の事ですか?」
ととぼけるが、カノンには全く通用しない
「…さっき、ヒイロさんの事ミケって呼んで、ヒイロさんも君の事デミスって呼んでたわよね?」
俺はさっきの奴等との会話と皆を助ける時の行動を知っているかの様な言葉に息を呑んだ
「…全部聞いてたんですか?」
するとカノンは首を傾げ、
「…うん、聞いてたと言うより”視えて”いたって言った方が良いかもしれない」
「意識は無かったみたいだけど、貴方が黒い服を来た男の人達と話していた事や、他にも倒れていた観客の人達を2人で助けていた所を視ていたの」
「私の身体から意識が離れていく感覚の中、温かい光に包まれて身体に戻っていった感覚があった…」
「…貴方達が私や皆を助けてくれたんでしょう?」
…ここまで視えていたのなら誤魔化すのは難しいか…
俺はカノンに最小限にその時起こった経緯とミケとの関係を説明した
「…ヒイロさんの事…何処まで知っているんですか?」
と俺は質問をしてみた
するとカノンは俯きながら、
「…ヒイロさんは私のマネージャーだけど、たまに仕事とは別にいなくなってしまう事が何回もあった…」
「それで私、ヒイロさんの事気になっちゃってオフの日にこっそりヒイロさんの事を見にいった事があるの…」
「そうしたらヒイロさんはいつもとは違う雰囲気で、何かこう…張り詰めた雰囲気というか…周囲に対して警戒している様な感じだったの」
「…それに……説明は難しいんだけど、何か…オーラって言うのかな?他の人とは違う感じがしたの」
「あはは…ゴメンね?急にそんな事言われても何の事だかサッパリだよね?」
俺はその言葉に対して確信を持った
《この人も他人とは違う”何か”を持っているのだろう…そしてその何かというのは間違いなく”因子”というのが関係している》と…
あの【業火のヴィズ】という男が言っていた《”因子”持ちが他にもいる》という言葉の通り、俺とカノンには”因子”と呼ばれているものがあるという事だ
この”因子”というのが何の事だが分かってはいないが、俺やカノンは確実にそこ影響を受けている様だな…
俺はカノンに聞いてみた
「…それでカノンさん、あの男が言っていた”因子”という言葉をどこかで聞いた覚えは無いですか?」
「ヒイロさんから聞いたのですが、最近カノンさんの周りで色々起きてるって…」
「もしかしたら、あの男が言っていたその”因子”と言うのが関係しているかもしれないんです」
と言ったがカノンには心当たりが無い様で、
「…ごめんなさい、あなたの言っている”因子”?って言うのが何かは私にも分からないの…」
「確かに最近は特に身の回りで色んな事が不自然に起きているわ」
「でも、私の身の回りに不思議な事が起き始めたのは4年前位からなの…」
「最近…大体6ヶ月位前からは私に対して色々と起き始めてきたわ…」
…4年前?4年前と言えば、俺が小学5年生の時で、不可解な現象が起き始めた年と同じだ!
確かその時期から俺の周りにも不可解な現象が起きていたが、カノンにも同じ時期に始まっていたのか?
…これも”因子”が関係しているのか?
これは俺の呪いで起きている事だと思っていたが、カノンにも不可解な現象が起きていたなら前提が変わってくる
俺とカノンに共通する”因子”
この”因子”が俺の呪いに関係しているのか?
今は少しでも情報が欲しかった俺は、悩んだが自分の事も話す事にした
「…実は僕も4年前から周りに異変が起きていて、最初は噂とか作り話だと思ってんですが…僕自身も体験してしまって…」
「それから次第に異変の兆候が増えて来て…僕には大きな被害は無かったんですが、周りに被害が出始めてて…」
「それで親のツテを使ってミケさ…ヒイロさんと知り合ったんです」
「個人情報の為とかであだ名みたいに呼ぶ事になってので、僕はデミスと呼ばれる様になりました」
巧みに真実と虚偽を混ぜながら話していく
「この前旅館にヒイロさんが来て話しを聞くと、カノンさんも同じように身の回りに異変が起きていると聞いて…」
「同じ境遇なら、お互いに降りかかる災難を解決出来る方法があるんじゃないかという事でヒイロさんに紹介してもらったんです」
と言うとカノンが、
「そうなんだ…城島君には他の人とは違う感じがしたから…」
「私と同じ様な体験をしてきたからなんだね?」
「…ヒイロさんの事は知らなかったからちょっとビックリしてる」
「なんで言ってくれなかったのかな…」
ミケに対して寂しそうな表情をしているカノンに俺は、
「…きっとヒイロさんは、カノンさんに余計な心配を掛けない為に黙っていたんだと思います」
「2人が出会った時には歌手活動をしていた筈ですから、陰ながら支えようとしていたと思います」
「まぁ本人に聞いた訳では無いので予想ですけど…」
と言うとカノンの表情が少し明るくなった様な気がした
「…ありがとう、ヒイロさんの事だからきっとそうなんだと私も思う」
「でも、言ってもらいたかったな…今まで沢山助けてくれたんだもの」
「私もヒイロさんの力になってあげたかったな…」
コンコンコン
そう2人で話していると、ドアをノックする音がした
『カノンさ~ん、いますか~?チーフプロデューサーのマイトです~』
と声が聞こえた
カノンが少し驚き、
「あっ、は~い、今開けますね~」
と言って楽屋のドアを開けた
一応俺はドアからは見えづらい場所に移動する
マイトという人が困った表情でカノンに言う
「あ~カノンさん、良かったぁ、ここにいたんですね?」
「会場に行ったら誰も居なくて…それにお客さんも皆帰っちゃたみたいだし…」
「一体どうなってんのかサッパリ分かんなくて…」
「とりあえず今日のキャストに声を掛けて回ってるんだけど、皆よく覚えてないみたいなんだよね~」
「…で、カノンちゃんは大丈夫?何か変な事とか起きて無かった?」
マイトがカノンに問いかけた
カノンは誤魔化そうとしどろもどろになりながらも、
「…私…も…良くは…覚えて無いんです…」
「気付いたら楽屋にいました、エヘヘッ」
と誤魔化す
マイトがそれを聞いて溜息交じりに、
「…そっかぁ、カノンちゃんもか…」
「サッパリ状況は分からないけど、とりあえず今日のコンサートは中止だね…」
「こんな状況じゃちゃんとした判断なんて出来ないけど…」
「悪いんだけど、今日の所は一度帰ってもらっていい?後で改めて事務所に連絡するよ」
「…それじゃ、悪いね?」
と言って去って行った
「…ふぅ、とりあえず誤魔化せたかな?」
とカノンが安堵した様に言った
俺は丁度この話しが折れたタイミングで、
「とりあえず今日は一度帰った方が良さそうですね…」
「今回の事や今後については後日、ヒイロさんを含めてお話しした方が良いですね」
とりあえずこの場を去る為にカノンに言った
「…分かった、まだ聞きたい事はあるけど、今日は帰る…ヒイロさんの事も気になるし…」
「城島君にはヒイロさんから連絡あると思うから、その時にいつ会うか決めてね?」
そうして俺はカノンの楽屋から出てタクシーまで荷物を一緒に運び見送った
見送った後俺はミケが寝ている医務室へ向かった
医務室のベットではミケが眠っている
俺がミケの肩に手を置き声を掛けると目を覚ました
「…デミ…ス?」
ミケに対して俺が小さい声で語りかける
「大丈夫か?まだ無理はしない方が良いとは思ったけど、今話なければいけない事があったから起こさせてもらったんだ…」
「今は辛いと思うが、聞いてくれるか?」
と言うとヒイロはか細い声で、
「…うん、さっきよりは大分楽になって来たから大丈夫…」
「もう少し休んだらカノンの所に戻るわ」
と言ったので俺は改まって、
「…さっきカノンさんと話した」
「驚くとは思うが、カノンさんはあの会場で起きていた事を知っていたみたいなんだ…」
と言うとミケは驚き、
「えっ!どういう事?カノンは気を失っていた筈…」
「何で”知って”るの?」
とかなり焦った様子だったので、
なるべく要点を絞って経緯を話した
「…そう…だったの」
「あの子に初めて会った時の違和感はそれだったのね…」
「…分かったわ」
「私も一度帰る…事務所にも連絡しないと…」
「色々とありがとうデミス…お礼はまた今度するね?」
「少し落ち着いたら私から連絡するから…」
「今日はあなたも家に帰って休んで…」
「もう暫くしたらここを出るわ」
俺は頷くと、ヒイロの事が心配だったが一度家に帰る事にした
会場の外で休んでいた人は次々と帰っていったのか、少なくなっていた
そんな中サエキ達3人を見つけた俺は、今起きている状況を理解出来ていない3人と一緒に帰っていった
第13話に続く
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