追放されたスライム専門美容師、追放先でうっかり世界を掌握しかける

椎名シナ

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第21話虚無の源流へ! 悲しき「古代スライムの心核」を救え!

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ポチ子が感知した「スライムの大きなカケラ」が泣いているという「虚無の穴」の中心部。

ケンジは、それがこの地域の瘴気の発生源と深く関わっていると確信し、危険を承知の上で、その謎を解き明かすべく進むことを決意した。

ドリアンコ町代表のバルガス氏も、ケンジの覚悟とスライムたちの未知なる力に賭け、全面的な支援を約束。

ここに、カゲウス村とドリアンコ町、そしてスライムたちによる、世界初の「対虚無合同調査救助隊」が結成された。

「リンクルちゃん、僕とバルガス殿、そして村のフィリアス師との思念リンク、お願いね。ラミレスさん、瘴気濃度の変化、引き続き頼みます。ヌマゴン、きよらちゃん、モグバスくんたち、いつでも出られるように。ピカリンちゃんは周囲の警戒とエネルギー探知。ポチ子、サブロー君、僕のそばを離れないで」 

ケンジの的確な指示が、リンクルちゃん(思念ネットワークスライム)を通じて各員に伝わる。一行は、瘴気が渦巻く「虚無の穴」へと、一歩一歩慎重に足を踏み入れた。

そこは、もはや通常の湿原の光景ではなかった。空間そのものが歪んでいるかのように空気が重く、色は褪せ、音はくぐもり、生命の気配は完全に途絶えている。

しかしきよらちゃんとソレイユちゃん(太陽のスライム、今回はケンジが小さな分身体を連れてきていた)が放つ浄化と生命の光のバリアが、かろうじて一行の安全を確保しているが、それでも肌を刺すような冷気と、精神を蝕むような虚無感が襲いかかってくる。

それに対抗してモグバスくん(瘴気喰滅スライム)たちが、先遣隊として染み出してくる濃度の高い瘴気を必死に食べ進み、わずかながらも道を開いていく。

「ケンジ殿、この先、特に瘴気の反応が強いです!おそらく、あれが…!」 

ラミレスが、かろうじて機能している瘴気測定器の針が振り切れるのを指差した。 

その先には、巨大な洞窟のような空間が広がっていた。そして、その中央――。

「あれが…ポチ子が言っていた…『スライムの大きなカケラ』…!」 

ケンジは息をのんだ。 

そこにあったのは、巨大な水晶の塊に包まれ、しかしその水晶には無数の亀裂が走り、そこから黒紫色の「虚無の影」がまるで血のように流れ出している、痛々しい姿の「何か」だった。

それは、直径数メートルはあろうかという、脈動する光の球体。

だが、その光はあまりにも弱々しく、今にも消え入りそうだ。 

ポチ子が、ケンジの肩の上で悲痛な声を上げた。 

「ぷるるる…(ケンジ…あれは…大昔、この場所に開いた『虚無への大穴』を、自分自身を犠牲にして、内側から塞ごうとした…偉大なスライムさんの…最後のカケラ…『心核(こころ)』だよ…!でも、もう…力が…限界なんだ…!だから…泣いてるの…!)」 

この地域の瘴気の発生源は、悪意ある存在などではなく、一人の偉大な古代スライムが、その命を賭して世界を守ろうとした自己犠牲の封印が、永い時の流れの中で限界を迎えつつある結果だったのだ。

「このままでは、数日…いや、数時間のうちに心核は完全に砕け散り、ここから未曾有の量の『虚無の影』が溢れ出すでしょう…!そうなれば、カゲウス村もドリアンコ町も…!」 

ラミレスの顔が絶望に染まる。バルガス氏も、そのあまりの光景に言葉を失い、ただ固く拳を握りしめる。

しかし、ケンジは諦めていなかった。彼の瞳には、まだ温かい光が宿っている。 

「まだだ!まだこの心核には、優しい光が、生きようとする意志が残っている!僕たちの手で、この方を…この世界を守ろうとした偉大な魂を、助け出すんだ!」 

ケンジの決意に、スライムたちが力強く応える!

「カゲウス村&ドリアンコ町合同・古代スライム心核救出大作戦、開始!」

まず、リンクルちゃんを通じてカゲウス村にいるガイア様(大地の守護神スライム)に状況を伝達!ガイア様は、その強大な大地の力で、この洞窟全体の地盤を遠隔で安定させ、これ以上の亀裂の拡大と瘴気の噴出を抑え込む! 

次に、ヌマゴンが、その器用さと頑強さを活かし、心核の亀裂が特に酷い部分に、きよらちゃんの浄化エネルギーとソレイユちゃんの生命エネルギーを練り込んだ特製「超修復スライム粘土」を、まるで熟練の外科医のように慎重かつ迅速に充填し、補強していく! 

ソレイユちゃんときよらちゃんは、心核に向けて最大限の「太陽の生命エネルギー」と「聖なる浄化の光」を照射し続け、弱り切った心核の力を内側から力強く支える! 

モグバスくんたちは、心核からなおも漏れ出してくる微量の瘴気を、文字通り決死の覚悟で食べ続け、仲間たちが作業しやすい環境を維持する! 

ピカリンちゃんは、心核内部のエネルギーの流れを可視化し、ケンジに「どこが一番弱っているか」「どこにエネルギーを送れば効果的か」を的確に伝える!

そしてケンジは、ポチ子のテレパシーを通じて心核に直接語りかけながら、その水晶の表面を、彼が持つ全ての愛情と感謝、そして「生きてほしい」という強い願いを込めて、優しく、それはもうどこまでも優しく「グルーミング」し始めた。 

「あなたは一人じゃない…あなたのその大きな勇気と、世界を想う優しい心は、ちゃんと僕たちが受け継ぐから…だから、もう少しだけ、ほんの少しだけでいいから、頑張って…!」 

ケンジの温かい言葉と、彼の手から伝わる純粋な「スライムへの愛」が、まるで清らかな泉のように、心核へと注ぎ込まれていく。

どれほどの時間が経っただろうか。 

ケンジとスライムたちの懸命な努力、そしてドリアンコ隊の必死の援護が、ついに奇跡を呼び起こした。 

古代スライムの心核が、まるでケンジの想いに応えるかのように、ふっと温かな光を、その内側から力強く放ち始めたのだ!

亀裂の進行は完全に止まり、むしろ少しずつ修復されていくようにさえ見える!

そして、心核から漏れ出していた「虚無の影」の奔流が、明らかに、そして劇的に弱まり始めた!

「やった…!やったぞ、みんな!」 

ケンジが歓喜の声を上げる。スライムたちも、そしてバルガス氏たちも、その光景に涙ぐんでいた。 

その時、心核の中心から、一つの小さな、しかし強烈な光の玉がふわりと分離し、まるで吸い寄せられるように、ケンジの手の中にそっと収まった。

それは、心核がケンジに託した「感謝のしるし」であり、「古代の叡智の結晶」であり、そして「未来へと繋ぐ希望のバトン」のようだった。

その光の玉は、ケンジの手の中で、温かく、そして力強く脈打っている。



【一方その頃…勇者一行、ついに「聖剣(という名の折れた鉄パイプ)」の「真の(残念な)力」を誤って解放してしまう!?】

魔法使いインテリオの日誌(もはや、哲学的問答の域に達している)

◆勇者様が、例の泥沼(硫黄泉)で発見し、毎日丹念に磨き続けていた錆びた鉄パイプ(本人曰く『聖剣エクスカリバー(泥まみれからの覚醒バージョン)』)が、先日、枯れ木への試し斬りの際に根本からポッキリと折れてしまった件について。 常人ならばここで『やはりただの鉄屑だったか…』と諦観するところだが、勇者様は違った。『見よ!聖剣が我が強大すぎる力を恐れ、その力を分散させるために、あえて二つに分かれたのだ!これは聖剣の最終形態、『双聖剣エクスカリバー・ツインブレード』への進化の兆しに違いない!』と、折れた鉄パイプ二本を両手に持ち、謎の剣舞を踊り始めた。 

その剣舞(という名の、ただのデタラメなパイプ振り回し)の最中、偶然にも、近くにあった古代の石碑(ただの苔むした岩)に鉄パイプの先端が命中。すると、石碑から『キーン!』という甲高い音と共に、まばゆい光が迸り、勇者様は『うおお!聖剣の真の力が解放されたー!』と叫びながら光に包まれ…そして、光が収まった後、そこには頭がアフロヘアーになり、服がビリビリに破け、顔中ススだらけの勇者様が立っていた。

どうやら、古代の『イタズラ妖精の封印石(触るとちょっとした悪戯をされるだけ)』を起動させてしまったらしい。

聖剣の力とは、実に奥が深い(棒読み)。




ケンジたちは、ひとまず安定を取り戻した「古代スライムの心核」に深く一礼し、疲労困憊ながらも達成感に満ちた表情で、「虚無の穴」から撤退した。

ケンジの手の中には、心核から託された小さな光の玉が、未来への道しるべのように、温かく脈打っている。

洞窟の入り口で待機していたフィリアス師は、ケンジたちの無事な帰還と、瘴気の勢いが明らかに弱まっていることに、老眼鏡の奥の瞳を潤ませた。 

バルガス氏は、ケンジの肩を力強く叩き、

「ケンジ殿、貴殿と、貴殿のスライムたちの勇気と力は、我々ドリアンコ町…いや、この世界の希望だ。改めて、全力を挙げて貴村とこの危機に立ち向かうことを誓おう」

と、固い握手を交わした。

しかし、ラミレスの分析と、ケンジが光の玉から断片的に感じ取る情報によれば、この地域の「虚無の穴」は、世界中に点在するかもしれない「染み出しポイント」の一つに過ぎず、その大元にあるであろう「虚無の裂け目」そのものを塞がない限り、根本的な解決にはならないことも示唆されていた。

「僕たちの戦いは、まだ始まったばかりなんだ…」 

ケンジは、手の中の光の玉をじっと見つめ、決意を新たにする。

この光が示す未来とは?

そして、世界を覆う「虚無の影」の本体とは、一体どこに…? 

カゲウス村に戻り、村人たちに今回の成果を報告し、そして次なる一手――世界の他の「虚無の穴」の調査と封印、「希望の種」たる古代スライムたちのさらなる覚醒、そしてより広範な協力体制の構築――へと、物語は大きく動き出す予感を孕んでいた。

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