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第44話 もう、手の尽くしようがありません
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四人は顔を見合わせた。
「……あの」ふゆこは小声で尋ねた。「そいつ……眠ってるよね。今、攻撃するのって、ちょっと……良くないんじゃ?」
「ふん」クレイは気まずそうに顔をそむけ、彼のトレードマークである、強情な口調で言った。「眠っている相手に手を出すなんて、俺様の美学に反するな」
いつもは最も理性的なみぞれでさえ、ただ静かに立ち尽くし、何の指令も下さなかった。
この気まずい沈黙の中、クスマが、ため息を一つ漏らした。
彼は「仕方ない、僕が悪役になるしかないか」という、自己犠牲(?)精神に満ちた表情で、一歩前に進み出た。
彼は皆の驚く視線の中、トントン導師からもらった空間の指輪から、きらりと冷たい光を放つ一本の小刀を取り出した。
彼は何の躊躇もなく、手の中の小刀を、極めて巧みで、そして極めて正確な角度で、そっと、しかし容赦なく、まっすぐにそのスライムの体の真ん中にある、微かに見える、心臓のような核へと突き刺した。
悲鳴も、もがきもなかった。
その、まだ夢の中にいたスライムは、ただ軽く震え、そして夢の中で、完全に命を失い、透き通った、まだかすかに揺れている赤いゼリーへと変わった。
しかし、クスマがこの全てを終えた後、彼はすぐには刀を収めなかった。
彼はまず、小刀をゆっくりと引き抜き、それから、極めて悲しそうな、まるで困難な手術を終えたものの、結局は助からなかった、一流の外科医のような態度で、後ろにいる、まだ衝撃を受けている「ご家族」に向かって、ゆっくりと、沈痛な面持ちで、首を横に振った。
「……もう、手の尽くしようがありません」
彼が翼で、粘液まみれの手術刀を拭うのを見て、他の三人は皆、「こいつ、悪魔か?」という、衝撃と恐怖に満ちた眼差しで彼を見ていた……!
─ (•ө•) ─
しかし、その初見の衝撃と不憫さは、すぐに、この「労せずして得る」、極めて効率的な狩りの方法がもたらす「達成感」に取って代わられた。
「おい!もやし!また一匹見つけたぞ!」クレイは自慢げな口調で、隣のクスマに言った。「これで三匹目だ!そっちはどうだ?」
「ふん」クスマは「君には分からないさ」という、どこか「達人」風の眼差しで彼を見つめた。「僕が追求しているのは『質』であって、『量』ではない。暗殺は芸術なんだ。分かるかい?」
任務の進行は速く、チームの雰囲気も、ますます熱を帯びていった。
秘境全体が、笑い声に満ちた狩猟場と化した。クレイとクスマは、さらには「次に眠っているスライムを誰が先に見つけるか」で、互いに競い合い始めた。
クスマはさらに意気揚々と、ふゆこに対し、彼独特のスタイルの「忍者」の指導を始めた。
「ふゆこ、覚えておきなさい」彼は大真面目に言った。「真の忍者たるもの、暗殺術を極めなければならない!肝心なのは一撃必殺、敵に反応の機会を一切与えないことだ!」
彼が生き生きと語るので、傍らのクレイさえも、その「歪んだ理屈」に感化され、同調して言った。「その通りだ!弱者だけが、敵と愚かな正面対決をする!強者は、最も楽な方法で勝利を手に入れる。これを『戦術』と言うんだ!」
ただみぞれだけが、目の前の、完全に「暗殺ゲーム」に没頭している、意気揚々の仲間たちを見つめ、その澄んだ瞳に、初めて、一筋の疑惑が浮かんだ。
(おかしい……事態が、なんだか……だんだん、私の理解できない方向へ進んでいるような。)
(私、彼ら三人を「実戦訓練」に連れてきたはずじゃ……?)
─ (•ө•) ─
みぞれが口を開き、「秘境に来たのは実戦訓練のためだ」という初心を彼らに思い出させようとした、まさにその時、クスマが突然「おや」と声を上げ、足早に一本のゼリーの木の下へ駆け寄った。
そこには、彼が今まで見たことのない、透き通った緑色のゲルがあった。まるで、美味しい、ミント味のゼリーのように見えた。
「おお!希少種だ!」
クスマは興奮してそれを拾い上げ、舌を伸ばし、この「新品」の味を確かめようとした、まさにその時—
「待って!」「師匠、だめです!」
背後から、三人の仲間たちの、恐怖に満ちた、悲痛な叫びが聞こえた!
「何だよ?」クスマは振り返り、訳が分からないといった顔をした。
みぞれは、気絶しそうな表情で、震える指を、遠くの別の木へと向けた。
クスマが彼女の指差す方向を見ると、そこには、三匹の、色が異なるスライムが、こちらに横を向け、並んで立っていた。その体は、リズミカルに、心地よさそうに震え、顔(もしそれが顔だとするならば)にも、極めてすっきりとした表情が浮かんでいた。
そして、クスマの、徐々に石化していく視線の中、三つの、温かく、新鮮で、色が異なり、しかし彼の手の中のあの塊と全く同じゲルが、ゆっくりと彼らの尻から、排出されてきた!
クスマは目の前の、この「昼食を食べ過ぎた後、一緒にトイレに行こうと約束した」スライム学生たちの、「友情」と「解放感」に満ちた光景と、自分の手の中の、まだ「温もり」が残る緑色のゲルを、交互に見比べた!
彼はついに、自分が手に持っているものが、一体、何なのかを、悟ったのだった……。
「……あの」ふゆこは小声で尋ねた。「そいつ……眠ってるよね。今、攻撃するのって、ちょっと……良くないんじゃ?」
「ふん」クレイは気まずそうに顔をそむけ、彼のトレードマークである、強情な口調で言った。「眠っている相手に手を出すなんて、俺様の美学に反するな」
いつもは最も理性的なみぞれでさえ、ただ静かに立ち尽くし、何の指令も下さなかった。
この気まずい沈黙の中、クスマが、ため息を一つ漏らした。
彼は「仕方ない、僕が悪役になるしかないか」という、自己犠牲(?)精神に満ちた表情で、一歩前に進み出た。
彼は皆の驚く視線の中、トントン導師からもらった空間の指輪から、きらりと冷たい光を放つ一本の小刀を取り出した。
彼は何の躊躇もなく、手の中の小刀を、極めて巧みで、そして極めて正確な角度で、そっと、しかし容赦なく、まっすぐにそのスライムの体の真ん中にある、微かに見える、心臓のような核へと突き刺した。
悲鳴も、もがきもなかった。
その、まだ夢の中にいたスライムは、ただ軽く震え、そして夢の中で、完全に命を失い、透き通った、まだかすかに揺れている赤いゼリーへと変わった。
しかし、クスマがこの全てを終えた後、彼はすぐには刀を収めなかった。
彼はまず、小刀をゆっくりと引き抜き、それから、極めて悲しそうな、まるで困難な手術を終えたものの、結局は助からなかった、一流の外科医のような態度で、後ろにいる、まだ衝撃を受けている「ご家族」に向かって、ゆっくりと、沈痛な面持ちで、首を横に振った。
「……もう、手の尽くしようがありません」
彼が翼で、粘液まみれの手術刀を拭うのを見て、他の三人は皆、「こいつ、悪魔か?」という、衝撃と恐怖に満ちた眼差しで彼を見ていた……!
─ (•ө•) ─
しかし、その初見の衝撃と不憫さは、すぐに、この「労せずして得る」、極めて効率的な狩りの方法がもたらす「達成感」に取って代わられた。
「おい!もやし!また一匹見つけたぞ!」クレイは自慢げな口調で、隣のクスマに言った。「これで三匹目だ!そっちはどうだ?」
「ふん」クスマは「君には分からないさ」という、どこか「達人」風の眼差しで彼を見つめた。「僕が追求しているのは『質』であって、『量』ではない。暗殺は芸術なんだ。分かるかい?」
任務の進行は速く、チームの雰囲気も、ますます熱を帯びていった。
秘境全体が、笑い声に満ちた狩猟場と化した。クレイとクスマは、さらには「次に眠っているスライムを誰が先に見つけるか」で、互いに競い合い始めた。
クスマはさらに意気揚々と、ふゆこに対し、彼独特のスタイルの「忍者」の指導を始めた。
「ふゆこ、覚えておきなさい」彼は大真面目に言った。「真の忍者たるもの、暗殺術を極めなければならない!肝心なのは一撃必殺、敵に反応の機会を一切与えないことだ!」
彼が生き生きと語るので、傍らのクレイさえも、その「歪んだ理屈」に感化され、同調して言った。「その通りだ!弱者だけが、敵と愚かな正面対決をする!強者は、最も楽な方法で勝利を手に入れる。これを『戦術』と言うんだ!」
ただみぞれだけが、目の前の、完全に「暗殺ゲーム」に没頭している、意気揚々の仲間たちを見つめ、その澄んだ瞳に、初めて、一筋の疑惑が浮かんだ。
(おかしい……事態が、なんだか……だんだん、私の理解できない方向へ進んでいるような。)
(私、彼ら三人を「実戦訓練」に連れてきたはずじゃ……?)
─ (•ө•) ─
みぞれが口を開き、「秘境に来たのは実戦訓練のためだ」という初心を彼らに思い出させようとした、まさにその時、クスマが突然「おや」と声を上げ、足早に一本のゼリーの木の下へ駆け寄った。
そこには、彼が今まで見たことのない、透き通った緑色のゲルがあった。まるで、美味しい、ミント味のゼリーのように見えた。
「おお!希少種だ!」
クスマは興奮してそれを拾い上げ、舌を伸ばし、この「新品」の味を確かめようとした、まさにその時—
「待って!」「師匠、だめです!」
背後から、三人の仲間たちの、恐怖に満ちた、悲痛な叫びが聞こえた!
「何だよ?」クスマは振り返り、訳が分からないといった顔をした。
みぞれは、気絶しそうな表情で、震える指を、遠くの別の木へと向けた。
クスマが彼女の指差す方向を見ると、そこには、三匹の、色が異なるスライムが、こちらに横を向け、並んで立っていた。その体は、リズミカルに、心地よさそうに震え、顔(もしそれが顔だとするならば)にも、極めてすっきりとした表情が浮かんでいた。
そして、クスマの、徐々に石化していく視線の中、三つの、温かく、新鮮で、色が異なり、しかし彼の手の中のあの塊と全く同じゲルが、ゆっくりと彼らの尻から、排出されてきた!
クスマは目の前の、この「昼食を食べ過ぎた後、一緒にトイレに行こうと約束した」スライム学生たちの、「友情」と「解放感」に満ちた光景と、自分の手の中の、まだ「温もり」が残る緑色のゲルを、交互に見比べた!
彼はついに、自分が手に持っているものが、一体、何なのかを、悟ったのだった……。
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