記憶の呼ぶ声がする~怪異と使命と消えた過去と、全部諦めきれなくて~

白湯の氷漬け

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組織と使命

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「橙山、笹井くんに説明頼める?」
「ええ、任せてください」
「じゃあ、あとはよろしく。あそうだ、俺のことはシブキって呼んでくれ。それと……八旗くん」
「はい」
「君には二人より先に行ってもらうところがある。この道をまっすぐ行くと広場があるから、そこを右に曲がって突き当たりの場所に行ってくれ。行ったら分かる」
「分かりました」
「んじゃ、何かあったら連絡してね」

 電話は切れてしまった。橙山はそのイヤホンのような機械を耳に付け、八旗に目配せした。八旗は軽く会釈すると、もう先に行ってしまった。
 訳も分からずに笹井が口を開いていると、橙山が右手を腰に当てて、ふ、と息を吐いた。

「ごめんね、置いてけぼりにしちゃって。それじゃあ……どこから話そうか。そうだ、これ使っていいよ」

 橙山は鞄から手のひらサイズの黒い手帳を取り出し、ボールペンと一緒に笹井に渡した。笹井はあたふたとメモを取る準備をし、それを確認した橙山がゆったりと話し出す。

「私たちはとある組織に所属している、いわば怪異ハンターだ。科学では証明できない、人知を超えた存在が人々に異常をもたらす前に、それを阻止して平穏を守る。
 だがそんな危なっかしいものを扱うために、組織の全容も誰が所属しているかも、上層の司令部以外は知らされていない。ここまでいいかな?」

 笹井は、はい、と頷く。

「いいね。そして私たちは今回特別に数人で派遣された。それほど危険だということになるね。それぞれに役割があって、まずはその説明から入ろうかな」

「笹井君は<臨検役りんけんやく>。怪異についての情報整理と、それを基に対策を講じることが使命だ。
 といっても情報収集は三人で手分けしようと思っているから、気負わないで大丈夫。そして次に、」

 橙山は自分の胸にぽん、と左手を当てた。風でなびいた髪も気にせず、小さくウインクをする。

「私。<擁護役ようごやく>といって、異常からチームを守るのが使命だ。そのための物資をいくつか支給されているから、何でも相談してほしい。
 そして八旗君。……もうそろそろ私たちも行ってもいいかな、移動しながら話そう」

 八旗と同じ道を歩き始めた橙山に笹井が続き、ふと眩しさに空を見上げた。
 太陽は真上から射しこみ、道沿いの紅葉を通して二人を照らしていた。笹井の額に一筋の汗が流れる。

「彼は<奪還役だっかんやく>。異常、時には怪異そのものを排除し、安寧と秩序を守ることが使命だ。彼は真面目で信頼できる人だから、安心して背中を預けられるよ。
 最後に今回の怪異についてだけど……ああ、見つけた。八旗君!」

 橙山が通る声で呼びかけると、遠くにいた彼が振り向いた。広場横のベンチに広げていたアタッシュケースを閉じ、軽く右手を上げてから二人の方に駆け足で来る。

(……あれ)

 遠くでもよく見ていた。八旗が振り向いた一瞬、その表情が曇っていたのを、笹井は見逃さなかった。
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