7つの短編集

望月ナナコ

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【筋肉】筋肉の妖精

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【火事場の馬鹿力】

火事のときに、自分にはあると思えない大きな力を出して重い物を持ち出したりすることから、切迫した状況に置かれると普段には想像できないような力を無意識に出すことのたとえ。

人間はギリギリ切羽詰まった時に不思議な力を発揮する事があると思うが・・・あれは実は全部俺達筋肉の妖精達が力を授けてやっているんだぜ。

何しろそんな偉大な力がある妖精達の数は限られている。だからピンチの奴全員を助けてやれる訳じゃ無い。まあこれに関しては運だな。その時俺達が近くにいるかどうか、気付く事が出来るかどうか。

いやあ、最近はめっきり暖かくなって気持ちがいい。花粉はヤバいけど。妖精にだって苦手なものくらいあるんだぜ。
さて、そろそろ仕事しないとな。

暖かくなってベビーカーで赤ちゃんと散歩していたんだろう。ママ友とのお喋りに夢中になってベビーカーから手を放してしまっている。そこは下り坂になっていてあっという間にベビーカーは急発進。ベビーカーの先には車が沢山通る大通り。これは大変だ。

気付いたお母さんは真っ青になりながらベビーカーを追いかけている。俺はお母さんの足に力を授ける事にした。本人もびっくりするぐらいの俊足でベビーカーに辿り着いたお母さんは無事に赤ちゃんを救出出来たようだ。

・・・ん?

「あんたなんか最低っ!まさか結婚しているなんて思いもしなかった・・・不倫相手も私だけじゃなかったなんて、どれだけ女を馬鹿にすれば気が済むのよ!」

「・・・・悪かったよ。」

男は客観的に見て罰の悪そうな、それでいてめんどくさそうな顔をしていた。

「一発殴らせなさいよ!」

面白いから少しだけ力を授けてあげる事にした俺。

バチぃんんんっ!

華奢な女性がビンタしたとは思えないくらいに男はぶっ飛んでいった。

まあ女を馬鹿にしたんだからこれも一種の火事場の馬鹿力だな。俺はルンルンでその場を去った。



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