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プロローグ
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その日は雷雨であった。暗い空を時折稲妻が照らし、遅れて骨の髄まで揺らす様な轟音が空気をつんざく。そんな中を駆ける二人の人物がいた。追う方の男は雷にも負けないほどの大声で前を走る相手を詰る。
「逃げるな卑怯者! お前の責任を果たせ!」
一方、追われる方は今にも消え入りそうな声で言い返す。いや、相手に届いていないのでは言い返せてはいないのだろうが。追いかけられていたのは、柿色の着物を着た少年であった。一方、それを追うのは帯刀した武士。
「せ、拙が口外せねば、何も墓場に持っていく必要は……」
「主が死ねと命じれば死ぬのが忍! それが常道! なぜお前はそうしない!」
少年は脚が早く、あっという間に見えなくなってしまう。その姿が丁度、町火消のやぐらさえ超える背丈の大木の下に向かった時のことであった。空から雷が降り注ぎ、大木を直撃する。
「なんだ?」
燃え上がり崩落する木へ武士は急ぐ。木を焼く炎はすぐさま雨によって消されたが、あの大木が芯まで黒焦げになるほどの雷であることが伺えた。
追いかけていた少年の姿はなく、履いていた草鞋の片側が燃え残りとして落ちているだけであった。
「ふ、ははは……あの臆病な忍め、天に罰せられよったぞ!」
武士は喜び、満足して去っていった。
「逃げるな卑怯者! お前の責任を果たせ!」
一方、追われる方は今にも消え入りそうな声で言い返す。いや、相手に届いていないのでは言い返せてはいないのだろうが。追いかけられていたのは、柿色の着物を着た少年であった。一方、それを追うのは帯刀した武士。
「せ、拙が口外せねば、何も墓場に持っていく必要は……」
「主が死ねと命じれば死ぬのが忍! それが常道! なぜお前はそうしない!」
少年は脚が早く、あっという間に見えなくなってしまう。その姿が丁度、町火消のやぐらさえ超える背丈の大木の下に向かった時のことであった。空から雷が降り注ぎ、大木を直撃する。
「なんだ?」
燃え上がり崩落する木へ武士は急ぐ。木を焼く炎はすぐさま雨によって消されたが、あの大木が芯まで黒焦げになるほどの雷であることが伺えた。
追いかけていた少年の姿はなく、履いていた草鞋の片側が燃え残りとして落ちているだけであった。
「ふ、ははは……あの臆病な忍め、天に罰せられよったぞ!」
武士は喜び、満足して去っていった。
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