拝啓、天使様。

空々ロク。

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拝啓、天使様。

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『この手紙を拾った方へ。
お願いがあります。この手紙を捨てないでください。残しておいてください。僕は必ずそちらへ行きます。だから待っていてください』

「何拾ったの?」
「手紙」
「こんなとこに手紙が来るの?」
「初めて見た」
「そりゃそうだよね。だってここ、天国だよ?」
ビビの言う通りここは天国だ。
俺とビビは天国で天使として働いている。
仕事は主に死んだ人間の魂の誘導だ。
「自分がまだ生きている」と勘違いしている人間を納得させて天へと導く。
簡単な仕事ではないが、俺は楽しくやっていた。
人間は俺の知らないことを沢山教えてくれる。
この手紙だってそうだ。
「新しいこと」は俺をワクワクさせてくれる。
ボトルに入った手紙を丸ごと持って帰る。
「ま、面白いことに繋がるかもしれねぇし」
「アルマはやっぱり変わってるねぇ」
「だからビビは一緒にいるんだろ?」
「そうだね。アルマと居ると飽きないから」
──俺がその手紙のことを忘れた頃、本当に「僕」は手紙を受け取りに来た。

「あの……僕の手紙、持ってますよね?」
「え?」
いつも通り死者の魂を拾いに行った時、その人間は笑顔でそう言った。自分の死を理解して尚且つ笑顔を見せる者は珍しい。
「お前がボトル送った奴?」
「そうです。天国に送った手紙」
「狙って天国に送ったのかよ。どうやったんだ?」
「秘密です。でも本当に誰かに届くなんて思わなかった。取っておいてくれてありがとうございます」
人間は笑って俺の手を引っ張った。
天国への道を知っているかのように歩き出す。
「お前、一体何なんだ?」
「ついさっき事故で死んだ人間です。それはアルマさんもご存知でしょう?」
「そうだけどよ。って、あれ?俺の名前何で知ってんだ?」
俺の質問に答えず人間は天国の門を通過する。
天国へと入った途端その人間は大きな翼を生やし、光を纏った。
その瞬間、理解した。
神々しい姿は大天使様に他ならない。
「えっ?も、もしかして……ロウ様!?」
「ふふっ、正解。人間のフリして遊んでたんだ」
「す、すみません!無礼な口聞いてしまって」
「気にしないで。手紙、取っておいてくれてありがとう。アルマに届いて良かった」
ロウ様は俺の肩を叩いて上空へと飛んで行った。
「……マジかよ。奇跡って起きるんだな」
まさか憧れの人に出会えるなんて──俺の好奇心も捨てたもんじゃない。
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