雇われ者の小唄

杉田杢

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だから俺が

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 俺はため息をついた。
「ご自分が何を仰っているか理解してらっしゃいますか?」
「そのつもりです」
 今度は俺が目を逸らす番だった。
「酷い親だと思います。しかし、これ以上罪を重ねるならばいっそ……それも……」
 その先は言えなかった。それでいい。俺も聞きたくない言葉だ。少なくとも、今、ここでは。
 その気持ちが人として親として正しいかどうかは延々議論できるだろう。
 俺はまた一つため息をついた。
 昨日、仕事の直後ではもうこりごりだと思った筈なのに俺はどういうわけか端から拒否しようとは思わなかった。いつもそうだ。そしていつも後悔することになる。
「その場合の報酬がどうなるかは想像なさいましたか?」
「どうなるんです?」
「桁が一つ増えます。少なくともそれだけは頂きたい。場合によってはもっと請求させていただくかもしれません」
 紳士はしばらく言葉を失った。彼が言うべき言葉を探す間に俺は何事もなかったようにコーヒーを啜った。
「それは。それは、娘が、その、命を落とす結果になった場合の額ですか?」
「いえ。あなたの仰る依頼内容で動く場合の基本料金です。これに必要経費が加わりますし、もし娘さんを殺すような状況になってしまえば別に成功報酬をいただきたい」
 今度こそ紳士は言葉を失った。
「人一人が死ぬというのは金が掛かるもんです。娘さんの場合葬式代だけでは済まない訳ですしね」
 もともと良くなかった紳士の顔色が目に見えて悪くなった。俺は更にたたみかける。
「しかし殺しの報酬としては相場より安い筈です。なんでしたら相見積もりをなさっても結構です」
 紳士が俺の他に殺し屋のツテを持っていればの話だが。
 今度の沈黙が一番長かった。俺はコーヒーのお代わりをつぐべきかどうか真剣に迷った。
「……その金額でお願いします」
 搾り出すような紳士の声。俺は軽く頷いた。
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