雇われ者の小唄

杉田杢

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聞き込み

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 確認すべきことを何個か確認した後、例の封筒を渡そうとしたが固辞されてしまった。
 簡単に礼を言って、施設を出る。
 やはり、明確かつ具体的に娘が行きそうな場所、というのは絞れなかった。いくつかのヒントは拾えはしたが。
 まあ、山を張るのは後回しだ。最優先なのは目撃証言集めだ。
 彼女が施設を去ったのは、昼前だと言う。何か食べ物を調達した公算が高いが、今時コンビニはいくらでもあるし、徹底して人目を避けようと思えば自販機でも腹に溜まるものは買える。
 それでも避けて通れないのが聞き込みなのだ。
 俺は端末で、飲食店とスーパー、それにコンビニを地図表示させ、暗澹たる気分になった。
 写真を手に店を回る。この娘に見覚えはありませんか、と。聞かれた側の反応は様々だが、機嫌よく答えてくれるのは稀だ。
 大抵は余計な手間が増えることに苛立っている。そういうものだと俺も割り切っている。
 その日は出勤していなかったという場合も多い。
 シフトをしぶしぶ確認してくれるのは良いほうで、後で聞いてみて、何かあったら連絡すると言って誤魔化そうとするのが大半だ。
 愛想を使わなくて済むと思われがちな商売だったが、こういう時に愛想を出し惜しみする者は生き残れない。
 十軒も回る頃には、表情筋が引き攣り始めていた。笑顔を貼り付けておくのにも限度がある。
 何の手がかりを掴めない徒労感も手伝って、俺の愛想は品切れに近かった。
 少し休もう。聞き込みのついでに買った缶コーヒーとホットドッグを手に公園のベンチに腰掛けた。
「羽振りが良い割にはしけたものを召し上がっておいでですね」
 缶のプルタブを引いたところで、後ろから声が掛かった。
 あまり、今は聞きたくない声だった。
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