雇われ者の小唄

杉田杢

文字の大きさ
15 / 16

危険な友人

しおりを挟む
 俺の羽振りについては業平に聞いたのだろう。驚くようなことではない。
「しけた食い物が好きでね」
 振り返りもせず答えて、俺はコーヒーを飲み干し、ホットドッグを包み直した。休める状況ではなくなった。
 立ち上がって、停めてあるバイクを目指すが、回り込まれてしまった。
 目に映るのは黒の皮ジャン。ジーンズ。野暮ったい眼鏡。
 そして一見好青年風の笑顔だ。
「そう連れなくするなよ。大きい仕事が入ったって武宮にきいたぜ」
 温厚かつ親切そうな声音で男が言った。実際この男は親切だ。うっかりコンタクトでも落とせば見つかるまで一緒に探してくれるし、道を聞けばこれ以上ないくらい親切に教えてくれるだろう。
「そうだ。だから忙しい。邪魔せんでくれ」
 突き放した俺の言葉に、男は顔をしかめた。
「手伝いに来た人間に、そういう言い草はないんじゃねえか?」
 男は同業者だ。表の方ーー武装私立探偵ーーの。
 顔も広いし、腕も悪くない。
 だが、ただの親切な好青年ではない。
 俺はつっけんどんに聞いた。
「今お前にいくら貸してたっけ?」
「16万7千5百4十3円」
 律儀に男は答えた。だがこの場合律儀さよりも、貸している金額が問題だ。
 とにかく難点の多い男だった。金銭感覚などは序の口に過ぎない。
 この男と組むのはギャンブルだった。何度か一緒に仕事をしたが、非常にうまくいくか、えらく酷い目に合うかの二つに一つだった。
 そして俺はこういう大事な仕事ではギャンブルをしない主義だ。
「じゃ、分け前はそれを一割負けるっていうのでどうだ」
「乗った」
 男は分かりやすく、機嫌を直した。単純で助かる。
「じゃ、今すぐ回れ右して別の仕事を探してくれ、七生」
 七生はまた不機嫌な顔になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...