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06:始まりの復讐譚
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「採ってきたよ」
馴染みに馴染み過ぎた声が、俺の鼓膜を揺らす。
振り向くと、やはり彼の姿━━。
「っ、ヴル! よかったぁ、起きたんだ」
「リグ……!」
すると、リグが俺に飛び付いてきた。
「っ痛てててて! ちょっ、リグいたいって!」
「あっ、ごめん」
いつもならなんともないだろうが、今は筋肉痛に効く。
「全く、あんた達は変わらず仲良しで、ちょっと安心したわ」
アミちゃんが呆れたように笑った。
「そういや、俺のもアミちゃんの傷も、リグが治してくれたのか?」
「アミちゃんは僕が治したけど、ヴルはふたりで」
「そっか。サンキュー、ふたりとも」
俺と違って、リグとアミちゃんは魔法が得意なのだ。簡易的なヒールくらい楽勝に使える。
「そうだ、リグ、話がある。外に来てもらっていいか?」
「あ、うん。ちょうど僕も聞きたいことあったし」
「……わかった。私はここで待ってるね」
察してくれたアミちゃんを置いて、俺達は一旦基地から出る。
外はまだ森の中で、後ろは当然崖だ。崖と言っても、三メートル弱のちょっとしたものだが。
ここなら村からもそれなりに遠いし、洞穴の入り口も縦横1.2メートルずつと小さめなので、比較的見つかりにくいだろう。
「それで、話ってなに? ヴル」
「あぁ、外は危ないから手短に話すけど……俺、人間共に復讐しようと思う」
リグはあからさまに苦い顔をした。
「そっか……でも、僕は嫌だな、そういうの」
「だよな。リグはそう言うと思った。けど、俺の言う復讐ってのは、人間を皆殺しにする復讐ともまた違うぞ」
俺は困惑を深めるリグに、咳払いしてからさらに説明を加える。
「多分、俺達の村を襲撃してきたやつら、王様とか偉い人から命令を受けて来たんじゃねぇかなって思ってる。なんでかっつーと、まず兵士。あいつらは国直々の騎士なんだと思う。装備が皆同じような感じだったし」
俺は人差し指を立て振りながら話続けた。
「あとはエルフだ。人間と妖精族の一種であるエルフが同じグループってことは、ただの荒くれ者の集まりとも思えない。多分さっきも言ってた例の偉い人が協力するよう煽ったんだろう」
ちら、とリグを見てみると、ぽかんとしていることに気がつく。
「ど、どうしたリグ」
「いや、ヴルってこんな頭回る方だっけって思って……」
「失礼な!」
と、俺はまた咳払いし、話を戻した。
「つまり、俺の復讐ってのは、俺達みたいな魔族が虐殺されないように今の人間族共の政界をぶち壊すことだ」
俺は、ぐっと右手を握った。
「そういや、リグも俺に何か話があったんだよな?」
「そうだけど……ちょっとまずいな。長居しすぎたみたいだ」
俺はリグが睨んでいる方向に視線を移した。
そういえば、少し地響きがするような……?
「獣臭がするなとは思ったけど、まさかこんな大物とはね……」
少しすると、やっと俺にも確認できるくらい近づいてきた。
あれは……暴君熊、正式名アングリズリー。
「って、来るの知ってんならもっと早く教えてくれよ!」
「いや、どうせ迎え撃つしかないから……」
確かに、後ろの洞穴にはアミちゃんがいる。万が一見つかれば危険極まりない。
「でも、なんで夜行性の暴君熊が……?」
俺の言葉に、リグは一瞬考える仕草をして、はっ、と気がつく。
「昨日の火事で、寝床を失ったんじゃ? それで新しい拠点を探しに……?」
「なるほど、そういうことか」
とか喋ってる間に、かなり距離が詰められてしまった。
近くで見ると……こわっ。
体毛は茶色で、それだけ聞けば地球でもお馴染みのただの熊だが、恐ろしいのはその爪だ。
何故か爪なのに宝石のように赤く、大きく、鋭そうだ。あれに当たればただでは済まないだろうと容易に想像できる。
身体も2.2メートルはある。十四の俺からみたら、殊更でかい。
「よし……やるか」
リグはそういうと、腰から綺羅びらやかな短剣を取り出した。
「リグ、それってもしかして……」
「そ、エルフから掠め取ってきた」
「ちゃっかりしてんな。頼もしいぜ」
けど、リグ、そんな引け腰じゃ多分あいつは殺れないぞ。
だから……。
「リグ、その短剣、貸してくれ。俺が一瞬で片付ける」
本音としては、戦闘が長引いてまだ森にいるかもしれない兵士に見つかりたくないと思ったからだが……。
「…………わかった。無理はしないでね」
俺はリグから短剣を預かった。
それをよく見てみると、だいぶゴージャスな仕上がりになっていて、ちょっと目が痛い。けれど、刃は二十五センチはあるだろう。十分だ。
「来いよ、熊」
俺はその切っ先をアングリズリーに向けた。
馴染みに馴染み過ぎた声が、俺の鼓膜を揺らす。
振り向くと、やはり彼の姿━━。
「っ、ヴル! よかったぁ、起きたんだ」
「リグ……!」
すると、リグが俺に飛び付いてきた。
「っ痛てててて! ちょっ、リグいたいって!」
「あっ、ごめん」
いつもならなんともないだろうが、今は筋肉痛に効く。
「全く、あんた達は変わらず仲良しで、ちょっと安心したわ」
アミちゃんが呆れたように笑った。
「そういや、俺のもアミちゃんの傷も、リグが治してくれたのか?」
「アミちゃんは僕が治したけど、ヴルはふたりで」
「そっか。サンキュー、ふたりとも」
俺と違って、リグとアミちゃんは魔法が得意なのだ。簡易的なヒールくらい楽勝に使える。
「そうだ、リグ、話がある。外に来てもらっていいか?」
「あ、うん。ちょうど僕も聞きたいことあったし」
「……わかった。私はここで待ってるね」
察してくれたアミちゃんを置いて、俺達は一旦基地から出る。
外はまだ森の中で、後ろは当然崖だ。崖と言っても、三メートル弱のちょっとしたものだが。
ここなら村からもそれなりに遠いし、洞穴の入り口も縦横1.2メートルずつと小さめなので、比較的見つかりにくいだろう。
「それで、話ってなに? ヴル」
「あぁ、外は危ないから手短に話すけど……俺、人間共に復讐しようと思う」
リグはあからさまに苦い顔をした。
「そっか……でも、僕は嫌だな、そういうの」
「だよな。リグはそう言うと思った。けど、俺の言う復讐ってのは、人間を皆殺しにする復讐ともまた違うぞ」
俺は困惑を深めるリグに、咳払いしてからさらに説明を加える。
「多分、俺達の村を襲撃してきたやつら、王様とか偉い人から命令を受けて来たんじゃねぇかなって思ってる。なんでかっつーと、まず兵士。あいつらは国直々の騎士なんだと思う。装備が皆同じような感じだったし」
俺は人差し指を立て振りながら話続けた。
「あとはエルフだ。人間と妖精族の一種であるエルフが同じグループってことは、ただの荒くれ者の集まりとも思えない。多分さっきも言ってた例の偉い人が協力するよう煽ったんだろう」
ちら、とリグを見てみると、ぽかんとしていることに気がつく。
「ど、どうしたリグ」
「いや、ヴルってこんな頭回る方だっけって思って……」
「失礼な!」
と、俺はまた咳払いし、話を戻した。
「つまり、俺の復讐ってのは、俺達みたいな魔族が虐殺されないように今の人間族共の政界をぶち壊すことだ」
俺は、ぐっと右手を握った。
「そういや、リグも俺に何か話があったんだよな?」
「そうだけど……ちょっとまずいな。長居しすぎたみたいだ」
俺はリグが睨んでいる方向に視線を移した。
そういえば、少し地響きがするような……?
「獣臭がするなとは思ったけど、まさかこんな大物とはね……」
少しすると、やっと俺にも確認できるくらい近づいてきた。
あれは……暴君熊、正式名アングリズリー。
「って、来るの知ってんならもっと早く教えてくれよ!」
「いや、どうせ迎え撃つしかないから……」
確かに、後ろの洞穴にはアミちゃんがいる。万が一見つかれば危険極まりない。
「でも、なんで夜行性の暴君熊が……?」
俺の言葉に、リグは一瞬考える仕草をして、はっ、と気がつく。
「昨日の火事で、寝床を失ったんじゃ? それで新しい拠点を探しに……?」
「なるほど、そういうことか」
とか喋ってる間に、かなり距離が詰められてしまった。
近くで見ると……こわっ。
体毛は茶色で、それだけ聞けば地球でもお馴染みのただの熊だが、恐ろしいのはその爪だ。
何故か爪なのに宝石のように赤く、大きく、鋭そうだ。あれに当たればただでは済まないだろうと容易に想像できる。
身体も2.2メートルはある。十四の俺からみたら、殊更でかい。
「よし……やるか」
リグはそういうと、腰から綺羅びらやかな短剣を取り出した。
「リグ、それってもしかして……」
「そ、エルフから掠め取ってきた」
「ちゃっかりしてんな。頼もしいぜ」
けど、リグ、そんな引け腰じゃ多分あいつは殺れないぞ。
だから……。
「リグ、その短剣、貸してくれ。俺が一瞬で片付ける」
本音としては、戦闘が長引いてまだ森にいるかもしれない兵士に見つかりたくないと思ったからだが……。
「…………わかった。無理はしないでね」
俺はリグから短剣を預かった。
それをよく見てみると、だいぶゴージャスな仕上がりになっていて、ちょっと目が痛い。けれど、刃は二十五センチはあるだろう。十分だ。
「来いよ、熊」
俺はその切っ先をアングリズリーに向けた。
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