転生悪魔の復讐譚

勇崎シュー

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05:記憶の技

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 思い出した。

 これは、俺が小学生だった頃の記憶。
 俺の名は日陰恵利斗。家に代々伝わる日陰神明流剣術を受け継ぐ次男だ。
 俺は、兄さんと共に日陰神明流剣術の鍛練をしていた。否、させられていた、という表現の方が正しいが……。

 だが、重要な事を思い出せない。

 ……俺は、死んだのか?

「エリト、上手く出来なくて悩んでんのか?」

 兄さんの声だ。

「エリトは俺と違って才能があるんだ。頑張れよ」

 兄さん、でも俺は、兄さんの方が凄いと思うよ。

 毎日遅くまで、自主的に鍛練してるじゃないか。

「エリト、剣は武士にとって魂なんだ。だから、剣とひとつになる感覚で……」

 そういえば、日陰神明流の技はほとんど兄さんに教えてもらったな。

「そう! 流石エリト。上手くいったじゃないか! その感覚、忘れるなよ━━」

 そこで、俺の記憶はぶつりと音を立てて途絶えた。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


 目を見開く。
 身体を起こす。
 エルフてきに向かって駆ける。

 ヤツはもう俺が動けないと思っていたのだろう。驚愕を顔に表していた。
 しかし、ヤツは冷静だった。短剣を持ち変えそうともしてない辺り、どうやら俺を正面から迎え撃つつもりらしい。好都合だ。
 俺は早速、思い出した技を使う。

「日陰神明流━━」

 俺は剣を後ろに引いた。
 そして、足を速める。

「一ノ技」

 リグ、アミちゃんを傷つけた恨み、村の皆を殺した恨み、お前にぶつけて晴らさせてもらう。
 晴れることなんて、ないけど。

「陰牙ッ!」

 俺は、渾身の突きをエルフに浴びせた。ヤツは反応が遅れたため、技をもろにくらった。
 その瞬間、木剣の剣先から柄まで軋む音がして、エルフが吹き飛んだ時、剣も砕け散った。
 ヤツは木に直撃し、幾つかの葉と虫が落下した。

 日陰神明流剣術は、身体の全てを使って放つ技だ。子供の俺が使っても、その威力は生易しくない。

「うぐっ……」

 世界が一瞬ぐらついて、俺はそのまま地面に倒れた。
 すると、ばたばたと俺に足音が近づいてくるのが聴こえてきた。

「ヴル! ヴル! 死んじゃだめだ! ヴル……!」
「あんた、しぶとさだけが取り柄でしょ! しっかりしなさいよ……!」

 リグ、アミちゃん。よかった。生きてた。
 てか、そんな悲壮な顔するなって。
 あぁ、駄目だ。こりゃちょっとやばい。

 ごめん、ちょっとだけ、寝かせてくれ━━。








 目が覚めた。

 でも、身体中痛くて、起き上がるのも億劫な状態だ。筋肉痛……ってやつか。当たり前だな、久々に日陰神明流の技、一ノ技《陰牙いんが》を放ったのだから。

 陰牙は日陰神明流の中でも速い方の技だ。剣道においても突き技は最速だし、剣を後方に引く分普通の突きとはどうしても差が出てしまうにしても、やはり常人には目で追えない速さになることには違いない。

 その分身体の負担が大きいうえに、鍛練不足の子供の身体じゃあ筋肉痛くらいは当然なる。

「けほっ」

 喉に何かが絡み付くような感覚によって、俺は咳き込んだ。

「あっ、ヴル! ……よかったぁ、全く、心配したんだからね!」

 ゆっくり身体を起こす。すると、掛けられていた薄い布がすっ、と落ちた。

「あ、アミちゃん……あれ、リグは?」

 俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
 どうやらここは、小さい時に見つけた洞穴のようだ。そういえば、秘密基地にしてよく遊んでたっけ。最近は放置気味だったけど。

「リグは食べ物探しに行ったわ」

 そんなことを考えている間に、アミちゃんが俺の問いを答えてくれた。
 食べ物探し……って、今やるのは結構危なくないか?

「あれ、アミちゃん、その眼……」

 すると、アミちゃんは左目をさっと左手で隠した。

「あー、あのエルフにやられちゃって……リグの魔法でも視力までは戻せなくって……」

 アミちゃんの左目は、本来のルビーのような赤目でなく、白く濁っていた。
 よく見ると、服もぼろぼろで、その隙間から傷を無理矢理治したような痕がいくつも見えた。

「……アミちゃん、ごめん。守れなくて…………」

 俺が俯きながらそう言うと、彼女は目をぱちくりさせ、くっくっと笑った。
 不思議そうな顔でアミちゃんを見つめると、彼女は指で目を擦りながら、

「……ごめんなさい。だって、リグと一言一句間違えずに同じ事を言うんだもん」

 と微笑を浮かべた。
 俺も微笑もうとして……アミちゃんの左目を見て、止めた。

「……なんで、俺達がこんな目に会ってるんだろうな」

 ぼそっと呟いた一言。

「やっぱり、魔族だから……かしら」
「だとしても、俺達も母さん達も、だれも殺してないじゃないか。悪いことだってしてない」

 俺は、痛むのをこらえ立ち上がった。

「復讐してやる……見てろよ、人間共」

 静かにそう、宣言した。
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