他の何よりアイが欲しい。R15

勇崎シュー

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三話 その花は気休めでしかなく

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「確かこっちだよな」
 俺はそう呟きながら、日比野の行き先を考える。
 おそらく、日比野が向かった自販機は、道中にあったやつだろう。
 それならこの道を曲がって少し進んだ所の筈だが。
「ねぇ、ところでどこ高なの?何県から来たんだ?」
「いいじゃねぇかそのくらい。なぁ?」
 日比野が、絵にかいたようなチンピラ二人に掴まされていた。
「あ、あの、困ります......」
 日比野の顔は青白く、今にも倒れしまいそうだ。
「おー、日比野、ここにいたのか、ほら、急いでんだから早く行くぞ。あれ?その人たちは?」
 俺はあたかも今気づいたかのように言った。
「あ、いや......」
 恐怖のせいなのか、日比野は上手く喋れないでいた。
「いやー、俺達は現役JK見つけちまったもんだから、ちょっと話しかけてただけだよ。悪かったな兄ちゃん」
 そう言い放った方のチンピラに肩を叩かれ、もう一人と共に薄ら笑いを浮かべながら去っていった。
「ふぅ、流石の俺もあれはやばかったな」
 俺は安堵の息を吐きながら胸を撫で下ろした。
「大丈夫か?日比野。怖かっただろ」
 すると、日比野は俺の胸に飛び込んできた。
「うぐっ、ひぐっ」
 日比野は俺のシャツを掴みながら泣きじゃくった。
 そうか、こいつは。
「一人でよく頑張ったな」
 俺はそう言いながら日比野の頭を撫でた。
 なるべく声が出ないようにしていた日比野は、撫でる毎に落ち着いていった。
「もう平気か?じゃあ、一緒に皆の所に行こうな」
 日比野がこくりと頷く。
 に、しても、こうしてみるとホントに小さいな。庭理よりも数センチは小さい。
「あっ」
 俺達が少し歩いた所で、庭理に出くわした。迎えに来てくれたのだろうか。
「あれ?どうしたの日比野さん」
 庭理が聞くのも無理はない。
 日比野は俺のシャツの袖を掴んで離さないし、目だって赤いままだ。
「まぁ、ちょっとな」
 庭理は腑に落ちない感じだったが、深く聞くこともなかった。
 まぁ、どこかの班長は無神経にあれこれ聞くだろうが。
 
「あー、楽しかったぁ」
 庭理が無邪気に笑う。
 まぁ、その気持ちもわからなくないが。
 俺達はあのあと、ギリギリ清水寺も銀閣寺も見ることができ、シナリオ通りにことを運ぶことができた。
「清水寺の水、けっこう旨かったな」
「そうだねぇ、少なくとも水道水より」
「それな」
 俺達は部屋の真ん中で笑いあった。
 本来この部屋には4人いるはずだが、他の二人はただ今入浴中だ。
 俺達はいろいろ言い訳して入らないようにしている。
「ねぇねぇ、ところでさ、海斗」
 庭理は急に畏まった表情をした。
「なんだ?」
「日比野さんと何かあった?自販機の時とか」
 自販機のとき、というのは俺が日比野をチンピラから救出したときのことだろう。
 しかし、いくら庭理とはいえ、勝手に言っていいものだろうか。
 いや、一応隠しとくか。
「いや、なんも」
 俺はそう言いながら頭を掻いた。
「ふーん。なんかあったんだ」
 俺はあからさまに驚く。
「いや、あの」
 何か言い訳をしようと口を開きかけたそのとに。
「やるじゃん」
 庭理はこのこのと肘で俺の腰をつついてきた。
「ただいまー」
 微妙に使うタイミングが可笑しいが、風呂に行っていた二人が部屋に戻ってきた。
「おかえりー」
 庭理が会わせるようにそう答えた。
「二人とも、ここの風呂凄かったぞ。露天風呂だぞ露天風呂!しかも広い!」
 先ほどただいまと言った方の男、百合木大成が、そう俺達に自慢してきた。
「そうそう、百合木が女風呂覗こうとしてさー」
 もう一人の柏崎秀太が素晴らしい話題を持ってきたので、乗っかることにした。
「何やってんだよ百合木ー、このド変態がよ」
「女風呂は、大人のロマンだからな」
 百合木がキメ顔で言ったので、俺達はツボに入り大爆笑した。続いて百合木自信も耐えられなくなり大笑いに交ざった。
「あ、そうだ。二人とも、これは先輩から聞いた話なんだけどさ」
 柏崎が若干小声でその話とやらを語りだした。
「この学校の先生達って、巡回するって言っといて誰もしないんだって、だから毎年男子が女子部屋に遊びに行くのは恒例らしいよ。ま、流石に大声だしたら二階にいる先生達にバレるけど」
 おい、この学校の先生達は大丈夫なのかよ。巡回するする詐欺じゃねぇか。
「つーわけだ!二人も来るだろ?」
 百合木が横から入り柏崎に代わって俺達を誘ってきた。
「うーん。俺はいいかな」
 俺はそれとなく断った。
 まぁ、日比野みたいなタイプはこういうのをやる奴よりやらない奴の方が好みそうってのが理由だけど。我ながら不純だ。
「まぁ、元々ボクも行く気無かったけど、海斗が行かないんじゃ尚更行かないな。誘いは嬉しいけどね。ごめん」
 そんな行く気がないことを表しながらも相手を気遣う百点満点の断りを見せた庭理は、淡い笑顔を二人に見せていた。これもポイント高いな。
 いや、何評価してんだ俺。
「そうか。じゃあ俺達二人だけで行ってくるわ。まあ気が向いたら来てくれ。405号室にいるからな」
 百合木はそう言い、持っていく荷物をまとめだした。柏崎もそれに習いまとめ始める。
「じゃ、行ってくるわ、兄弟!」
「先生に見つかんなよ兄弟!」
 俺は謎のジョークを交わしあった百合木と柏崎を見送った。
「ねぇ」
 すると、後ろから庭理が俺を呼んだ。
 
 俺はまだ知らなかった。
 
 ここから、俺達の関係が歪んでいくことを。
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