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六話 告げる気持ちは純白で
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「何入ってきてんだよ庭理!」
驚きで声を荒げてしまったが、庭理はなお何食わぬ顔で入ってきた。
「背中洗ってあげようと思って」
そう言いながら、庭理は持っていたタオルを風呂の端に掛け、湯船に浸かってきた。
「わっ、ちょっ!」
俺は慌てて後ろを向く。
「いいじゃん。一回一緒に入ったんだから」
そういう問題じゃないだろ、と言いたかったが、緊張でどぎまぎしていて、上手く喋れる自信が無かったので口にはしなかった。
「あ、じゃあ俺もう出るわ」
そう言い俺が風呂から出ようとすると、庭理が俺の手首を掴んできた。
「まだ一分くらいしかたってないじゃん。それに、体洗ったの?」
「わ、分かった。体洗うから離せって」
庭理は怪訝ながらもその手を離してくれた。
「じゃ、ボク背中洗ってあげるよ」
俺が洗用椅子に腰掛けると、庭理が俺の背中をタオルで拭いてきた。
「いや、別にいいよ。一人でできるし」
「今までしてあげれなかったから、やりたいんだよ」
これ以上断るのも失礼な気がしたので、俺は庭理に身を任せることにした。
やけに念入りに洗ってくれる庭理に、これって俺も庭理の背中流してやった方がいいのかと悩んでいると。
「かいと、傷のところ痛くない?」
そんな些細な気遣いをしてくれるのはありがたいが、年頃の男子がこの状況にずっと身を置いているのはまずい。
と、いうわけで、俺は逃げることにしました。
「俺、もう出て寝るから」
軽くシャワーを浴び、急ぎ足で風呂から出た俺は、速攻で布団と敷き、寝ることにした。
翌朝、俺は目覚まし時計の耳障りな音に起こされる。
いつもの事だが、今日はいつもとは違った。
「って何俺の布団に入ってんだ庭理!」
庭理が俺にしがみついていたのだ。
「あ......おはよ、かいと」
庭理が眠そうに目を擦りながら、俺に挨拶してきた。
「おはよ、じゃないだろ」
俺は庭理を退かし、着替え始めた。
「ほら、庭理も着替えに......ってなんでここで脱いでんだよ!」
俺は慌ててリビングに向かった。
一瞬白い何かが見えた気がしたが、気のせいだろう。
うん。きっと気のせいだ。
「あ、庭理、一応言っておくけど、俺、日比野が好きなんだ」
こんなこと、言わない方がいいに決まっているが、俺は何故か、そんなことを口走ってしまった。
庭理は小さく、分かってるよと呟いた。
俺は着替えた後、歯を磨き、朝食を食べ、庭理と共に家を出た。
「おーい、二人共ー!」
学校が見えてきたくらいの時、後ろから百合木が声を掛けてきた。
「おー、百合木、おはよう。てか昨日新幹線で吐いたって聞いたけど大丈夫だったのか?」
聞いた、というか後ろの席で白木が嘔吐していたのが聞こえてきたから知っていたんだけど。
まぁ、あの時は心に余裕が無かったって感じで声掛けらんなかったんだよな。
「あー、まぁ、今日は大丈夫だ」
そんな話をしていると、丁度日比野が校門を通ろうとしていた。
俺が挨拶しようとすると、向こうも気づいたようだ。
「あ、美園君、おはよう」
ぎりぎり聞こえる位の大きさで俺に挨拶してきた日比野は、そのままそそくさと下駄箱に向かっていった。
「なんか日比野さん、美園しか見えてなかったみたいだな」
百合木のその言葉に、庭理がびくりと震えた気がした。
放課後、俺が庭理と駄弁りながら下駄箱へ向かっていた。
「ごめんね海斗、今日弁当作ってあげられなくて」
「いや、その話はもういいって。最近忙しかったし、無理ないよ」
俺がそんな会話をしながら、靴箱を開けると。
「あれ?」
桃色より薄い、鴇色くらいの封筒に、赤く小さなハートマークのシールで封がされている。絵にかいたようなラブレターがそこに置いてあった。
「庭理、俺、急用が出来たから先帰っててくれ」
「何?ラブレターでも入ってたの?」
「まぁ、そんなとこだ」
「ふーん。この色男め!」
庭理は俺を小突くと、そのまま駆け足でその場から去っていった。
俺は、ここでラブレターを読むわけにもいかず、近くの階段の裏で読むことにした。
『この手紙を読んだら、屋上に来て下さい。待ってます』
俺はとりあえず、屋上に向かった。
階段を上り、屋上の扉を開ける。
すると急に強風が吹き、俺は反射的に顔を伏せた。
収まった後見ると、そこには日比野がいた。
もしかしなくても、あのラブレターを書いたのは日比野だろう。
まさかの好きな人に告白されるというシチュエーションに、俺はドキドキしていた。
「あの、俺を呼び出したのって日比野?」
俺がそう問うと、日比野はこくりと頷いた。
「あのっ、お話が、あります」
俺が黙って待っていると、数秒の沈黙後、意を決した日比野が口を開いた。
「美園君が好きです!付き合って、くだ、さい......」
恥ずかしくなってきたのか、だんだんトーンを下げながら告白する日比野に、思わずキュンと来てしまった。
来てしまったのだが......。
「日比野、ありがとう、でも、返事返すの、ちょっと待っててもらえるか?あー、今度の月曜、またここに来てくれ。そんとき、ちゃんと返事するから」
なんでだ。
俺は自分にそう問う。
好きな人が向こうから告白したきたのに。
普通即答で、いいよと言えば言いはずなのに。
俺はチクリと、何かが胸を刺したような感覚になった。
驚きで声を荒げてしまったが、庭理はなお何食わぬ顔で入ってきた。
「背中洗ってあげようと思って」
そう言いながら、庭理は持っていたタオルを風呂の端に掛け、湯船に浸かってきた。
「わっ、ちょっ!」
俺は慌てて後ろを向く。
「いいじゃん。一回一緒に入ったんだから」
そういう問題じゃないだろ、と言いたかったが、緊張でどぎまぎしていて、上手く喋れる自信が無かったので口にはしなかった。
「あ、じゃあ俺もう出るわ」
そう言い俺が風呂から出ようとすると、庭理が俺の手首を掴んできた。
「まだ一分くらいしかたってないじゃん。それに、体洗ったの?」
「わ、分かった。体洗うから離せって」
庭理は怪訝ながらもその手を離してくれた。
「じゃ、ボク背中洗ってあげるよ」
俺が洗用椅子に腰掛けると、庭理が俺の背中をタオルで拭いてきた。
「いや、別にいいよ。一人でできるし」
「今までしてあげれなかったから、やりたいんだよ」
これ以上断るのも失礼な気がしたので、俺は庭理に身を任せることにした。
やけに念入りに洗ってくれる庭理に、これって俺も庭理の背中流してやった方がいいのかと悩んでいると。
「かいと、傷のところ痛くない?」
そんな些細な気遣いをしてくれるのはありがたいが、年頃の男子がこの状況にずっと身を置いているのはまずい。
と、いうわけで、俺は逃げることにしました。
「俺、もう出て寝るから」
軽くシャワーを浴び、急ぎ足で風呂から出た俺は、速攻で布団と敷き、寝ることにした。
翌朝、俺は目覚まし時計の耳障りな音に起こされる。
いつもの事だが、今日はいつもとは違った。
「って何俺の布団に入ってんだ庭理!」
庭理が俺にしがみついていたのだ。
「あ......おはよ、かいと」
庭理が眠そうに目を擦りながら、俺に挨拶してきた。
「おはよ、じゃないだろ」
俺は庭理を退かし、着替え始めた。
「ほら、庭理も着替えに......ってなんでここで脱いでんだよ!」
俺は慌ててリビングに向かった。
一瞬白い何かが見えた気がしたが、気のせいだろう。
うん。きっと気のせいだ。
「あ、庭理、一応言っておくけど、俺、日比野が好きなんだ」
こんなこと、言わない方がいいに決まっているが、俺は何故か、そんなことを口走ってしまった。
庭理は小さく、分かってるよと呟いた。
俺は着替えた後、歯を磨き、朝食を食べ、庭理と共に家を出た。
「おーい、二人共ー!」
学校が見えてきたくらいの時、後ろから百合木が声を掛けてきた。
「おー、百合木、おはよう。てか昨日新幹線で吐いたって聞いたけど大丈夫だったのか?」
聞いた、というか後ろの席で白木が嘔吐していたのが聞こえてきたから知っていたんだけど。
まぁ、あの時は心に余裕が無かったって感じで声掛けらんなかったんだよな。
「あー、まぁ、今日は大丈夫だ」
そんな話をしていると、丁度日比野が校門を通ろうとしていた。
俺が挨拶しようとすると、向こうも気づいたようだ。
「あ、美園君、おはよう」
ぎりぎり聞こえる位の大きさで俺に挨拶してきた日比野は、そのままそそくさと下駄箱に向かっていった。
「なんか日比野さん、美園しか見えてなかったみたいだな」
百合木のその言葉に、庭理がびくりと震えた気がした。
放課後、俺が庭理と駄弁りながら下駄箱へ向かっていた。
「ごめんね海斗、今日弁当作ってあげられなくて」
「いや、その話はもういいって。最近忙しかったし、無理ないよ」
俺がそんな会話をしながら、靴箱を開けると。
「あれ?」
桃色より薄い、鴇色くらいの封筒に、赤く小さなハートマークのシールで封がされている。絵にかいたようなラブレターがそこに置いてあった。
「庭理、俺、急用が出来たから先帰っててくれ」
「何?ラブレターでも入ってたの?」
「まぁ、そんなとこだ」
「ふーん。この色男め!」
庭理は俺を小突くと、そのまま駆け足でその場から去っていった。
俺は、ここでラブレターを読むわけにもいかず、近くの階段の裏で読むことにした。
『この手紙を読んだら、屋上に来て下さい。待ってます』
俺はとりあえず、屋上に向かった。
階段を上り、屋上の扉を開ける。
すると急に強風が吹き、俺は反射的に顔を伏せた。
収まった後見ると、そこには日比野がいた。
もしかしなくても、あのラブレターを書いたのは日比野だろう。
まさかの好きな人に告白されるというシチュエーションに、俺はドキドキしていた。
「あの、俺を呼び出したのって日比野?」
俺がそう問うと、日比野はこくりと頷いた。
「あのっ、お話が、あります」
俺が黙って待っていると、数秒の沈黙後、意を決した日比野が口を開いた。
「美園君が好きです!付き合って、くだ、さい......」
恥ずかしくなってきたのか、だんだんトーンを下げながら告白する日比野に、思わずキュンと来てしまった。
来てしまったのだが......。
「日比野、ありがとう、でも、返事返すの、ちょっと待っててもらえるか?あー、今度の月曜、またここに来てくれ。そんとき、ちゃんと返事するから」
なんでだ。
俺は自分にそう問う。
好きな人が向こうから告白したきたのに。
普通即答で、いいよと言えば言いはずなのに。
俺はチクリと、何かが胸を刺したような感覚になった。
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