他の何よりアイが欲しい。R15

勇崎シュー

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七話 枷をつけた自分

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「おかえり、遅かったね。今日バイトだっけ?」
 日比野に告白された俺は、特に意味もなく、そこら辺をぶらぶらと散歩していた。
 時計を見ると、もうすぐ6時になることが分かった。
 バイトがない日は学校が終わったらすぐ帰宅するので、3時半くらいには家についている筈だった。
「庭理」
 俺は料理を続ける庭理に、何故かあの事をいいたくなった。
「なに?」
「俺、日比野に告白された」
 庭理が、一瞬手を止めた。
「ふーん。良かったじゃん」
 庭理は前髪を弄りながらそう言った。
「で、海斗はなんて答えたの?って、当然オッケーか」
 庭理は笑いながらも、寂しそうにそう言った。
「まだ、返事してない」
「え?なにそれ。海斗らしくないじゃん」
 俺らしい?
 そうか。
 そうだったのか。
「庭理、俺、もう自分が何なのか、分かんなくなった」
 あれ。
 何を言ってんだろう、俺。
 なんで、急にそんなこと。
「ボクも、自分のことなんか、わかんないよ」
 庭理は、作り終わった料理をテーブルに運んだ。
 いつもなら、俺は手伝っている筈なのに、今日は何故か、見守っていた。
 庭理が運び終わった後、いつもの場所に座り、手を合わせた。
「「いただきます」」
 いつもは副菜から食べる俺なのに、今日は何故か味噌汁から手をつけた。
 塩分が体に染み渡る。
 暖かい。
 今は、その温もりだけで十分だった。
 十分だった、筈なのに。
「庭理、教えてくれないか」
 庭理が、何をと聞く前に。
「修学旅行の時、なんであのときに、女だって教えてくれたんだ?いや、そういやあのとき、教えてくれるっていってたのに、聞きそびれたなって」
 庭理は、箸を茶碗に置いた。
「こんな時に言うのも狡いと思うけど、正直、海斗が日比野さんのことを好きなのは、最初応援してたんだよ。でも、だんだん二人の距離が縮まるうちに、なんか、嫌だなって、なった。それで、本当に卑怯だと思うけど、ボクとキスしちゃえば、海斗は律儀だから、他の女の子とはしなくなるかなって」
 庭理は、体を小刻みに震わせながら、語ってくれた。
「庭理、俺も卑怯だと思うけど、その、言いたいことは分かるけど、確かな言葉で聞きたいんだ」
 庭理の震えが止まった。
 
「海斗のことが、好きなんだよ!」
 
 そう叫んだ庭理は、ぶわっと、涙を溢れさせた。
 女の子にこんななげやりに言わせるなんて、俺は最低だな。
 その償いがしたかったからか、そんな庭理に近付き、後ろから包むように抱き抱える。
 数秒後、落ち着いてきた庭理に、今度は俺が、自分の気持ちを告白した。
「ありがとう。おかげで、俺の気持ちが、俺のことが分かったよ」
 俺は少し庭理を距離をおき、話始めた。
「俺も、庭理のことが、好きなんだ。だから、日比野を好きになった」
「なにそれ」
「俺、多分、男って思ってても、庭理のことが好きだったんだ」
「なにそれ気持ち悪っ」
「いや、今言うかよそれ!」
 庭理は確かにと言い、笑った。
「それでさ、他の女の子が好きになれば、庭理のことそういう目で見ずにすむかなって」
 俺は自分の頬をぽりぽりと掻いた。
「それなのに、庭理が女の子って分かったのに、日比野を諦めきれないふりをして、自分がしようとしてきたこととか、正当化しようとした」
 いや、なんか、言葉にすると難しいな。上手く伝わってるだろうか。
「じゃあ、かいと、ボクのこと好きなら、キスしてよ」
 庭理はまたもや唐突に迫ってきた。
「いや、それは日比野にちゃんと告白断ってからな」
 庭理はぷくっと頬を膨らませる。
「もう、やっぱり律儀!」
 怒る庭理に、俺はごめんごめんと謝った。
「だからさ、庭理、今度の月曜日、校門で待っててくれよ。迎えにいくから」
 庭理は、うんと頷いてくれた。
 
 
 月曜日、俺は放課後に、屋上へと向かった。
 そこには既に、日比野がいた。
「日比野、ごめん!君とは付き合えない」
 日比野は辛そうな顔をしていた。
「いいの。そんな気がしてたから」
「えっ」
 それ以上、日比野が喋ることは無かった。
 俺は少し気まずかったが、「じゃあもう行くな」と日比野に言い残し、屋上から去った。
 それから俺は、全力で階段を下り、庭理のところへ向かった。
「庭理、行くぞ」
 俺は庭理の手をつかみ、走り出した。
「どうしたの海斗、なんで急いでるの?」
「時間がぎりぎりなんだ!」
 俺はうろ覚えな道を何とか迷わず進み、とある丘の上に到着した。
「ここ、俺が初めてこの町に来たときに、偶然見つけたんだけど」
 俺は息切れしながら、庭理にそう告げる。
「庭理、見ろよ」
 俺は、下の景色を見るように促した。
「わあ」
 太陽の光が、町を包み込んでいた。
 小金色の陽光が町を染め上げ、美しく見せる。この光景は、俺が見たなかで二番目に美しい。
 一番は勿論.........。
「ロマンチックな場所、ここしか思い付かなくて」
 俺は古びた手摺に手を掛けてそう言った。
 
「庭理、好きだ。俺と付き合ってくれ」
 
 庭理は、この美しい光景から、俺に視点を移した。
 
「ボクも、かいとのことが好きです。だから、喜んで」
 
「そこは喜んでだけでいいだろ」
 庭理はあ、そっかとうつむき、恥ずかしそうに笑う。 
 俺はそんな庭理の顎をくいっと上げ、その唇に、自分の唇を重ねた。
「これ、俺のファーストキスだから」
 庭理からセリフを奪った俺は、恥ずかしさのあまり後ろを向いた。
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