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八話 その夜に
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「これ、俺のファーストキスだから」
その台詞があまりに羞恥的なものだったので、俺は思わず後ろを向く。
「あっ、ボクもファーストだよ、これ」
庭理は背を向けている俺に、自分も初めてであることをおしえてくれた。
俺は顔が火照ったままだが、庭理に向き直る。やはり庭理も頬の熱は冷めていないようだ。
「帰るか」
俺は来たときのように強引でなく、優しく庭理の手を握る。
庭理はうんと頷き、手を繋いだまま俺達は帰宅した。
━━━━━━━━━━━━━━━
「「いただきます」」
今日の晩飯は、庭理の得意料理である鶏の竜田揚げと、味噌汁とご飯だった。
竜田揚げは唐揚げみたい、というより唐揚げと殆ど同じものだが、やはり何かが違うらしい。
唐揚げは粉をブレンドするけど竜田揚げは違うとか言っていたが、正直よくわからない。
しかし旨いことにかわりはないので気にしないでおく。
「あ、明日提出するレポートやった?」
先ほどあんなことがあったばかりなので、俺は少しどぎまぎしていたが、庭理はあまり気にしていないのだろうか。
「えーと、あぁ、確か学校の休み時間にちゃちゃっとやった気がする」
庭理は「そっか」と言い、味噌汁を啜る。
「庭理も当然終わってんだろ?」
「もちろん」
流石はクラス一の真面目マンと言われているだけはあるな。
まぁ本当はウーマンだけど。いや、別にどっちでもいいな。
そんなことを考えているうちに俺は完食し、食器を一纏めする。
今日も庭理の飯は最高だった。
「あ、そういえば風呂沸かしてたっけ?」
「多分してないや。海斗お願い」
俺はあぁ、と返事をし、立ち上がる。
なんだろう。結局いつもの日常な気がする。
いや、別に悪いことじゃ無いんだけど。
なんだろう。なんかもやもやする。
本当になんだろう。
「海斗、食器ここに置いておくね」
風呂のスイッチを押し、リビングに入った途端、庭理がそう良いながらシンク上に食器を置いた。
「あぁ。わざわざ悪い。俺が食器洗ってる間に風呂沸いたら入っちゃえよ」
「うん。わかった」
俺はカチャつかせながらも食器を洗い始める。
一年とちょっとこの仕事、というか役割? をしているので、だいぶ馴れた。
なので風呂が沸くのは俺が食器洗いが終わる後になると思う。
まぁそれでも庭理に先を譲るか。こういうのって女性が先の方がいいような気がする。なんとなくだけど。
そういえばこの前は俺が先に入っちゃったんだよなぁ。それで庭理が勝手に入ってきた時は正直焦った。
あのときは庭理も秘密を打ち明けて、庭理もつい開放的になってしまったのかもしれない。
俺が考え込んでいる間に洗い物は終わり、その数秒後に風呂が沸いたことを示す音楽がなった。
「じゃあ海斗、先失礼するね」
隣の部屋にいた庭理が、やや大きめな声でそう俺に伝える。
「どうぞー」
俺も庭理と同じ位の声量で返事をし、その瞬間、ある悪巧みが脳裏をよぎる。
まぁ実際は脳裏をよぎるという言葉を使いたかっただけで、本当は普通に思い付いただけだけどな。
そんなアホなことを考えるのと同時に、俺は浴槽に向かった。
音を立てないように服を脱ぎ、足音を立てないように浴室の扉に近づく。
そう、これは仕返しだ。
この前勝手に入ってきた庭理への復讐なのだ。
俺は笑いを堪えながら浴槽の扉に手をかけたその時、ふと考える。
━━これ犯罪じゃね?
庭理が勝手に入ってきた時はただただ恥ずかしかったので考えていなかったが、よく考えてみれば、いくら付き合ってて同棲しているとはいえ、お互いの了承も得ずこんなことをするのは倫理に反する気がする。
うん。そうだ。止めよう。こんなアホなことは。
俺はそう結論付け、扉にかけていた手を離し、服を着ようと踵を返したその時。
「......あれ、海斗何やってんの?」
「......いや、なんかその、すまぬ」
なんとなく謝ってしまった俺に、庭理は気にする素振りも見せず、素通りして行った。
なんだろう。庭理さん逞しいな。
「海斗」
着替え終わった庭理が俺に向き直る。
「お風呂終わったら、今夜はお楽しみだね」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、庭理は顔を赤くしながら小走りで出ていった。
というか、俺の方こそ恥ずかしい。
「......あんなの反則だろ」
今日は念入りに身体を洗おうと、俺は決意した。
その台詞があまりに羞恥的なものだったので、俺は思わず後ろを向く。
「あっ、ボクもファーストだよ、これ」
庭理は背を向けている俺に、自分も初めてであることをおしえてくれた。
俺は顔が火照ったままだが、庭理に向き直る。やはり庭理も頬の熱は冷めていないようだ。
「帰るか」
俺は来たときのように強引でなく、優しく庭理の手を握る。
庭理はうんと頷き、手を繋いだまま俺達は帰宅した。
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「「いただきます」」
今日の晩飯は、庭理の得意料理である鶏の竜田揚げと、味噌汁とご飯だった。
竜田揚げは唐揚げみたい、というより唐揚げと殆ど同じものだが、やはり何かが違うらしい。
唐揚げは粉をブレンドするけど竜田揚げは違うとか言っていたが、正直よくわからない。
しかし旨いことにかわりはないので気にしないでおく。
「あ、明日提出するレポートやった?」
先ほどあんなことがあったばかりなので、俺は少しどぎまぎしていたが、庭理はあまり気にしていないのだろうか。
「えーと、あぁ、確か学校の休み時間にちゃちゃっとやった気がする」
庭理は「そっか」と言い、味噌汁を啜る。
「庭理も当然終わってんだろ?」
「もちろん」
流石はクラス一の真面目マンと言われているだけはあるな。
まぁ本当はウーマンだけど。いや、別にどっちでもいいな。
そんなことを考えているうちに俺は完食し、食器を一纏めする。
今日も庭理の飯は最高だった。
「あ、そういえば風呂沸かしてたっけ?」
「多分してないや。海斗お願い」
俺はあぁ、と返事をし、立ち上がる。
なんだろう。結局いつもの日常な気がする。
いや、別に悪いことじゃ無いんだけど。
なんだろう。なんかもやもやする。
本当になんだろう。
「海斗、食器ここに置いておくね」
風呂のスイッチを押し、リビングに入った途端、庭理がそう良いながらシンク上に食器を置いた。
「あぁ。わざわざ悪い。俺が食器洗ってる間に風呂沸いたら入っちゃえよ」
「うん。わかった」
俺はカチャつかせながらも食器を洗い始める。
一年とちょっとこの仕事、というか役割? をしているので、だいぶ馴れた。
なので風呂が沸くのは俺が食器洗いが終わる後になると思う。
まぁそれでも庭理に先を譲るか。こういうのって女性が先の方がいいような気がする。なんとなくだけど。
そういえばこの前は俺が先に入っちゃったんだよなぁ。それで庭理が勝手に入ってきた時は正直焦った。
あのときは庭理も秘密を打ち明けて、庭理もつい開放的になってしまったのかもしれない。
俺が考え込んでいる間に洗い物は終わり、その数秒後に風呂が沸いたことを示す音楽がなった。
「じゃあ海斗、先失礼するね」
隣の部屋にいた庭理が、やや大きめな声でそう俺に伝える。
「どうぞー」
俺も庭理と同じ位の声量で返事をし、その瞬間、ある悪巧みが脳裏をよぎる。
まぁ実際は脳裏をよぎるという言葉を使いたかっただけで、本当は普通に思い付いただけだけどな。
そんなアホなことを考えるのと同時に、俺は浴槽に向かった。
音を立てないように服を脱ぎ、足音を立てないように浴室の扉に近づく。
そう、これは仕返しだ。
この前勝手に入ってきた庭理への復讐なのだ。
俺は笑いを堪えながら浴槽の扉に手をかけたその時、ふと考える。
━━これ犯罪じゃね?
庭理が勝手に入ってきた時はただただ恥ずかしかったので考えていなかったが、よく考えてみれば、いくら付き合ってて同棲しているとはいえ、お互いの了承も得ずこんなことをするのは倫理に反する気がする。
うん。そうだ。止めよう。こんなアホなことは。
俺はそう結論付け、扉にかけていた手を離し、服を着ようと踵を返したその時。
「......あれ、海斗何やってんの?」
「......いや、なんかその、すまぬ」
なんとなく謝ってしまった俺に、庭理は気にする素振りも見せず、素通りして行った。
なんだろう。庭理さん逞しいな。
「海斗」
着替え終わった庭理が俺に向き直る。
「お風呂終わったら、今夜はお楽しみだね」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、庭理は顔を赤くしながら小走りで出ていった。
というか、俺の方こそ恥ずかしい。
「......あんなの反則だろ」
今日は念入りに身体を洗おうと、俺は決意した。
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