17 / 25
十七話 夜は明ける
しおりを挟む
クリスマスの夜。
あれから俺達は、まあ、何と言うか、色々あってなんか気まずくなった。
当然の如く、なかなか寝付けない。
それは庭理も同じようで、とある話をし始めた。
「ボクの父さんと兄ちゃん、死んじゃったんだ」
「えっ」
庭理の急なカミングアウトに、俺は戸惑う。
「父さんはボクが小学六年生の時、兄ちゃんは中学二年生の時にね」
俺は庭理に視線を移す。
「兄ちゃんは、病気で死んじゃったんだけど、父さんは、自殺で......」
「庭理......」
俺は少し近寄り、庭理の手をぎゅっと握った。
そうか、庭理も、大切な人を失う悲しみを知ってたんだな。
「かいとっ......」
庭理は振り向き、俺の胸に飛び込んできた。
「かいとは死んじゃ駄目だよっ......」
震える声で、庭理が俺に懇願する。
「死なねぇよ。死ぬときは、一緒だ」
庭理は泣いていた。
俺の胸の中で泣いていた。
俺は、この時誓った。
何があっても、庭理だけは守ってみせると。
━━━━━━━━━━━━━━━
「......んぁ?」
だらしない声を上げたとも気づかずに目が覚めると、もう朝日は昇っていた。
隣の部屋からいい臭いがする。庭理が朝食を作っているのだろう。
「おはよう」
俺は扉をあけ、庭理に挨拶をする。
「あ、おはよう海斗」
そう言って庭理が笑う。
「海斗、それ運んどいて」
「あいよ」
今日の朝食はフレンチトーストとインスタントのコーンスープだった。
「「いただきます」」
俺はまず、フレンチトーストから手をつけることにした。
家庭科の教科書に乗ってる写真にはこの上に何か白い粉みたいなのが乗っていて非常に旨そうな見た目をしていたが、うちのはそれが無くても美味しく見えるのが不思議だ。
頬張ってみると、程好い甘さが染み渡る。この絶妙な味の加減は、庭理が毎日料理を作ってきた成果だろう。
要するに、今日も庭理の飯は最高と言うことだ。
「……あっ、庭理、今思い出したんだけどさ」
そう言い出すと、庭理が不思議そうに俺を見つめる。
「庭理のお母さんは生きてるんだよな」
「え?あぁ、うん。そうだよ」
地雷を踏んでしまうのではという躊躇いもあったが、このての話題はどうやら大丈夫そうで安心した。
胸を撫で下ろしつつ、俺は言葉を続ける。
「俺、会ってみたい。庭理のお母さんに」
すると、庭理が飲んでいたコーンスープを吹き出した。
「おわっ!大丈夫か庭理?」
「けほっ、けほっ、いや、唐突過ぎてさ……」
庭理が近くに置いてあったティッシュで口元と机を拭う。
「というか、なんで急にボクのお母さん?」
庭理が真面目な顔で聞いてくる。
「いやぁ、挨拶......みたいな?」
俺はそう言いながら頭を掻いた。
「......嘘、でしょ」
「えっ?」
庭理が半目で俺を見つめる。
「じー」
「や、やめろぉ! そんな目で人を見ちゃいけません!」
俺がふざけると、庭理は笑いだした。続けて俺も爆笑する。
「で、どうする? いつ行く?」
一瞬怪しんでいた庭理だったが、この切り返しの速さは最早感心する。
「庭理の実家にってこと? んー、そうだなぁ。1月の2日辺りでいいんじゃないか。1日は初詣とかで忙しいし」
「じゃ、決まりだね」
「おう」
それにしても、庭理のお母さんか。
一体どんな人なんだろう。
あれ、そういえば庭理、俺が嘘ついてるって、なんでそう思ったんだろう。
あれから俺達は、まあ、何と言うか、色々あってなんか気まずくなった。
当然の如く、なかなか寝付けない。
それは庭理も同じようで、とある話をし始めた。
「ボクの父さんと兄ちゃん、死んじゃったんだ」
「えっ」
庭理の急なカミングアウトに、俺は戸惑う。
「父さんはボクが小学六年生の時、兄ちゃんは中学二年生の時にね」
俺は庭理に視線を移す。
「兄ちゃんは、病気で死んじゃったんだけど、父さんは、自殺で......」
「庭理......」
俺は少し近寄り、庭理の手をぎゅっと握った。
そうか、庭理も、大切な人を失う悲しみを知ってたんだな。
「かいとっ......」
庭理は振り向き、俺の胸に飛び込んできた。
「かいとは死んじゃ駄目だよっ......」
震える声で、庭理が俺に懇願する。
「死なねぇよ。死ぬときは、一緒だ」
庭理は泣いていた。
俺の胸の中で泣いていた。
俺は、この時誓った。
何があっても、庭理だけは守ってみせると。
━━━━━━━━━━━━━━━
「......んぁ?」
だらしない声を上げたとも気づかずに目が覚めると、もう朝日は昇っていた。
隣の部屋からいい臭いがする。庭理が朝食を作っているのだろう。
「おはよう」
俺は扉をあけ、庭理に挨拶をする。
「あ、おはよう海斗」
そう言って庭理が笑う。
「海斗、それ運んどいて」
「あいよ」
今日の朝食はフレンチトーストとインスタントのコーンスープだった。
「「いただきます」」
俺はまず、フレンチトーストから手をつけることにした。
家庭科の教科書に乗ってる写真にはこの上に何か白い粉みたいなのが乗っていて非常に旨そうな見た目をしていたが、うちのはそれが無くても美味しく見えるのが不思議だ。
頬張ってみると、程好い甘さが染み渡る。この絶妙な味の加減は、庭理が毎日料理を作ってきた成果だろう。
要するに、今日も庭理の飯は最高と言うことだ。
「……あっ、庭理、今思い出したんだけどさ」
そう言い出すと、庭理が不思議そうに俺を見つめる。
「庭理のお母さんは生きてるんだよな」
「え?あぁ、うん。そうだよ」
地雷を踏んでしまうのではという躊躇いもあったが、このての話題はどうやら大丈夫そうで安心した。
胸を撫で下ろしつつ、俺は言葉を続ける。
「俺、会ってみたい。庭理のお母さんに」
すると、庭理が飲んでいたコーンスープを吹き出した。
「おわっ!大丈夫か庭理?」
「けほっ、けほっ、いや、唐突過ぎてさ……」
庭理が近くに置いてあったティッシュで口元と机を拭う。
「というか、なんで急にボクのお母さん?」
庭理が真面目な顔で聞いてくる。
「いやぁ、挨拶......みたいな?」
俺はそう言いながら頭を掻いた。
「......嘘、でしょ」
「えっ?」
庭理が半目で俺を見つめる。
「じー」
「や、やめろぉ! そんな目で人を見ちゃいけません!」
俺がふざけると、庭理は笑いだした。続けて俺も爆笑する。
「で、どうする? いつ行く?」
一瞬怪しんでいた庭理だったが、この切り返しの速さは最早感心する。
「庭理の実家にってこと? んー、そうだなぁ。1月の2日辺りでいいんじゃないか。1日は初詣とかで忙しいし」
「じゃ、決まりだね」
「おう」
それにしても、庭理のお母さんか。
一体どんな人なんだろう。
あれ、そういえば庭理、俺が嘘ついてるって、なんでそう思ったんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる