他の何よりアイが欲しい。R15

勇崎シュー

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最終話 愛を与える為に。

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「明日、俺達の卒業式だな」
 俺が告白した、あの丘の上。
 俺はそこで、庭理と話をしていた。
「そうだね。本当に、あっという間だったね」
 俺達の通う学校は、二クラスしかない。
 そのおかげで、三年生も庭理と同じクラスだった。
「あ、庭理、そろそろ日が沈むぞ」
 あの日のように、太陽は金色の光で町を包む。
「いつ見ても、ここ綺麗だよね」
 庭理が見とれている隙に、俺はポケットからあるものを取り出す。
「庭理」
 庭理が振り向いた瞬間、俺はケースを開いた。

「俺と結婚してくれ」

 銀の指輪が太陽の光をうけ、金色に輝く。
「喜んで」
 庭理は涙を浮かべながら、受け入れてくれた。

 その日の夜。
「ってことで庭理、その指輪に全財産使っちゃったから、婚約指輪は暫く買えません!すみません!」
「いいよ。それよりさ。卒業したらすぐに婚姻届け出しにいこうね」
 庭理が心底嬉しそうに笑う。
「いや、にしてもさ、高校生なのに、自分で働いた金で指輪買うって、相当カッコいいよな」
「自分で言うな。まぁ、カッコいいけど」
 庭理が頬を染めながらそう言う。
「まぁ、本当はそんな事思ってねぇけどな」
 俺はそう言いながら頭を掻く。
「海斗、結婚祝いに教えて上げる。海斗って嘘つくとき、頭掻く癖があるんだよ」
「えっ⁉」
 俺は急いで手を頭から放した。
 まさか自分にそんな癖があったなんて。
 あ、でも庭理にもそんな癖があるから、案外普通のことなのか。
「あ、私明日から、海斗のことあなたって呼ぼう」
「あれ、庭理一人称変えたんだ」
「うん。もう男のふりすることもなくなったし、これから生まれてくる子の為にも、変な影響与えちゃうかなって」
「え? もうお腹にいんの⁉」
「あっ、違う違う! 今はまだいないよ! できたらって話!」
 庭理が慌てて訂正する。
「びっくりしたぁ。そうだよな。いたら一大事だもんな」
 俺は安堵の息をはいた。
 まぁいずれは欲しいんだけど、今は金がないからなぁ。
 いや、それよりも、庭理も自分の子のことをもう考えていてくれたことが、堪らなく嬉しかった。
 俺も、立派な父親になれるだろうか。
 いや、ならなくちゃな。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 三年後。
 給料の高い仕事に就くためには、大学にでなければいけない。
 しかし、そんな金はどこにもないため、仕方なく、俺はそこらの中小企業で働くことにした。
 庭理は調理師免許を取得し、今は飲食店で働いている。
 俺はいつか、もっと高い地位につき、庭理を専業主婦にさせようとするのが今の目標だ。
 その目標に向かって頑張っているある日、俺が新しいアパートに帰宅すると、嬉しそうな庭理が俺を出迎えた。
「おかえり、あなた」
「ただいま。今日はやけに嬉しそうだけど、何かあったのか?」
 庭理はうんと頷いた。
「実はね。出来たの」
 庭理がお腹を擦る。
 と、いうことは。
「本当か⁉ やった! 庭理と俺の子だ!」
 俺は年に似合わず、跳び跳ねるように喜んだ。
 子供の時、とある夫婦が、子供が家族の絆です。と言っていた。
 その意味を、今ならはっきり分かる。
 どんなに仲の良い友人でも、どんなに仲の良い夫婦でも、血の繋がりで言えば、他人なのだ。
 しかし、自分と相手の半分の血が混じりあった子が生まれるということは、子供を通じて、俺達は本当の意味で家族になれる。
 そう考えると、本当に子供が宝物のように、思えた。
 数ヶ月後、赤ちゃんは男の子と言うことがわかった。
「ねぇ、あなた、この子の名前、どうする?」
 お腹が膨らんできた庭理が、そう聞く。
「俺、良い名前考えちゃったぞ。俺達さ、子供の時、結構不幸だったと思うんだよ。俺達の子供にはさ、そんな不幸にさせたくないから、幸せって書いて、こうって読む名前にしたいんだ」
こう......美園幸、良い名前ね」
 庭理が母親らしく笑う。
 こうしていると、自分が殺人者ということを忘れてしまいそうになる。
 だけど、それは決して忘れてはいけないことだ。
 だから俺は、殺人者だからこそ、この二人を幸せにしようと思った。
 それが俺の、償いだ。
 そんなの、償いとは言わないだろうけど、それでも、それが俺に出来ることだから。

「これからもよろしくな、庭理。これからよろしくな、幸」

 俺と庭理は、優しく微笑む。
 きっと幸も、笑ってくれているだろう。

━他の何よりアイが欲しい。 完━
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