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二十四話 他の何より愛が欲しい
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「海斗」
俺の名を呼ぶのは、今は亡き母の声。
「海斗、優しい人になりなさい」
俺の目に移る母さんは、いつも儚げな笑顔をしていた。
「海斗、自分がされて嫌なことは、他の人にもしちゃ駄目よ」
母さんが、優しく俺の頭を撫でる。
「おい、てめぇ」
俺は呼ぶのは、父の声。
「ちっ、うぜぇ」
俺の目に移る親父は、いつも苛立っていた。
「ちょこまかしやがって、うぜぇんだよ!」
親父が、その刃物で俺を斬りつける。
それは、小学二年生の時。
この時の俺には、友達と呼べる人は一人しかいなかった。
その友達の事を皆は大ちゃんと呼んでいた。
まぁ、俺もそう呼んでいたんだけど。
大ちゃんはいろんな言葉を知っていた。
フラグだとかデジャヴとか、そんな言葉は大抵大ちゃんから教わった。
色んな言葉を知っている大ちゃんに、俺は憧れに近い感情を浮かべていた。
ある日の事。
「なぁ、海斗。今日家で遊ばね?」
大ちゃんが俺を遊びに誘ってくれた。
結構な頻度で遊んでくれる大ちゃんだが、俺はいつも嬉しい気分になった。
でもその日は、いつもと違った。
「なぁ大ちゃん、今日俺達と遊ぼうぜ。この前新しいゲームをママに買ってもらったんだ」
「あ、でも今日は……」
「そうだ、今日来てくれたらちょっと貸してやるよ」
「本当?分かった!行く行く!」
たまたま近くにいた当時の俺は、結構なショックを受けた。
「ごめん海斗、今日急用できちゃって」
「うん。わかった」
けど、嫌われるのが怖くて、問い詰めることが出来なかった。
もしかしたら、気づいていなかっただけで、こういうことはよくあったのかもしれない。
でも、当時の俺は、すこし悲しくなっただけだった。
しかし、一年後。
「うるせぇ!」
親父が目の前で、母さんを包丁で刺した。
声をだしたら殺されると思った俺は、トイレに引きこもった。
暫くして、親父の鼾が聞こえ、トイレのドアを開ける。
そこには、血にまみれた母さんと、大きな鼾をかいている親父がいた。
母さんに近づくと、まだ包丁が刺さったままだった。
「母さん......っ」
俺は極力声を出さないように、その場で泣いた。
母さんの手に触れてみると、氷のように冷たかった。
俺は、母さんが包丁に刺さったままだと可哀想だと思い、抜いた。
肉の感触が伝わり、気味が悪かったことを覚えている。
包丁を抜ききったとき、俺はある感情が芽生えた。
殺意である。
俺は、後ろで大きな鼾をかいている親父に、ゆっくりと近づいた。
親父の口からは、異臭が放たれていた。
今思えば、あれば酒の匂いだったのだろう。
俺は、思い切り親父の背中を……!
「あぐっ、ぐえっ……!」
すると、親父が目を覚ます。
「……っ!」
俺はさらに強く押し込む。
「てめっ、ガキっ……!」
数秒後、親父はその場に倒れた。
俺はいつも、親父をこうしてやりたいと思っていた。
しかし、今俺にあるのは、母がこの世から去ってしまったという、空虚な感情だった。
俺は自分の手を見て思った。
自分の血の半分がこいつであることを酷く穢らわしく思う。
一度自分の血を全て抜ききり、新しい血を入れたいと思うほどだ。
そして、俺は誓った。
自分は、絶対に親父のような人間にはならないと。
自分の妻も、子供も幸せに出来る、立派な人間になろうと。
しかし、殺人者の自分には、もうそんなことを出来る資格が無いことを、当時の俺は知らない。
数日後、俺の家から異臭がすると通報を受けた警察が、自宅で母と父の遺体を見つける。
俺は、父親に殺されそうになったから、包丁を奪い殺したと証言した。
そうすれば、正当防衛で無罪になると思ったからだ。
俺は見事、無罪になることが出来た。
しかし。
「この殺人者!」
周りからのそのレッテルは、剥がれることは無かった。
けど、辛いのはそこでは無かった。
本当に辛かったのは、俺を愛してくれる人がいなくなったことだ。
母さんがいなくなったことだ。
俺は知っていた。
友達は、俺を一番にしてくれないことを。
先生や、知り合いも、俺を一番にしてくれないことを。
だから俺は、友情とか、同情とか、そう言うのよりも。
俺は………………
他の何より、愛が欲しい。
━━━━━━━━━━━━━━
「っ!?」
目が覚めると、俺はいつもの寝室にいた。
時計を見ると、もうすぐ5時になる頃だとわかった。
「あれ?海斗もう起きてるの?早いね」
庭理が目を擦りながら、布団から起き上がる。
俺はそんな庭理を、思い切り抱き締めた。
「かいとっ?」
「庭理……庭理っ……」
「かいと、そろそろ離して、ご飯作れないよ」
「……いらない」
「えっ?」
「庭理以外、他に何もいらない」
俺の名を呼ぶのは、今は亡き母の声。
「海斗、優しい人になりなさい」
俺の目に移る母さんは、いつも儚げな笑顔をしていた。
「海斗、自分がされて嫌なことは、他の人にもしちゃ駄目よ」
母さんが、優しく俺の頭を撫でる。
「おい、てめぇ」
俺は呼ぶのは、父の声。
「ちっ、うぜぇ」
俺の目に移る親父は、いつも苛立っていた。
「ちょこまかしやがって、うぜぇんだよ!」
親父が、その刃物で俺を斬りつける。
それは、小学二年生の時。
この時の俺には、友達と呼べる人は一人しかいなかった。
その友達の事を皆は大ちゃんと呼んでいた。
まぁ、俺もそう呼んでいたんだけど。
大ちゃんはいろんな言葉を知っていた。
フラグだとかデジャヴとか、そんな言葉は大抵大ちゃんから教わった。
色んな言葉を知っている大ちゃんに、俺は憧れに近い感情を浮かべていた。
ある日の事。
「なぁ、海斗。今日家で遊ばね?」
大ちゃんが俺を遊びに誘ってくれた。
結構な頻度で遊んでくれる大ちゃんだが、俺はいつも嬉しい気分になった。
でもその日は、いつもと違った。
「なぁ大ちゃん、今日俺達と遊ぼうぜ。この前新しいゲームをママに買ってもらったんだ」
「あ、でも今日は……」
「そうだ、今日来てくれたらちょっと貸してやるよ」
「本当?分かった!行く行く!」
たまたま近くにいた当時の俺は、結構なショックを受けた。
「ごめん海斗、今日急用できちゃって」
「うん。わかった」
けど、嫌われるのが怖くて、問い詰めることが出来なかった。
もしかしたら、気づいていなかっただけで、こういうことはよくあったのかもしれない。
でも、当時の俺は、すこし悲しくなっただけだった。
しかし、一年後。
「うるせぇ!」
親父が目の前で、母さんを包丁で刺した。
声をだしたら殺されると思った俺は、トイレに引きこもった。
暫くして、親父の鼾が聞こえ、トイレのドアを開ける。
そこには、血にまみれた母さんと、大きな鼾をかいている親父がいた。
母さんに近づくと、まだ包丁が刺さったままだった。
「母さん......っ」
俺は極力声を出さないように、その場で泣いた。
母さんの手に触れてみると、氷のように冷たかった。
俺は、母さんが包丁に刺さったままだと可哀想だと思い、抜いた。
肉の感触が伝わり、気味が悪かったことを覚えている。
包丁を抜ききったとき、俺はある感情が芽生えた。
殺意である。
俺は、後ろで大きな鼾をかいている親父に、ゆっくりと近づいた。
親父の口からは、異臭が放たれていた。
今思えば、あれば酒の匂いだったのだろう。
俺は、思い切り親父の背中を……!
「あぐっ、ぐえっ……!」
すると、親父が目を覚ます。
「……っ!」
俺はさらに強く押し込む。
「てめっ、ガキっ……!」
数秒後、親父はその場に倒れた。
俺はいつも、親父をこうしてやりたいと思っていた。
しかし、今俺にあるのは、母がこの世から去ってしまったという、空虚な感情だった。
俺は自分の手を見て思った。
自分の血の半分がこいつであることを酷く穢らわしく思う。
一度自分の血を全て抜ききり、新しい血を入れたいと思うほどだ。
そして、俺は誓った。
自分は、絶対に親父のような人間にはならないと。
自分の妻も、子供も幸せに出来る、立派な人間になろうと。
しかし、殺人者の自分には、もうそんなことを出来る資格が無いことを、当時の俺は知らない。
数日後、俺の家から異臭がすると通報を受けた警察が、自宅で母と父の遺体を見つける。
俺は、父親に殺されそうになったから、包丁を奪い殺したと証言した。
そうすれば、正当防衛で無罪になると思ったからだ。
俺は見事、無罪になることが出来た。
しかし。
「この殺人者!」
周りからのそのレッテルは、剥がれることは無かった。
けど、辛いのはそこでは無かった。
本当に辛かったのは、俺を愛してくれる人がいなくなったことだ。
母さんがいなくなったことだ。
俺は知っていた。
友達は、俺を一番にしてくれないことを。
先生や、知り合いも、俺を一番にしてくれないことを。
だから俺は、友情とか、同情とか、そう言うのよりも。
俺は………………
他の何より、愛が欲しい。
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「っ!?」
目が覚めると、俺はいつもの寝室にいた。
時計を見ると、もうすぐ5時になる頃だとわかった。
「あれ?海斗もう起きてるの?早いね」
庭理が目を擦りながら、布団から起き上がる。
俺はそんな庭理を、思い切り抱き締めた。
「かいとっ?」
「庭理……庭理っ……」
「かいと、そろそろ離して、ご飯作れないよ」
「……いらない」
「えっ?」
「庭理以外、他に何もいらない」
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