他の何よりアイが欲しい。R15

勇崎シュー

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二十三話 宴会でなくとも

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 三月四日。卒業式まで、あと一週間程。
 だが今日は、そんな事よりも俺にとって重要な日なのである。
 今日はバイトもなく、今か今かとバイトから帰ってくる庭理を待つ。
 時計は五時過ぎを指している。つまり、もう少しで帰ってくる筈だ。
「ただいまー」
 はい、来た。
「誕生日おめでとー!」
 俺は手にもつクラッカーをぱんと鳴らす。
「うわっ、びっくりしたぁ」
 クラッカーの音にびびった庭理が、一歩下がりながらそう言う。
「さぁ、こちらにどうぞ」
 俺が庭理に座るよう促す。
「えっ、何この座布団」
 庭理は見慣れない紫色の座布団に驚いた。
「今日の為にご用意致しました。誕生日プレゼントの内のひとつでございます」
「何その口調」
 口調については突っ込んでほしくないが、まぁ、それは置いといて。
「さぁ、どうぞお召し上がり下さい」
 卓上には、コンビニで買ってきた骨付きチキンやケーキ、そして場違いな炒飯が置いてある。
 因みに、炒飯は俺が作ったものだ。
 料理の下手な俺でもつくれる料理は三つある。それはおにぎりとカップ麺とこの炒飯だ。
 何故俺が奇跡的に炒飯だけ美味しく作れるのかは知らないが、まぁ、あまり気にしないようにしよう。
「わぁ、海斗の炒飯久しぶり」
 庭理はそう言いながら早速座布団に座る。
「じゃ、食おうぜ」
「うん」
「「いただきます」」

「あー、おいしかった」
 庭理が自身の腹部をぽんぽんと叩く。
「庭理、ちょっと待ってて」
 俺は寝室から包みを持ってくる。
「ほら、座布団はプレゼントの内のひとつだって言ったろ。これ、もう一個のプレゼント」
 庭理は俺のプレゼントを受けとる。
「なんだろ。開けていい?」
「もちろん」
 庭理は丁寧に包装を開けた。
「わぁ、可愛いエプロン!」
 俺があげたのは、黄色いチェック柄のエプロンだった。
 ピンクのふりふりしたやつも似合いそうだが、庭理はこういうシンプルな方が好きなので、これにした。
「もう女って隠すこと無くなったんだから、こういう可愛いの着ても良いんじゃないかって思ってさ」
「うん、凄く嬉しいよ。ありがとう」
 庭理はエプロンを抱き抱えながら、可愛らしく微笑んだ。
「あ、そうだこれ、誕生日プレゼントじゃないけどやるよ」
 俺は五個要りクラッカーを渡す。まぁ一個使ったから四個要りなんだけどな。
「俺のときに使ってくれ。余ったら捨てといて。捨てるの面倒だったら俺に渡せば捨てとくから」
「え、海斗わざわざこんなの買ったの?」
「うん。庭理を驚かせたくて」
 庭理はクラッカーと俺を交互に見る。
「......バカ」
「おいっ」
 庭理は照れ臭そうに頬を染めた。
 多分、照れ隠しの為に言ったのだろう。
「あー、早くこれ使いたいなぁ。今から夜食作っちゃおうかな?」
 庭理がエプロンをひらひらさせる。
「明日の朝まで我慢しろよ」
「えー」
 庭理がぷくりと頬を膨らます。
「じゃ、俺風呂入るわ」
 そう言いながら俺は腰を上げる。
 すると、庭理も立ち上がり俺に近づく。
「今日はありがと。大好きだよ」
 そう言い、庭理は俺の頬をにキスをした。
「海斗、今日、一緒にお風呂入りたいな」
「わかったよ」
 いつかのあの日のように、無理やりでなく、今回は二人の意思で共に同じ湯を浴びる。
 あのときのことを思い出したら、ふと、考えてしまう。

 殺人者の俺が、こんなにも幸せで良いのだろうか。
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